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​最近の動き

 

 

三菱UFJフィナンシヤルグループと銀行の中間決算

三菱UFJフィナンシャルグループ(以下MUFG)

25年度の4-9月の中間決算が11月14日に発表されました。

純利益は1兆2,929億円で前年同期比2.7%増で過去最高を記録しました。

業務粗利益(一般企業の売上高)は2兆9,357億円で前年同期比0.8%増でした。円金利上昇の影響の取り込み、前年の保有債券組替えによる収益改善を含めた資金利益の増加、国内外融資関連・ソリューション関連(*)手数料を中心とした各種手数料収入の増加、海外における買収関連収益などに因るものです。  (*)M&Aアドバイザリー(買収・売却・事業承継など)の助言、資本市場関連のアレンジメント・主幹事業務の手数料など

特に、★与信費用総額は前期の戻入れ+657億円、★モルガンスタンレー等の業績好調による投資利益増加1,264億円、等のプラス要因があったものの、株式売却益の大幅減(2,337億円)等のため、純利益は前年同期比5,688億円の増加に留まっている、と言えます。

株主還元として年間配当予想を74円(前年度比+10円 / 期初予想比+4円)に引き上げるとともに、下期に2,500億円を上限とする追加の自己株式取得を決議(通期では過去最大の5,000億円)と発表しました。21~25年度の5年間累計では1兆9千億円となります。(因みにMU銀行の上半期人件費が3,150億円、MUFGの前期純利益が1兆8,629億円)

自己株式取得については、利益を賃上げや設備投資などに活かすべき、など批判があり、岸田元首相は「新しい資本主義」の観点から規制を主張したことがあります。

私達の年金給付の債務者は三菱UFJ銀行(以下MU銀行)でありMUFGの事業全体状況と併せて、銀行としての決算内容を見ておきたいものです。

    三菱UFJ銀行は純順利益横ばい

三菱UFJ銀行(以下MU銀行)の上半期純利益は、7,112億円で前年同期比▼0.5%でした。

「決算短信」など開示資料から次の特徴点が窺えます。

業務粗利益―1兆4,700億円でMUFG全体の約半分相当です。前年同期比では9.6%の増益でした。

しかし、国内業務部門の粗利益は1億円余の増加に留まる他方で、国際業務部門が16.6%増益となっています。

国内では貸付などの資金利益が20.4%も伸びたのに対して、「国債等関係損益」で883億円の損失を計上していることが目立っています。

国際業務は資金利益が12%減(*)の他方で「国債等関係損益」が前年同期の損失(14億円)から一転914億円の利益計上の他、M&Aアドバイザリーなどの手数料収入を含む「その他業務利益」が前年同期比で80.1%もの増加となっています。

[(*) 国内と異なり外貨調達コスト上昇とクレジットスプレッド・市場環境の悪化により、利鞘が縮小したこと、24/3期計上の投信解約益の反動が主因とみられます ]  

 

経費全体では人件費が8.3%増、物件費は12.0%増で営業費全体としては10.7%%の増加です。人件費について銀行は、従業員組合に対して「基本給のベアは満額3%、定期昇給、福利厚生改善などを合わせて 「実質9%程度」の賃上げ」と回答しました。組合員には回答通りなのか、非組合員への抑え込み、或いは人員削減合理化などないのか、年度間通しての実数値を有価証券報告書(来年七月公表)を見る他ありません。

なお、銀行もMUFGも営業費÷業務粗利益の比率引き下げを課題としており、この上半期は珍しく49.3%と五割を切りました。業務粗利益の増加による結果です。

「総資金利鞘 (経費控除後)」は預貸金の利ザヤを示すもので、国内部門についてのみ公表。前年同期0.13%からこの半期は0.20%と大幅に改善です。

業務純益 業務粗利益から営業費を差し引き、貸倒引当金繰り入れ後の業務純益は7,450億円となり、前年同期比8.6%増でした。

臨時損益 次の二つが主な項目です。                     

〇貸し倒れ引当金などの戻入益832億円、

〇株式等関係利益が、いわゆる持ち合い株処理などで1,001億円計上。しかし、前年同期より1,486億円の大幅減少です。

この二項目の増減で臨時損益としては黒字2,086億円計上となったものの前年同期比で見ると▲23.8%の653億円減少となったのが純利益を引き下げる要因となっています。

更に、「法人税等調整額」の項で前年同期比877億円の減少というのもあります。

当期純利益  以上の要因・内容で、税引き後の純利益は7,112億円(前年同期比▲0.5%となってます。

全体的に見ると要するに、国内の預貸金業務は順調に伸びたものの、国内の国債取引や海外の資金利益の不振(*)、株式売買損計上で最終の純利益微減となっており、利上げに向かう環境の下で本来的業務でこそ安定的に利益を上げ得ることが示された決算と言えます。

 銀行が定年延長の方針を発表 

銀行は10月に「定年を60歳から65歳へ延長」「55歳以降の一斉給与引き下げ廃止」を発表しました。これに伴い企業年金についても見直しを進める方針とのことです。

定年5年延長に見合い、①退職一時金、②企業年金の現価=給付をどう引き上げるのか?注目されます。②について厚労省は実質減額とならないよう規制していましたが、先月に緩和し、名目上増額なら、例えば1円の増額でも良しとする通達を出しました。

現役に実質的に不利益を強いる政府が私達受給者に今後どう出るか?警戒が必要です。

 

銀行の企業年金基金の決算発表

前期24/3期決算が「三菱UFJ銀行企業年金基金」のホームページに開示されています。

今の処は対外的に非公開ですので、当会のホームページには記載しませんが、会報で分析と解説を掲載しています。

旧銀行が合併して現基金が発足以降20期目の決算であり、全期通しての各種項目・指標の数値もグラフ化して変遷など分析し、特徴点を企業年金連合会の計数とも対比して解説しています。

​会報ををお読みになりたい方は aki_ina@ams.odn.ne.jp  へご連絡ください。

MUFG・銀行の四半期決算―高収益ながら不安定な面も

8月5日にMUFGと銀行の第一四半期(4-6月)決算が発表されました。

MUFGは、経常収益が前年同期比7.7%減の3兆2,539億円、経常利益が3.4%減の7,085億円となりました。前年同期に傘下のタイ・アユタヤ銀行の決算期変更で利益を計上した反動(約▲1,600億円)や市場部門での収益減などが響いた、との報告です。MUFGとしての四半期純利益は1.8%減の5,460億円でした。

三菱UFJ銀行はこの4-6月期で3,150億円の純利益計上で、前年同期比11.4%増益となっています。預貸金利回りが0.81%→0.91%へ伸びていますが、「特定取引利益」=株式ほか金融商品の売買利益が前年同期比308億円の減少で33億円の損失を計上。

国債売買も278億円の損失計上(前年同期は94億円の損失)で、結局、業務粗利益(一般企業の売上高相当)は3.75%前年同期比減となっています。

他方、貸倒引当金の戻入れ益(315億円)、特別利益240億円増などがあって純利益は増加となっています。本業の預貸金業務は利上げ方向で順調であると言えるものの、リスキーな市場部門で不安定な状況になっていると言えます。今後、金利上昇が見込まれている下で銀行は預金獲得にも力をいれ新型店舗を開設、資産管理・運用分野拡大に動いています。

銀行が20年ぶりの新型店舗

MU銀行は、個人顧客へのサービス提供に特化した新型店舗を9月から順次開設、と報じられました。約20年ぶりの東京・大阪への新型店舗開設となり、東京は高輪ゲートウェイ駅の新商業施設「ニュウマン高輪」に、大阪は箕面市・箕面萱野駅直結の「みのおキューズモール」に出店です。新型店舗は、買い物や通勤、通学、外食などの「ついでに気軽に立ち寄れる銀行」を目指し、商業施設に出店。資産運用の相談や新規口座開設、一部の事務手続きなどの対応を予定。一方、現金は取り扱わないキャッシュレス店舗となることが新たな特徴点です。

資産運用については、金利ある世界の再来と資産運用ニーズの高まりにより、対面での相談ニーズが拡大しているとし、個人の顧客がより気軽に相談できる環境を整備。また、アプリやタブレットなど、デジタルチャネルによる事務手続きのサポートも実施するとのことです。オープンで気軽に入りやすい店内デザインへ一新の他、営業時間を夕方や土曜・祝日に拡大し、平日日中に銀行への来店が難しい現役世代・子育て世代が来店しやすい店舗を目指す、としています。

高輪ゲートウェイの「品川駅前支店 高輪出張所」は、9月12日に営業開始。みのおキューズモールの「千里中央支店 箕面萱野出張所」は、10月20日に営業開始予定。

 

 

決算発表 MUフィナンシャルグループは最高益計上

銀行は債券等で損切のうえ、二割の増益

15日発表の三菱UFJフィナンシャルグループ(以下[MUFG])の24年度(25/3期)は、

純利益が1兆8,629億円で、過去最高を記録しました。国内外ともに金利が上昇し、本業

の収益増のほか、KS(旧アユタヤ銀行)決算期変更、海外での買収、持ち合い株売却など一過

性要因が重なってのものです。

他方、国内外の債券ポートフォリオ組み替え(損切など売却損)7,800億円を実施してお

り、このうえでの最高益であることが注目されます。

与信関係費用では、主要国の関税問題などでの信用リスク増大を勘案して「現状の見積

額を追加引き当て」の上、海外での大口貸倒引当金の戻し入れ計上により費用総額は前期比8.1%の減額となっています。

増益を受けて配当は24/3期41円→25/3期64円とし、この配当金額は純利益の40.0%(配

当性向)、配当総額は約7,420億円となります。 

 過度の自己株式取得には社会的に批判が高まっていますが、MUFGは25年度2,500億円を予想しています。21年度以降1兆4千億円実施、これで累計1兆6,500億円という巨額に達します。

今期25年度は純利益2兆円を目標とし、年間の配当金は、25年3月期よりも6円増の70円の予想を公表しました。

銀行…内外債券の巨額損切り  株売却、貸倒引当戻入で二割増益

 MUFG発表の資料や説明会などから、銀行について次のような特徴点が窺えます。

融資業務 MU銀行の国内外融資総額は107.7兆円で24/3期比4.15%の増加でした。

国内で7.69%増ながら、海外で2.82%減となっているのが特徴的です。預金総額は202.7兆円。

業務粗利益 国内で全体の約六割相当の1兆653億円を稼ぎ、18.8%増益です。いわば本業部門の資金利益は16.8%増と順調に増えたものの、国債等関係損益で1,277億円もの損失を計上。

海外部門の粗利益は8,115億円で41.5%の減益。これは、●資金利益が4.6%減、●国債等関係損益の損失が151.1%増の▲7,136億円が主因です。前記MUFG全体と同じで、国債等債券相場の変化と見通し難で巨額損切、評価減があったものです。

国内の資金利回りは0.81→0.86と広がったものの、有価証証券など外部負債利回りの悪化で総資金利ザヤは0.19%→0.12%へと縮小しました。

小企業向け貸付は、58.23%→55.93%へ引き続き低下

しました。

営業費 全体で3.52%の増加です。海外部門の円安反映はどの程度の影響か、公表資料

からは分かりません。人件費は3.57%の増加です。(海外での人件費増、若手や中途採用

増による人件費増も勘案すると国内中高年層は増加率は小さいと考えられます)

業務純益 業務粗利益から営業費を差し引いた額です。 業務粗利益が▲17.8%、4,068億

円もの減となったために業務純益は▲46.8%の5,217億円を計上。

臨時損益 株式売却益は、いわゆる持ち合い株式の解消に伴うものが多

額を占め「株式等関係損益」は計51.9%増の4,346億円となっているの

が目立ちます。また貸倒引当の戻入益2,371億円もあり、この二要因で

臨時損益はプラス6,858億円の巨額計上です。

こうして業務純益から臨時損益を差引いた経常利益は20.8%増の1兆2,075億円を計上。

税引き後純損益 特別損益から法人税などを控除した純利益は9,592億円と高水準です。

 

以上から、特徴的なことは、★本業の預貸金業務では海外不振ながら国内で増益、★海外

含む国債等関係損益で損切もあって巨額損失、★業務純益ではほぼ半減、★最終利益は約

二割増となったものの、内実は、持合い株売却益と貸倒引当戻入れという、本業とは別の

いわば臨時的・一過性的な要因が占めている(利益額の78.1%)と言えます。   (25.5.28.)

 

企業年金基金の代議員会 25年度予算ほか審議

基金は毎年、一月に翌年度予算、七月に前年度決算を審議のうえ、議決しています。今年は1月27日に開催、25年度予算案ほか審議しました。概要は会報No.84に載せましたのでご覧になりたい方は

aki_ina@ams.odn.ne.jpへお申し込みください。

MUFGが脱炭素の国際的枠組みから脱退
MUFGは、銀行界でつ<る脱炭業を目指す国際的な枠組み「ネットゼロ・バンキング・アライアンス(NZBA)」に21 年5月本邦初、世界でも先駆けて加入し、「MUFGカーボンニュートラル宣言」を公表していました。
この宣言には、MUFGは自社のパーパス(存在意義)を「世界が進むチカラになる。」と定めて「気候変動への対応を牽引するため、お客さまの脱炭素化に向けた取り組みやイノベーション技術への支援を一層拡大してまいります」「具体的な行動計画を策定します」と発表していたのです。
しかし3月18日の新聞各紙は、MUFGが三井住友FG、野村ホールディングスに続いて脱退方針と報じました。MUFGとしての発表はありませんが、日本経済新聞は次のような指摘を書いています。
◆トランプ米政権下で脱炭素をめぐる業界横断的な活動への批判や法的リスクがくすぶっているのが背景にある。米銀では24年12月以降、JPモルガン・チェースやゴールドマン・サックスなど主要6社が既に離脱を表明。カナダでもロイヤル・バンク・オブ・カナダなど一月末までに続いていた。
◆MUFGはNZBA運営グループのメンバーとして脱炭素を巡る議論に関与していたほか、段階的な脱炭素への移行を目指す「トランジションファイナンス(移行金融)」 作業部会でもトップに就くなど邦銀の中でも主体的に取り組んできた。三菱UFJの離脱は国際的な協調の機運が薄れていることを象徴する。
 ただし、脱退後も脱炭繁への投融資計画など気候変動への対応は個別に続ける構え…との観測も載せています。MUFG自体は実質的に変わらず続行としても「世界が進むチカラになる。」と折角牽引役になっていたのが、脱退すると国際的な貢献、世界の評価や共感はどうなるのか?問われます。
 

 

三菱UFJフィナンシャル・グループの第三四半期決算

三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下MUFG)は25年3月期第3四半期決算(24/4-12)を2月5日に発表しました。経常収益が10兆2,775億円、純利益が1兆7,489億円と、過去最高の増益で、次のような特徴点があります。
◆経常収益は前年同期比20.8%増の10兆2,775億円、経常利益は34.4%増の2兆4,219億円、純利益は34.7%増の1兆7,489億円でした。
◆全ての部門で増収増益となり、特にグローバルコマーシャルバンキング事業本部の粗利益が64.4%増加したのが目立ちます。
◆資金運用収益が2兆1,740億円で、前年同期比20.8%大幅に増加しました。
◆株式等関係損益も好調で、前年同期比115%の伸びで4,881億円。これは純利益を押し上げて純利益額の28%に相当。持ち合い株の処分という本業外の取引が利益増に寄与した形です。
◆総資産は、前期末比2.4%増の413兆1,932億円、純資産は4.2%増の21兆6,224億円。
◆資金運用 貸出金が7.2%増加して125.6兆円、内訳としては国内法人1.2%増、海外1.5%増、政府等4.9%増となっています。他方、有価証券は0.4%減で86.4兆円。内訳は国債が4.2%減、外債が5.3%増です。資金運用の二本柱である貸出金と有価証券の比率は融資の伸びと共にほぼ6対4に近づいてきました。
保有資金の内、日銀への当座預金は91.3兆円もの巨額となっており、有価証券総額を上回る金額です。前年同期比1.5%減ですが、貸出にも回らず滞留分が多過ぎて、異次元の金融緩和の尾を引いていると言えます。
◆全体として増益ながらも、外国債券の評価損は1.01兆円、国内債券の評価損は0.21兆円を計上。前年同期比で少し好転しているものの、巨額となっているのが目立ちます。
◆25年3月期全体の純利益目標は1兆7,500億円、前期実績10.6%の増益を見込んでいます。

三菱UFJ銀行も最高益ながら一部に不安定さが…
三菱UFJ銀行(単体)については次の特徴点が見られます。
◆業務粗利益(一般企業の売上高に相当)は前年同期比0.7%の微増。
◆貸出金は平残で5.7%伸び、利回り(国内のみ開示)は0.83%(前年同期比0.05%幅で増加)。
こうして融資業務などの資金利益は前年同期比5.3%増加。しかし、他方で「その他業務利益」の項で大幅に減少しているのが目立ちます。
◆「その他業務利益」は、主に市場事業本部での取引から生まれる利益で、680億円計上。前年同期比▲63%、1,170億円も減少しているのが目立ちます。
この要因としては国債等関係損益が1,969億円の損失(前年同期は1,594億円の損失が突出(前年同期比23.5%も損失幅拡大)している点があります。国債売買取引の他にも、外債での含み損を抱える銘柄の入れ替えを行ない、売却損を計上した要因があります。
ちなみに前期(一年間)の「国債等関係損益」は3,759億円の損失で、大手銀行中12位との報道もありました(週刊エコノミスト24/6/25)。
◆営業費は7.9%増(人件費・物件費の区分は四半期決算のため表示なし)
◆政策保有株(いわゆる持ち合い株)の削減方針による売却で「株式等関係損益」が前年同期比ほぼ倍増、3,530億円計上。これが大きく純利益に寄与しています。
◆四半期純利益は9,323億円。前年同期比20%増。
以上のように、過去最高益ですが、本業の資金利益は微増、債券売買での巨額損失や、保有株式の売却があって不安定さを抱えての利益であることが示されています。

 

企業年金・個人年金部会の「議論の整理」

企業年金は、財界の意向を受けて前世紀から様々に改変されてきました。改変の前段には、研究会や審議会・部会を開催し、関連団体・企業・識者で審議する方式をとってきました。
今は「企業年金・個人年金部会」の名称で2019年2月を第1回に開始、24年12月まで39回開催し「議論の整理」を24.12.27.に公表しました。27頁に及ぶ内容ですが、ポイントと問題点は、
▼国の年金が細ることを前提に、自己責任が基本である個人年金の拡充を進めること、
▼「資産運用立国方針」に基づき、外資運用企業が参入し易くし、競争が激化すること、
▼高リスク化のなか、受給権保護の姿勢が不透明なこと(支払保証制度、バイアウト)などです。
「年金のことは分かりにくい、取っつきにくい」といった受け止め方が少なくありませんが、直接間接に及んでくる内容があります。 このホームページ「交流の場ー最新」に分かり易い記事を載せていますのでご覧ください。
 

 

 

2025年 私たちを取り巻く情勢
ウクライナ・ガザでの戦乱、世界的インフレが収まらない中、新しい年が明けました。日本では、物価高騰に医療費介護費の負担増など年金受給者の暮らし、経済、平和など多面的に不安が広がっています。私たちとしては内外の動向にも目を向けつつ、安心して老後を過ごせる方向を見据えていきたいものです。


Ⅰ.私たちを取り巻く情勢 
1.    海外―インフレ、戦乱、景気後退などリスクが
昨年は世界的なインフレに対し、米欧などで金融緩和の是正策がとられるようになって利下げが進みだしたものの、成長率鈍化、債務国の難儀増、中東戦乱の周辺国拡大、中国経済低迷など様々に懸念されるリスク要因があります。
アメリカのインフレは減速したものの根強く、株式市場は引き続き堅調を維持しています。先進国などでの資金過剰は基本的に変わらず、バブル崩壊の危険性についての警告は出され続けています。トランプ氏が大統領に就く前から関税、米中対立ほか様々な面でリスクが高まり、予測し難い情勢下、投機筋の動きによって予断が許されない事態もあり得ます。  

 ◆トランプは予告編だけでかき回し (以下◆は川柳もどき)


2.    日本―アベノミクス後遺症、軍拡で難儀が続行
アベノミクスが、日本の金融・経済・産業など多面的に弊害をもたらしたのに、後続内閣が継承し、問題が深刻化しています。特に金融政策は、円安・物価高騰が続く下で日銀の利上げ必要の方向にあり、昨年7月にマイナス金利是正に動いたものの、国債費増大、景気と金融市場への懸念などから政権・財界の牽制があって、遅々として進まず新たな矛盾も出ています。 

 ◆アベクロの背後霊出る日銀に (クロ=黒田前日銀総裁)


アメリカの利下げ先送り、新大統領の思惑などから、円高に振れる可能性もあり、一段と予測困難な状況です。(三菱UFJ銀行調査室は、日米金利差の縮小により円高が進み25年度終盤には1ドル140円前半程度を見込むと発表=1/6) 
経済成長が低迷中ながら、貿易赤字の改善傾向が見られ訪日観光客増によるインバウンドなどで今は経常収支が黒字で推移中です。しかし「失われた30年」で構造的に国力低下中のところ、円高に振れ金利上昇となると一段と難儀が増します。国債利払い増と軍拡費増と相まって財政難が米欧の投機筋から見限られて国債格付け引き下げとなれば金融市場は大混乱となります。


こうなると国債利払いが増え、財政・金融など矛盾が深刻化します。日銀も国債購入は減らしつつあるものの、全く緩い計画のまま巨額の国債を抱え続け、利上げにより国債価格が下落、日銀自体の赤字決算の危険性、必然性を抱えています。いわば泥沼に足を突っ込んで股裂きで、這い上がる力が不足という状況と言えます。


世界的な資金過剰=バブル状況の中で、各国の政策当局は矛盾の糊塗策で先送りしても、日本の舵取りの誤策失策で経済・財政への信認低下が引き金となって日本発バブル崩壊の可能性も引き続き指摘されています。
▼著明な投資家・ジムロジャースは「金融危機発生は数カ月以内」と警告(週刊ダイヤモンド1/4新年合併合)。バブル崩壊に備えて資産三割を売却…との報道も。
▼ゴールドマンサックスは市場の資金が一部企業に過度に集中していることなど指摘しアメリカS&P500の名目トータルリターンは大幅低下を予想のレポートを発表。
しかし日本政府は脳天気で、アベノミクス路線のまま次の新たな政策です。


3. 「資産運用立国」で外資乗り込み
岸田前首相が国民向けに「失われた30年」を問題にし、「国民所得倍増」を掲げたハズが、アメリカ詣でから帰国してすぐに「資産倍増」に豹変。アメリカの巨大投資運用会社トップらと昵懇になって、22年末に「資産運用立国実現プラン」を策定しました。(首相退任後も資産運用立国議員連盟を作って石破首相に提言書を提出)  その狙いはー
●家計の金融資産で半分近い預貯金(約1,100兆円)を投資に向かわせる。
●企業価値向上の恩恵を家計に還元し、「成長と分配の好循環」を実現、さらなる投資や消費に繋げる、としています。


しかし経済成長に必要なのは、賃金・年金の引き上げであり、分配を言うなら大企業への優遇税制や減税の是正と国民への還元が重要です。投資へと税制優遇措置も伴う施策は、格差を広げます(金融資産非保有世帯は2人以上世帯:24.7%、単身世帯:36.0%)。
「貯蓄から投資へ」は国民のため!と謳う新NISAなどの施策は、金融市場に個人資金を誘導することで株式相場など更に盛り上げ、金融関係業界が繁栄するためのものです。
      ◆ニーサって何サ株屋がトクしてサ


売った買ったで客の損得は別問題!手数料稼ぎで利益を獲得できます。先行き心配な若い世代は消費を節約して投資に振り向けるとの実態調査もあり、これでは経済成長にも寄与しにくいことです。(24年1~9月でNISAは、+18%の2,508万口座に増加、1~9月買付額13.8兆円、前年同期比の3.4倍へ拡大。増加率では、10~20歳代の伸び幅が最大、と金融庁発表。)


「貯蓄から投資へ」は小泉政権の時から強調していますが、バブルの経験や国民性もあって投資投機に向かわないで来たのを、▼資産運用立国プランは誘い水を色々仕掛けていること、▼しかも従来以上にアメリカなど海外の資産運用大企業が日本に進出し易いように計らっていること、に問題と特徴があります。 


海外の大手が日本を草刈り場に…プランの柱には次のように問題点があります。
★コーポレートガバナンス(企業統治)改革=日本的な商慣行は止め、米欧流に変革。海外資本にとっての参入障壁の打破。資本の効率、投資の果実を意識した経営へ!など掲げています。コストカットのみならず多面的多角的に貪欲な利益優先・株主還元へ転換を狙います。
★資産運用業の改革=日本的商慣行、特にメガバンクでも見られる企業グループの枠打破で、ブラックロックやゴールドマンサックスなど大手運用企業が乗り込みやすいように諸々改革。
★企業年金の改革=「資産運用力」の向上を掲げて海外の資産運用会社が、基金などに取引開始など営業をしかけ易くする。受益者のために「運用の見える化」など言いつつ、基金の決算など厚労省ホームページに開示など図るが、真の狙いは運用会社が稼ぐ改革。


内外の資産運用会社が競い合うとどうなる?
基金の委託先の運用力が一段と高まると、母体企業(=銀行など)はその分、拠出額を減らせるメリットがあるものの、成果競争激化で次のような懸念がでてきます。
▼運用力を高めるために、安定的運用よりもリスク覚悟の運用に力点を置くのでないか。
▼運用会社が成果を追求して高評価する企業に投資を増やす、そのため低評価企業への投資を減らして関係企業の株価変動を増幅させかねない。
▼力のある資産運用企業が、更に運用資産を集め増やしていくこととなり、この過程で、弱小運用企業の資産を奪い、市場支配力を強め、市場の乱高下が増幅されるのでないか。
▼グローバルに運用している運用企会社は、日本よりも海外の投資に力点を置き、円売りドル買い=円安の傾向を強めるのでないか。


4. 銀行―リスク増大のなか合理化、業務新展開しつつ競争
(1)銀行業界の動向
全銀協会長は年頭挨拶で、中国経済の内需不振など海外のリスク要因に注意を払う必要を指摘しつつも「貯蓄から投資へ」の流れを促進する取り組みを強調しました。
これからは融資先が、金利負担、企業物価・コスト高、景気後退などで業績低下が想定され、与信費用増、融資先倒産、保有有価証券の減価などリスクが増大します。


本来、銀行は預貸事業が基本なのに各行ともに「貯蓄から投資へ」を推進し、「資産運用立国」に呼応して富裕層ビジネスに一段と注力の経営戦略も目立ちます。しかし、家計が冷え需要低迷で経済低迷の時に、投資へ誘導し資産運用立国プランに乗って稼ぐ戦略が銀行業本来の社会的役割なのか?日本経済に資するのか?問われます。


海外では利上げが進行すると共に債券価格は下落(コインの裏表の関係)し、巨額保有し売買もする金融機関はリスクを抱え込みます。こういう中でメガバンクは海外ビジネスの更なる拡大、国内では銀証隔壁緩和、デジタル化、カードビジネス合従連衡、融資拡大のための預金獲得など策定しているのが共通しています。


(2)三菱UFJフィナンシャルグループ
前24/3期はMUFG発足以来の最高益を更新し諸々の経営指標を達成したとしています。しかし高リスク下に弱点もあり、その一つは債券ビジネスです。国債等債券損益は23/3期▲5,910億円、24/3期▲3,759億円、と続いており大手銀行中12位のランク付けもあります(「週刊エコノミスト」24.6.25号)。            ◆巨漢でもアキレス腱はつきのもので
今期中間決算では、純利益は1兆2,581億円で、前年同期比35.7%増と過去最高を記録。株主還元として、年間配当予想を60円(前年度比+19円 / 期初予想比+10円)に引き上げると共に、3千億円を上限とする自己株式取得を決議(24年度通期で合計4千億円)。21~24年度の4期だけで合計1兆4千億円に達します。自己株式取得については、利益を賃上げや設備投資などに活かすべき、など批判があり、岸田前首相は「新しい資本主義」の観点から規制を主張したことがあります。
            ◆総理でも分け前処理に口だすな
今期から3年間の新中期経営計画を策定、「成長戦略の進化」として7本の柱を立て、アジアでのビジネス展開などと共に「資産運用立国実現への貢献」を掲げています。
亀沢社長は、「資産運用事業を強化し、銀行・信託・証券と並ぶ第4の柱に据える」と述べています。


相次いだ不祥事件は偶然か?
銀行・証券の業務一体化での金融持ち株会社は禁じられており、このため銀・証隔壁が設けられていたのに、これを経営上層部が破る違法事件が昨年六月に発覚しました。  
直後の株主総会で亀澤社長は「銀証連携はお客様本位の取り組みのつもりであった」と述べ、先月も「ほとんどのお客さまからは、これまで通り銀行と証券が連携しサポートして欲しいとの声を頂いています。銀・証連携自体は否定せず、法令を守りながらサービスを提供することがわれわれの責務」(週刊ダイヤモンド25.1.4.新年合併号)と強気発言。 

 
この事件捜査の中で、三菱UFJ銀行員のインサイダー情報漏洩が報じられました。更に三菱UFJ銀行員が貸金庫保管物横領事件も発覚、投資に回していたとの報道です。また、ベンチャー企業の株式を取得していた行員が株価下落を動機に経営陣を脅迫という事件も昨年8月に報じられました。世も銀行も資産運用に傾斜する中で起きていることを考えると ◆大男総身に神経回り兼ね と片付ける訳に行かないと思えます。


 (3)三菱UFJ銀行
24/3期の純利益は8,043億円と合併以降2番目の額で、24/9上半期の純利益は、7,147億円と高水準となりました。貸付増加と金利上昇が引き続き寄与する他方、「国債等債券関係損益」は国内で156億円の損失、海外で153億円の損失でした。
 銀行が常に言及している経費率(営業費÷業務粗利益)は分母の利益増に伴い低下、24/9期は48.8%となっています。人件費は5.3%増で、従業員組合への賃上げ回答率を超えています。

 

初任給は年年上がり、三井住友銀行が来春30万円との報道もありますが、業界共通して人件費圧縮は至上命題であり、銀行にとって増額分をどの面で抑えるのか、企業年金の受給者に及ぶことは無いのか、警戒は必要です。


4. 年金を巡る動向―企業年金も公的年金も打撃続く
(1)公的年金
アベノミクス以降、物価上昇率以下に抑えられ右グラフの通り、この間実質7.8%の減額です。高齢者の支出ウエイトが高い生活必需品の 物価は高く推移しており打撃は大きいと言えます。
 今年は5年に一度の改定に当たり現役に関係する事柄について報道があります。65歳からの在職老齢年金で、減額の基準額を月額62万円へ上げる案が出ていますが、恩恵受ける人が限られ、並みの人に今次改定は期待できそうにありません。
(右は「国民春闘白書25年版」より)


(2)企業年金
①確定給付企業年金(DB)
DBは物価変動にスライドすることはなく、定額給付のため物価高騰となると暮らしに響いてきます。`12年度から三菱UFJ銀行が導入したキャッシュバランスプラン(CB)制度は10年国債の市況を基準に給付のため、マイナス金利下、最低保証1.0%を下支えに2.5%適用のままです。給付利率は5年ごとに見直し、次の改定は今25年度です。またCB方式での受給者は24/3期末:4,016人で全受給者43,894名の9%となっています。


②企業年金・個人年金部会
厚労省は公的年金の先細りを、制度改善より企業年金と個人年金で補う方向で部会での審議を続け、現役向けに次のように筋違いな諸改定を進めてきました。
■確定拠出年金(DC:確定給付とは異なり、運用は個人責任)を普及の主流とする、

■掛金限度を引上げる(税優遇とセット)、

■企業が掛金負担するDCと併せてiDeCo(企業と無関係に個人が拠出)を拡充し普及する。(三菱UFJ銀行は法制以前に15年に脱法的に導入)、


部会は、22年以降は資産運用立国方針に即して諸々の審議を進め、先月末に「議論の整理」を公表。iDeCoなど個人年金の拡充、企業年金・個人年金の普及と促進、など多岐にわたる27頁の文書で、次号に解説します。

私達の確定給付企業年金にも関連する内容があり、次の2点は注意が必要です。
a.バイアウト―企業が企業年金の資産を給付債務とワンセットで生保などに譲渡するもので、事業のグローバル化、M&A(企業の合併買収)などから、資産負債の圧縮・資本効率向上に資するとか、欧米では既に実施されている、として19年5月の部会で経団連の委員が提起。三菱UFJフィナンシャルグループも二年前に米国子会社に実施。企業のメリットや都合は明確ですが、日本国内での事例はなく、受給権がどこまで保証されるのか問題です。


b.支払保証制度―企業や基金が年金給付不能となった場合に備えて受給者に支払いを保証する制度。2001年に国会で附帯決議をしたのに政府は着手もしないまま24年経過。経団連などが“モラルハザードとなる”“財源が問題”などの口実を並べて反対のまま先送りしてきましたが、国会決議や受給権の軽視自体がモラルハザードです。  

   
5. 銀行の企業年金基金 (対外秘の部分がありますので、ご覧になりたい方は、当会メルアド経由、またはaki_ina@ams.odn.ne.jpへお申し込みください。)
 

 

 

三菱UFJフィナンシヤルグループと銀行の中間決算
 金利上昇などで利益増、配当・自己株式取得で株主に還元増
三菱UFJフィナンシャルグループ(以下MUFG)の4-9月の中間決算が11月14日に発表されました。

純利益は1兆2,581億円で前年同期比35.7%増で過去最高を記録しました。

業務粗利益(一般企業の売上高)は海外での買収影響、円金利上昇影響の取り込みや利ざや改善による資金収益の増加、国内外の手数料ビジネスの 好調等を主因、との発表です。

政策保有株式(かつての持ち合い株)の売却益3,639億円(前年同期比2,336億円増)という特殊要因が純利益増に寄与など今中間期の特徴点があります。
株主還元として、年間配当予想を60円(前年度比+19円 / 期初予想比+10円)に引き上げるとともに、3,000億円を上限とする追加の自己株式取得を決議(24年度通期で合計4,000億円)しました。
自己株式取得については、利益を賃上げや設備投資などに活かすべき、など批判があり、岸田前首相は「新しい資本主義」の観点から規制を主張したことがあります。
私達の年金給付の債務者は三菱UFJ銀行(以下MU銀行)でありMUFGの事業全体状況と併せて、銀行としての決算内容を見ておきたいものです。


 三菱UFJ銀行も大幅増益
三菱UFJ銀行(以下MU銀行)の上半期純利益は、22.7%増の7,148億円となりました。
「決算短信」など開示資料から次の特徴点が窺えます。
業務粗利益―前年同期比横這いも国内微増・海外微減
業務粗利益(一般企業の売上高に相当)は前年同期比▲3億円の1兆3,408億円(国内2.0%増、海外1.5%減)です。国内は貸付額+7.82%、貸出金利回りは微増(0.78%→0.82%)で粗利益増ですが、海外は貸付額が前期末比で5.4%減、資金利益が前年同期比1.7%減に加え、特定取引(デリバティブなど金融派生商品、債券、株式などの売買)の利益55.1%減が要因で粗利益減となっています。


営業費―微増   利鞘―縮小
経費全体としては人件費が5.3%増ですが、物件費の減少で営業費全体では2.0%の増加に留まっています。人件費は従業員組合への賃上げ回答率を超えています。人員がデジタル部門33%、グローバルCIB部門15%等増え、高め給与を伴い増加の反映とみられます。
預貸金の利ザヤを示す「総資金利鞘金利鞘(経費控除後)」は0.13%と低水準で、前年同期の0.29%に比べ△ 0.15と大幅低下となっています。(詳細の開示なし)
因みに三菱UFJ信託銀行は資金運用利回りも資金粗利鞘も好転、高率となっています。


業務純益 

業務粗利益から営業費を差し引き、貸倒引当金繰り入れ後の業務純益は6,859億円となり、前年同期比15.2%増でした。
臨時損益 次の二つが主な項目で、黒字2,739億円を計上(前年同期比2.1倍)。
〇貸し倒れ引当金の戻入益185億円、
〇株式等関係利益がいわゆる持ち合い株処理で2,488億円(前年同期比1.4倍)計上。
これら臨時損益を業務純益に加えた経常利益は9,598億円(前年同期比32.3増)。
当期純利益  以上の要因・内容で、税引き後の純利益は7,148億円(前年同期比22.2%増)となっています。
 

基金が前期決算をホームページに掲載しました。

 

基金は2021年から受給者への「基金だより」発行・送付を取り止めました。

代わりにホームページで前期決算などを開示しております。

閲読にはパスワードなど必要ですが、この当会ホームページは第三者が見得るため、ここにお示しできません。基金へお問合せ下さい。基金電話=03-5218-6480

当会では決算などの分析を​会報に掲載していますので、ご覧になりたい方は次のメールアドレスへご連絡ください。会報をお送りします。

aki_ina@ams.odn.ne.jp

または携帯 080-3204-1783

企業年金の改変が新たな段階へ 
酷暑が続くおり、エアコン使用で電気代は気になるし、物価上昇や医療・介護等の負担など、年金者には何かと暮らしにくい日々が続きます。そんな中、企業年金を巡る動向も気になりますが、岸田内閣以降、新たな展開です。岸田内閣は、アメリカの資産運用業界に促されて「資産運用立国プラン」を昨年末に決め、いま具体化を推進中です。
自民党政権は前世紀からアメリカの圧力で金融自由化を進め、財界言いなりで企業年金の改変・後退も推進してきました。本来は、企業が全責任を負うべき企業年金なのに、コスト・リスクの負担を現役・退職者に転嫁する仕組みに変えるよう、前世紀から経団連が政府に要求し、厚労省が審議会など設けて具体策を練り、法制を変えてきた経過があります。今は企業年金・個人年金部会で続いており、受給者としても看過できない状況です。
企業年金は元々★退職時に金額など確定している「確定給付」(DB)ですが、今世紀に入って、★国債市況に連動する「キャッシュバランスプラン」、★銀行が掛金拠出し自分で運用する「確定拠出」(DC)、★DBでも金融市場激変などで積立不足の場合は減額もある「リスク分担型」が導入されてきました。しかも、公的年金が細ることを前提にして、企業年金や個人年金で補完させる方向にあり、企業年金の基本点・独自性が懸念される状況となっています。
今の企業年金・個人年金部会は19年2月にスタート。昨年来の特徴点は、公的年金の必要施策は抑え、企業年金では企業の負担を抑えて現役が自助を基本にDCや個人拠出のiDeCoの普及拡大のために、税優遇など含めての施策を審議、法令改定も進めてきました。
昨年から目立つのは、アメリカの資産運用企業に突き上げられる面が強まっていることです。最大手・ブラックロックなどが政府と一緒に会合を持ち様々な要求を出しています。日本の年金資産運用業界や基金などは企業グループ内で閉鎖的とか、運用力が弱いなど色々批判し、アメリカの運用企業が日本に進出しやすくなる施策を求めています。
その一つに「企業年金の見える化」があります。具体的には基金などが個別の運用実績や財務状況など全面開示し、厚労省がホームページに掲載し、誰もが見られるようにする、などあります。「加入者のため」と押し出していますが、要は外資が個々の基金など調査可能とし、食い込み易くせよ、というものです。
部会では開示の仕方、範囲など疑問も出ていますが、各基金などの運用を外資に代わると予定利率を引き上げたり運用成果を競い合い、却ってリスクが増大する懸念も指摘されています。
他に、「年金バイアウト」も気になります。三菱UFJ銀行が二年前に米子会社を売却し年金給付債務をバイアウトとして781億円で外部に移転したことを当会報に載せました。
実は、バイアウトについては19年3月に企業年金・個人年金部会で経団連が提起し、昨年7月の部会文書にも検討課題として記載されたのです。
経団連は、終身雇用は衰退し従来の確定給付年金は確定拠出などに切り替わる方向を打ち出しています。現実にみずほやパナソニックなどでは現役が全部確定拠出に移行し、今の受給者は減るのみとなり、別枠の扱い方とし、バイアウトという外部移転も選択肢の一つとして提起しているのです。このような流れの下で、当会が参加している「企業年金の受給権を守る連絡会」は、部会に委員を送り出している「連合」と懇談しました。
   

企業年金の受給権を守る連絡会が「連合」と懇談
当会から稲邑が「企業年金の受給権を守る連絡会」の世話人として懇談に出席し、部会審議の内容を巡って意見交換しました。連絡会からは世話人含め7人、「連合」からは、福祉局の本多一哉部長が参加(当初予定は企業年金・個人年金部会の委員を務めている福祉局の松田陽作局長が出席予定でしたが、急に他の審議会の開催のため欠席)。
審議の基本的問題…筋の通らない公私年金の混同など
稲邑 公的年金と私的年金(企業年金と個人年金)を混然と審議するのは問題。昨年末に企業年金・個人年金部会は、年金部会(公的年金を審議)と合同で開催されたが別物。公的年金は憲法に基づいて国の責任で独自に推進するもの。公的年金が細ることを前提にして私的年金の役割分担などと言って審議するのは、いわば公助を自助に転嫁することになる。
部会審議の中で、「公私年金の連携」とか私的年金が「公的年金を補完」という言葉が使われているが、DB法にもDC法にも「補完」という言葉はなく、あるのは「相まって」のみである。つまりそれぞれ独自のもの。なのに依然として「公私の連携とかは柔軟に考える」etc.と書かれているのは問題。補完とか連携とかは、公的年金の充実を棚上げし自助を迫る道筋に繋がる。
企業年金、特にDB(確定給付)は賃金の後払いの分割払いとして、法的根拠も性格も個人年金iDeCoとは異なる。同列の扱いでは、独自の機能、固有の問題が軽んじられる。経団連の委員はDB含めて福祉施策と発言、他にも同調者が出ているのは筋違い。
しかも、企業側が負担軽減のためにキャッシュバランスプラン、リスク分担型など導入、受給権に後退・侵害の面がある。部会が機能の維持強化といって審議するなら、これまでの筋違いな経過を検証し、問題点を洗い出し、労働政策審議会で審議すべき。
DBの維持強化を言うなら、物価スライドの仕組みが求められる。いま受給者の中には物価上昇・インフレ進行でDBが目減り、先行き不安、対策は?との声がある。英国などは物価スライド制であり、日本は遅れている現実を直視して機能の維持強化を審議すべき。
本多氏 公的年金と私的年金の区別など「連合」も同意見。公的年金と相俟って企業年金があるのであって補完の関係ではない。iDeCoとDCが一緒の論議はおかしい。
DBの物価スライドについては強調すると、企業負担となるためDBの普及・維持に弊害となる恐れあり。企業負担が増えると、DBからDCに移行する企業が増えるのではないか。これはジレンマ。定年延長による給付増についても「負担」として、企業年金を止める企業が出て来る可能性がある。定年延長による給付増をやらないことになると実質的に減額となり、受給者の合意が必要になり、同意取り付けの手数が出てくるのはコスト増でいやだという企業もある。連合としては痛し痒しである。
資産運用立国プラン具体化でアブナイ方向へ
稲邑 DC、iDeCoは元本保証なくリスキー。資本主義経済である限り、リーマンショックのようなリスクは将来不可避。DC法は「高齢期における所得の確保」「生活の安定と福祉の向上に寄与」と定めているのに沿わない施策。しかも今、DC、iDeCo、新NISAなど外国の株投信に巨額の資金が流れ、円売りドル買いで円安の要因になっている矛盾もある。
部会は岸田内閣の資産運用立国プランに呼応し、外資の参入促進の方向。年金基金や運用企業などの資産運用力の向上を掲げると、運用企業相互の成果競争を招きリスキーな投資が広がる可能性がある。
DBは資金不足になると企業が責任もち補填するが、これが不能とか不十分とかになると、現役・受給者にツケが回される。競争激化に歯止めが必要。基金などに情報開示を迫っているが、競争促進策は現役・受給者からすると、どんなメリットデメリットが派生してくるのか、突っ込んだ審議が必要。
本多氏 資産運用立国プランの施策は、社会保障政策とは違うものである。予定利率が高いとか低いとかで年金基金の「健全性」を見るのはおかしい。予定利率を高くするとリスクの高い運用をめざすことになり危ない面が出てくる。実績が低くて仮に不足が出ても企業が負担する現行方式が受給者には安心だ。連合として企業年金は安全・安心が第一であると考えている。
確定給付年金DBの今後について
稲邑 財界・政府は前々から雇用の流動化など進めており、退職金制度自体が衰退していく懸念がある。退職年金制の企業が減少し受給者も減っていくと本来的なDBがどうなるか。連合傘下の単産・単組で退職金の引き上げを要求している状況はどうか。
本多氏 退職金要求は、年金より退職一時金でやっているところが多い。年金であれ一時金であれ、連合として傘下組合には労使自治の原則から、あれこれ言えない。
稲邑 全体的にDBからDC(自己責任運用)に移行する事例が増えている(みずほは今年四月から)。この流れが加速されると企業年金基金を構成している現役加入者が居なくなり、受給者のみとなれば、閉鎖型(*1)とか、基金解散・規約型(*2)移行、或いは年金バイアウトとなると、受給者の受給権はどう確保されるのか。
受給者の立場での省令やガイドライン整備の審議を要請したい。
本多氏 連合としては企業年金はDBが基本であると言うスタンスは変わっていない。政策としてDBから安易にDCへ移行すべきではないということを政策として明示している。
(*1閉鎖型とは、現役の居ない確定給付企業年金。閉鎖型への移行に当たって厚労省は基金からの承認申請書類の省略とか移行後の手続き簡素化の通達を2011年に発出済み)
(*2規約型とは 企業年金を管理・給付するための基金を設置しないで、企業が信託銀行や生命保険会社に管理を任せ給付する方式。大企業でもコストカットのため基金方式をやめて規約型に移行する事例は相次いでおり、パナソニックは昨年移行。)
年金バイアウトは問題あり
稲邑 5年前の部会で経団連が突然に提起し、他委員から意見無しだったのに、厚労省は、今後の審議課題であると「議論の整理」文書に19年に明記した(昨年7月も論点として記載)。しかし部会の「中間整理」(昨年末)には記載なし。経団連が言い出し、後で実施の例は他にもあり安心できない。連合として情報の把握は如何。
本多氏 バイアウトを経団連が部会でまた言い出すかと思っていたが、発言はないし、今のところは論点にはなっていない。低金利の中で、そもそもバイアウトを引き受ける金融機関があるのか、という疑問がある。
稲邑 安心できない。「資産運用立国プラン」との関係では、外資がバイアウトをビジネス対象にしてくる可能性があり得る。国内企業としても、東証の掲げるPBR1超やROEなど資産効率向上などを意識すると、手慣れた外資が年金債務やリスクの圧縮の方策として、提案してくると乗る可能性が出てくるのでないか、という懸念もある。
年金バイアウトを実施する場合に、受給権は完全に保護確保されるのか、個々の受給者の同意は必要条件とするのかどうか、引き受けた生保などの側に不測の事態が生じた場合の企業側の責任はどうなるのか、契約は自由としても、行政の側として契約内容の把握、監督、指導などどうなるのか、など色々な点で懸念が出てくる。  
 ー他の参加者から、支払保証制度(企業倒産等の場合に企業年金の積立不足を補填し受給権を確保する制度)創設の要請や、公的年金の改善・毎月給付の要請もされました。これら発言や稲邑発言の他の部分も紙幅の制約で割愛 ー


ビックリ!法令違反でMUFG・銀行など処分
 当ホームページの「交流の場」をご覧ください。

 

決算発表 フィナンシャルグループは巨額利益計上

銀行も海外部門で大幅増益 最終純益は減も実質増益

15日発表の三菱UFJフィナンシャルグループ(以下[MUFG])の23年度(24/3期)は、

純利益が1兆4,907億円で、過去最高を記録しました。国内外ともに金利が上昇し

本業の収益が増えたこと、株価の上昇や円安で円価換算利益が膨れたこと、そして積年

の人員・店舗削減などのリストラ「合理化」が続いたこと、などの要因があります。

増益を受けて24/3期配当は年間9円増配の年41円、総計4,880億円を予定しています。

この配当金額は純利益の32.9%(配当性向)となります。

株主還元として自己株式取得を18年度以降累計1兆2千億円実施してきましたが、15

日の会見で、1,000億円を上限とする自己株式の取得を発表しました。

今期24年度は純利益1兆5千億円を目標とし、年間の配当金は、24年3月期よりも

9円増(2期連続)の50円、総額5,887億円、配当性向は39.1%、とするとの発表です。

三井住友・みずほ各フィナンシャル・グループも、過去最高益を記録しています。

メガバンク3社合計の純利益は3.1兆円で、金融緩和が始まった2013年以降の最高益

である2.5兆円を上回わりました。

 

    銀行…国内の伸び以上に海外で大幅増益

  グループ傘下では主柱の三菱UFJ銀行(以下MU銀行)は、金利上昇など環境好転に

より業務純益が五割も増えました。ただし、純利益は8,042億円で2,112億円の減益で

す。これは、前の期に子会社MUB売却益4,151億円を計上した分がなくなったという要

因があります。この一時的要因を除くと、純利益は実質的に約2千億円の増加です。

 企業年金給付の債務者は銀行単体(=子会社を含めない銀行本体)であり、MUFJの状

況と併せ、独自に経営実態の直視が必要です。

 MUFGの純利益のうち、銀行はかつて7割台を占め傘下各社の中で大きな存在でしたが、

20/3期に巨額損失をだしてから1割台に低下した後、23/3期、24/3期とも53%台となっ

ています。

 (決算推移の図表は会報に掲載)                                                 

 MUFG発表の資料や説明会などから、銀行については次のような特徴点が窺え

ます。

融資業務 MU銀行の国内外融資総額は103.4兆円で23/3期比6.5%の

増加です。国内で微増(3.0%)ながら、海外で14.2%増加した点が特徴的です。

国内の資金利ザヤは増え(0.75→0.81)、経費差引後の総資金利ザヤは23/3期

の0.16%→24/3期は0.19%へ伸びました。

中小企業向け貸付は、コロナ禍対策融資の返済が進行という要因はあったものの打ち返

して、1.74%増えました。但し総貸付額中の比率は58.69%→58.23%へ低下しました。

業務粗利益 これは本業を示す基本的項目で、23/3期比23.8%増えました。

国内業務-預貸業務による資金収益が6.1%伸びて7,171億円となった他方、国債関係で

の損失は減ったものの、引き続き多額の赤字(917億円)を出したため業務粗利益は6.3%

の微減でした。

国際業務―23/3期に1兆円に達し注目されたのに引き続いて、前期は38.6%増を記録。

内訳としては、外国の国債関係取引の損失大幅減(▲42.4%)が目立ちます。それでも

2,842億円という巨額の損失計上です。

営業費 全体で13.5%の増加です。海外部門の円安が大きく反映していると考えられま

すがどの程度の影響か、公表資料からは分かりません。物件費は横ばいですが、人件費

が38.3%もの増加です。(要因について問い合わせると「海外子会社MUB売却に伴い、銀

行へ一部業務移管されたことによる人員移管や為替影響」とのことで、これ以上の、国

内部門の人件費増など開示はありませんでした)

業務純益 業務粗利益から営業費を差し引いた額です。 営業費の増加額は大であったも

のの、国内外ともに業務粗利益が伸びたため金額としては50.8%の大幅増加となりました。

臨時損益 株式売却益は、いわゆる持ち合い株式の解消に伴うものが多額を占めると見

られますが「株式等関係損益」は計27.6%もの伸びとなっているのが目立ちます。

信関係費用総額は2,503億円と1.54倍化しています。しかも、一般融資先の貸し倒れ

引き当てが22/3期に403億円繰り入れだったのが前期は58億円戻し入れに転じた他方

で個別貸倒引当金(会社更生法、民事再生、破産などの法的手続、ADR申請など高リスク

先の個別貸倒引当金)が22/3期比3.5倍化の2,373億円となっているのが注目されます。

これらの要因で臨時損益全体は利益計上ながらも92.3%もの減少となっているのです。

こうして、業務純益から臨時損益を差し引いた経常利益は10.6%増の9,998億円を計上

です。

特別損益 この項には一時的偶発的な損益が計上され、22/3期のプラス実績が

前期は50億円の損失計上で、次の点が目立っています。

★減額損失(=支店や設備など資産の収益性の低下があり、投資額の回収が

見込めなくなった場合、該当する資産の帳簿価額に収益性の低下分を反映さ

せる手続き)が計上されており、前期は145億円計上。支店の統廃合の反映

と判断できます。

★子会社MUB売却に伴い22/3期に4.151億円の株式売却益を計上したのがなくなった。

★子会社MUBの年金バイアウトに伴う22/3期の損失781億円計上がなくなった。

「バイアウト」は子会社MUB売却で年金給付の債務をプレミアムつけて保険会社に移転

したことによるものです。

税引き後純損益 特別損益から法人税などを控除した純利益は8,042億円と高水準です。

新中期経営計画をどうみるか?

 MUFGは先月、新中期(24-26年度)経営計画を公表し組織体制も変えました。

26年度は1.6兆円の純利益を目標に掲げています。増益幅はアジア関連が30%増を見込む

など海外部門を一段と伸ばす計画です。かつてインドネシア子会社の株価下落で巨額損失

を出しMU銀行として20/3期に6,531億円の純損失を計上したことがあり、様々なリスク

が各地で高まっている情勢の下での舵取りが問われてきます。

国内企業・リテール部門は15%程度の増益幅で、「資産運用立国実現への貢献」も掲げて

おり、富裕層向け施策の更なる展開などを期しています。

新中計は、環境認識として分断の加速を指摘し、「国家間の分断(米中覇権争い等)、経

済の分断(グローバル化の揺り戻し等)、国民の分断(所得格差の拡大等)」を示して「分断の時代の中でつなぐ存在になることで…世界が進むチカラになる」と述べています。

しかし、アベノミクス・異次元の金融緩和に異を唱えず低金利の環境制約を基本に据えて銀行はMUFGと一体で、稼げる富裕層ビジネスに力を入れたり、行内ではリストラ合理化施策を進め、永らく賃上げも渋ってきました。退職金・年金の改善に取り組まず、現役には賃下げしたうえでその分を個人型の確定拠出年金という脱法的施策を15年に開始。

今度の中計は「多様なステークホルダー(利害関係者)をつなぐ」としており、企業年金受給者の私たちに不安を与えるようなリスク分担型など検討することがあってはなりません。

岸田内閣の資産運用立国に貢献としていますが、貯蓄ナシが3割という状況下、貧富の格差拡大・国民分断にならないのか、自民党への企業献金は世に理解されることなのか、米中対立の下で中国ビジネスの制約増大にどう向き合うのか、など色々な面で問われており、中計の掲げている理念が真に活きる経営の舵取りを進めることが求められています。

 

 

最近の「企業年金・個人年金部会」の審議は? 24.3.28.会報記載

厚労省は公的年金の先細りを、企業年金と個人年金で補完させる意図を明確に、必要な施策案について19年2月以降の「企業年金・個人年金部会」で審議してきました。

22年に「資産所得倍増」を掲げる岸田氏が首相となってから、「資産運用立国」の看板で、主として現役向けに次のように筋違いな諸改定を一段と進めてきました。

◆確定給付とは異なり、運用は個人責任とする確定拠出年金(DC)を普及の主流とする、◆掛金限度を引上げる(税優遇とセット)、◆企業が掛金負担のDCと併せて個人年金(企業と無関係に個人が拠出するiDeCo。三菱UFJ銀行は法制以前に15年に脱法的に導入)、

部会は2月27日の第32回会議で、これまでの議論の中間整理案を出しました。これには、昨年12月に決定の「資産所得倍増プラン」も織り込まれています。ポイントは…

●「国民の様々な働き方やライフコースの選択に対応し、豊かな老後生活の実現を支援ができる私的年金制度の構築」として、非正規や高齢者が働き続けて私的年金の掛け金を払い続け、掛け金も増やせるようにする。企業もDC拠出増可能に改定など規制緩和。

●「私的年金の普及拡大」として、学生向けに企業年金の重要性を訴求、中小企業が人材確保のためも含めて確定拠出年金に加入するよう促進。

●「制度の運営状況を検証・見直し、国民の資産形成を促進するための環境整備」として「加入者(現役)のために見える化」もあり、私達の確定給付年金の決算報告は厚労省のサイトで一般に公表すべき、との意見も出ています。

この整理案は3月28日開催予定の第33回部会で固められ、次の具体化が図られます。

掲記●の他にも大事な問題点や欠落している点があり、詳しくは次号に当会の見解を掲載します。

 

銀行の基金を訪問、懇談

3月5日に銀行の企業年金基金を髙橋会長、稲邑事務局長が訪問し、代議員会議事録を閲覧した後、八木事務長、上野管理部長兼業務部長、前川運用企画部長と懇談しました。

1月25日に開催の代議員会では、22名の全代議員が参加、来年度予算や規約改定などの全議案が議決されたことを確認しました。

来年度予算に関連する事項などは会報77号に記載。

次のようなことについて質問し意見交換しました。詳しいことは会報に記載しています。

岸田内閣の「資産運用立国実現プラン」と基金の基本的方針は?

リスク分担型の掛金について、りそな、三井住友に次いでみずほが開始した件で、三菱UFJ銀行の意向や動向は?

みずほは現役について確定給付年金を止めて確定拠出年金に一本化しましたが、どう見ますか?

他企業の中には、基金としての給付を止めて、信託銀行による給付とする「規約型」へ切り替える例も出ています。昨年はパナソニックが切り替えました。企業としては基金運営のコスト軽減につながると見ますか?

基金が給付する受給者が他界などで減ってくると、企業にとってコストが割高となり、この負担回避のためにバイアウトという方式を経団連が企業年金・個人年金部会で提起したと考えられますがどう見ますか?

代議員会議事録を都度訪問して直接閲覧し、コピー不可の扱いですが、コピー交付とか郵送などの方法を要望しまたが、当日は従来通りとの回答でした。

しかし、3.28.の厚労省通知に基づき改めて基金に要望したところ、7月代議員会議事録からはメールでの資料受信可能となりました。

三菱UFJフィナンシャルグループ・三菱UFJ銀行の第3四半期決算

2月5日に発表された今年度第3四半期決算は、MUFG、銀行ともに高利益をあげました。

FGの23/4~12月まで累計の業務純益は1兆5,202 億円(前同比+1,387億円)でした。

トップの会見では「稼ぐ力向上の勢いは継続。顧客部門の営業純益は子会社MUBの売却影響を打ち返し、前年同期比+2,900億円」と強調しています。

連結業務純益はマイナス⾦利導⼊前の⽔準を超えるまで回復し、第3四半期累計としては過去最高益でした。連結経常利益は前年同期比で2.1倍に急拡大し、1兆8,018億円に達しました。海外の融資関連手数料や受託財産業務の手数料増加を主因に役務取引等利益が増収、貸付利回りの向上など挙げられています。

三菱UFJ銀行は

業務粗利益が24.7%増加しています。貸付利回りが前年同期0.74%から当期0.78%へ向上、M&Aなど含む役務取引等利益が大幅増加(30.4%)、国債等関係損失が大幅減(▲48.5%)となど目立ちます。

営業利益は12.9%増えていますが人件費・物件費の別には開示されていません。

与信関係費用総額は、前年同期983億円の戻し入れが逆に費用として878億円計上しています。今後は日銀の利上げ方向とゼロゼロ融資の返済増などで融資先の業績不振・貸し倒れ・引当増など懸念材料です。

四半期純利益は前年同期比6.5%の増加で7,766億円、過去最高益を記録しました。

この背景には、利ザヤ回復の他、店舗の引き続く統廃合、行員・非正規従業員数削減、「働き方改革」の名の労働強化も指摘されています。

 

本館の建設概要を発表

MUFGは、2029 年の竣工を目指し建設する本館の設計概要を3月15日公表しました。「現在の建物と同系色の石材などを用いた縦基調の外観デザインとし、低層部は街や訪れた人々に開かれた空間に、高層部はMUFGのオフィスエリアとして構成。 低層部には、屋内外広場や貫通通路、空中歩廊や開放的なテラスなどを設け、周辺の街並みと連続した賑わいを創出する計画」とのことです。

地下4 階、地上28 階、塔屋2 階で、次の特徴点が強調されています。

★社員の生産性向上に貢献し効率的で快適なオフィスの実現★ SDGs やカーボンニュートラルへの対応・持続可能な社会の実現・環境負荷低減に積極的に貢献 ★地震などの災害時対応も想定。在館者のみならず、来館者や周辺地域の安心・安全を確保できる強靭なインフラ・設備を計画。★震度7規模の揺れに対応できる構造。

MUFG・銀行が組織体制を変更

MUFGと銀行は、3月7日に組織変更を発表しました。「経済・金融環境の変化による資産運用ニーズの高まりも踏まえ、幅広い個人客にMUFGが持つ多様なチャネルを機動的に活用して頂く。顧客の事業や資産の発展・承継に向けた有人でのソリューション提供力を高める必要性を踏まえ、事業本部・部門の体制を変更。経営基盤強化や新たな事業創出にMUFG一体で取り組むために、全社DX機能とデータ関連機能を統合」との趣旨で、4月よりリテール・デジタル事業本部・部門」とし個人客(富裕層を除く)を一体で所管。「法人・ウェルスマネジメント事業本部・部門」は事業法人と富裕層を所管し、有人での対応を高める、としています。資産運用立国方針に即して富裕層対応を充実、利上げ方向に即して一般個人預金を増やし貸付増で業績向上に繋げるものと考えられます。

核兵器製造企業に三菱UFJも投融資 

日本の七つの金融機関が核兵器製造企業に対し463.29億ドル(約7兆円)を投融資していることが、オランダの平和団体「PAX」の報告(2月21日発表)で判明、近畿反核医師懇談会が大阪市内で会見して明らかにしたと報じられました。

 同調査は、核兵器禁止条約に実効性を持たせるための国際キャンペーンで中心的に活動する「PAX」が毎年報告しているものです。

株式・債券引受業務部門では、みずほが2.2兆円(世界5位)、三井住友が2兆円(7位)、三菱UFJが1.9兆円(9位)と日本の各銀行グループがトップ10入りです。

 近畿反核医師懇談会でDBOBキャンペーン事務局長を務める松井和夫氏は「私たちのお金を核兵器に使うな。身近な金融機関に働きかけ、製造企業への資金の流れを断ち、廃絶に近づけよう」と呼びかけました。銀行の退職者としてどう考えられますか。

2024年 私たちを取り巻く情勢と会の方針

ウクライナ・パレスチナでの戦乱、世界的インフレが続く中、新しい年が明けました。日本では元日早々能登地震が起き、政界もパー券問題で激震が走っています。物価高騰に医療費介護費の負担増など私たちの暮らしと命、経済、平和など多面的に不安が広がっています。私たちとしては内外の動向にも目を向けつつ、安心して老後を過ごせる方向を見据えていきたいものです。

Ⅰ.私たちを取り巻く情勢 

  1. 海外―インフレ、戦乱、景気後退などリスクが

世界的なインフレで米欧の金融当局は昨年来利上げを進めてきたものの、景気後退、債務国の難儀、中東戦乱の周辺国拡大懸念、石油価格や物流混乱など様々に懸念される要因があります。

アメリカの利上げ停止・インフレ鎮静化のもと、株式市場は楽観論があるものの、米国内の景気悪化要因、中国の経済低迷、世界経済の成長鈍化などもあって、投機筋の撹乱から予断が許されない要因もあります。

​2.日本―アベノミクス後遺症、軍拡で難儀が続行

アベノミクスが、日本の金融・経済・産業など多面的に弊害をもたらしたのに、岸田内閣は継承し問題が深刻化しています。特に金融政策は、円安・物価高騰の下で日銀の利上げ必至の方向にあるものの、国債費増大・景気と金融市場への懸念などから遅々として進まず新たな矛盾も出ています。

アメリカの利下げ先読み、日銀利上げ観測から、円高に振れる局面も出ています。昨年日銀は利上げ容認に微調整しましたが、国債下落で日銀の評価損が10兆5千億円(23/9末)との発表で、利上げ次第では、債務超過に陥るリスクと矛盾を抱えています。

経済成長鈍化に、貿易赤字が定着し、国力低下中のところに金利上昇となると一段と難儀が増します。国債利払い増と軍拡費増と相まって財政難が米欧の投機筋から見限られて国債格付け引き下げとなれば金融市場は大混乱となります。

こうなるとなお国債費が膨れ、財政・金融など矛盾が深刻化し、銀行・大企業は海外で資金調達コストアップとなるなど多面的な影響が出てきます。

 コロナ禍対策のゼロゼロ融資の返済が昨年以降本格化、借入過多企業の苦境、倒産がこれから一段と深刻化すると観測され、日本経済と銀行経営に影を落としています。

日本経済と国民の暮らし向上のためには賃上げが重要です。昨年の春闘で久しぶりの高額賃上げとされたものの物価高騰で、実質賃金は20か月間も低下中です。

賃上げの必要性を岸田首相や財界トップ、連合会長も口にしますが、政治責任としての最低賃金引き上げに言及がありません。大企業は少々賃上げしても生産性向上、高齢者の冷遇と追い出し、給与体系改定、などで賃上げコストの吸収を推進中です。           

「賃上げと物価上昇の好循環」が強調されますが、賃金が後を追うのでは実質目減りのイタチごっこです。公的年金も後追いで決まり、しかも賃金上昇率が高くなったとしても物価上昇率が低ければ低い方でスライドされる方式に21年改悪されました。確定給付企業年金は物価・賃金どちらが増えても無関係の据え置きです。

3.  銀行―リスク増大のなか合理化、業務新展開しつつ競争

(1)銀行業界の動向

アベノミクスで低金利にあえいできた大手銀行は、国内外の引き続く資金需要、利ざやの拡大などで高収益を維持しています。これまでマイナス下でも利益を稼げるように店舗削減・デジタル化・人件費圧縮など合理化策を推進してきたのが、今後国内でも金利上昇が見込まれるため、増益が期待されて株価も上昇しています。

しかし、これから融資先企業が、金利負担・企業物価高、景気後退などで業績低下が想定され、各行は与信費用増、融資先倒産、保有有価証券の減価などリスクが増大します。

海外では、各地戦乱の動向次第で原油価格や物流乱調、中国経済の退潮、アメリカの景気後退などリスクが高まっている下で、より安定的な業務推進の方向が見られます。

本来、預貸事業が基本ながら「貯蓄から投資へ」を推進し、岸田首相の「資産運用立国」に呼応して富裕層ビジネスに一段と注力の経営戦略も目立ちます。家計が冷え需要低迷で経済成長停滞の時に節約・投信誘導で日本経済に資するのか?考えたいものです。

(2)三菱UFJフィナンシャルグループ

今期4-9月の中間決算では、純利益は9,272億円で前年同期比は実質的に2,480億円の増益でした。本業の儲けを示す業務純益は、1兆0857億円で過去最高益を更新。コロナ禍を抜け経済復調によって国内外で資金需要が高まって金利収入が増えたことや、アメリカの金利上昇に伴って貸し出しの利ざやが改善したことがあります。さらに円安進行も寄与しています。

配当は前の期より4円増配、自己株式の取得は今期4千憶円としました。`18年度以降累計1兆2千憶円です。これは株式数を減らし株評価を高める株主還元策で、東証がPBR(時価総額÷簿価自己資本)1倍割れからの脱却を喧伝しているのと呼応したものです。`22年末の0.64から今月9日には0.80へ「改善」との報道(日経新聞1.10)です。

しかし銀行業は、預金を集め貸出資産を増やして利ザヤを得る事業ゆえ、資産対比の利益は元々少ない特性があります。岸田首相でさえ規制に言及したことがあるのに、MUFGとしては経営効率優先の姿勢です。

亀沢社長は、「資産運用事業を強化し、銀行・信託・証券と並ぶ「第4の柱」に据える。政府の「資産運用立国」の流れに乗り、グループの総運用残高を現在の約100兆円から、30年3月末までに200兆円へと増やす計画」と述べています(日経新聞電子版1.10)。

ステークホルダー(利害関係者)重視を言いながら、従業員にはリストラ・巧みな賃金政策を続け、株主還元策・資本効率向上を進める経営姿勢は問われてきます。

 (3)三菱UFJ銀行

MUFG傘下各社の中で利益貢献度は引き続き高く、上半期の純利益は、32.7%増の5,851億円となりました。貸付増加と金利上昇が寄与し、国内の資金利益は15.2%増、役務取引(M&Aなど)等も9.5%増。但し、増減の大きい「国債等債券関係損益」は国内で156億円の損失、海外で153億円の損失でした。

 今年の展望として半沢頭取は、物価上昇と賃上げを前提としつつ「金利ある世界に戻れば、利ザヤ改善・収益にプラスだが有価証券の評価損は拡大、円高に振れれば収益にマイナス。プラスとマイナス双方を管理する必要がある」と述べ、不透明な経営環境下、慎重な姿勢が窺えます。店舗網の見直しは前年度で一巡とし、今後はリモート相談やネットバンキングなどで顧客との接点拡大など展望を語っています。(週刊東洋経済23.12.23-30)。

銀行が常に言及している経費率(営業費÷業務粗利益)は前年同期の57.96%から当期は47.85%へ大きく低下しています。分母の業務粗利益の急増が響いてのものです。人件費自体は前年同期比51.8%も増加。米子会社売却で受け入れた従業員の年金バイアウト額の影響大と推定されます。

最近は若手行員優遇の方針ですが、いつものことながら人件費圧縮は至上命題であり、銀行にとって増額分をどの面で抑えるのか、企業年金の受給者に及ぶことは無いのか、警戒は必要です。

リスク分担型の掛金制度は三井住友に続いて昨年はみずほが開始しましたが、金融市場でのリスク増大に伴い全面適用に移行しないか、三菱UFJ銀行が追随しないか、警戒が必要です。

4. 年金を巡る動向―企業年金も公的年金も波乱続く

(1)公的年金

自公政権は財界の意向に沿いながら、社会保障の後退を多面的に推進してきました。公的年金はアベノミクス開始以降、殆ど減額(減5回、据置2回、増3回)が続き、昨年は3年ぶりのアップで、11年間の±単純累計では0.8%増額となりましたが、物価の方は±単純累計8.1%上昇のため、結局この11年間で単純累計7.3%の目減りです。

13-15年連続の引き下げは違憲として全日本年金者組合員を中心に各地で提訴、地裁を経て高裁で相次ぐ敗訴となりました。しかし札幌と東京の高裁で、国が自らの主張を部分的に変える不合理も露呈しました。各地原告は最高裁に上告し、兵庫の原告に対し初めて棄却の判決が小法廷でありましたが、東京の原告などは大法廷での審理を要請する活動を展開中です。

(2)企業年金

①今年度の確定給付企業年金の運用状況

23年度(23.4~)は、米欧の利上げ続行で、債券は下落したものの株式相場が内外で上昇傾向となり12月末までの確定給付企業年金の運用は概して良好と観測されています。因みに格付け投資情報センター(R&I)の顧客約110社の平均は4.35%との発表です(24.1.10.)。

なお、`12年度から三菱UFJ銀行が導入したキャッシュバランスプラン制度は10年国債の市況により給付のため、マイナス金利下、最低保証1.0%を下支えに2.5%適用のままです。(5年ごとに見直し、改定は25年度)

②企業年金・個人年金部会

厚労省は公的年金の先細りを、企業年金と個人年金で補完させる意図を明確に「企業年金・個人年金部会」で審議を続け、現役向けに次のように筋違いな諸改定を進めてきました。

◆確定給付とは異なり、運用は個人責任とする確定拠出年金(DC)を普及の主流とする、◆掛金限度を引上げる(税優遇とセット)、◆企業が掛金負担のDCと併せて個人年金(企業と無関係に個人が拠出するiDeCo。三菱UFJ銀行は法制以前に15年に脱法的に導入)、

部会は19年末に論点の整理を行なったものの、この論議はせずに現役向けDCに力点を置いた審議を進めてきました。

直近では昨年11月(第29回)に、◆加入者のための企業年金の見える化、◆資産運用立国について審議。第30回部会(12.11)は社会保障審議会の年金部会と合同で、国の年金と企業年金双方の「役割分担と連携を進めていく必要」「自主的な努力を支援する私的年金制度の基本的な役割、機能等に対する正しい理解を促すために行う広報・教育」など掲げ、◆公的年金と私的年金の連携、◆制度の周知、広報・年金教育etc.について審議。

なお、19年の論点整理の中でも次の三点は注目が必要です。

a.バイアウト―企業が企業年金の資産を給付債務とワンセットで生保などに譲渡するもので、事業のグローバル化、M&A(企業の合併買収)などから、資産負債の圧縮・資本効率向上に資するとか、欧米では既に実施されている、として経団連が提案。企業のメリットや都合は明確ですが、受給権がどこまで保証されるのか重大問題です。

b.リスク共有型―運用リスクを初めから企業・現役・退職者が同列に負う仕組み。リスク分担型は企業が負担を先に負い、不足の場合に現役・受給者が負担する方式であるのより一段と企業年金の本質から外れるものです。

c.支払保証制度―企業や基金が年金給付不能となった場合に備えて支払いを保証する制度。2001年に国会で附帯決議をしたのに政府は着手もしないまま23年経過。経団連などが“モラルハザードとなる”“財源が問題”などの口実を並べて反対のまま先送りしてきましたが、国会決議や受給権の軽視自体がモラルハザードです。 

    

③新しい資本主義実現会議の資産運用立国分科会

岸田内閣肝いりの「資産運用立国実現プラン」に盛り込む内容を議論中です。

第4回分科会(12.13)で案を公表し、課題と施策を提示しました。

◆国内外運用会社の新規参入促進として、外部委託や運用権限の規制緩和

◆運用力の底上げ策として、大手銀行・保険会社などに体制強化のプラン公表を要請

◆年金改革と称して企業年金(DB,DC双方)の運用状況などの見える化、情報開示促進

◆確定給付企業年金(DB)について

 a.運用能力の向上 b.加入者のための見える化(受給者に言及ナシ) ほか。

◆確定拠出年金(DC)について

 a.適切な商品選択に向けた制度改善 b.加入者のための運用の見える化

◆企業年金を含む私的年金のさらなる普及促進に向けた取り組み

(3)企業年金の当面の問題

①リスク分担型

安倍政権は`17年にリスク分担型を施行し、現在、掛金のみ導入564件(前年比53増)、全面導入23件(同2増)となっています。銀行業界ではみずほ、三井住友、りそな、あおぞら銀行が掛け金を実施、南都銀行、阿波銀行が受給者も含めて全面導入しました。この制度は企業側から使い勝手が悪いなど批判が出て、導入増は鈍化しており、更なる画策が懸念されます。

銀行業界

みずほFG (企業年金は銀行・信託など一体)は、確定給付年金と確定拠出年金の併存を廃止して、後者への一本化をこの四月から実施予定です。

併存廃止の場合でも既存の受給者には変わりありません。

しかし、実施後に確定給付残存の現役が退職等で脱け基金の成立要件500人未満となる段階で基金は解散となります。確定給付の受給者には生保等へ委託(閉鎖型又は規約型)となります。

他業界事例としては、パナソニックは現役を一本化、基金に500人超の現役が居たものの、基金維持のコストカットのために基金を解散、受給者も現役も確定給付分は規約型へ昨年7月より移行。今後の選択肢に経団連提唱のバイアウトも考えられるます。

こうなると受給者の受給権確保・条件設定など恣意的に決められぬよう監視が必要となり、受給権侵害があれば受給者が団結して交渉する必要も出てきます。

前世紀から大銀行は人事制度(総合職制で女性差別実質維持、派遣業務範囲拡大etc.)で悪貨が良貨を駆逐するような改悪実績があり、三菱UFJ銀行は15年に脱法的確定拠出年金を導入、三井住友銀行が一年後に追随しました。みずほの事例が広がらないか監視の必要があります。

                              

5. 銀行の企業年金基金

この部分は具体的な計数で受給者向けに記述のため、ホームページ掲載は不適切ですので、ご覧になりたい方は当会のメルアドへご連絡頂ければ、送信いたします。

 方針部分は別項「当会の方針」をご覧ください。

三菱UFJフィナンシャルグループと銀行の中間決算について

三菱UFJフィナンシャルグループ(以下MUFG)の4-9月の中間決算が11月14日に発表されました。純利益は9,272億円で前年同期比4倍で過去最高と一部報じられましたが、昨年のアメリカ子会社売却損益を調整すると実質的に2,480億円の増益との発表です。

本業の儲けを示す業務純益は、1兆0857億円で過去最高益を更新。

コロナ禍を抜けて経済の正常化によって国内外で資金需要が高まってて金利収入が増えたことや、アメリカの金利の上昇に伴って貸し出しの利ざやが改善したことがあります。さらに円安が進んだことも寄与しています。

 与信関係費用の面で貸倒引当金繰入増、株式関係の利益増、モルガンスタンレーの決算期変更など諸々の要因から最終的に9,272億円となったものです。

MUFGとしては、年間株配当を9円増やして41円とし、4,000億円の自己株式取得をすると発表しました。

自己株式の取得は、市場に出回る株式数を減らし株評価を高める株主還元策です。これは自己資本比率を引き下げるデメリットもあります。岸田首相は「新しい資本主義」のために自社株買いより、賃上げや設備投資を求め、規制に言及したこともあります。

私達の年金給付の債務者はMU銀行でありMUFGの事業全体状況と併せて、銀行としての決算内容を見ておきたいものです。

三菱UFJ銀行の上半期純利益は、32.7%増の5,851億

詳しい分析は会報掲載。

銀行の基金を訪問、懇談

11月20日に当会の髙橋会長、稲邑事務局長が基金を訪問し、代議員会議事録を閲覧し、最近の金融情勢、企業年金を巡る動向などについて意見交換し、議事録のコピー交付など情報開示方法の改善、前進について要請しました。

詳しい内容は会報に掲載しています。

従業員組合に書簡

11月3日、従業員組合中央執行委員長、給与対策部長に宛てて、リスク分担型について当会会長・事務局長連名で書簡を送付しました。詳しい内容は会報に掲載しています。

会報をご覧になりたい方は下記へご連絡ください。eメールでもお送りできます。

aki_ina@ams.odn.ne.jp

 

みずほがリスク分担型の掛金制度開始

    みずほ銀行・信託・リサーチ&テクノロジーズなどが構成しているみずほ企業年金基金は「2023年3月に開催された第40回代議員会においてリスク対応掛金の設定及びそれに伴う2023年度予算の変更」を全会一致で可決した、と発表しました。

 

 三井住友銀行に続いてみずほがリスク分担型の掛金を開始したことは、3メガの位置、影響力からしても他行の受給者にとっても看過できないことと思います。

みずほの場合は基金の財務内容が一部分で芳しくない面があり、厚労省基準に届かない指標=「非継続基準」(基金解散の場合、その年度末時点で受給権に見合う年金資産が確保されているかを検証する数値で、1以上が求められる)がありました。2027年度までに1.1に達するように銀行など母体企業が計画的に拠出金を積んでいるところです。

これに加えて今般、「リスク分担型」導入で掛金を多く積み立てることにしたので、基金の財務内容は、好転します。しかし、他面ではそもそもリスク分担型とは何なのか、受給者が喜べることなのか?考えるべきことがあります。(続きは「交流の場ー最新」をご覧ください)

 

 

頭取に宛て要望書を送付しました。

Wix.com で作成されたホームページです。

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