交流の場
物価高騰・年金減など不安な世に
年金暮らしはどうなる?どうする?
このところ物価高騰が続き、特に生活必需品の上昇が強まり年金受給者には打撃大です。安倍政権施政以降の10年間に公的年金の減額が相次ぎ、物価上昇累積率を加味すると実質年金額は6.7%の減額です。
この上、10月から医療費自己負担は増え、介護保険制度の改悪検討が進むなど、年金暮らしに不安が強まるばかりです。
岸田内閣は9月に物価対策を講じたものの焼け石に水で円安が続く中で日銀は従来方針に固執しており、このままでは物価高騰が続き、生活水準の切り下げとなります。
こうした点から、問題の背景、経済、政治の流れを見つめ、めざすべき方向を考えたいものです。
政府の物価対策は
物価は、食料品や電気代など生活に欠かせない「基礎的支出項目」と、外食や旅行などの「選択的支出項目」があり、前者の上昇率は平均値を大きく超えています。「選択的支出項目」の支出が少ない高齢者には打撃的です。
岸田内閣は物価対策を9月に出したものの、一時的・部分的措置で、今の臨時国会で「総合対策」と称しての補正予算を決めるとしていますが、給付金・助成金メニューが並んでツギハギ的です。
物価高騰には消費税減税が最も効果的です。世界では100の国・地域で付加価値税or消費税の減税を実施しており、下げない日本は珍しい存在です。(消費税は賃金や年金で税金を取られた上に消費の度に取られる二重課税であり、所得の高い人ほど負担感が少ないという点でも不公正な税であり、廃止が筋です。)
日本は大企業の内部留保が484.3兆円(22/3期末。アベノミクス以降150兆円増)であり、少なくともアベノミクスの期間に増えた分を基に課税し、賃上げ企業への支援策など喫緊の課題に充てるべきです。
物価高で実質賃金の低下が続いて現役は大変で、賃上げが一段と重要です。公的年金は賃金上昇がないと増えない仕組みのため、既に減額されている訳で、私たちとしては現役の賃上げの闘いに期待・連帯すると共に、政府が最低賃金の大幅引き上げに転換することを求める必要があります。
そもそも、国民の労働、国民の消費があってこそ企業は利益を挙げ得たのであり、今こそカネは天下の回りものとして内部留保を国民に還元してこそ活かされます。
賃金・年金の増→消費拡大→投資融資拡大→利益増→税収増へと好循環となり、財政再建にも資することとなります。若年層の賃上げにより結婚・子育ての展望が開かれれば、人口減を食い止め社会保障の土台構築にも繋がります。賃金が増えれば社会保険料も増え国の保険財政は安定化します。年金受給者としては、物価高騰の要因と今後の動向を考え、まともな政治への転換に関心を高める必要があります。
物価高騰―問題の根底には
物価高騰の要因としては、世界的なコロナ禍からの経済回復と物価上昇、ウクライナ戦争などが絡んでいますが、日本の円安が一段と問題を増幅させています。輸入品の価格は円価換算で高騰し、9月の前年比上昇率は48.0%、19カ月連続上昇です。企業物価(前の卸売物価)もこれまでにない上昇率で、今後とも引き続いて消費者物価に転嫁される可能性が強まっています。
円安の要因には異次元の金融緩和があります。世界的なインフレの流れの中で、米欧諸国の金利引き上げにも関わらず、日本は低金利政策に固執のため一段と円安に陥っています。アメリカは景気が後退することも覚悟の上、インフレ退治を最優先する、という姿勢です。少し遅れつつもEUや各国も金利引き上げを進め、マイナス金利の国は今や日本だけとなっています。
9月以降、150円台にまで下落し幾度も為替介入したものの直ぐ元に戻って約8兆円をドブに捨てたも同然の有様です。一時、130円台にまで急騰しこのところは130円台に戻ったりもしていますが、投機筋の動きもあり依然として先行き不透明です。
黒田総裁は、物価上昇は一時的で金融緩和の継続が必要、と頑なに言い張っており、このまま円安を続けたら企業倒産増、物価高騰で国民の難儀が増大、景気悪化で賃上げどころでないとされ易く、いわば股裂き状態で一段と泥沼に落ち込んでいきかねません。
それでも低金利・異次元の金融緩和に固執するのは、ナゼか?―利上げすると
▲国債の利払い増となり財政破綻へ向かう、▲株・債券の下落で金融市場が激動、富裕層や大企業などに打撃、GPIF=年金積立金の資産運用悪化(今年4-9月は赤字合計5.4兆円)、▲日銀保有の金融資産減価で赤字決算・債務超過となり国際的にも信用低下、国債下落へ進み、これが投機筋の円暴落を呼び込み、輸入物価高騰へ進むと国民も企業も悲惨なことになります。
これらはアベノミクスが造り出した問題であり、このアベノミクス堅持を掲げる岸田内閣の責任は重大です。
根本に経済・産業の衰退が
円安の要因は、金利差で利益を狙った投機だけでない重要問題、即ちアベノミクスによって日本の財政も経済も地盤沈下が進行してきたという根本問題があります。
アベノミクスは、低金利・資金量増大という金融政策と共に、国債増発による放漫財政とセットでした。国債約1千兆円を含め公的債務は1,255兆円に達しGDPの2.6倍で世界で断トツ、国債格付けで日本は24位。因みに韓国は16位、中国は23位(ムーディーズ・S&P・フィッチ 10.8発表)です。
アベノミクスが経済・産業の成長戦略を欠いていたということも重大欠陥でした。
元々、中曽根政権時代から新自由主義経済で大企業本位の政治を強め、今世紀に入り一段と日本経済・金融などに矛盾・歪みが累積し、転換が求められていたのに、安倍政権は、転換どころか更にひどい政策を「アベノミクス」として掲げ、泥沼に突っ込んでいったのです。
日本の「稼ぐ力」の減退は、アメリカの言いなりで産業構造を変え、得意分野の半導体の生産や輸出を抑えたことに典型的に示されています。また、財界言いなりで産業空洞化など進めて輸出減・輸入増になったことも響いています。
正社員を非正規に置き換え、賃金は上がらず個人消費が低迷、モノが売れず企業は売上不振でも賃金抑え込みで利益を上げ、内部留保に回し設備投資も銀行融資も伸びず、経済成長は低迷という悪循環に陥りました。こういう日本独自の問題を年金受給者としても見つめて転換方向を考えないと、物価鎮静化・賃上げ・年金改善も叶わず翻弄されることとなり兼ねません。
年金だけでなく、虎の子もインフレ進展の中では減価を余儀なくされるのであり、世界の経済・金融動向を見ると、立ち遅れた日本の先行きが一段と懸念されます。
アメリカは他国への影響無視で金利を上げドル高を維持し、イギリス、イタリアなど政権交代後、積年の財政・経済の矛盾深刻化が憂慮されているし、新興国などの通貨安も進んで、世界経済の落ち込みが一段と危惧されます。
各地の地政学リスクが顕在化すると、金融市場の激動、貿易の減退縮小など招き、日本経済が更に落ち込み、銀行経営が不安定となります。
軍事費増や年金改悪など阻止を
諸々の矛盾深刻化にも関わらず、軍事費倍増を国債増発に頼る主張が出ていますが、国債頼みの財政難が国力低下を海外にも警戒され、国債を実質引き受ける日銀の財務内容悪化で円下落の引き金になります。
消費税増税の声も財界から出ていますが、いずれにしても、軍事費増は国民向け予算抑圧・財政破綻に繋がることは戦前の教訓です。
厚労省は年金部会で、国民年金の財政難を厚生年金の財政で穴埋めなど画策の審議を開始しました。
企業年金・個人年金部会(11月14日三年ぶりに開催)では「公的年金の給付低下を企業年金で補完のため、高齢者加入も含めたiDeCo拡大…など相も変わらぬ自助論も出ており、次世代が難儀なことになります。勿論、こんな筋違いを放置すると高齢者にも類が及びます。
安心して老後を過ごし得ない様々な事態が進む状況下、年金を守り、社会保障の充実を求めていくためにも、全体の連関を見つめていきたいものです。 22.11.21. 稲邑明也 (旧三菱)
物価上昇が進んで年金受給者はどうなる?どうする?
春から物価上昇が続いている上に、6月支給分から公的年金は減るし、10月から医療費自己負担は増えるし、年金暮らしには不安が高まるばかりです。
特に物価上昇は大きな問題です。私たちの確定給付企業年金の場合は物価上昇を反映する仕組みはありません。公的年金は物価スライドの仕組みだったのに、自公政権が実質的に改悪し、賃金が上がらないと物価上昇率を反映しない仕組みに改悪されました。
こんなままで物価が上がり続けると実質的に生活水準の切り下げとなります。
こうした点から、今の物価上昇の背景や暮らしにくくさせている経済、政治の流れを見つめ、めざすべき方向を考えたいものです。
政府の物価対策は
岸田内閣は物価対策の追加策を9日に決めましたが、追加と言っても新たな施策は無いに等しい有様です。岸田首相は「物価・賃金・生活総合対策本部」と欲張りな看板を掲げたものの、内閣府が提出した資料には、▲低所得者層が食費、光熱費がかさんで消費を削らざるを得なくなっている、▲10月以降に値上げされる食料品は約7千品目にのぼり、1年後には家計部門で5%以上の物価上昇も予想、▲物価高の原因は円安の影響が上昇全体の5割程度を占めている(7月時点)、▲大企業は円安によって利益を過去最高水準に増やす一方、中小零細企業は原材料価格の高騰を価格に転嫁
できず、収益を悪化させている…と指摘していたのです。
これらの指摘はその通りで肝心の問題は対策です。
追加策に盛り込んだガソリン補助金の延長や、輸入小麦の政府売り渡し
価格の据え置きはすでに実施、決定したことですし、特定分野の優遇
とか部分的対応であり効果は乏しいことは明白です。住民税非課税世帯5万円給付は焼け石に水だし対象が限られ批判が出ています。
物価高で実質賃金の低下が続いて現役は大変で、賃上げが一段と重要です。公的年金は賃金上昇がないと物価スライドもナシ、ですから年金受給者としては現役の賃上げの闘いに期待・連帯すると共に、政府が真剣に最低賃金の大幅引き上げに転換することを求めたいものです。
物価上昇に悩む国民には当面採りうる策として消費税減税が最も効果的です。世界では96の国・地域でコロナ危機での生活支援として付加価値税(消費税)減税を実施しています。企業の内部留保が500兆円近くにまで膨れ上がっており、これへの課税で消費税減税分を賄い、賃上げ企業への支援策など喫緊課題に充てるべきです。
円安にしている問題の根底には
物価上昇の背景には、世界的な物価上昇、コロナ禍からの経済回復、ウクライナ危機などの要因が絡んでいますが、日本の円安が更に増幅しています。
ご承知のように米欧諸国、EUはインフレ抑え込みを優先して金利の引き上げ・資金量圧縮に舵を切っているのに、日本だけ「異次元の金融緩和」を見直そうとしていません。
「当面金利は上げない」と固執し、22日には対ドル145円近くになって漸く為替介入に乗り出しました。一気に140円台になったものの、すぐに戻って元の木阿弥、約3兆円をドブに捨てたも同然との批判が出ています。アメリカの国策に反する手立てであって協力は得られず、円買い可能な資金量も限られ投機筋から足元を見られています。
円安を抑えるため、日本の金利を上げることが当面の策と言えますが、日銀は低金利策継続に固執しています。
日銀は、金利を引き上げると、景気が悪化、借入企業の金利負担増など挙げますが、大きな問題点は▲巨額の国債利払い増となり財政破綻へ向かう、▲株・債券の下落となり金融市場が激動、多方面の企業・富裕層に打撃、GPIF=年金積立金の資産運用悪化、▲日銀保有の金融資産減価で赤字決算となり国際的にも信用低下、悪影響、etc.あって動きが取れない状況です。これらはアベノミクスに因る問題点であることは銘記したいものです。
(法人企業は2012年以降、支払金利より受取金利が多く日銀主張は事実と異なるとの指摘もあり。資金余剰の大企業などは金利上昇で余裕が増大。週刊「東洋経済」22.9.17・24合併号)
問題は深刻
円安によって円の値打ちが下がるのは、低金利政策によるものだけではなく、日本の稼ぐ力を示す、貿易赤字増大、経常収支が減ってきたこと、この根本には基本となる経済成長力、産業の土台が弱まってきたこともあります。
アメリカの言いなりで産業構造を変え、得意分野の半導体の生産や輸出を抑えたことは典型例ですし、財界言いなりで産業空洞化など進めて輸出減・輸入増になったことなどあります。
こうして円の実力を示す実効為替レート(通貨の異なる各国と貿易を行なっているとき,これらの通貨に対する為替レートを,自国の輸出総額に占める各国への輸出額の比率で加重平均)はアベノミクス前の12年12月100.99が今年7月では73.26、物価変動を織り込んだ実質実効為替レートは92.92→58.70へと低下しています。
分かりやすい指標としてはビッグマック指数があります。これは、マクドナルドのビックマックが世界的に均一の作り方と値段で売られており、2通貨間の購買力を測定するための指数(英国「エコノミスト」誌開発)です。日本はドル対比でアベノミクス開始時13年1月▲12.805だったものが、22年7月 には▲45.071まで低下しています。
要するに、アベノミクスとその前からの新自由主義の経済政策が絡んで日本の経済は歪み経済が低迷してきた訳で、今の段階で金利を上げて問題がスンナリ片付く訳でもありませんが、先ずは資金量の過剰供給も含む「異次元の金融緩和」などアベノミクスの転換が求められています。
異常な金融緩和から出口に向かうことは、過激なバブル破綻を避けるためにも不可欠の政策です。米欧では緩和是正・金利引き上げと共に株価も下落、調整が現在進行形と言えます。(NYダウは9月の利上げと共に一段と下落し年初来約20%下落、ハイテク株は4~5割ダウンはザラに。東京市場・日経平均は3月に15%急落の局面はあったものの直ぐ復元、上下変動しつつ年初来約10%の下落)
世界的にはインフレ波及、ウクライナ危機と経済打撃の拡散などで景気後退が懸念されIMFや世界銀行などは経済成長率の低下を予測しています。イギリスは首相が替わり、減税・国債増発の政策を掲げたためポンドと国債の下落を招き、経済矛盾が深刻化。イタリアは右派に政権交代して財政・経済の悪化進行が憂慮されています。
こういう中で新興国などの通貨安が進み、世界経済の落ち込みが一段と懸念され、各地の地政学リスクが顕在化すると、金融市場の激動、貿易の減退縮小など招き、弱まっている日本経済が更に落ち込む可能性が高まります。
メガバンクは含み損など多難
年初からの金融情勢急変の中でメガバンクは外国債券の含み損が急増、3月末に計1.7兆円が6月末では約2.6兆円へと1.5倍に拡大と報じられました。三菱UFJフィナンシャル・グループが1兆181億円と3カ月で約3650億円増加(三井住友は7296億円、みずほは7092億円)。
メガバンクは外債の他に非投資適格会社向け融資を増やしてきたのが米国景気後退と共に不良債権増の可能性大で、金融庁は注視との報道もあります。
これらはリスクの一面であり、多難かつ不透明な今後、銀行が利益確保のために人件費対策などどうするか?警戒が必要になってきます。
私たちとしては、受給権を守ろうとするほどに全体的な動向に注視して政治の在り方を考えていく必要があると思います。 22.9.29. 稲邑明也(旧三菱)
アベノミクスの反省と転換こそ 22.8.7.稲邑明也 (旧三菱)
安倍元首相が急逝して政権側から国葬をやって事跡を美化しようとしています。故人に鞭打たないのが美風のように言われますが、人物評価は別問題として、総理大臣としての事跡を事実に即して振り返り、問題点を国民の目線で明らかにしていくことが重要と考えます。そして岸田首相が「骨太方針」に「アベノミクスの堅持」とまで書き込んで悪策を続行させる意思を示したことは私たちにとって重大なことと考えます。
ここでは紙幅の制約から、アベノミクスが年金の分野でどんなことをやったのか、今後の影響はどうなのか?など見つめることとします。
先ずは公的年金の三年間にわたる引き下げ
2012年末に発足した安倍政権は、直前の民主党政権との「自公民三党合意」で「税と社会保障の一体改革」と銘打った政策で、消費税の引き上げと、社会保障の実質後退を企図した一連の悪政の実践に踏み出しました。長く続いたデフレ下、物価下落分の年金を減額せず据え置いたため本来の年金額より 2.5%高い水準になったとして13~15年にわたって減額を強行しました。個人消費減退となりデフレ克服には逆行の愚策でした。
安倍政権は2013年以降「日本再興戦略」と銘打った政策集の中で「金融・資本市場の活性化、公的・準公的資金の運用等」の項で年金積立て金の活用も掲げました。
アベノミクスの一本目の矢=金融緩和で国債を濫発して、日銀マネーとGPIF年金積立金で株式を爆買いして相場を上げました。「年金の積立金は投機に回さず最低年金制度づくりや安定給付に活かすべき」との年金者組合などの声は封殺されました。
三本目の矢「成長戦略」では、あれこれ並べた中で「規制緩和」も入れ、具体化のための「規制改革会議」を立ち上げました。規制は本来、利益本位の企業行動を規制して国民の利益を守るためのものなのに、安倍政権は企業が利益を上げやすくするため規制緩和に動いたのです。
企業年金改悪も視野に
この方向に沿って企業年金部会では、キャッシュバランスプランの設計「弾力化」と銘打って受給者のための規制=保証すべき線を引き下げるとか、黒字企業であっても5年スパンで赤字幅が大なら一定条件で企業年金の減額も可能との策を企図したのです。
こうして14年4月に、①厚年基金の特例解散に関する措置などと共に、②キャッシュバランスプランの更なる「設計弾力化」などの政省令を公布しました。
①はAIJ事件の後始末的なことながら、国が受給権を侵害する措置を含めた点で看過できず、②は給付を不安定不確実にする仕組みを基金が多数決(受給者の3分の2以上同意)で導入可能とし、不同意者の受給権を侵害する点で重大なものでした。
公的年金の更なる改悪
安倍政権は16年に、公的年金について①「マクロ経済スライドの見直し」と称して、年金の調整=引き下げが不徹底になったら未調整分を翌年以降に持ち越して追加引き下げができる、②「賃金・物価スライドの見直し」と称して賃金変動に合わせ更に引き下げを徹底するという、いわゆる年金カット法を強行しました。
個人年金の拡充
安倍政権は、毎年の「日本再興戦略」で金融・資本市場の活性化を掲げ続け、国民の資金を株式市場に向かうよう「貯蓄から投資へ」を呼びかけました。国民に自助努力を促すため、確定拠出年金の一層の普及を図ろうとして、運用商品メニュー拡充、拠出限度拡大などの具体化を進めました。拠出分だけ消費が減りデフレ克服に逆効果です。
本来は退職年金として企業が拠出する年金制度なのに、個人拠出を促し、税制優遇の恩典を材料に金融機関も宣伝し取り扱いに注力、急速普及を狙いました。根底には高齢化進行と相まって公的年金の拡充が求められているのに、自助努力の推進を図ったのです。しかし元本保証もなく運用は自己責任で市場に翻弄される状況が続いています。
(`14年分調査以降.1%,-0.7%,3.5%,3.1%,1.0%,12.7% 企業年金連合会調査)
アベノミクスで格差と貧困が進むとの批判に背を向けて、大企業・金融機関にプラスとなる政策へ向かったのは問題です。
更なる企業年金の改悪―リスク分担型創設
企業年金について、本来は退職年金の問題として労働政策審議会で扱うべきところ、安倍政権は社会保障審議会の一部会として「企業年金部会」を設置して、AIJ事件の反省もいい加減のまま、厚生年金基金制度の廃止後の受け皿となる確定給付企業年金や確定拠出年金の拡充、規制緩和などに乗り出しました。
この過程では銀行、証券など金融業界の意見は企業年金部会で場を設けて聞くものの、受給者の意見に耳を傾ける場はありませんでした(「企業年金の受給権を守る連絡会」は要請したが実らず。審議メンバーは厚労省が決定)。
こうして企業年金部会で審議が進められ16年の「日本再興戦略」には「リスク分担型導入」が書き込まれました。厚労省に質問しても不明確なままだった案が、6月には企業がお得な方向で細部が固められ、企業年金の本質から大きく逸れたリスク分担型が、国会審議も経ないまま、厚労省令のみで2017年1月に施行されるに至りました。
この問題点は多々ありますが、主な点は、
▲企業年金は企業の責任でコストとリスクを担って実施するものなのに、株式市場暴落などで積立金不足が生じたら現役・退職者にも分担させる。▲分担は五分五分とするものの、想定外の不足金発生の場合は加入員・受給者の減額負担が企業の分担以上に過大となることもある。▲資金運用等に現役を参画させるが、選出方法・専門知識・意思決定権など実質が伴わないまま責任のみ負う。▲現行の確定給付からリスク分担型へ移行する場合、受給者の3分の2以上の同意で可能としているが、不同意者の受給権は侵害される。
(この間、政府も企業も、企業年金は金融市場とリンクされ損失発生のリスクは当然という意識をマスコミも使って広げてきました。各新聞は「労使でリスクを分かち合う」など、どこも似たような書き方と公平な語感が共通していました。現役・受給者が本来負担無用のリスクを負担するのは理不尽、など幾つもの問題点は報じていません。安倍元首相は就任時から新聞・テレビ各社幹部らと飲み食いゴルフを重ねていたのが反映したのかも知れません。)
自己責任の確定拠出年金を更に拡充
安倍政権は次いで19年2月に突然「企業年金・個人年金部会」なるものを社会保障審議会の一部会として立ち上げました。高齢化が進む下、国民の自助推進のため、企業の拠出する確定拠出年金だけでなく、これとは別に主婦や非正規など幅広い人たちに自分で資金を拠出する確定拠出年金を拡充していくのが主な狙いでした。こうしてiDeCoなど一連の施策が具体化されてきたのです。
三菱UFJ銀行はこの施策が具体化する前に、この案を先取りした仕組みを法制前15年に逸早く実施しました。行員個々人の選択で給与の一部を減らして加入し銀行は社会保険料負担軽減などメリットある脱法的な仕組みでした。
アベノミクスはデフレ脱却を掲げたものの、個人加入の確定拠出年金促進は、積立金分が消費に回らず、株式市場活性化と金融機関の手数料収入増加に貢献するものでした。デフレとなった真の原因は総需要=個人消費の減退にあり、真剣にデフレ克服を期するなら、賃金が減るのでなく増える経済政策、年金を含め社会保障拡充策が必要でした。他国にも劣後する最低賃金を大幅に引き上げるべきなのに僅かにとどめ、公的年金はマクロ経済スライドに続けて年金カット法まで強行しました。年金の仕組みは複雑ですが、大筋で国民のためにならないことをやってきたことは明確にすべきです。
やり残しの問題
企業年金は元々退職金の後払いの、そのまた延払いで賃金の本質に変わりありません。なのに安倍政権は減額とか変動とかに持ち込むのに熱心で、受給権を守る基本姿勢は見られませんでした。
企業年金を企業が支払いきれない事態に至っても受給権が守られるように「支払い保証制度」を米欧諸国並みにつくることは当然!として2001年の企業年金二法成立時に国会で付帯決議されました。しかし経団連は一貫して反対し続け、財界言いなりの安倍政権は、部会でも課題として一応挙げたものの、棚上げのままでした。国会軽視の安倍政権らしかったと感じます。
警戒すべき問題
リスク分担型は企業側が使い勝手が悪いなど不評で、掛け金制度で税制のメリットを受けているのが512件、全面導入が21件にとどまっています。銀行業界では掛け金のみは三井住友、りそな、あおぞらの3行、全面導入は南都、阿波の2行です。長期的には企業にお得な制度であり、三菱UFJ銀行の導入可能性は排除できません。
更に、リスク分担型に代わり得るものとして警戒が必要なのが「リスク共有型」と称する仕組みで、企業年金の本質から一段と外れる内容です。分担型は積立不足など先ず企業が負担しますが、共有型は文字通り企業も現役・受給者も同列でリスクを背負う方式でタチが悪いと言えます。こんなものを厚労省担当官や企業年金・個人年金部会のメンバーも入った研究会で議論がされて報告書も公表されました(19年3月)。
また、企業が負担を軽減する仕組みの「バイアウト」にも警戒が必要です。英米で実施されていますが、企業が年金資産を給付債務とワンセットで生命保険会社などに売却するものです。事業のグローバル化、M&A(企業の合併買収)などから、資産負債の圧縮・資本効率向上に資する、として財界が推奨しています。
ここに至らずとも、企業が確定給付企業年金の負担を免れて現役全体を確定拠出年金に移行して基金を解散し、残された退職済み受給者と資産は生保に移管するという、閉鎖型と称する方式も安倍政権下で部分的に進められました。内外情勢の激動のなか、銀行の戦略展開と併せて注視が必要です。
大きな曲がり角にきている銀行
アベノミクスで低金利の下、銀行業界の利ザヤ縮小が進み地銀などの再編統合が進んでいます。メガバンクは海外展開で株債券取引のリスクも抱えているだけに不安定な体質となっています。融資は安定性があるとしても日本の国債格付け引き下げがあると海外での資金調達コストは跳ね上がるリスクがあります。 稲邑明也 (旧三菱)
従業員のベースアップがなくなり、増える役員報酬 菊池喜久夫 (旧三菱)
7月1日付のニッキンに「金融界 人への投資を強化」との記事で、「三菱UFJ銀行は22年度、昇格なども含め3・5%を超える賃上げを実施する」とありました。しかし、今年の組合との妥結は「定例給与+臨時給与」で、前年度資金量のプラス1%でした。3・5%には、昇格などによる引き上げ分も含まれているということですから、昇格がない人には関係ないことになります。1%引き上げについても、今の人事制度は定例給与も臨時給与も個人別に評価をしたものが反映されますので1%未満の人もいます。もう全従業員の給料の底上げをおこなう「ベースアップ」は存在しないのです。
一方で、2022年度3月期決算企業の1億円以上の役員報酬を受け取る人数が明らかになりました。7月28日付朝日新聞は、「1億円以上の役員報酬を受け取る役員が287社663人」と報じました。いずれも前年比34社119人の増加です。MUFGは前年から2人増の13人で日立製作所に次ぐ第二位です。
7月29日付ニッキンによれば、当行従業員の平均給与は771万円で前年比マイナス2万円です。従業員の賃金がなかなか増えないなか、増えるのは配当と役員報酬ばかりです。「成長できない国」「賃金が上がらない国」の実態がまたひとつ明らかになり、ため息が出ました。
コロナ禍・ウクライナ危機に「アベノミクス堅持」の三重苦!
平和・暮らし・年金はどうなる?どうする?
銀行年金を守る会 (*末尾に紹介 ) ニュース No.85. 22.6.17.発行より転載 執筆者 稲邑明也 (旧三菱)
コロナ禍にウクライナ危機が加わって物価上昇など大変なところに、岸田首相は破綻済みのアベノミクスを「堅持」すると骨太方針に明記し、国会でも言明しました。
アベノミクスの「異次元金融緩和」が異常円安を引き起こし、更に物価上昇をもたらしていることに批判が高まっているにも関わらず、黒田日銀総裁も低金利政策固執の方針を言明して一段と円安が進んでいます。ウクライナ危機が長引き、物価上昇・インフレも続きそうな流れのなかで、年金者としては、内外の情勢、銀行の動向などをしっかり見つめてゆきたいものです。
海外から押し寄せる大波に翻弄される日本
欧米では、コロナ感染減から消費拡大・経済回復が進むと共に、物価上昇が顕著になってきました。
アメリカは2月から消費者物価が上がりだし、5月には8.6%と40年ぶりの上昇率でした。中央銀行にあたるFRBは早くから金融緩和を正常化する方針を示し、四月以降実行。六月はインフレ阻止を最優先して景気後退に陥る可能性も排除せずに、大方の予測を超え0.75%もの金利引き上げに踏み切りました。EUも半歩遅れながら金利引き上げと資金量縮小に向かっています。
ウクライナ危機とロシア制裁の経済的打撃で、世界的に金利と物価の上昇が加わり、実体経済の成長は減速し世銀など悲観的予測を出しています。景気後退とインフレが同時進行となるスタグフレーションに陥るとの予測も広がりつつあります。
注目したいのは、コロナ対応で異常な資金供給をしたために、株式市場はバブル化が一段と進んでいたのが、金融正常化を契機に崩壊する可能性です。アメリカの場合は左図のように膨れ上がっていたのが、一月に金融引き締めの急進展観測が出てから、株式市場は下げの局面に入り、五月中旬には週間平均値の下落幅が15%まで落ちました。その後上下変動を繰り返しつつ先週は3.2%戻しまで来ましたが、下落日の幅は大きく、世界的な様々なリスク動向によっては、いつ崩壊するか分からない危険性を抱えているとの懸念が持たれています。
米欧の金利上昇によって、発展途上国の金融経済も打撃を受け、自国通貨の下落、輸入物価の上昇、財政難・負債返済困難などに、食糧や資源の不足も加わり、世界的な混乱が進みつつあります。
日本は、貿易・金融・産業など多面的に各国と繋がっているだけに、的確な舵取りが必要なのですが、国民多数の暮らしを守る方向へ向いているのでしょうか。
日本はコロナ・ウクライナ危機に「アベノミクス堅持」で三重苦の股裂きに
日本は、コロナ・という米欧と共通の難儀に加え、アベノミクス破綻を抱え、にっちもさっちも動けない状況に陥っています。アベノミクスで公的年金による株価引き上げなどで富裕層は一段と富み、大企業は内部留保を積み増す他方、国民は賃金・年金を抑えられて総需要は伸びず、経済成長も停滞したまま、経済も暮らしも他国にない異常さです。
米欧はインフレ傾向には利上げで対応、日本との金利差が開いたため円安が急速に進み対ドルでは24年ぶりの135円台にも突入しました。既にグローバル化推進によって海外で部品調達や現地製造を進めており、円安メリットはかつてほど大きくありません。むしろ、輸入品価格の上昇で、国民生活・企業に打撃が募る一方です。
本来なら「物価の番人」の役目として日銀は金利引き上げ・円安是正に舵を切るべきですが、黒田総裁は「全体として円安はプラス」「物価上昇しても一時的で家計は許容」と強弁。
批判されても金融緩和に固執し、本来の任務に背馳するのはなぜか?―
▼金利を上げると、株・債券は下落し、保有している金融機関、大企業が大損害。日銀自身も債務超過で国際的な信認低下に陥るし国債格付け低下など一連の悪影響拡大。株債券を保有したままでも巨額の評価損が発生し、時価会計で損失計上に直結しかねません。富裕層も打撃。
▼政府は国債の利払増という難題に直面。1千兆円超の国債で1%の利上げなら10兆円の利払い増で消費税4%分が吹っ飛びます(直ちにでは無い。なお1%upで3メガバンクの含み損は4兆円との試算も)。
▼金利上昇となると借入の多い企業の負担増、インフレと相まっての買い控えでも企業の経営難etc.で不況深刻化。
政権側からは「米欧に比べて日本は物価上昇率を抑え込んでいる」との発言が飛び出していますが、家計が冷え込み買い控えで需要低迷の傾向があるのと、多くの企業が値上げを躊躇せざるを得ないでいる、などの実情があり、政権の施政成果ではありません。
むしろ企業物価が9%も上がり、消費者物価に転嫁し得ないでいる中小零細企業が多く、いずれ消費者物価上昇となるとか、倒産廃業になるとか懸念されます。物価上昇・インフレに向かいつつある中で重大なのは、岸田首相が基本政策「骨太の方針」で破綻済みのアベノミクス「堅持」を明確にしたことです。
このままいくとトンデモ事態に
これを続行していけば、低金利据え置きで円安は更に進み、物価上昇に景気後退は必至です。企業は業績不振を理由に賃上げを渋り、物価上昇で労働者は賃金目減りに一段と苦しみます。年金者は過去10年に消費税率倍加と物価上昇があって既に累計6.7%の減価を強いられ、今年は0.4%削減が加わります。今後とて賃上げ低迷の反映で、更に年金がカットされる危険が増します。
政府がウクライナ危機に乗じて軍拡を五年内に倍増の目論みを具体化すると、社会保障・子育て教育などの歳出削減や国債増発へ進むことになります。
国債増発は次世代の負担になるだけでなく現実に国債利払いが増えて財政破綻に近づきます。巨額国債のGDP比率2.5倍が一段と跳ね上がって国債格付けが落ち、大銀行やグローバル企業の海外資金調達コストが高まり、国際的信認低下が諸々の悪影響を拡大します。
財界は、企業への悪影響を国民に転嫁のために、かねてより消費税増税も選択肢としており三年後の国政選挙までの期間に政府に断行させる可能性はあり得ます。
いずれにしも、物価上昇のなか倒産など不景気が深刻化すると、インフレとの併存=スタグフレーションとなります。私たちは1973年のオイルショック時に経験しましたが世界的な不況の中で日本は構造不況とも称される苦難に陥りました。弱肉強食の資本主義の克服困難な病理であり、今また国民本位の舵とりが根本的に問われています。
当時とは異なり、ウクライナ危機・ロシア制裁が長引いて食糧・資源危機が加わって世界的インフレが続き、平和も経済も危殆に瀕する可能性を直視すると、基本的な土台から政治と経済の在り方を問う必要があります。
こんな状況下、労働運動の盛り上がりが求められますが、連合は労使協調路線で、大企業労組が先頭切って低額相場を形成し賃金水準低迷をもたらしています。連合は労働者の要求実現に向けて財界・政界に働きかけるべき処が、野党共闘の分断や政権党との接近に動いている状況です。こんな中で参院選が近づいていますが、年金者としては真に平和と暮らしを守るために筋の通った政策を掲げる政党をシッカリ吟味していきたいものです。
銀行決算は三割増益も依然として安定性に欠ける
5大グループの22/3期決算が5月発表されました。コロナ禍が続く下で企業活動の再開に伴う資金需要が寄与し、純利益の合計は21/3期比31%増の2兆6470億円となり4社が増益でした(りそなは減益)。
企業年金を支払う債務者は銀行ですので、グループ全体と共に銀行単体の経営実態も見ておく必要がありますが、概して次の特徴点があります。
◆本業での預貸業務は全体として増えたが、金利が上昇した海外の事業部門の寄与が大きく、国内は低金利政策の下で微増。 (22.5.17.日本経済新聞)
◆与信関係費用は5社合計で9,410億円。21/3期の貸倒引当金の戻し入れが主因で18%も減。このため全体的な利益増に寄与。
◆海外の金利上昇で3月末時点の外債含み損は1兆7500億円以上に増大。特に三菱UFJの外債含み損は約8500億円で巨額。
株式など他の資産と合わせれば全体で含み益はあるものの、外債に限ると3月末時点の含み損は決算三カ月前の21/12月末時点の4.7倍近くに急増。これまでの開示データを遡れる15/3以降で最多。今後は、アメリカの金利先高が更に見込まれ損失処理を迫られる可能性もある。 (左図は22.5.17.日本経済新聞)
なお、りそなホールディングスは、時価が簿価を下回った外債について、回復の見込みが乏しいと判断して売却し、22年1~3月期で外債を中心に550億円の売却損を計上。
◆大手5社グループの債券などの市場売買利益は1兆円で、前年同期比37%もの減益。
◆株式関係損益は5社グループ全体で2.2倍の利益(5,050億円計上)。主因は長らくの慣行だった持合い株=政策保有株の処分で含み益の吐き出しが寄与。三菱UFJの2千億円余、三井住友の1千億円余が目立っています。
以上のように、3割の増益というものの、海外の貸出金利増と国内の株売却増と貸倒引当の戻し入れ増が主な要因であって安定性に欠けています・
自己資本の面では、新たな資本規制に基づく健全性の指標は過去の内部留保もあって3メガで10%程度と安定しています。
しかし、各行は次の難題を抱えています。
▲不況進行の下で融資先の経営難増大、コロナ対策の保証付き融資の期限到来などで、貸し倒れ増加の懸念。
▲金利が上昇して融資先の経営圧迫、銀行自体も株・債券の売買・保有でリスク増大。
▲世界的な金利上昇=債券価格の下落と共に損失・含み損の増加。特に、海外CLO(信用力が低い米国企業向け融資などを纏めたローン債券を担保とした証券化商品)を多額保有していることが二年前に問題となりましたが、金利上昇=価格下落の波の中で損失・含み損が膨らむ懸念大。
▲大手銀行は海外進出も推進中ですが、本邦以上に金利高、インフレ、景気後退のリスクが高いうえに、資源・食糧問題からくる新興国の政治的社会的混乱も散発、地政学リスクが増大中。
▲ロシアに対し本邦金融機関は115億ドルの債権残高を抱え、三菱UFJフィナンシャルグループは1億9千万ドルで最多とのことです(日経新聞3.3.)。この額は三菱UFJの純利益の約2%ですが、投融資先の債権の先行きも含めてリスク増は避けられません。
▲大銀行は従来の預貸業務で利益の増大は困難とみて、デジタル化をキーワードに店舗・人員・業務の合理化を大胆に推進すると共に、新戦略としてスマホ活用の幅広い金融商品提供、脱炭素対応の顧客支援、プラットフォーマー進出など展開中です。
各行は、リスク増大の下で経営基盤の安定化のために、固定的経費圧縮を至上命題とし、現役従業員に対する攻撃を続けるだけでなく、受給者に対してどう出てくるか?警戒が必要です。
年金受給者として考えたいことは
企業年金は前世紀から財界本位に改悪され続けてきました。2017年にリスク分担型を施行後、昨春までは、現役に対して自助促進となる確定拠出年金の拡充を中心に据えていましたが、これからの課題として私たちに波及し得る仕組みの改変・設計を掲げています。
リスク分担型の導入は6月初で21件、掛金のみは510件で、後者が微増中です。企業側は複雑で扱いにくいとしており、これを更に導入し易くすることや、減額要件の緩和、年金給付義務自体の社外売却(バイアウトと称して米英で先行)などを課題として掲げています。他方で支払保証制度創設も提起しているものの、経団連が反対の姿勢です。
インフレに向かいつつある今こそ、年金の実質減価とならぬよう国民本位の金融経済政策が求められます。アベノミクスは止めさせ物価安定を目指し格差是正の社会保障・税制が必要です。
確定給付企業年金については、財界意向に沿って厚労省はリスク分担型を導入したし、基金所管から外せる閉鎖型への転換も既に可能としています。更に新たな負担転嫁策(リスク共有型とか年金債務の社外移転など)を画策し企業年金・個人年金部会の検討課題としていますから、受給権を守る運動の拡充が一段と重要になっています。
公的年金については,物価スライドの仕組みを1973年に施行したものの、改悪を重ねてきました。今では、マクロ経済スライドや年金カット法で物価上昇より賃金伸びが低いと低い方に合わせて引上げ率を抑える仕組みです。
公的年金は「世代間の仕送りだから現役の負担能力に合わせる」という理屈ですが、現役も老後になって一段と困る仕掛けであり,基本的に低賃金構造を突破するために最低賃金引上げ、労働運動高揚などで私たちとしても連帯が必要です。
改憲・軍拡の方向なら老後はどうなる?
ウクライナ危機に乗じて改憲・軍拡論が広げられていますが、この方向では社会保障削減・増税が必至となります。「安保条約のお蔭で日本が守られている」との論は根強いものの、事実経過は真逆であることを振り返りたいものです。
安保条約は、軍事条項=第5条よりも前の第2条に「経済協力条項」を位置付けてあり、アメリカが経済的利益を獲得するために日本が協力させられる定めです。
このために`60年安保後も、日本が繊維,造船,電機,鉄鋼など輸出を次々伸ばす度にアメリカは抑え込み,コメ・乳製品など農産品の輸入拡大を日本に強いてきました。このため食料自給率は下げられ、今や37%にまで低下し、食料の安全保障は危うくなりました。
金融の面では、アメリカが難局に至る度に、円高の為替相場の押しつけや為替介入があって日本は円高不況となるなど苦汁を飲まされてきました。プラザ合意で円高・低金利を押し付けられてバブル経済を招き、崩壊に至りました。その後は金融自由化の圧力が強められて私たちは多大な犠牲を被りました。この過程でアメリカの金融資本の更なる進出と利益を図るように、郵貯は突き崩され、預金金利は超低金利となり、「貯蓄から投資」への掛け声で株・投信へ誘導されましたし、企業年金の基本的原則も崩されることとなりました。
アメリカの利益のために企業年金が…
95年に「日米金融協議」が始まり、アメリカは米系投資顧問会社の年金市場参入拡大を要求して以降、アメリカの信託・投資顧問が続々と参入し、シェアを高めたのみならず、基金や受給者のために導入されていた規制を次々「緩和」しました。例えば、運用資産の安全性確保のため、国内債券50%以上、株式30%以下、外国株外債30%以下、不動産20%以下とする種類ごとの「5.3.3.2規制」を取り払いました。
企業年金は永らく確定給付年金と税制適格年金が主流で給付が安定した制度でしたが、アメリカ型のキャッシュバランスプランが2001年に法定化されました。給付は金融市場任せが基本となり、具体的には国債の金利で給付が変動する仕組みへと根本的に変質させられました。大手銀行はこれを基本とする「類似型」を相次いで導入、りそなも受給者にまでこの仕組みを年金削減と共に強行しました。
更に確定給付企業年金を根本的に変質させる、アメリカ型401kをモデルとした確定拠出年金が導入されました。
企業年金は元々賃金の後払いの、そのまた延払いですから、確定した金額の給付が法律的にも当然であったのに、これら二種類は、給付を変動させるトンデモない変質でした。確定拠出年金は企業が拠出する金額が確定しているものの、運用は自己責任の上、給付が不確定というシロモノで不確定給付企業年金と称するのがふさわしい仕組みです。しかし新設の法律名に「企業」の二文字は無く、後になって個人加入促進のメニューが追加されて深謀遠慮が明確になりました。
三菱UFJ銀行は、確定拠出年金の個人加入型が規制されていた時、脱法的な制度(=行員が給与を減らして加入)を2015年に創設、一年後、三井住友銀行が同じ制度を導入しました。市銀連共闘の退職金改善要求を棚ざらしのまま、最高利益の記録を更新中に実施したことは忘れる訳にゆきません。
今や、公的年金を細らせる代わりに「個人が自己責任で老後に必要な資金を賄うべし!」という流れが作られ主流扱いです。アメリカの要求に日本の財界・大企業もリスクとコストを回避するために推進した訳です。この姿勢がリスク分担型をつくり、さらに企業年金・個人年金部会ではリスク共有型という更にひどいものまで俎上に乗せるに至ったのです。
岸田首相は「資産所得倍増計画」を掲げ、矛盾に満ちた金融環境下、金融業界に資金運用と手数料稼ぎのビジネスチャンスを与え、庶民は損失も覚悟で老後資金を稼がざるを得ない方向です。
私たちは、安心できる老後を送るには、受給権だけを考えるのでなく、世界や日本の政治経済の連環を見つめることが大事になります。各銀行基金ごとに「考える会」などの運動を強め、会組織の無いところでは受給者有志が起ちあがり、広範な受給者に宣伝していく必要があります。その上で、それぞれの会と会員が当会に結集して情報と知識の共有を図りつつ、年金者組合や「企業年金の受給権を守る連絡会」と連帯しつつ、平和と暮らしを守る運動に加わっていくことが求められています。
( *銀行年金を守る会は、都銀・信託の受給者有志が2005年に設立。入会ご希望の方は三菱UFJ銀行の企業年金を考える会のホームページトップに掲記のメルアドへご連絡ください。年会費千円で年間に5~6回発行のニュースをお送りします)
コロナ禍、ウクライナ危機、物価上昇…と暮らしにくい世に
安心して暮らせる老後をめざすには? (22.5.22.)
コロナ禍が三年目になって、ロシアのウクライナ侵略で制裁の跳ね返りやインフレが世界的に強まり、物価上昇の波が押し寄せてきました。私たちの企業年金には物価スライドがなく打撃が増すばかりです。日銀の低金利政策の固執により円安が続いて物価はまだまだ上りそうですが、金利を上げれば円安が収まり物価上昇が止まるという単純なものでもありません。年金、虎の子、平和など、絡み合う国内外の問題を見つめ政治の在り方も考えてゆきたいものです。
海外から押し寄せる大波の変調
米欧では、昨秋から消費拡大・経済回復が進んで需給不均衡、物流ネック、原油等資源価格上昇などからインフレ高進となりましたが、政策当局は対策として金融緩和の是正策を進めています。
顕著なのはアメリカで、物価上昇率も高いだけにFRBはインフレ阻止を最優先して金利の上げ幅も高くし、一面では景気後退の懸念があるものの、緩和した資金量の圧縮を六月から開始予定です。こうした流れの中で株価は下落、3月下旬以降8週連続の下落は90年ぶりとの報道です。これはバブル崩壊に向かう兆しでは?との警戒感も出ており、注目せざるを得ません。
コロナ対策で溢れた余剰資金が金融正常化で収縮し、景気減速、物価上昇継続となるとスタグフレーションと称される難しい段階に至ることが懸念されています。これにウクライナ危機長期化、中国経済減速、発展途上国の経済混乱など地政学リスクも加わると、世界的な不況深刻化が懸念され、IMFや世銀など経済減速へと予想を下方修正しました。世界的な食糧難・資源高などに限らず金融市場の混乱なども含め日本にも多大な悪影響が及んできます。
日本はアベノミクスの破綻で特別の問題が
物価上昇は4月が前年同月比2.1%上昇となりました。数字は未だ低そうに思えても実際に買い物をしている生活者は厳しさを痛感するこの頃です。
統計では「生活必需品」が3月は前年同月比4.5%も上昇しています(グラフは東京新聞5.13)。実は月々2%以上の上昇が7カ月連続だったとの総務省発表です。他方、自動車などの高額品やレジャー関連など「選択的支出」の指数は前年割れが続き、3月も3.3%下落しています。
しかも、グラフ(日本経済新聞5.4.)のように年代別に見ると、若い世代は19年の保育料無料化や昨年の携帯電話料金の引き下げがあり、物価引下げ要因となりましたが、高齢者は医療費、食費、光熱費などの負担が重なり10年間でみると70歳以上は7.3%の上昇です。全体的な統計では分からない実態ですし、これに年金削減の連続が加わります。つましい暮らしの高齢の年金生活者としては、足元から問題の根っこを見つめたいものです。
物価上昇の要因は、コロナ禍からの経済回復、ロシア制裁に伴うエネルギー資源高と供給変調、世界的な金利上昇からくる円安など幾つも複合しています。したがって対策は単純にはいきませんが、円安は日銀と政府の施策で対処すべき重要課題です。
円安は3月以降止まらず、20年ぶりに130円台にまで下落しました。
アメリカはじめ主要国が物価上昇抑え込みのために政策金利を上げているのに、日銀は低金利継続を宣言したため、円を売ってドル、ユーロを買う取引に投機筋も加わって一段と円安へ進むこととなりました。黒田日銀総裁は「物価上昇は一時的なもの」とか「円安は全体として日本経済にプラス」などと述べて手を打とうとせず、円安は当面続くと観測されています。
通貨価値の維持、物価の安定は日銀法が定めている基本任務なのに、物価上昇の最大要因である円安を放置、必要な対策を講じず、むしろ拍車をかける発言までする、低金利維持のために国債を高めに買い込むなどというのは背任行為とも言えましょう。アメリカFRB議長とは大違いです。
黒田総裁は、政府から独立性が求められているのに8年前、アベノミクスの一環で安倍政権と共同声明まで出して言いなりに物価上昇2%の目標を掲げた手前、これに固執しているのでしょうが、アベノミクスの破綻はすでに明らかです。今では大企業・大銀行までもが利上げを求めています。いつも政府追随の全銀協会長(高島三井住友FG会長)も先月「外部環境の変化も踏まえた上で、現在の大規模な金融緩和政策の効果と副作用の両面をいま一度検証し、適切にご判断頂ければ」と遠慮気味ながら問題提起した程です(4.13記者会見)。
泥沼で股裂きの状況の打開方向は
黒田総裁が金利引き上げに抵抗する事情は幾つも指摘されています。金利を上げると株・債券は一段と下落し、保有している金融機関、大企業、富裕層が大損となります。企業は金利負担など直接間接の影響で経営難に陥り景気後退、政府は先行き巨額国債の利払い増に見舞われ財政難が増大、日銀自身保有している国債の時価下落と赤字転落となる可能性大です。国債格付け低下で国際的信用信認低下、海外展開の企業・銀行にも打撃となります。さりとて低金利と金融緩和の継続でいいのか?となると国民の打撃と被害が大きくなるだけです。
円安の背景・根底には、経常収支の悪化、産業政策の歪みと構造変化、財政と金融の歪みなど幾重もの問題と矛盾が蓄積されています。これらはアベノミクスが造り出した矛盾であり、自ら墓穴を掘ったようなものです。まさに泥沼にはまって複雑骨折骨に股裂きのような有様です。
これら諸々の矛盾の打開には、増税や低金利維持などで庶民を踏みつけにするのでなく、これら要因に対応した産業政策、金融・財政・税制施策が必要です。
金利が上がると中小零細企業の経営難も想定されますが、これまでの中小企業いじめの数々を反省しての抜本策が必要です。そうしてこそ銀行も債権保全のみならず共存共栄を目指せます。
財政難も、これまでの法人税と富裕層減税・消費税増税は逆立ちであり、むしろ消費税減税で家計を温め、経済の好循環、活性化と成長につなげることで適切に税収も上がります。大企業や富裕層への税率を元に戻し、更に大企業の急増した内部留保額に課税するのも筋道の通る施策の筈です。
上場企業の前期決算が出そろいましたが、コロナ禍の下でも好調で全体的に純利益は前の期比36%増となり、4年ぶりに最高益を更新となりました。大企業は今こそ賃上げ、雇用拡大、納税に社会的責任を果たすべきです。
世界と逆行の低金利続行では、円安が更に進み、物価上昇に国民が一層苦しむだけでなく、企業にも打撃が及び、個人消費の不振が加わり景気後退必至です。企業は業績不振を理由に賃上げを渋り、労働者は物価防衛できず賃金目減りに一段と苦しみます。公的年金は物価スライドの建前ですが、小幅賃上げ率に合わせられ物価上昇にますます苦しめられます。
こんな難局にも関わらず、岸田首相は政権維持のために安倍元首相に忖度しアベノミクス路線を引き継ぎ「新しい資本主義」の看板替えなどで国民の支持を取り付けようとしています。また安倍元首相の改憲軍拡路線も引き継ぎ日米安保体制強化のタカ派的言動を強めているのも重大です。
ロシア危機に乗じて軍費増大に進むと財政悪化・社会保障削減・増税が必至となります。年金・医療・介護など老後に重要な施策が後退させられてきたのが更に進められます。安保条約のお蔭で日本が守られているとの論も根強くありますが、むしろ安保条約のために国民が難儀を強いられたのではなかったか、基地被害などに限らず振り返りたいものです。
安保条約のために企業年金も歪められ…
安保条約は軍事同盟と共に経済分野で日本をアメリカに屈従させる定め(第二条)があります。名目は「経済協力条項」ですが、実際の経過は日本が繊維,造船,電機,鉄鋼、半導体など輸出を次々伸ばす度にアメリカは抑え込み,コメ・乳製品など農産品の輸入拡大を日本に強いてきました。このため食料自給率は下げられ、今や37%にまで低下し、食料の安全保障は危うくなりました。私たち銀行で働いた者として重大なのはアメリカの強要による経済バブル化や金融自由化です。
金融の面では1985年のプラザ合意で円高の為替相場を押しつけたために不況となったし、アメリカの双子の赤字から玉突きで日銀が金利を下げたのを契機にバブル経済となり、崩壊に至りました。バブル崩壊後もアメリカは身勝手な金融自由化を要求しました。銀行で働きご承知済みの内容と経過ですが、企業年金分野でも悪影響を広げました。
95年に「日米金融協議」が始まりアメリカは米系投資顧問会社の年金市場参入拡大を要求して以降、アメリカの信託・投資顧問が続々と参入し、シェアを高めたのみならず、基金や受給者のために導入されていた規制を次々「緩和」しました。例えば、運用資産の安全性確保のため、国内債券50%以上、株式30%以下、外国株外債30%以下、不動産20%以下とする種類ごとの「5.3.3.2規制」を取り払いました。
企業年金は永らく確定給付年金と税制適格年金が主流で給付が安定した制度でしたが、アメリカ型のキャッシュバランスプランが2001年に導入されました。給付は金融市場任せが基本となり、具体的には国債の金利で給付が変動する仕組みへと根本的に変質させられました。MU銀行は2012年にこれを基本とする「類似型」を導入しました。更にアメリカ型の401kをモデルとして確定拠出年金が導入されました。
企業年金は元々賃金の後払いの、そのまた延払いですから、確定した金額の給付が法律的にも当然であったのに、この二種類は、給付を変動させるトンデモ変質でした。確定拠出年金は企業が拠出する金額が確定しているものの、運用は自己責任であり、給付がどうなるか不確定というシロモノで不確定給付企業年金と称するのがふさわしい仕組みです。しかし新設の法律名に「企業」の二文字は無く、後になって個人加入促進のメニューが追加されて深謀遠慮が明確になりました。
MU銀行は個人加入型が規制されていた時に銀行の福利制度として脱法的に2015年に給与を減らして加入する制度をつくりました。退職金改善要求を棚ざらしのまま、利益記録を更新中に実施したことは忘れる訳にゆきません。
今や、公的年金を細らせる代わりに個人が自己責任で老後に必要な資金を賄うべし!という流れがつくられました。アメリカの要求に日本の財界・大企業もリスクとコストを回避する利益を感得して推進した訳です。この姿勢がリスク分担型をつくり、さらに企業年金・個人年金部会ではリスク共有型という更にひどいものまで俎上に乗せるに至ったのです。
金融自由化で、アメリカの金融資本の更なる進出と利益を図るように、企業年金に限らず、郵貯は突き崩され、預金金利は超低金利となり、「貯蓄から投資」への掛け声で株・投信へ誘導され続けています。銀行の事業内容も大きく変わりました。
安保条約によって軍事面と共に経済面の変化と悪影響の史実を振り返り、暮らしと平和を守り得る方向をしっかり吟味することが必要と考えます。
私たちが安心できる老後を送るには、受給権だけを考えるのでなく、世界や日本の政治経済の連環をシッカリ見つめ、あるべき政治の方向を考えることが大事と思います。 2022.5.22.記 稲邑明也
川柳 近時片々 与謝糠晶太 (旧三菱)
カネは天下の何とやら…なのに、すっかり
池田派創設者は貧乏人は麦を食えと言ったが
年金より内閣支持率下がるべし
岸田派パーティのお土産が手帳だって
ウクライナで儲けるのは軍事企業と政商
子育て教育の環境をよくしないと年金も…
改憲し元来た道へ戻ります?
改憲軍拡はあの大戦の反省もせずに。
メーデーに黙っちゃ居れない 老兵も
連合が野党共闘の分断を進めるとは!
国民が大変な時、大企業の内部留保に課税こそ…
労組弾圧やったマスク氏がツィッター買収で
アベノミクス破綻・コロナ禍・ウクライナ危機の三重苦で
平和・暮らし・年金はどうなる?どうする?
銀行年金を守る会ニュース(No.84 2022.3.28.発行) 掲載 稲邑明也
9年余続いたアベノミクスの害悪にコロナ禍が加わって大変なところに、ロシアのウクライナ侵略で制裁とインフレの波が世界的に強まりだし、平和・暮らし・経済など多面的に不安が広がってきました。しかし政府・日銀はアベノミクス破綻にも拘わらず転換せず,日銀は金融緩和・低金利続行を宣言のため,米欧の金融引き締めの下、円安加速に物価上昇が見込まれる状況です。
さりとて金利引き上げに進むと、株価・債券下落を招き不況深刻化が懸念されることとなり,いわば股裂きの状況です。ウクライナ危機を口実に一段と軍拡・改憲論が横行している中で、足元と先行きを海外や銀行の動向も併せてしっかり見つめることが大事になってきました。
海外から押し寄せる大波
欧米ではコロナ感染減から消費拡大となり経済が回復傾向となって需給不均衡、物流停滞、原油等資源価格の上昇などから、インフレへと流れが変わり金融緩和の是正が始まりました。イギリスに続いてアメリカも今月から政策金利を引き上げ,インフレ抑え込みを優先する方向です。
ただ、金利が上がっても、コロナ対策で溢れた余剰資金は投機的に動き、株価は一進一退ながら引き続き高水準で、コロナ禍前からのバブル化は冷やされるに至りません。ロシア制裁で米欧側にも返り血が及んでいるにも関わらず、当面は投機活動には大して響かない様相です。
しかし、実体経済の成長は減速し世銀など悲観的予測を出しています。景気後退とインフレが同時進行となるスタグフレーションに陥ると克服は難しくなります。
米欧の金利上昇によって発展途上国の金融経済は、打撃を受けます。自国通貨の下落、輸入物価の上昇などへ波及、財政難・負債返済困難、ウクライナ穀倉の激変と食糧難などワクチン接種率の低迷と相まって政治混乱や経済窮迫が世界的な混乱と不況拡大に広がる懸念があります。
日本はアベノミクス・コロナの上にロシア制裁の三重苦で股裂きに
日本は米欧と別の難儀=アベノミクス破綻を抱え、舵の取り方には根本的な難しさがあります。
アベノミクスで公的年金を動員して株価は高水準で推移し、富裕層は一段と富み、大企業は業績好調で内部留保がアベスガ政権下で5割も増える他方、実質賃金は4%低下、公的年金は6.6%減額、という格差拡大の中で総需要は伸びず、経済成長も停滞したまま、他国にない異常さです。
米欧では早くからインフレ傾向が出て手を打ち始め、米欧との金利差が開きだして、先週6年ぶりに120円台の水準に下落しました。円安は輸出産業にはプラスと永らく言われてきましたが、実際には、既にグローバル化推進によって海外で部品調達や現地製造を進めており、円安メリットはかつてほど大きくありません。
むしろ、円安で輸入品価格が上昇し、国民生活・企業に打撃が募る一方です。本来なら「物価の番人」の役目として日銀は金利引き上げ・円安是正に舵を切るべきですが、黒田日銀総裁は「金融を引き締める必要もないし、適切でもない」と言い放ちました。
筋違いな「2%の物価上昇」を目標としている体面もありましょうが、今にっちもさっちも行かない矛盾にぶち当たっています。
金利アップへ舵を切ると株・債券は下落し、保有している金融機関、大企業が大損害となるリスクが増大します。日銀自身も債務超過で国際的な信認低下に陥るし国債格付け低下など一連の困難の引き金となるリスクさえ生じます。株債券を保有したままでも巨額の評価損が発生し、時価会計で損失計上に直結しかねません。
政府には国債の利払増という難題があります。1千兆円超の国債で1%の利上げなら10兆円の利払い増で消費税4%分が吹っ飛びます(1%upで3メガバンクの含み損は5兆円との日本経済新聞試算も)。 (日経ヴェリタス3.27.)
さりとて、低金利続行では円高は更に進み、物価上昇に国民が一層苦しむだけでなく、企業に打撃が及び、景気後退必至です。企業は業績不振を理由に賃上げを渋り、物価上昇が高まると労働者は賃金目減りに一段と苦しみます。
不景気で法人税など税収減少となると国は更に財政難となり、国債多発依存を強めるにも、引き上がる金利水準の利払い負担も増えるので、国民への増税を画策することとなります。
インフレと不景気併存はスタグフレーションと言われ私たちは1973年のオイルショックの時に経験し消費税導入を強いられました。これは,克服困難な資本主義の病理であり、国民本位の舵とりが根本的に問われていると言えます。
その上、ウクライナ危機、ロシア制裁が長引く程インフレが高進し、平和も経済も危殆に瀕する現下情勢の厳しさを直視すると、基本的な土台から政治と経済の在り方を問う必要があります。
こんな先行きでは、賃上げや雇用確保が一段と必要になり、労働運動の盛り上がりが期待されますが、本邦最大の連合は労使協調路線で、大企業労組が先頭切って低額相場を造り、日本の賃金水準低迷をもたらしてきました。今年の春闘で満額回答との報道が溢れましたが、要求自体が政府要請の3%より遥かに低い水準です。連合は労働者の要求実現に向けて財界・政界に働きかけるべき処が、野党共闘の分断や政権党との接近に動いて存在意義が問われている有様です。
銀行業界の業務新展開とリスク増大
2月に各銀行の第3四半期決算が公表されました。大手5グループの連結純利益の総額は、前年同期比で50%も増加しました。企業年金の受給者としてはホッとしたいところですが、中身を見ていくと安心できるものではありません。
過年度に積んだ貸倒引当金の戻入など一時的臨時的要因で利益が膨れ上がったものであり、肝心の本業の儲けを示す実質業務純益は5%増に留まっています。株債券売買の市場部門は浮き沈みが激しく(MUFGは半減)、貸倒引当金の戻入とてコロナ次第で積み増しとなる懸念を抱えたままです。コロナ禍と原材料コスト上昇で業績低下・倒産増も見込まれており難儀は増大一方です。
大手銀行は海外で稼ぐ体制ですが、3メガバンクはアメリカの長期金利上昇で投資損益が12月末で既に含み損に転落との報道もあります(日経新聞3.24)。これから利上げの本格化により、外国債券の評価損、売買損のリスク、調達資金のコスト上昇など逆風が強まり前途多難です。
本業で目立つのは、相変わらずの利ザヤ縮減です。各行に違いはあり三井住友は前からプラス、三菱UFJ銀行は前期プラスに転じたものの、みずほ銀行の総資金利ざやはマイナスのままです。
メガバンクの場合、投資銀行部門で巨額を効率的に稼ぐ欧米の巨大 (日本経済新聞2.22)
銀行との比較で、低収益と問題とされますが、国内の預貸業務を本業としてきた邦銀なのに、横並び意識で経費圧縮や効率化優先に動くことは、日本独自の事業基盤と銀行の役割をどう考えるのか問われます。
MUFGは傘下の米国の商業銀行を売却する大胆策を講じましたが、利益最優先の姿勢が今後注目されます。3メガバンクとも、成長が見込まれるアジア各国で投融資を拡大し、地場銀行のM&Aなど推進中ですが、ロシア制裁も加わった情勢激変のなかでリスクは高まりつつあります。
二年前、海外でのCLO(信用力が低い米国企業向け融資などを纏めたローン債券を担保とした証券化商品)を多額保有していることが問題とされ、その後の経過は報じられていませんが、世界的な金利上昇=価格下落の波の中でリスクが膨らんでいくことが懸念されています。
これら以上に問題なのは、ロシア制裁に伴い、ロシアの金融機関や企業向け債権の回収、ロシアと取引ある投融資先の経営難など新たなリスクが増大しつつあることです。米欧日協調してロシアの金融機関をSWIFTから排除しましたが、送金業務が難儀な以上に、保有債権に損失リスクが高まっていることも大きな問題です。
日本の金融機関は115億ドルの債権残高を抱え、三菱UFJフィナンシャルグループ(MUFG)は1億9020万ドルで最多とのことです(日経新聞3.3.)。この額は三菱UFJ銀行の今3四半期純利益の7%程度で、他の金融機関も同似のようですが、ロシア事業展開の投融資先の業績低下、ロシアのデフォルト(利払い償還不履行等)、など様々なリスクが増大するのは避けられません。
大銀行は従来の預貸業務で利益の増大は困難とみて、デジタル化をキーワードに店舗・人員・業務の合理化を大胆に推進中です。これとともに新戦略としてスマホ活用の幅広い金融商品提供、脱炭素対応の顧客支援、プラットフォーマー進出など展開中です。
各銀行は、リスクが高まるほどに経営基盤の安定化のために、固定的経費圧縮を至上命題とし、現役従業員に対する攻撃を続けるだけでなく、受給者に対してどう出てくるか?警戒が必要です。
年金受給者として考えたいことは
企業年金は前世紀から財界本位に改悪され続けてきました。今も厚労省は企業年金・個人年金部会で画策しています。2017年にリスク分担型を施行後、昨春までは、現役に対して自助促進となる確定拠出年金の拡充を中心に据えていましたが、これからの課題として私たちに波及し得る仕組みの改変・設計を掲げています。
リスク分担型の導入は3月初で21件、掛金のみは486件で最近は増えていません。企業側は複雑で扱いにくいとしており、これを更に導入し易くすることや、減額要件の緩和、年金給付義務自体の社外売却(バイアウトと称して米英で先行)などが課題として掲げています。他方で支払保証制度創設も提起しているものの、経団連が反対の姿勢です。
インフレに向かいつつある今こそ、年金の実質減価とならぬよう国民本位の金融経済政策が求められます。アベノミクスは止めさせて物価安定を目指し格差是正の社会保障・税制が必要です。
確定給付企業年金については、財界意向に沿って厚労省は年金基金の運用悪化に備えてのリスク分担型を導入したし、基金所管から外せる閉鎖型への転換も既に前から可能としています。更に新たな負担転嫁策(リスク共有型とか年金債務の社外移転など)を画策し企業年金・個人年金部会の検討課題としていますから、受給権を守る運動の拡充が一段と重要になっています。
公的年金については,物価スライドの仕組みを1973年に施行したものの、改悪を重ねてきました。今では、マクロ経済スライドや年金カット法で物価上昇より賃金伸びが低いと低い方に合わせて引上げ率を抑える仕組みです。
公的年金は「世代間の仕送りだから現役の負担能力に合わせる」という理屈ですが、現役も老後になって一段と困る仕掛けであり,基本的に低賃金構造を突破するために最低賃金引上げ、労働運動高揚などで私たちとしても連帯が必要です。
改憲・軍拡の方向なら老後はどうなる?
ロシアのウクライナ侵略を契機に一段と改憲・軍拡の論が広げられていますが、軍費増大に進むと財政悪化・社会保障削減・増税が必至となります。年金・医療・介護など老後に重要な施策が後退させられてきたのが更に進められます。安保条約のお蔭で日本が守られているとの論も根強くある中、核共有・敵基地攻撃能力保有論もありますが,これではどうなりますか。
アジア・太平洋戦争後,アメリカは日本の民主化・非軍国化を進め,日本は平和憲法を制定しましたが,冷戦が強まると共にアメリカは日本を反共防波堤とするため、自衛隊を創設させ憲法改悪へ導き、安保条約を押しつけました。中曽根元首相自ら「日本列島は不沈航空母艦」と言い軍拡に乗り出しDGP1%の軍拡費を当然としました。安保条約はアメリカの好きなように全国に基地を設けることを許し、条約にない負担まで血税で賄うに至りました。
基地あるがゆえに他国から狙われるという軍事的な危険だけでない重大問題が第2条の位置にある「経済協力条項」です。内容はアメリカが経済的利益を獲得するために日本が協力させられる内容です。このために日本が繊維,造船,電機,鉄鋼など輸出を次々伸ばす度にアメリカは抑え込み,コメ・乳製品など農産品の輸入拡大を日本に強いてきました。このため食料自給率は下げられ、今や37%にまで低下し、食料の安全保障は危うくなりました。
金融の面では円高の為替相場を押しつけたために不況となり、日銀が金利を下げたのを契機にバブル経済となり、崩壊に至りました。この間,銀行も行員も苦しめられただけでなく日本経済も国民にも悪影響が及びました。バブル崩壊後もアメリカの圧力は続いて金融自由化の圧力が強められて私たちは多大な犠牲を被りました。この過程でアメリカの金融資本の更なる進出と利益を図るように、郵貯は突き崩され、預金金利は超低金利となり、「貯蓄から投資」への掛け声で株・投信へ誘導されましたし、企業年金の基本的原則も崩されることとなりました。
安保条約によって軍事面と共に経済面の変化と影響の史実を振り返り、暮らしと平和を守り得る方向をしっかり吟味することが必要と考えます。
私たちは年金に限らず暮らしと平和の問題で攻撃を受けており、安心できる老後を送るには、受給権だけを考えるのでなく、世界や日本の政治経済の連環の中で受給権を巡る動向を見つめることが大事になります。各銀行基金ごとにある「考える会」などの運動を強め、会組織の無いところでは受給者有志が起ちあがり、広範な受給者に宣伝していくことが求められています。その上で、それぞれの会と会員が当会に結集して情報と知識の共有を図りつつ、年金者組合や企業年金の受給権を守る連絡会と連帯しつつ、平和と暮らしを守る運動に加わっていくことが求められています。
銀行が日銀に金利支払いの異常
預金はコロナ対策関連もあって平残で5.05%増えましたが,貸付金は平残で4.46%減っています。日本経済の低迷から借入需要が振るわず,銀行が国債など日銀に売却した分も含め,余裕資金は貸付に廻らずに日銀当座預金にプールされ巨額に達しています。
このため都銀全体としても2021.12.16.~22.1.16.に日銀に預けていた約186兆円の当座預金の内,所定算定方法で2,730億円 に対してマイナス金利が適用されました。ほぼ同額が三菱UFJ銀行分で25百万円程度を銀行が日銀に支払ったとの報道がありました。
デフレ克服を掲げたアベノミクスの一環として日銀は金融緩和・通貨増量,貸金増→設備投資増で経済成長を狙いとしたのですが,デフレは賃金年金抑え込み・社会保障削減・消費税増税などで国民の購買力が減退したことが主因でした。
根本を正さずに金融緩和しても株式市場などに公的資金も含めて巨額のお金が回って富裕層が一段と富み,貧困と格差が拡大し経済成長にも繋がらなかったことが13年以降のアベスガ政権で証明されました。
また,日銀はデフレ克服のためとして物価上昇2%の目標を掲げましたが,通貨価値の維持・物価の番人たるべき日銀が物価上昇を目指すのは間違いです。物価は総需要増大の過程で供給が追い付かないなどの要因で上昇するものですから,通貨量を増やしてインフレを狙うのは本末転倒です。もし目標達成したなら5年で1割の物価上昇=通貨の目減りとなり国民には打撃となり,許されることではありません。
根本的には賃金・年金を上げ,社会保障拡充,減税などで国民が貯蓄に過度に励まずとも消費できるようにしてこそ,物が売れるし,需要が高まれば設備投資も増えて銀行の前向き融資も増えることになります。
金融経済に大きな影響力を有するメガバンクとしては,政権と日銀の一体となっての誤った施策に従いその範囲内で事業を進めるのでなく,日本経済と国民の暮らしに寄与する方向での施策提言が重要と考えられます。 (22.2.13. 稲邑明也)
川柳 22.1.10. 与謝糠晶太
お年玉出るまで孫は行儀よく
諭吉サン!正月くらいは居ついてネ (万円札)
ニッポンを守らぬ米軍コロナでも
米軍の治外法権いつまでぞ
すり寄っちゃ弱肉強食なお進む (連合と自民党)
「オレ持つがオマエは持つな」とヤクザ並み (核保有国声明)
無い袖と打出の小槌使い分け (社会保障と軍拡予算)
トナカイもトホホの地球温暖化 (クリスマスに苦しみます)
新聞が追いかけなくちゃ分りません (ナゼかDappiの件が…)
国ガチャと言われ続ける岸田クン
専制が自ら凍らす冬五輪
私たちの暮らし・年金はどうなる?どうする? ( 21.11.24.)
コロナ感染者数が急速に減ってホッとしたいところですが、この要因が科学的に解明されないまま、緊急事態宣言が解除され、経済上向きの期待感が出ています。
しかし、欧米などでは新たに感染増大が起きている上に経済面で安心できない動向があり、株式相場は不安定な推移です。銀行の中間決算や企業年金基金の前期決算は好調でも先行き不透明です。岸田首相は「新しい資本主義」など言うものの、破綻したアベノミクスの継承では、私たちの暮らし、年金は安心できません。内外の金融、銀行の動向も踏まえ、先行きを見つめる必要があります。
不透明不安定な海外の動向
欧米主要国ではバラつきがあるなか、世界的バブルの崩壊懸念が依然として高まっています。IMFや世銀なども前々から警告しており、世界の総債務296兆ドル(政府部門86兆ドル)はGDP比353%(6月末,IIF=国際金融協会発表)に至っているのに、克服策が不透明であることが更なる問題です。
夏からのコロナ打撃より抜けて経済活性化と共に、資源高、物流ネック、需給不均衡などによりインフレ傾向が出てきました。米国、EUでは金融緩和の出口策具体化が論じられ、中国の恒大など不動産巨大企業の債務過剰・破綻も懸念される中、金融市場は不透明感を募らせています。
ワクチン接種が進んでいない途上国、弱小国で経済回復が大きく遅れており、通貨も財政も弱いところに、欧米での金利上昇が通貨安をもたらし財政難と負債返済に行き詰まり、これが世界的に混乱と不況が広がっていくリスクともなっています。
岸田政権は矛盾とリスクを抱えたまま
9年間のアベノミクスで、格差と貧困の拡大・賃金減少・経済成長低迷などの他方で、大企業の内部留保が累増、大企業や株相場は活況といった矛盾した状況が続いています。欧米主要国が金融緩和是正策を採りだし、インフレ対応で金利が上昇するなかで、政府・日銀は低金利を続けているため、円安を招いています(円を売って高金利のドル・ユーロに投機資金がシフト)。
こうして、原油高に加えて輸入食品や素材の上昇が始まり、家計への打撃だけでなく、企業などにも悪影響が及んできます。
岸田内閣は、新自由主義や資本主義の見直しを口にしていますが、破綻済みのアベノミクス継承に変わりはありません。本来、デフレ経済脱却のためには、減退した総需要を盛り上げるために「分配」の歪んだ仕組み是正に向けて、派遣など雇用制度改善・賃上げ・社会保障・税制など多角的に転換する必要がありますが、新設の各種会議は大企業の成長に繋がる政策推進を狙い、看板の架け替えに過ぎません。
7-9月のGDP速報値は前年同期比年率マイナス3%で、プラス成長を維持する米・欧各国比でコロナ禍からの回復力の弱さが鮮明です。こんな歪みの中で海外の金利上昇、バブル破綻の波が押し寄せれば大変な事態となります。
既にGPIF(年金積立金)と日銀の公的資金動員で株価水準を引き上げて市場を歪め、実体経済と乖離した株式市場で、海外勢(取引総額の過半を占める)の投機動向や金利やバブルの動向によっては市場が激変するリスクが高まっています。
海外で金利が更に上昇すると、日本も連動を余儀なくされ、これに株価が激変すると大きく混乱する可能性があります(国内要因は別としても)。
金利上昇で巨額の国債利払いが増大して財政負担増大、国債下落、企業利払い増、経営不振などで不況突入、海外勢の市場逃避などで日本は経済も暮らしも大きな打撃を受けましょう。日銀や金融機関は巨額の評価損発生、不況深刻化で不良債権は増大し、深刻な事態となります。これまでに既に膨れ上がった国の借金約千兆円はコロナ禍対策で更に増えて利払い増も加わると増税になりかねません。既に消費税については経団連・経済同友会のみならずIMFまで日本に消費税15%~20%への引上げを提起しました。
円安は輸出産業にはプラスと永らく言われてきましたが、大企業など多くの企業はグローバル化で海外では部品調達や現地製造を進めており、円安メリットはかつてほど大きくありません。
日本の経済も暮らしも危うさを増しながら舵取りが問われる時にこそ、アベノミクスの間違いを反省した上で国民本位に方向転換する政治が求められています。
銀行業界は
小泉政権以降「貯蓄から投資へ」が喧伝され、銀行の事業は変えられてきまして、戦後の法制で禁じていた持ち株会社を解禁、銀証一体化を推進するに至りました。
更に今春の銀行法「改正」では、長引く超低金利や人口減少により本業の預貸業務で稼ぎづらくなったとして、子会社を使って一定の要件を満たした上で際限なく異業種に参入できるようにしました。
自行開発アプリやシステムの外販、広告、人材派遣など今月の施行を機に加速するでしょうが、儲かればヨシとなりましょうか。他企業への浸食、派遣される身、様々な影響が出てきましょう。何よりもアベノミクスによって低金利続行だし、格差と貧困の拡大の中で若者が結婚・子育ての展望も持てず、地方経済の沈下も進んだ事実経過があります。この根源への反省もないまま、収益減を広げても展望は開かれるのでしょうか。
上半期決算は好調でしたが、政府のコロナ禍対応で借入企業は返済猶予を受け、与信費用が軽減された一時的要因であり、今後のコロナ禍動向、インフレ化、不況の長期化、与信費用増大も懸念されており、バブル破綻のリスクも勘案すると一段と銀行業の先行きは不透明となります。
こういう中では必然的に固定費・経費削減は重要となります。既にこの数年間、現役にはベア見送り・賃金体系改悪・企業年金改悪など推進してきましたが、次は退職者の企業年金改悪が警戒されるべき段階とも言えます。
私達は公的年金の受給者でもあり、自公政権が2016年「年金カット法」で導入した、賃金が下がると年金も連動し、削られる仕組みが今年から施行です。私たちは公的年金・企業年金双方で不当な攻撃を受けていますが、これから物価上昇が進む懸念一つとっても、受給権だけを考えるのでなく、全体の連環の中で受給権擁護を位置づけ、政治・経済の転換を求めていきたいものです。 稲邑明也
川柳 与謝糠晶太 (旧三菱) 21.11.24.
忘れ物すぐ気づくのはまだマシか
落ち葉掃きお札ならばと煩悩多々
新聞が知らぬふりしちゃ読めません
(ナゼかDappiの件が載らない)
棄権すりゃ危険な政権なお続く
被害者が加害者支援しどうなるの? (悪政の被害者が与党当選に被害者が寄与する不思議)
めでたさも中に届かぬ自民党 (大物落選、議席減…一茶の心境には及ばないネ)
チコちゃんもどやしたいだろ岸田クン
被曝国の民を忘れた害務省 (米国の核兵器先制不使用案に外務省反対)
「改革者」二番煎じで ドヤ顔に (維新が国会議員手当で手柄顔だが実は…)
気候危機よりも軍備じゃ絶滅危惧種
川柳 与謝糠晶太 ( 旧三菱) 9.27記
憎しみと武力の連鎖じゃテロ絶えず
スガ総理!あかりとあがりを取り違え
菅サンに見えた明かりはキツネ火か
解散にスガる策では駄目でスガ!
改造は二階で済む訳ないでスガ
スガるもの消えて天下の秋を知る
自助なしに看板代えろと陣笠ら
秋まだ来(き) ドングリころころ背比べ
日進のコロナに牛歩の菅首相
カネあっても入院できぬ「自助」の果て
ネギ背負った卒業旅行に目が泳ぎ
見詰めたい!アベスガ九年をメディア越え
下手な趣味よさぬか飽きたと言われそう (頭書筆名の由来)
アホノミクスにコロナ誤策の下、私たちの暮らし・年金は?(2) 9.29記
コロナ禍の第五波はとてつもない大波となった後、急速に低まりましたが、後手に失態続きのワクチンのお蔭とも言えず、国民の自制自衛策が奏功の面も指摘されています。ただ、変異株の進化、重症者・死亡者の水準など考えると、冬を前に楽観できないし、経済回復も見通せる訳でもありません。
当基金の決算は過去最高の運用益とは言っても先行きは不透明です。世界的バブル化の先行きも懸念されているなか、中国の恒大集団の経営危機が表面化し世界的な重大事態の引き金にならないか警戒感が出ています。
こういうなかで暮らし、年金、銀行の経営はどうなるのか?―関連する海外の動向もあわせて見つめる必要があります。
欧米での変化は
主要国は共通して巨額の財政出動、金融緩和策を続けてきましたが、様々な変化・進展があります。アメリカは、ワクチン接種の進捗と共に雇用拡大、物価上昇など景気回復の兆しと共にインフレ傾向も出て、株価は上下変動を重ねながら史上最高の35千ドルの大台で推移していましたが、資源高の兆候が加わり警戒感が出ています。金融当局は既に量的緩和の縮小と金利引き上げ方向を打ち出しました。
EU各国はコロナ禍克服、行動制限解除や経済回復にバラツキがありますが、中央銀行は基本的に金融緩和から出口に向かいつつあります。ただ、コロナ禍収束→終息の見通し困難な下で、資源高・インフレ・バブルのリスクも抱えつつ利上げの必要も指摘され経済実体の一路改善は見通し難い状況です。
問題は、ワクチン接種が進んでいない途上国、弱小国は経済回復が大きく遅れており、通貨も財政も弱い故に、欧米で金利が上昇し通貨安となると、財政難と負債返済に行き詰まり、これが世界的に混乱と不況が広がっていくリスクがあります。中国も不動産バブルの動向次第で、先進国に影響が及ぶ可能性が観測されています。
日本はアベノミクスとコロナで二重苦
日本のアベスガ政権は、アベノミクスを8年余続け様々な害悪を露呈しました。この上にコロナ禍対策・五輪で一段と問題・矛盾をつくりだしました。貧困と格差の拡大で庶民は暮らしが大変な中で一部産業・大企業は好調でも、全体的に経済が低迷する下でマネーゲーム化した株式相場は3万円台に乗ったり割り込んだり不安定な推移です。
こんな歪みの中で海外の金利上昇、バブル破綻の波が押し寄せれば大変な事態となります。前号で述べたようにGPIF(年金積立金)と日銀の公的資金動員で株価水準を引き上げて市場を歪め、実体経済と乖離し、海外勢(取引総額の過半を占める)によって市場が大きく変動する脆さもあります。
欧米が金融緩和策から出口政策を進めて金利が上昇すると、日本も連動を余儀なくされ、これに株価が激変すると大きく混乱する可能性があります(国内要因は別としても)。
金利上昇で巨額の国債利払いは増大して財政負担増大、国債下落、増税懸念、円高進行に不況突入、海外勢の逃避などで日本は経済も暮らしも大きな打撃を受けましょう。日銀や金融機関は巨額の評価損発生、不況で不良債権の増大で深刻な事態となります。
欧米の金利上昇で円安に移ると輸入品の価格が上がり、食品・ガソリンなど生活物資の価格上昇を招き、原材料価格の上昇で企業経営に打撃となります。円安は輸出産業にはプラスと永らく言われてきましたが、大企業など多くの企業はグローバル化で海外で部品調達や現地製造を進めており、円安メリットはかつてほど大きくありません。
いずれにしても日本の経済も暮らしも危うさを抱えながら政治・経済の舵取りが問われる段階に来ていると言えます。こういう時こそ、アベノミクスの間違いを反省し、その上で国民本位に方向転換する政権を選択することが求められていると考えます。
企業年金を振り返ると
企業年金は前世紀から企業本位に受給者の権利を弱める改悪を色々と重ね、2000年に自民党政権は年金二法を成立させ、大企業中心に負担軽減のため厚生年金基金から企業年金基金への移行が進みました。
私たちの場合も代行返上・企業年金基金に移行しました。これ以降、さらに財界は民主党政権の時代にも企業本位で企業年金の改変を厚労省主宰で「企業年金研究会」を設けて検討させ、AIJ事件の反省も不徹底のまま、安倍政権はアベノミクスの一環として資本市場の活性化を目的に、確定給付企業年金、確定拠出年金の双方について改変を進めてきました。こうしてリスク分担型が2017年初に施行され、引き続く改変案を検討課題に挙げています。
受給権が弱められる流れの中で、当会も参加している「企業年金の受給権を守る連絡会」は厚労省を問いただし、各政党に公開質問状も出すなど取り組んできました。野党の中で日本共産党、社民党など受給権を守る立場の回答があったものの、民主党は無回答のままでした。
小泉政権以降「貯蓄から投資へ」が喧伝され、銀行の事業内容と重点が変えられ、今では銀行業は斜陽産業と揶揄される状況もあります。更なる利益拡大のため、大銀行は禁じられていた銀証一体化を合法化し推進しています。しかし金融、銀行の預貸業務は経済に不可欠であり、経済の健全な発展のなかで銀行も健全経営は可能だし、私達受給者もステークホルダー(利害関係者)として権利を守られる存在です。
私たちとしては、受給権だけを考えるのでなく、全体の連環の中で企業年金を位置づけ、運動を進め政治・経済の転換を求めていきたいものです。 (稲邑明也)
川柳 与謝糠晶太
目を覚ませ!五輪貴族のポチやヒモ
五大州の変種も招き お・も・て・な・し
言いたけりゃ言わせてやるが聞かないよ (尾身対スガ)
聴く耳を持たず呪文の九官鳥 (菅首相の同文反復)
菅さんの目は口以上にモノを言い
スガさんは広げるばかりディスタンス
やっぱりねぇバブルはいずれ弾けます
玉砕の他ない五輪大本営
道連れはNOです!五輪大本営
聞き飽きた危機言うだけじゃ効き目なし
望月は欠ける定めぞ小池スガ
逆立ちの政府は正・負が逆でスガ (正・負=プラス・マイナス)
失政を五輪で覆(おお)えずご臨終
もう結構!自公減らせ!緊急事態
下手な趣味よさぬか飽きたと言われそう (頭書筆名の由来)
筋違いな企業年金改悪…「知らぬが仏」といきません!
はじめに
企業年金は 江戸時代の「のれん分け」が起源…などと恩恵視する見方もありますが、本来は労働の対価である賃金の延払いとして労使対等で決めるべき労働条件です。
労働基準法は労働条件の向上義務を課しているのに、財界の圧力で企業本位に法令が変えられ、筋違いなことが持ち込まれてきました。これからも推進されようとしていることを私達はしっかり見つめておく必要があります。
企業年金は複雑で分りにくいと言われますが、専門用語での厳密詳細な説明は敢えて省きましたので大筋の基本点をご理解頂ければ幸いです。
(1) 成り立ち
年金は軍人、官吏の恩給という名の年金から始まり、次いで企業が、人材獲得の狙いもあって年金制度を採り入れ戦後に広く普及しました。戦後、企業が資金不足に陥り、退職金をポンと払えない状況が広がり、分割払いとする年金制度が普及しました。
賃金の後払いである退職金のそのまた延べ払いとすることで、企業は負担を平準化できた訳です。企業年金は労務提供により得た退職金の延払いです。れっきとした労働条件であって労働基準法で守られ、退職後は確定した金銭債権として民法で守られています。しかし命綱である企業年金なのに多くの人が知らない内に原則を崩すような改悪が進められた経過を見つめ、理不尽な改悪を許さないようにしてゆく必要があります。
(2)企業負担軽減とメリット享受の厚生年金基金制度
1960年代になって国の厚生年金制度の拡充が急ピッチで進められ、財界はこの掛け金増加の負担と自前の退職年金の負担と両方は重い、として両制度を接合・調整するよう「厚生年金基金制度」の創設を主張しました。
企業と労働者が拠出する厚生年金保険料と、企業自前の退職年金の積立金を合わせて基金が運用する仕組みで、企業のメリットは大きい他方で、イザという時は労働者・受給者にリスクあり!ということで当時の労働組合・労働団体の多くが反対し、政権党からも異論が出ました。しかし財界の揺さぶりで1965年に法制化(反対は野党一党のみ)され1966年に実施されたのです。
合併前の銀行での基金設立は東銀1969年、三菱1973年、東海1974年、三和1975年でした。
(3) 企業メリットが一転負担となり減額可能に転換
厚生年金基金は、企業に税制上の優遇措置がある上に、運用益が多くなれば企業は拠出金を減らすこともできる仕組みです。制度導入後、経済成長の右肩上がりで企業は存分にメリットを享受しましたが、バブル経済の崩壊後は低金利政策、長引く不況、などで予定通り運用益が上げられず、基金財政の悪化が進みました。
このため経団連は政府に対して給付の減額を可能とするよう政府に要求しました。
旧厚生省は減額を認める例外措置を決めて1997年に年金局長の通達を出したのです。
企業が存続している以上、経営責任として約束通りに支払う義務があるのに経営悪化とか掛け金負担困難の場合に減額可能とする内容です。こんな重大なことを労働政策審議会にも諮らず、国会に法律改定案を出すことも無く、局長名の一片の通達で済ませたのです。
(4)更なる負担と画策 年金二法制定
局長通達は減額を認めたものの条件があるため、満たさない企業は積立不足分を拠出する義務はあるし、不足額の明示など投資家が求める機運も高まりました。
こうしてアメリカ発の金融自由化と共に、退職年金についても国際的に通用する会計処理と開示をすることとなりました。(200年4月開始の事業年度から明示義務づけ実施、ここでも賃金の後払いとの原則は明確)。
これにより企業は年金資産の時価評価などで積立不足発生のリスクと不足分拠出など負担が増大し、さらなる改悪を画策したのです。
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確定給付企業年金法の制定
企業は厚生年金基金のメリット消失に至り、国に代わって掛け金の運用・給付の仕組み=代行 を返上して、別の制度にしたいと経団連が政府に要求しました。
こうして確定給付企業年金法が02年に制定され、代行返上し企業年金一本の基金に移行する企業が増えたのです。主要銀行は04年にほぼ横並びで返上して移行しました。
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確定拠出年金法の制定
これは企業が原資を拠出し労働者が運用責任を負う自己責任型です。そもそも法律名に「企業」の文字はありません。退職年金であれば、企業責任で老後の安定に資するような仕組みとすべきなのに、確定しているのは企業が原資を出すことだけで、下手をすれば損失を出し給付ナシもあり得る仕組みです。本質的には不確定給付年金と言うべきものです。税制の恩典を付けてバラ色のように描いて国が「推し」に努めています。
(5)賃金を相場で変動させるとは!
財界は企業の更なる負担軽減のために、「キャッシュバランスプラン(以下CB)」という制度を取り入れるよう政府に要求、02年に実現しました。これは「企業年金の積立や給付を国債などの市場指標に連動する制度」です。
元々企業年金は賃金の延払いというのが基本です。企業の理屈として賃金を成果や業績で決めるなどと言うことはあっても、国債相場で決めるなんてあり得ません。
しかし、企業年金ではこれがまかり通るに至ったのは何故か?―年金は運用益で稼いで給付するのもの、という考え方がそれまでに浸透させられていたことがあります。
これとて、年金給付は事業利益だろうが運用益だろうが原資は不問であって、とにかく企業の責任で確定金額を払うという原則は明確です。
しかし、CBはこの原則を崩して積立も給付額も相場任せで、不安定を当然とするものです。一応下限利率を保証し、ついでに上限も定めてインフレ時に負担増とならぬ仕掛けも作っています。
こんな大転換の改悪を、政府は法律を変えず既存法令の範囲内として政省令で片付けました。給付が不確定なのに確定給付企業年金法の中に含めて新設して国会で審議することも無く、国民から注目されることも無く仕組みが作られた訳です。
これだけ大きな変質が断行されたのに、当時の労働界で大きな問題とされず、企業年金の受給権を守る運動も組織もなかったのは残念なことです。
こうしてCBは普及させられ、三菱UFJ銀行は12年に導入しました。ただし、積立は従来通りで給付額だけ市場金利によるのを類似CBと称し、銀行はこの方式で5年ごとに給付利率を直近平均値によって改定します。
現在はCBの給付利率が2.5%で、CB導入前に退職した受給者の確定給付方式が3.0%なので分断されないよう連帯し、筋違いを持ち込んだ財界に批判の目を向ける必要があります。
(6) 企業の負担とリスクを私たちに転嫁―リスク分担型
企業が退職年金の経費を負担し、市場運用のリスクも負うのが当然なのに、これを軽減するために創られたのがリスク分担型です。給付の減額には条件がありますが、リスク分担型なら金融相場が急落しても自動的に給付削減できる仕組みです。
企業が多めに掛金を積む分には税制の恩典があり、銀行業界では三井住友、りそな、あおぞら銀行が積立を実施中です。
給付も自動的に減らせる全面的導入は19件(5.1発表)に留まっています。重大なのは、労使合意で移行の際に、退職済みの受給者まで遡及して組み込める仕組みで個々の金銭債権者の権利が侵害されることです。法治国家にあるまじき仕組みがアベノミクスの一環として国会審議もナシに政省令で作られた(17年1月施行)のは許されないことです。銀行業界では南都銀行と阿波銀行が退職者も含めて移行済みです。
これとて、企業にとって使い勝手が芳しくない、とのことで他事も含め更なる改変が企業年金・個人年金部会で審議の段取りです。
(7)公的年金も企業年金も
財界は企業年金の改悪を前世紀から政府に要求し実現させてきましたが、公的年金の改悪と共に推進してきたことに留意したいものです。厚生年金は前述のように60年代に大幅改善の機運が国民・労働者の力で盛り上がったのが財界の抵抗を受けました。その後も財界の攻勢は続き基礎年金も含めてマクロ経済スライドや特例措置分減額など酷い状況です。
安倍内閣は公的年金が細る前提で、確定拠出年金を国民全層を対象の方向でアベノミクスの骨太方針に「金融市場の活性化」の項(社会保障ではない)に書き込み具体化を進め、菅首相は自助を前面に社会保障の削減を画策中です。
私たちが受給権を守ろうとすれば、この攻勢全体を見つめ、阻止の一翼を担う方向で
受給団体との連携、現役との連帯を考えていきたいものです。 (2021.5.28.稲邑明也)
庶民のフトコロを温めてこそ「経世済民」
稲邑明也 (旧三菱 21.3.21.)
春闘といってもシュンとなる状況が永らく続き、今年も低調です。景気悪化やコロナ禍を理由にしていますが、こういう時こそ、これまでの利益の蓄積、内部留保を還元し、全体の消費を増やし、ひいてはデフレ脱却することが求められています。元々企業の利益は労働者の働きがあってこそ得られたものですし、永年、物価上昇に届かない賃上げや社会保険料負担、消費税増税などで労働者の可処分所得は減りっぱなしで、購買力は低下の一方です。組合が要求しないなんて存在価値が揺らぎますし日本経済のためにもなりません。これでは全体として売り上げは伸びないし、伸ばそうとすれば値下げなどにハマり、総需要の減退となり、デフレの悪循環です。設備投資も増えないし銀行融資も増えません。
お門違いのアベノミクスで庶民には打撃
アベノミクスはデフレ克服と称して異次元の金融緩和をやり、物価上昇2%を目指しましたが、デフレの根本原因を取り違え、金融緩和で打開できるという、お門違いの政策を8年も続け、間違いであったことが明確なのに、日銀は19日に姑息な手直しを発表しました。
既に日銀は、世界でも例のない上場投資信託(ETF)の買い入れで本邦最大の日本株保有者となって市場を歪めているとの批判が広がっていましたし、国債買い込みは実質的に財政法違反のファイナンス=政府の赤字財政尻ぬぐいの上、全体の45%も保有して、国債市場は「日銀支配」で売買の妙味も薄いと取引者から批判される始末です。
そもそも、不況から脱する過程で総需要が盛り上がり総供給とギャップが出る結果として物価上昇が起きるしデフレ克服となるのであって2%の目標を掲げて操れるものではありません。2%上昇を5年続けたら単純計算でも物価は10%上るし、国の年金はマクロ経済スライドなどで抑え込まれ往復ビンタです。物価上昇をめざすことは日銀の重要任務=物価の安定に背馳する上に、達成できないからと姑息な政策調整をしても国民のためにもならないし日本経済の健全発展にもなりません。黒田総裁は2%は国際標準だと主張してきましたが、爛熟した資本主義経済の歪み、矛盾を糊塗するもので庶民には害悪です。
カネは天下の廻りもの
国民・労働者の働きと消費があってこそ企業は利益を得られるのであり、国民・労働者を大事にする政策を政府も企業も据える必要があります。
まさに西鶴が喝破したように、カネは天下の廻りものです。弱肉強食で企業が内部留保を貯めこみ過ぎて循環を滞らせ、格差と貧困を拡大するとますます経済はイビツとなり発展を阻害します。「経世済民」という本来の「経済」の言葉の意味を吟味すべきで私たちも慣らされる訳に行きません。
国の年金は次々と改悪されて今では、物価が上昇しても低い賃上げ率に合わせて支給額が減らされる仕組みです。企業年金も、元々賃金の延払いなのに時々の株・国債相場で決めるとか、リスクを分担するとか筋違いな仕組みが拡大し、安定した老後生活を脅かしています。こんな仕組みが続くと限られた収入を貯蓄に回し購買力は低迷し続け(これまでGDPの60%台だったものが今では52%。ちなみにアメリカは70%近く)日本経済はますます沈んでいきます。
マクロ経済は別としても、個々人の暮らしこそ肝心であり、私たち年金者としては、延払い分の賃金を受け取る者として現役労働者とも連帯し、庶民を暮らしにくくする政治や経済を正す側につくことが求められていると思います。
川柳 近時片々 与謝糠晶太 (旧三菱)
接待はゴチで対応ゴテゴテだ
七光の七万ゴチじゃ記憶飛ぶ
総務省 総理手塩の芋畑
芋づるはどこまで伸びる総務省
文春に出れば記憶がチョイ戻り
モリカケに親子丼次は何?
役人の処分はスピード感を見せ
卵屋のワイロ調査は半熟で
芋づるは農水省にも伸びてゆき
医師、ナースさしつさされつ味見役
国民に要請ばかりで陽性増え
短歌 コロナ禍中の投機横行 与謝糠晶太 (旧三菱)
コロナ禍に景況悪化も株相場は高値更新不気味なばかり
コロナ禍に資金は投機に流れゆき貧者の苦境深まるばかり
公金もて株相場上げし政権に批判の弱きメディアを訝る
株バブル いずれ破裂し庶民にも累は及ぶに加担の悪政
天惠の小麦も先物市場で騰貴 飢餓の民らの明日をも打撃
「水」さえも米国先物市場が売買 いよよ潤う投機家たちは
電算機駆使し瞬時に利益得る者らは分かるか汗と涙を
人智超え利益を上げるAIに振り回される人ら増えゆく
株相場の先を問われて友に言う山高ければ谷は深しと
一生に使い果たせぬカネを得てなお追う人の生きがいは何
カレンダー頒布取りやめのサプライズ!
寺尾隆尚 (旧三菱銀行 21.1.11.)
我が家では毎年、金融機関のカレンダーを数枚入手し利用しています。昨年末、三菱UFJ銀行の坂戸支店に予め電話で訊くと「今年はどこの支店でも店頭で頒布しない」とのことで驚きました。埼玉りそな、みずほ、三井住友銀行の地元支店へ行くと例年通りスンナリと貰えました。銀行のカレンダーは昔から親しまれ、12カ月分一枚に収まったカレンダーは家庭では「銀行の顏」となって一年中毎日お客が目にするものです。お客との大切な「絆」です。カレンダー頒布を止めたのは経費削減、ペーパーレスの流れかも知れませんが、別の友人は「手帳も貰えなくなった、配布を止めたと言われた」とのことで、三菱UFJ銀行はそこまでケチ又は貧しくなったのかとガッカリです。後日、外回りの業務担当が訪問するようなお客にはカレンダーを配布しているらしいとの話が伝わってきました。いい加減にして貰いたいものです。
コロナ禍で厳しさが増すとき、目指すべき方向は?
(稲邑明也 21.1.10.)
年明け早々にコロナ禍の深刻化で緊急事態宣言が出され、不安が増しています。既に多くの企業が経営難に陥りGDPは落ち込んで先行きも不透明というのに、株式相場はアメリカでは31千ドル越えの新高値、日本でも30年ぶりに28千円台という対照的な状況となりました。
複雑な金融経済情勢の中で、昨年から銀行の業績は落ち込みました。私達の命綱である企業年金の基金財政も、相場に翻弄されている面が露呈し、懸念されます。
こういう時ほど、足元の問題からコロナ禍に的確迅速に対応しない政治、経済、金融の歪みを見つめたいものです。その中で私たち年金者の暮らしがどうなるのか、年金債務者たる銀行の経営はどうなるのか、受給権を守る取り組みをどう考えるか、大事な所に来ていると思います。
内外の経済・金融の動きは?
今の株高は、各国がコロナ禍対策の資金供給を行ない、巨額の余剰資金が金融市場に向かう中で、企業業績回復やワクチンへの期待が先行したものです。経済や企業業績の実態と乖離しており、期待外れの出来事や地政学リスクによっては、バブル崩壊の可能性があります。更に、経済回復と共にいずれ過剰供給の資金を戻す出口戦略が世界各国で採られると、バブル崩壊の契機となり得ます。
日本は、出口戦略を封印してコロナ禍前から異常な緩和策をとり、日銀や年金積立金を動員して実力以上の株高を続けてきました。菅内閣は巨額の赤字国債発行を続ける予算案を編成しており、一段とバブル化を推し進める要因となります。日本は前々からGDP対比でも断トツの赤字で、国債格付けが下げられた(今では中国、韓国の後塵を拝している)のに、まともな策定がないままです。
財政悪化は、社会保障費など圧縮の口実としつつ、大企業・富裕層の負担策などなく、まともな健全化は口先だけです。こんな政府の姿勢が更なる国債格付け引き下げの要因にされています。
抱え込んでいる矛盾
政府も日銀も一体になって目標とした物価上昇率2%は、仮に実現すると金利は上がり国債利払い増加で財政赤字は膨らみ、インフレ加速の要因になる矛盾がありました。
そして2%達成したとしても金融正常化の時になって、買い込んだ株・ETFなど売却に転ずると株式相場など急落、バブル崩壊の引き金になる矛盾があります。
既に国債格付け引き下げの観測は`20年春から出ています。実際に引き下げられると国債の金利は上昇し、利払い増のために赤字財政が更に膨らみ、日銀が間接的な形をとりながらの国債買い上げ(実質的に財政赤字の尻ぬぐい)、コロナ危機以前に行き詰まっていた「アベノミクス」の負の遺産、諸々の問題をどうするのかが、問われてきます。
金利・物価が上がると(企業年金に物価スライドもなく)暮らしは直撃を喰らいます。緊縮財政で社会保障削減が更に強まり、消費税など増税の画策が始まりかねません。暮らしも虎の子も守るにはどうしたらいいか?政治・経済のかじ取りが問われます。
トップ交代で銀行はどうなっていく?
コロナ禍の前から既に、銀行業界はアベノミクス・低金利政策のために本業不振で、メガバンクの海外事業は世界的な金利低下、資本規制などで逆風が吹き、デジタル化対応も迫られ苦戦中です。融資で稼ぎにくい分をCLO(ローン担保証券)で稼ごうとしたものの、コロナ禍も加わり一段とリスク増大が懸念されています。
メガバンクはフィナンシャルグループ(FG)一体で、低金利・デジタル化の波に対応して国内海外とも既存分野の収益向上策を練り、人員・店舗の合理化は従来と異なる手法で(人事面では一律ベ・ア廃止、副業解禁など)推進していますが、新分野にも乗り出していく方向です。(年初にはNTTドコモとの包括提携検討との報道)
金融庁は銀行への業務規制緩和を具体化(人材紹介業の解禁など)する銀行法「改正」案を三月にも国会に提出の予定です。
三菱UFJFGでは、デジタル化に強いとされて交代した亀沢社長は「権限の集中でデジタル化の変革を加速し、金融プラットフォーマー(*)になる」と述べ、業務範囲の見直しに言及しています(週刊ダイヤモンド20.12.26-1.5合併号)。
(*)主にサービスの基盤 ( プラットフォーム )となるシステムやサービスをユーザーあるいはサードパーティに提供している事業者という意味で用いられる語
「13段飛び」で話題となった頭取交代は、業界を巡る経営環境の激変と危機意識の表れとも考えられます。四月就任予定の半沢氏は、会見で課題三点を挙げ、最大のものはコスト削減と強調しています(日経ビジネス20.12.25.)。
半沢氏は「他行比で経費率が高い要因は語り尽せない程ある、他行と比較しながら損益分岐点を下げる」など述べています。損益分岐点を問題にすると当然のごとく固定的経費が槍玉に挙げられ、企業年金もその範疇に入れられる可能性を排除できません。これは他行にも共通していく問題であり、経費削減の競争は強まります。
また金融持ち株会社の体制下、三メガは銀行と証券会社の連携を強めていく銀証一体化を強く金融庁に求めてきており、徐々に実現の方向です。しかしこれは、戦前に財閥が力を持ちすぎた反省から戦後に金融持ち株会社を禁止し、1997年に解禁した折、銀行業務と証券業務を同一体で経営できないようしたものなのです。
受給者としては銀行が儲かり、安泰になればそれでいいのか、全体の流れ、背景、今後の経済力肥大の影響も見つめることが必要かと思います。
苦境を招いている根本に、低金利など異常で歪んだ政策があり国民にも悪影響を及ぼしている重要問題があるのに、これを正さず、力のある銀行が更に利益を上げるために必要とされた規制を緩めることでいいのか?考えどころです。銀行で働いてきた者としては世のため人のため評価される銀行であることを願いたいものです。
銀行業界の難局打開には、根底にある要因との関係で★異次元の金融緩和策の是正・出口戦略と推進 ★コロナ禍の下、窮地の企業・事業主に更なる実効ある機敏な支援 ★財政・税制・社会保障を国民本位に転換 ★自助より公助を基本に年金政策の転換 ★国民の消費拡大etc.が求められます。家計が潤ってこそ消費が増え設備投資も増えデフレ克服に繋がる基本点は外せないと考えます。
企業年金・個人年金部会では
厚労省は、企業年金・個人年金部会で確定拠出年金の改定に取り組み、現役世代が老後のために「自助」を基本に拠出資金の枠を「拡充」する具体化を討議してきました。これでは、投資しても元本保証がないまま、巨額の資金が金融市場に流入して金融業界は儲かるでしょうが、その分は個人消費が減退し、経済成長に繋がりにくくなります。同部会は現役対策だけでなく、今後、確定給付企業年金(当会受給者の多くが適用)についても企業本位の課題を論議の予定で、目を離せません。
昨年12月の第18回部会では「企業年金のガバナンス等について」を議題とし、「リスク分担型企業年金の移行時に係る規定の整備」を審議しました。
元々、企業年金部会でガバナンスを取り上げることとなったのはAIJ事件に端を発しており、厚労省や企業の責任が問われた問題です。この中で加入者・受給者への情報開示が問われたのです。この後、加入者への開示はある程度進みましたが、受給者については軽視されたままで、絞り込んだ審議で重要事が片付けられようとしています。
基金だより送付廃止の問題点
こういう中で三菱UFJ銀行の企業年金基金は部会審議の流れ に背馳し、基金だより廃止を決めたのです。パソコンなど受信機器を持たない受給者は基金の実態を知らないままになり、持っている人でも意識的にアクセスしないと決算さえ分からないままとなり、制度改変が進められ同意を求められても知識・情報が不十分なまま的確な判断ができなくなる危険性があります。かつてのAIJ事件の受給者と同じになりかねません。
受給者の課題は
私たち受給者としても、こういう時ほど、情報と知識を共有し、連帯の輪を広げて運動を強め、銀行や基金に強く発言できるような存在を目指す必要があります。
「コロナ禍で暮らしが大変厳しい人たちが増えているのに比べれば贅沢言えない」といった声があります。確かに定期に定額の受給を得られる身は比較相対で恵まれていると言えますが、大企業本位の政治経済のために国民の多くが困らされてきた共通の土台があります。コロナ禍であぶり出された問題をつくりだしているのは、カネまみれで冷たい権力・為政者と背後に控える財界・大企業です。
企業年金受給者としても、歪んだ金融・経済・政治の被害者という共通の視点を明確にして、公的年金を含む社会保障制度の後退・改悪阻止、そして根本的に悪政を許さない運動の一翼に繋がることで、暮らしを守り、ひいてはコロナ禍を乗り越える方向の意義ある取り組みと考えます。
(稲邑明也)
コロナ禍で不透明感が増すとき、目指すべき方向は?
このところ、コロナ感染が第三波の様相で、命と暮らしがどうなることやら心配が広がっています。他方、コロナ禍で多くの企業が経営難に陥りGDPは落ち込んで先行きも不透明というのに株相場は上がり、バブルが崩壊しないかと警戒感も出ている状況です。
複雑な金融経済情勢の中で、銀行の業績は落ち込みました。私達の命綱である企業年金の基金財政も、株・債券の相場に翻弄されている面が露呈し、懸念される状況です。
こういう時ほど、足元の問題から大きな流れの根底と方向性を見つめたいものです。
世界の経済・金融の動きは?
コロナ危機で世界全体では経済成長が落ち込み、各国政府は中央銀行と共に金融を一段と緩和したため、少しずつ経済成長の回復が見られる面が出ています。これと共に、巨額の余剰資金が金融市場に向かい一段とバブル化が進んでいます。新コロナ向けワクチン開発への期待増大などと共に、投資というより投機的な動きも強まり、市場は一寸したリスクの変化や動機で乱高下し易くなっています。米中間の対立や紛争地の地政学リスクも依然として危惧される問題です。こういう下では、企業年金基金の資金運用も銀行の事業も安定しません。
日本の経済金融の異常さは?
菅内閣は安倍継承を掲げてスタート、目下来年度予算編成に取り掛かっていますが、コロナ禍対応で巨額の赤字国債発行を前提としている点が一段とバブル化を推し進める要因となっています。
欧米主要国も似た傾向がありますが、財政赤字をどうするのか?との議論や策定が進められています。しかし日本は前々からGDP対比でも断トツの赤字で、国債格付けが下げられた(今では中国、韓国の後塵を拝している)のに、まともな策定がないままです。
財政健全化の政策は形だけで、赤字を膨らませている姿勢が更なる格付け引き下げの要因とされています。政治献金も絡む特定業種へのGo To策やら野放図な兵器爆買いやら国民の批判の広がりと政権の安定性も含めて格付け機関や投資家から見られています。
また、欧米各国対比でも日本の際立つ異常性は、アベノミクスが政権と距離を置くべき日銀を一体化し、年金積立金も含め公的資金を動員して株相場を吊り上げてきたことにあります。コロナ前に他国は金融緩和の出口戦略をとりつつあったとき、日本は出口戦略抜きで赤字国債の日銀実質引き受け、株相場の維持・つり上げに注力してきました。
抱え込んでいる矛盾
政府も日銀も一緒になって目標とした物価上昇率2%は、仮に実現すると金利は上がり国債金利支払い増加で財政赤字は膨らみ、インフレ加速の要因になる矛盾がありました。
出口戦略として、買い込んだ株・ETFなど売却に転ずると株式相場など急落の引き金になる矛盾があります。
金融・経済は混乱し政治は不安定となり、新興国のように国際的信認が低下し海外の資金は引き揚げられやすくなり一段と混乱に拍車がかかります。しかしアベ―スガ路線は混乱回避の策を持たず、今の矛盾を抱えながら出口戦略は棚上げして続行、というその日暮らしの実態ではありませんか。一輪車で塀の上を渡るようなものと言えます。
混乱阻止の方向は?
既に国債格付け引き下げの観測は春から出ています。実際に引き下げられると国債の金利は上昇し、利払い増のために赤字財政が更に膨らみ、日銀が間接的な形をとりながらの国債買い上げ(実質的に財政赤字の尻ぬぐい)、コロナ危機以前に行き詰まっていた「アベノミクス」の負の遺産、諸々の問題をどうするのかが、問われてきます。
金利・物価が上がると(企業年金に物価スライドもなく)暮らしは直撃を喰らいます。緊縮財政で社会保障削減が更に強まり、消費税など増税の画策が始まりかねません。大局的に暮らしも虎の子も守るにはどうしたらいいか?考える必要があります。
コロナ禍に対応しつつ暮らし・経済をよくするには、国民の購買力の増大が基本であり、★消費税の大幅減税、★社会保障負担の軽減、★年金改善(マクロ経済スライド廃止ほか)、
★最低賃金・雇用制度改善、など国民本位の施策が重要になります。
これらに必要な財源は、◎大企業富裕層への減税措置を元に戻す、◎500兆円に近い大企業の内部留保に着眼し保有資産への課税項目と額を増やす、◎コロナ禍でも大儲けしている金融取引に課税など、既に提起されている策を具体化することでないでしょうか。
銀行はいま
コロナ禍の前から既に、銀行業界は低金利政策のために本業不振で、メガバンクの海外事業は世界的な金利低下、資本規制など逆風が吹き、デジタル化対応も迫られ苦戦中です。更に前号で触れたように融資で稼ぎにくい分をCLO(ローン担保証券)で稼ごうとしたものの、コロナ禍も加わり一段とリスク増大が懸念されています。
地銀は低金利と地方経済衰退で業績悪化が進み、菅首相は統廃方針を掲げ、日銀と一緒になって異例かつ異常な補助金制度などを打ち出しました。これには大手新聞さえ批判的記事や社説を出すほどで筋違いな策です。異常な低金利政策と地方不振の政策を転換することこそが基本です。
銀行業界の難局打開には、★異次元の金融緩和策の是正・出口戦略★コロナ禍の下、窮地の企業・事業主に更なる実効ある機敏な支援★財政・税制・社会保障を国民本位に転換★自助より公助を基本に年金政策の転換etc.を求めていく必要があると考えます。
財界・政府は、企業年金・個人年金部会で確定拠出年金の改定に取り組み、現役世代が老後のために「自助」を基本に拠出資金の枠を「拡充」する具体化を討議しています。これでは、投資しても元本保証がないまま、巨額の資金が金融市場に流入して金融業界は儲かるでしょうが、その分は個人消費が減退し、経済成長に反映しにくくなります。
同部会は現役対策だけでなく、確定給付企業年金(現受給者の多くが適用)についても企業本位の課題を論議の予定で、目を離せません。
私たち受給者としても、こういう情勢の時ほど、連帯の輪を広げて当会を大きくし銀行や基金に強く発言できるような存在を目指したいものです。 (20.11.28. 稲邑明也)
生命保険会社が予定利率下げ! (2010.10.31.)
“第一生命が来年10月から企業年金保険の利率を年1.25%から0.25%へ引き下げる”との記事を10月29日の日本経済新聞が掲載、翌日は”他の生保も追随するかも…”といったことを含め他紙も追いかけ報道しました。
各紙共通して “それぞれの企業年金は安定した委託先だった生保の利率が下がることで対応を迫られる”と書き、”企業が確定給付型を止めて運用実績に連動する確定拠出型に移行する選択肢がある…”などと指摘しています。
しかし、企業年金=退職年金は賃金の後払いである退職金の、そのまた延払いですから、企業年金を確定拠出型にして給付が金融市場任せというのは筋違いです。月々の賃金を企業の査定する能力や成果で決める方式だって企業本位で批判が出ているのに、能力や成果とも全く関係ない金融市場の動向・利回りで決めるのは本来的には筋違いと言えます。
退職年金は金融商品ではありません。企業の都合で金融市場の運用果実を給付に充てているだけのことです。運用成果が上がらず積立不足になったり給付困難になれば、事業収益から給付に充当すべきことです。
心配の声が…
この記事を見た受給者から「退職済みの受給者にも確定拠出型の適用はあるのか?」との質問がありましたが、これはあり得ません。ただし、金融市場任せという点で警戒すべきは「キャッシュバランスプラン」方式です。これは、国債の利回りに基づいて積立や給付を増減するもので、賃金の延払いである企業年金としては筋違いであることに変わりありません。しかし、退職しているのに変更させられるという事例もりそな銀行などで実際にあり、企業の横暴が通用しています。
こうしたことには、受給者の結束した意思表示と阻止の取り組みが必要です。(イヤな人は一時金の選択を!という道を厚労省は用意していますが)
おかしな記事も
10月30日の朝日新聞は「予定利率が下がると企業側は、従業員への年金の給付額引き下げや掛金増額などの対応を今後迫られる可能性がある」と書いています。29日の日本経済新聞は「企業によっては従業員向けに約束する利率の見直しが必要になり、最終的に給付水準の切り下げに繋がる可能性もありそうだ」と書きました。
しかし、給付額の引き下げは、企業が危殆に瀕して掛金負担が困難とか、基金の財政状態が悪化といった真にやむを得ない事情・理由が無いと認可されないことと厚労省は法令で定めています。判例でもNTT事件やもみじ銀行事件などで明確です。これらは企業側にたった、誤解を撒く不正確な記事と言えます。
そもそも企業年金の資金運用は生保に限らず国内外の株式、債券など様々にあり生保は一部分です。(三菱UFJ銀行の企業年金基金の場合は「基金だより」で「生保一般勘定」と表示。どの生保会社かは開示なし)
それなのに、給付引下げを匂わす記事は企業側に偏り、頂けません。
また、仮に積立不足となっても、そんな事態について法令は企業が掛金を増やして給付を保障する義務がある、と明確であり、これに尽きます。心配無用です。確定給付型の場合、賃金の後払いの延払いである以上、企業が全責任を負うことは当然なのです。
何故こんなことが?
運用利回りの低下について各新聞は運用環境悪化とか、コロナ禍とか書いていますが、中途半端です。キチンと考えれば、デフレ経済、経済成長低迷などが根底にあり、的確な経済政策で成長路線を採らず、アベノミクス・異次元の金融政策でマイナス金利政策など採るから国債金利などゼロ近傍となり生保など長期資金の運用が困難になった、という点をリアルに直視する必要があります。
世界的に低金利化はありますが、日本の場合は特別に早い段階で安倍政権の愚策で金利が低下した経過があります。大手新聞はアベノミクスの間違いを棚上げし、働く人や退職者に悪政のツケを回す基本点を批判しないで、安易に”給付減もあります…”と解説して見せるのでは、権力への監視役を果たせません。
現役・受給者としても、これらの報道を機会に企業年金について正確な知識と情報を共有し、企業や基金の出方を警戒したいものです。当会に未加入の方はmtunenkin@hotmail.co.jp
へお申し込みください。 (稲邑明也)
企業年金をややこしくしたのは?
―原点に返って改定の跡をみると (会報55号より転載 20.7.29.)
企業年金はややこしい、むつかしい、とよく言われますが、退職年金を約束通り定期に定額給付する分かり易い制度であったのに、企業本位に変えられてきたために複雑になったのです。
企業年金は基本的に賃金の後払いである退職金の分割払いであり、退職年金を企業の責任で支払うという意味で「企業年金」と称するものです。企業の恩恵・優遇措置ではなく実質は労働の対価である「退職年金」ですし、国が責任を持つ公的年金と対比して企業が責任持つ意味で企業年金と称するだけです。
また、支払い原資は、営業利益であろうが資金運用益であろうが関係なく、企業の責任で支払うという基本点は簡明です。
しかし、「厚生年金基金」という方式に移り、次いで「確定給付企業年金」という名称になり、その中でも国債の金利や株式市況次第で増減する別の方式が含められ、さらに運用と結果は労働者の自己責任とする「確定拠出年金」制度が作られ…、と歪められ複雑に変えられて来た経過があります。
もし、「賃金を国債金利や株式相場で決める」となれば理不尽で不当なことだと直ぐ分かり批判できますが、賃金の延払いである退職年金を国債金利や株式相場で決めるキャッシュバランスプランとかリスク分担型とかになると、本質的には理不尽なことなのに、難しいとか世の潮流とかで押し流され易い面があるのは残念なことです。
労働者・受給者が基本点をしっかり掴んでおかないと企業ペースで今後も不利益を強いられかねません。こんな歪んだ流れが出てきたのには歴史的な経過があり、大筋を振り返ってみます。
企業年金の始まり
日本では、明治時代に鐘淵紡績など少数の企業が欧米の制度を模範に独自の退職年金を導入していました。その後、主に大企業などで取り入れられ、戦後に広く普及するようになりました。一貫して企業の都合・メリット優先で来た面をみておく必要があります。
戦前から、企業年金は企業が人材確保・終身雇用維持を狙い、企業帰属意識・忠誠心涵養のため、退職一時金と退職年金を制度化していた面が強く、退職年金は同時に退職一時金の支払い負担を何年間にもわたって平準化する効果もありました。しかし一般的には普及せず、退職金制度があっても精々が一時金の支給というのが通常パターンでした。
戦後は、企業の資金事情が悪化していた事情もあって1950年代に、多くの企業で退職金の年金化が採り入れられ、社外積み立ての方式も始められました。
労働界でも民主化が進んで労働組合の結成が広がり、激しいインフレの下で賃金闘争が取り組まれて、退職金・退職年金も引き上げられてきました。
企業年金の基本点
企業年金は格差と貧困の進むなかで、企業の恩恵・優遇措置のように見られている面がありますが、労使対等の立場で固められた労働条件であり、賃金の後払いである退職金の分割払いであることを歴史的にも法律的にも基本的にしっかりとらえる必要があります。
特に法律面で明確なのは、労働基準法で「労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの」とされるうちの退職金、退職年金であり、現役労働者であれば労働条件として決められるものですし、退職すれば金銭債権となり、民法の定めにより企業が支払い債務者、退職者は債権者となり、債権者の同意なしに金額や給付条件を変更できません。
これは、仮に住宅ローン借入人が自分の都合で債権者=銀行の同意なしに金額・利率など条件を変更できないのと同様です。
企業会計の基準でも「勤務期間を通じた労働の提供に伴って発生するもの」すなわち、賃金の後払いという基本点を鮮明にしています。(旧大蔵省企業会計審議会「意見書」1968/11、`98/6)
複雑にした財界の圧力
他方で、国の年金制度は1941年「労働者年金保険法」として工場で働く男子労働者を対象とし、1944年には女子労働者も対象とし加入が促されました。これが現在の厚生年金の始まりですが、労働者のためというよりも、事業主から徴収する保険料を国が戦費に充当する狙いが色濃くありました。
戦後は、労働者・労働組合の闘いで本来的な年金制度作りをめざす運動が高まり1961年に厚生年金として制度化されました。
1960年代になって労働者の運動の高まりと共に、他国比劣る厚生年金制度の拡充が急ピッチで進められ、給付額の大幅引き上げが問題となりました。
ところが財界は、厚生年金の改善が企業にとって給付引き上げに必要な掛け金負担の増加と自前の退職年金の負担と両方は重い、として両制度を接合・調整するよう「厚生年金基金制度」の創設を主張しました。
これには、多くの労働組合や野党がこぞって反対し、政権党からさえ異論が出ましたが、財界側の巻き返しで反対勢力が軟化、1965年に法制化(国会で反対貫徹は一つの少数野党のみ)され1966年に実施されました。
(税制上の優遇措置を採り入れた「税制適格年金制度」が1962年に導入され、退職一時金の年金化が主に中小企業などで進められましたが、ややこしいので記述は省略)
こうして、都市銀行も順次、厚生年金基金制度を設立していきました。三菱UFJ銀行に合併前の旧銀行での基金設立は、東銀1969年、三菱1973年、東海1974年、三和1975年、と同じ市銀連の中でも違いがありました。旧三菱では退職年金改定要求を出した組合に対して銀行側が基金制度導入を逆提案、組合が慎重を期した経過がありました。
右肩上がりで企業がお得の時代も
厚生年金基金は、国の厚生年金と企業の退職金制度を接合し調整した点が特徴です。公的年金である「厚生年金保険」の保険料を企業が国に納付する代わりに基金が受けて運用を代行可能とし、厚生年金の代行部分より3割以上の上乗せをした給付が義務付けられました。
その代わりに、基金への掛金や基金の運用益に税制上の優遇措置がとられ、これにより退職金や保険料の企業負担も軽減する設計や運営が可能となりました。運用益が多くなれば企業は拠出金を減らすこともできる制度です。
また、基金を別法人とすることで、母体企業の経営悪化に左右されることなく加入者の受給権保護が図り得る、とのメリットが強調されました。
基金制度の初めは、大蔵省の規制で運用は信託銀行と生命保険会社に限定し、資産の運用配分は5.3.3.2規制=「債券・貸付の安全資産5割、株式に3割以下、外貨建て資産に3割以下、不動産に2割以下」とされていました。
制度導入後、石油危機も乗り越え、バブル経済の崩壊直前までは、高い運用利回りが続き、企業負担を少なくした制度設計で年金給付が行われてきました。
企業の不都合で基金にサヨウナラ~
バブル崩壊後、低金利化が進んで運用難となり、積立不足分を企業が拠出せざるを得ない状況が広がりました。他方、アメリカ発の金融グローバル化が日本に金融自由化の圧力をかけ、信託・生保以外の投資顧問会社(外資も含め)にも委託可能として参入が増えるし、5.3.3.2規制も1995年以降緩和し、97年には撤廃するに至りました。
90年代、景気後退、経済成長停滞、金融危機による運用の悪化などから積立不足が目立ち、企業負担が増加してきました。積立不足が多く引当不足があると決算に影響する会計制度も導入され、企業の負担感は一段と強まりました。
元々、年金給付の資金源は基金の運用益に拠らずとも企業が全責任をもって事業収益から出して当然なのですが、基金の制度があることが負担とする傾向が企業側に強まりました。
90年代は、基金の解散や給付減額なども増え、財界は企業年金の変質・規制緩和の圧力を一段と強めました。毎年政府に要求書を出し続け、厚生省はそれなりに応じていましたが、衝撃的だったのは97年に給付減額を許すに至ったことです。受給権を企業側に立って侵害することを法律制定によらず、一本の年金局長通知で(一定の条件つき)認めたのです。これが根拠にされてりそな銀行ほか、厚生年金基金でない私立大学まで減額がまかり通ることになったのです。
更に財界要求はエスカレートし、厚年基金については、企業が国に代わって掛け金を運用していたものの、成果が上がらずメリット無しとして、代行の役割を返上して、別の制度にしたい、と政府に要求するに至りました。
こうして、「確定給付企業年金法」が02年に制定され、主要銀行は04年にほぼ横並びで代行を返上し、各銀行の厚生年金基金が企業年金基金に衣替えしたのです。
変動が当たり前に--「賃金が株相場で決まる」と同じこと!
同時に財界圧力により二つの新たな仕組みがスタートしました、
(1)キャッシュバランスプラン 退職年金の積立や給付を時々の市場金利(多くの場合は国債の利回り)で決めるもので、「労働の対償」と切り離し、金融市場の利率で積み立てます。確定した金利で給付するのとは全く異なる変動方式で、老後の安定した生活を支えるべき退職年の本質を大きく歪めるものです。これには、給付の時のみ適用する類似方式もあり、りそな銀行は減額の時に退職者にもこの制度へ移行させるという理不尽なことを不同意者にも強行しました。三菱UFJ銀行は現役に対して2010年に組合合意を得て類似方式を導入しました。変動する方式なのに「確定給付企業年金法」の適用範囲とされました。
(2)「確定拠出年金」の法制化 アメリカで401k方式とされていたものを日本に導入したもので、企業が退職年金積立の資金を労働者に給付して運用も結果も労働者の自己責任とするものです。
金融市況によって元本割れはあるし、それでも手数料はしっかり取られ、退職年金に値しないものに歪められました。
これは確定給付企業年金の無い企業について税制恩典付きで実施するものなのに、三菱UFJ銀行は確定給付企業年金についての従業員組合の改善要求を四半世紀も無視して、この確定拠出年金を`15年に導入したのです。法律に定めの無いことで、従業員に賃下げ分を拠出させておきながら銀行が拠出した形をとって税制恩典を受けるなど、脱法的なやり方でした。最高益の記録を更新しつつえげつない制度を入れたことは看過できません。
更なる変質のリスク分担型
財界の圧力は更に強まり、AIJ事件を奇貨として様々な検討を経てリスク分担型が2017年に施行されました。これは次のような特徴と問題点があります。
▲企業年金は企業の責任で運用益増減や積立不足発生のリスクを担うべきものなのに加入者(現役)・受給者にもリスクを分担させる。
▲企業が掛金を前もって多く出す仕組みは、安心出来るように思える面があるが、積立の途中段階や想定外の不足金発生の場合は、加入者・受給者の減額負担が企業の分担以上に過大となる。
▲現役労働組合と企業の合意のみで現行の確定給付企業年金からリスク分担型へ移行可能、退職済みの受給者をも組み込むことが可能。
▲この場合、受給者の賛否を問う必要はない。不同意者は一時金を選ぶことが可能だが、この算定にも受給者は排除される、etc.
細かな定めは省略しますが、7月1日現在、掛け金のみ実施が349件、全面導入が13件、と少ない状況です。使い勝手が悪いとして更なる改定や別方式の検討が企業年金・個人年金部会の俎上にのぼっており警戒が必要です。
以上、細かな点は省いて大筋を振り返ってみましたが、企業の都合、財界の要求で退職年金の本質を企業本位に歪め労働者や退職者に分りにくい仕組みにしてきたことが一貫して明確です。マスコミや労働組合が的確迅速に報じない面もありますが、私たちが主体的に情報と知見を共有し、企業本位の改定など許さないように努力し続ける必要があると痛感します。
(文責 稲邑明也)
コロナ禍の下、年金・銀行はどうなる?どうする?
新型コロナ感染の終息見通しが見えないなか、感染リスクは勿論、暮らし、年金、そして銀行がどうなるか、様々に不安が広がっています。こういう時ほど大本の情勢と問題状況を見つめる必要がありませんか。
世界も日本も大変なのは
今の事態の深刻さは、実はリーマン・ショック後の債務過剰・世界的なバブル化・主要国の景気後退が進んでいた処にコロナ禍が加わったことで打撃が大きいものです。
株相場は三月に急落の後、半分ほど戻しており「バブル崩壊と言えない」との意見もありますが、コロナ禍対策の金融緩和で溢れた投機資金が強欲なマネーゲームを続けているものであって、いずれ本格的崩壊が来ると考えざるを得ません。実体経済への打撃は未曾有であり、世界恐慌へ進むと各国は一段と深刻な事態に突入することは避けられず、いずれ金融システムに波及するとの警戒論も経済紙誌に出ています。
例えば、四月の段階で山口広秀(元・日銀副総裁)・吉川洋(立正大学長)共同論文では、コロナショックの影響と対策について金融システムに波及する可能性が高いと警告しました。(4/6日本経済新聞)
日本は特別の矛盾が…
日本は世界的な問題状況に加えて、安倍内閣が消費税率倍加、賃金・年金の抑え込み、社会保障後退などで家計を冷え込ませる他方、異次元の金融緩和で日銀や年金積立金を動員して官製相場をつくりバブル化を進めてきた点が際立っています。
コロナ禍拡大の中、日銀総裁は「できることは何でもやる」と、ETF、REITに巨額を回し株価の買い支えに動きました。大銀行等へのドル資金調達のため外貨資産を一か月で三倍加(3月末24.5兆円!)、格付けの下がった日産自動車社債などの大量購入など大企業向けに従来にない動き方です。
大企業の倒産は悪影響大ゆえ支援も必要という論もあります。しかし「欧米の政府や中央銀行は企業支援に当たり、配当中止・雇用維持・役員給与減額など要求しているのに日銀は雇用確保など求めるべき」と国会で共産党議員が日銀総裁に問いただしたのに、総裁は背を向けました。
コロナ禍対策で日銀は国債を無制限購入との方針ですが、GDPの二倍も発行した国債を更に買い増すのは国際的に信用失墜・暴落・金利急騰のリスクを一段と抱えることであり、投機筋の動向によっては日本経済も国民生活も大きな痛手を被ります。当面必要な財政支出は急ぐとしても大企業・富裕層に対して応分の負担を求めるなど国民本位の財政健全化が進まないと泥沼にはまります。
不安高める年金改定
安倍政権の社会保障後退は著しく、公的年金はアベノミクスの期間、実質6.4%の減少です。先細りの年金法改定は参院で審議中ですが「マクロ経済スライド」の弊害続行など問題だらけです。
厚労省は、公助は削り自助を国民に押し付ける一貫した方針で「企業年金・個人年金部会」の場を使って企業本位の施策方向を審議、概要は当ホームページ「運動方針」の情勢部分に記した通りです。
`17年に施行したリスク分担型は、三井住友、りそな銀行など「掛金のみ導入」は319件、南都銀行など「全面導入」は11件です(5/1現在)。
掛金を超える積立不足が出たら現役と受給者の負担になる仕組みが発動しますから、相場急落の三月末の決算に該当銀行・基金はどうなるのか注目されます。
この制度は企業本位で退職年金の本質を歪める筋違いなものですが、それでも企業側から使い勝手が悪いなどの批判があって更なる改定を進めています。(当会としては採用検討なきよう頭取に2月に書簡で要望)
ただ、リスク分担型は、企業が事前に積立余裕のある時に採り入れ易い制度ですが、コロナ禍の打撃が長引きそうな今の情勢では事前積立がやりにくく、むしろ企業・財界が「バイアウト」や他の改定に走る可能性があることに注意が必要です。
企業本位の「バイアウト」や「リスク共有型」
バイアウトは当ホームページ「運動方針」の情勢部分に記した通りで、企業の都合から出ているものです。今国会で厚労省案件が終わると部会として議論を進める見通しです。欧米では既に先行しているやり方ですが、受給者や受給権がどうなるか、私たちとしても関心を高め吟味が必要です。
リスク分担型は、先ず企業がリスクを分担し、積立不足が生じたら受給者・現役で負担、と負担順は明確なのに対し、リスク共有型は初めから受給者・現役がリスクを企業と共有・負担する仕組みで、一段と退職年金の本質を歪める悪質で筋違いなものです。
厚労省は企業年金・個人年金部会で今の処、討議課題に挙げていません。しかし、公益法人で中立的であるべき企業年金連合会が「リスク共有型」を提起しており、注意が必要です。同連合会は厚労省の企業年金・個人年金部会の森戸部会長代理を座長とした企業年金制度研究会で`18年から約半年間、バイアウトほか「制度の改善」を審議した中に掲げているものです。ここには厚労省部会の臼杵委員や厚労省官吏もオブザーバー参加しており、私たちとしては先行き看過し得ないと思います。
銀行経営陣の危機意識に警戒を
コロナ禍が銀行にどれほどの影響を及ぼすか?―経済活力復元の先行きは不透明で、本格的に打撃が顕在化するのはこれからです。
MUFGとして決算発表で恒例の予測は見送りとも伝わっていましたが、IMFのシナリオを参考に策定した想定で、MUFGは今期について▽各国利下げ等で外貨資金収益低下、▽株価下落、▽経済停滞による投資・商取引減少、金融市場での投資意欲減退などで業務純益が3千億円減少、特別損益では▽貸倒引当倍増、▽株式売却損益悪化などで3千億円の減少と見立てています。三菱UFJ銀行単独の想定は非開示ですが、かなりの部分を占める金額と見られます。
この処、海外展開を推進したものの、子会社の株価下落、外債運用 (四割は最低格付け債券であり、CLO[低格付けの法人貸付担保の金融商品]のリスク増大は深刻です。新興国の通貨下落、石油相場、航空機ファイナンスなど他にもリスク増大の上に、送金手数料の引下げ圧力なども加わり、一段と業績低下の見通しです。