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企業年金の動向―厚労省、企業年金個人年金部会の審議ー
「企業年金・個人年金部会」は2019年2月から24年12まで39回開催、審議ポイントを取りまとめた「議論の整理」は中間整理を含めて三回目です。大きな流れと施策の問題点は、
▼高齢化、長寿化などにより公的年金(=厚生年金、基礎年金など)を国の責任で拡充すべきところ、マクロ経済スライドなどで抑え込み、今後もこの姿勢を変えようとしない。
代わりに自己責任が基本である私的年金の拡充を進めること、
▼私的年金の拡充推進で膨らむ資金運用市場で、政府は「資産運用立国方針」に基づき、外資運用企業が参入し易い諸々の施策を講じ、運用力向上の名のもとに競争が激化すること、
▼資金運用ビジネスは、投資活発化、高リスク化、バブル化の流れが強まるのに、受給権保護が不十分不明確なこと(支払保証制度、バイアウト)などです。
企業年金は、本来は労働条件に関わる問題として、労働政策審議会の対象とすべきですが、公的年金と関係づけて社会保障審議会の対象としている点は問題です。
27頁に及ぶ内容と今後の方向には、幾つもの問題点があり主な点を記します。、
♠ 公的年金と私的年金の役割があいまいに
公的年金と私的年金は別ものなのに混然と審議するのは問題です。◆公的年金は、憲法に基づいて国の責任で独自に改善拡充すべきもの。◆私的年金(企業年金と個人年金)を一括りするのも問題。つまり◇企業年金は、賃金の後払いの延払いとして企業が責任もって拠出し退職後に給付すべきもの、◇個人年金は個人責任で拠出し将来に受け取るものです。
企業年金を公的年金の補完とか公私の連携とかの語句が使われ、「公的年金と私的年金の役割分担」との記述もあり、公的年金の充実棚上げで自助を強いる道筋に繋がります。
公的年金はマクロ経済スライド、年金カット法、物価上昇などで実質減額が続き、最低保証制度も無く、この抜本的改善こそ国の責任として独自に推進することが求められています。それなのに老後生活に不十分な部分は企業年金や個人年金に委ねるのは筋違いです。
♠ 確定給付型の改悪・後退方向
確定給付企業年金(DB)を加入者・受給者のため改善する姿勢は見られず、むしろ逆方向への審議と施策が続きました。キャッシュバランスプランやリスク分担型がその典型例です。
また確定拠出年金(DC)では、三菱UFJ銀行が10年前に、法令未整備のまま先駆けて始めた「選択制DC」は一段と企業年金の本質から逸脱したものでした。
賃金を一部減らして掛金に回し、その分を銀行が拠出したものとして扱い、銀行には節税効果とコストカットのメリットがある。加入者は後年、厚生年金、健康保険、雇用保険、労災など社会保障給付が減る。
三井住友銀行など追随、増え続けてから厚労省は選択制と命名、ルール作りを検討。「議論の整理」では問題点やルール作りの必要を指摘。企業がメリット追求で既存法令をも越えて先行するのを行政側は立ち遅れ、法令で規制するに至らない実情には警戒が必要と言えます。
♠ 自助努力促進の方向は
資産運用立国プランにも基づき、iDeCoや企業型DCで拠出限度や年齢引上げなど拡充方向ですが、次の問題点があります(会員皆さんの次世代にも及ぶ問題として留意の必要があります)。
▲投資のプラス面が強調され、身の丈を越える投資が増える可能性があります。現に、若年層ほどスマホも活用して積立投資が増大中で、元本割れ・手数料失念など発生との報道も。
「市況変動はあっても長期的には資産が増える」と強調されますが、1990年初めにバブルが崩壊してから平均株価が戻るのに35年を要しました。
▲優遇税制などで拠出が増えると、その分、個人消費減退を招き、経済成長に繋がりません。
▲海外への投資に人気が出ている状況ですが、これが増えると円安の要因となるし、国内への投資に向かわなければ経済成長に繋がりません。
▲投資できる人と、できない人の格差が既にあり、税制優遇で更に拡大することとなります。
投資普及のため「金融経済教育促進機構(J-FLEC)」が設立されましたが、「貯蓄から投資へ」を強調することで、子どもも含む教育の公正、投資被害や詐欺への対応など懸念や批判が出ています。MUFGも小中高校向けプログラムを整え出前授業はじめ、社会人向けに色々教育活動推進中。
♠ 競争を促してお得なのは?
企業年金の運用「見える化」推進で、資産運用企業相互の競争が強まり、リスク追求が加入者に転嫁される可能性がでてきます。資産運用企業が運用力向上を謳って基金などとの新規取引開始を求め、既存取引中の資産運用企業も含めてリスク追求に走ると、運用の長期的観点、安定性が薄れ、高リスク追求がウラ目に出て運用成果低下となる可能性もありえます。
運用好調となれば、母体企業は基金に拠出金を減らし得るメリットが出てくることにより、更にリスク追求傾向が高まる懸念があります。
♠ 重要課題は放置、新手追いかけの勝手!
次の支払保証制度とバイアウトは今の受給者に関わってくる大事な問題です。
支払保証制度―企業や基金が年金給付不能となった場合に備え、受給者への支払いを保証する制度です。欧米諸国で実施されていることから、2001年に年金二法を国会で審議の中で、必要性が議論され附帯決議をしました。
しかし、政府は着手しないまま23年経過。この間、反対してきた経団連などは、破綻企業などを健全企業が尻拭いするのは“モラルハザードとなる”“財源が問題”などの口実を並べてきました。
銀行では、信用保証制度、貿易保険(輸出先の破産や支払い不能などに備える)はリスクに備える仕組みとして当たり前です。「ヘマな企業に対して救済はしたくない」という発想は、自己中心に過ぎませんか。しかも、企業年金での支払保証制度の真の目的は、企業救済でなく、受給者の救済、受給権の擁護であり筋道の通った制度です。
このような基本点を抜きに反対してきた経団連や国会決議を棚上げしてきた政府の方こそモラルハザードです。「議論の整理」は「慎重に検討を行うことにする」と述べていますが、これまで同様の棚上げは許されません。
銀行の内部留保は厚いし、業績が好調だから、自分たちには関係ない…ように見えても、基本を弁えない政治を許すことは、他の面にも権利侵害など響いてくる可能性をはらみます。
企業年金バイアウトーこれは、確定給付型企業年金の資産と受給者への給付債務を保険会社に移管する売買取引を指します。これにより、企業は年金給付のリスク(市況激動、金利、インフレ、長寿化など)から免れ得るとしています。
企業は、基金が給付に不足する場合に、基金へ拠出する義務がありますが、バイアウトすればこの義務は消滅します。企業としては諸々のリスクを軽減することが可能となります。また、資産・負債の圧縮、資本の効率化に繋がります。
会社のM&Aでは、年金部分をバイアウトすることもあり、MUFGでは米国子会社で実施(22年に721億円の特別損失処理)。
欧米では、母体企業が多額の損失を計上する事態を避ける狙いから、保険会社にバイアウトすることが普通のビジネスとなっています。
19年の部会で経団連の委員が提起し、他委員からの意見が出なかったのに、厚労省は、今後の検討課題であるとして「議論の整理」に載せました。「制度の持続性の維持・向上などの観点を踏まえ」と記していますが、持続性維持を言うなら受給者の暮らし維持のためになる「支払保証制度」確立こそ優先課題と言えます。
部会とは別建ての「企業年金研究会」の「議論の整理」(2019年3月)では、「諸外国における年金バイアウトの背景として、雇用関係が終了した年金受給権者に対して企業が一定の保障を提供することが企業の持続可能性に影響を及ぼし、株主に対する説明も難しくなってきていることなどがあげられる」と記しています。
19年の経団連提出文書には「英国における閉鎖型のバイアウト」の記載があり、下記の「閉鎖型」に移して社外移転するビジネスモデルがあるのです。
海外資産運用大手企業が進出を強め、日本の運用会社も呼応してバイアウト事業を展開すると、企業本位の発想が強まってトバッチリが受給者に及ばないとも限りません。日本では法整備されておらず、警戒が必要です。
♠ 懸念される企業年金の行く末…まさかフェイドアウト方向?
財界は前世紀から企業年金を古い日本的雇用慣行として「お荷物」扱いにしてきました。市銀連の退職金共闘は実質的になくなって久しい状況です。終身雇用は止めて雇用流動化が当たり前とする風潮も作られています。石破首相は退職金課税の優遇を後退させる意向です。
こういう流れの中で、確定給付型の企業で、①現役を確定拠出型に転換、受給者だけの基金は解散し、受給者への支給は企業が実施する「閉鎖型」へ移行、②基金を解散し信託銀行所管「規約型」移行という事例が相次いでいます。①は一部損保会社であったし、最近もユニー(東海地方拠点の大手小売業)が実施しました。
②は23年にパナソニック、今年1月にサントリービバレッジなどが移行しました。
利益優先、コストカットを重視する財界と、ここに押されている厚労省・部会の動向に警戒が必要です。2015年に三菱UFJ銀行は法令整備のない段階で選択制DCを世に先駆けて実施、しかも過去最高利益の更新を続けている中でした。みずほは昨年度から現役を確定拠出年金へ移行済みです。
大企業・大銀行が利益第一で突っ走る中、私達の暮らしがゆとり持てるよう、公的年金・企業年金に留まらず、経済、政治の在り方を問い続けたいものです。 25.3.20.稲邑明也(旧三菱)
貸金庫保管物の窃盗事件について思う 駒村忠利 (旧三菱)
2024年11月報道で明らかにされた、この事件は元行員として、大きな衝撃を受けた。
それは、①あまりにも長期にわたり ②多数の被害件数 ③多額の被害額 ④貸金庫の特殊性 ⑤当事者が担当管理者であった、など犯罪の特殊性を感じた。なぜ?どうして?何に使った?事件を理解するには、時間がかかった。
事務管理上の弱点は、それなりに想像できるが、管理上の問題は現職、経営に任せるとして、元行員として職場のモラル、私たち退職者の「誇り」から考えてみたい。
私は現役時代、少なくない不祥事に遭遇した。ある職場で、現金事故が複数回発生すると、不祥事件の可能性がある、と面接が行われた。
内容は人権無視の、ひどいものだった。しかし、担当の経営職は必死だった。その時、私も面接を受けたが、あまりの理不尽さに怒り心頭!「あなたは、会社に責任を持っていればいいが、私たちは社会に責任を持っている!責任の重みが違う!」と突っぱねた。
当時から私は、従業員組合で代議員なども務め、処遇改善と合わせ、社会の発展を願ってきたものとして、平行員であったが、面接のやり方は屈辱的だったからだ。(昔の話をすると、全て自慢話になってしまうこと反省します)
今回の事件は、働く(働いた)仲間として「さみしい!」「悲しい!」
窃盗したり換金したりしたお金は「投資に使った!」との報道だが、今の社会の「金、カネ、かね!」の価値観に飲み込まれたのだろうか?
金融業界にモラルを求めたいが、「資本」に情けは働かない。金融労働者は「危険物取扱者!であり、金と情報を身近においている!、との自覚が求められる。
私も悩んだ、「いい仕事をしたい!」ということは、「儲かる仕事」だろうか?!「社会の役に立ちたい!」は高望みか?―そうではない!「当たり前」の話!!
不祥事に関しては、経営側の責任は当然のことである。信用を担う従業員のモラルアップと生活向上にもっと力をいれて欲しいものである。国の金融政策も国民生活優先に!
私たちは、明るい社会、平和な社会を願っています。今年は、思い切りいい年にしましょう!
明けましておめでとうございます
先行き不透明な世に私たちの年金・虎の子は? (25.1.1. A.I.)
新年を迎えても明るい話題があんまり満ちている訳でもないのですが、数え年で正月に年齢を重ね得る事自体がめでたい訳ですから、素直に慶びとし、さて今年はどうなるか、どういう方向をめざすか?考えたいものです。 ◆めでたさも中の保証なきおらが春 (以下、川柳もどき)
物価はホイホイ上がって!暮らしは?
世界各地の戦乱は収まらず、米中対立が続く中で、トランプ氏が大統領に就任、国内では与党が過半数割れで新たな段階に来たものの、果たしてどう展開するやら…と先行き不透明な状況で新年を迎えました。
中東の雲行き次第ではエネルギー価格も上がるし、トランプ追随の石破首相の下で物価がどうなるか?年金・医療など社会保障は?年金生活者には気になります。
日銀は昨年7月末に利下げしたものの、政府・財界・証券業界などから牽制されて、続けるべき利上げを引き延ばしてきました。12月の政策決定会合では春闘相場やトランプ大統領の出方を観てからなどの口実で見送り、円安を招きました。
この会合では、過去25年間の金融政策を検証する報告書も出ましたが、異常円安を招いて破綻したアベノミクスに固執する姿勢露わです。これでは庶民は救われません。
◆アベクロの背後霊立つ日銀ヨ (クロ=黒田・前日銀総裁)
年金生活者は困るんです!
このところ、物価は上がりっぱなしです。物価と言っても支出は多々あり、高齢者にとっては食料品、電気料、医療費など生活必需品の上昇を考慮すると、現役の世代と異なるのであり、官庁統計の平均値で語れない面があります。
公的年金は物価上昇を織り込んで引き上げる建前ですが、20年前にマクロ経済スライド制度を入れ100年安心と触れ込みましたが、この上更に2021年4月から年金カット法が施行され踏んだり蹴ったりでした。
◆「百年も安心」とはウソついて!
◆安心は政府で ウソじゃないですヨ!
物価上昇率に公的年金が追いつかないのは次頁のグラフ(会報記載ですが省略)で明らかです。政権党が実は誰のために何をしてきたのか?振り返りつつ、これからの方向を考える必要があります。
企業年金はどうなのか?
私たち確定給付の年金受給者としても、給付額は固定されており物価上昇分だけ、実質目減りします。
オランダなどでは企業年金でも物価スライドがありますが、日本では皆無の由。
また今世紀に入ってから各銀行では「キャッシュバランスプラン制度」を導入し、国債市場に連動して受給額が増えることもある、との触れ込みでしたが、超低金利据え置きで、主要銀行では最低保証ラインでの給付が続いています。
賃金の後払いである企業年金なのに給付はは市場任せということ自体、筋違いも甚だしいのですが、この上、物価上昇が加わるのは困ります。今この方式で受給し始めた人たちもいるし、これから増えますが、確定給付の人達も共に共通する問題として、金利の在り方を考えたいものです。
フラフラ日銀は困ります!
それにしても、物価の番人、通貨の番人という役割を負っている日銀は、物価上昇の主因である円安については、低金利から来る円売りドル買い進行が背景にあることを一段と重視して、利上げを進めることが大局的に不可欠です。
利上げの余波として、株相場が下げたとしても、アベノミクスという誤策で上がり過ぎの調整とも言える訳で、難儀な暮らしと日本経済を基本に考えれば、日銀は本来の役割遂行のため筋を通す必要があります。利上で住宅ローン利用者や借入多額の中小零細企業が困る点では、政府が賃上げや弱小企業支援策など講ずる役目・責任があります。
◆信用を落とし金利は上げきれず
政府は「賃金上昇と物価上昇の好循環」などと言い、財界も同調するものの、公的年金は実質減の仕組み、企業年金は据え置きですからこのままじゃ私たち年金暮らしは置いてけぼりです。
◆好循環?物価と賃金イタチごっこ!
私たちとしては、安心して暮らせるよう政治・経済にも目を向けていきたいものです。
アベノミクス固執で一段とアブナイ日本!
安倍政権以降の菅→岸田政権はアベノミクス・異次元の金融政策を継続し、今また石破政権も継続の基本方針です。低金利のみならず量的にも異常な金融緩和を続け、コロナ禍対策もあって国債増発を続け、経済バブル化が進んでいます。
放漫財政のまま財政悪化は深刻化、日銀も国債買い上げは減らしつつあるものの全く緩慢で巨額の国債を抱え込み、利上げ=国債価格下落の矛盾、日銀自体の赤字決算転落の必然性を抱えています。いわば泥沼に足を突っ込んで股裂きなのに這い上がろうとする意欲も低下みたいな状況と言えませんか。日銀は前述のようにアベノミクスに固執の姿勢ですから先行きが憂慮されます。
この点で振り返りたいのは、イギリスです。22年9月にトラス首相は、大規模減税と国債増発の政策を発表したら、市場の批判が噴き上がって英国債金利が急騰。財政と金融の政策整合性が無いと市場の信頼を失うことの危険性を浮き彫りにしました。
日本とて放漫財政のままモタモタしていると、投機筋に狙われていつどんな危機に陥るか?懸念は続きます。利上げで日銀自身が赤字になることは必至で国際的信認落下が懸念されています。
世界的にも今は資金過剰=実質的にバブル状況で、崩壊が危惧されています。
株相場もビットコインも暴騰を続けアメリカ経済もソフトランディング政策どころか、ノーランディングつまり景気後退なしで、好況を続けている観があります。リスクが高まり溢れ、市場もこれを無視し、人々も追随の有様です。
◆トランプにトラの子翻弄されそうで
各国の政策当局はあの手この手で矛盾を糊塗策で先送りしている面はあるものの、資本主義経済である限り、異常膨張の破裂は不可避です。これに対応して…
▼著明な投資家・ジムロジャースは前々から警告、今ではバブル崩壊に備えて資産三割を売却しその現金で暴落の際の再投資を狙っているとの報道も。
▼ゴールドマンサックスは市場の資金が一部企業に過度に集中していることなど指摘しアメリカS&P500の名目トータルリターンは大幅低下を予想のレポートを発表。
しかし日本政府は脳天気で、アベノミクス路線のまま次の政策です。
資産所得倍増めざし「資産運用立国」なんちゃって!
岸田政権は当初、成長の果実を国民に分配する、と「所得倍増」を打ち出したものの、アメリカ詣での後すぐに「資産所得倍増」に豹変。アメリカの巨大資産運用会社のブラックロックやゴールドマンサックスと親密になり彼らの「助言」を受けて資産運用立国プランを23年末に決めました。
柱は
①新規参入促進→外資が参入し易くする、
②運用力底上げ→力ある外資参入に道を開ける、
③年金改革→運用状況の見える化などで競争促進環境づくりです。
この一環として24年8月にアセットオーナープリンシプル(運用資産保有者向けの原則。以下AOPと略記)も策定しました。(概要は会報前号に記載)
日本では年金積立金管理のGPIFや生保ほか資産運用保有者が独自に運用業務をやってきましたが、巨大外資は更なる商機拡大のために日本的慣行の打破も狙って様々な規制緩和や「金融・資産運用特区」設置などを政府にやらせ、企業年金基金への更なる参入容易化で利益獲得体制を築こうとしてきたのです。これを受けて厚労省は企業年金・個人年金部会で具体化の審議をしてきました。
基金向けにガイドラインの改定
一つは「確定給付企業年金に係る資産運用関係者の役割及び責任に関するガイドラインの改定」です。これは、元々1997年に厚生年金基金の運用規制をアメリカの圧力で緩和した時に、せめてもの歯止め的に制定したのが原型です。
その後、財界・大企業の都合で厚生年金基金の代行返上を可能とする確定給付企業年金法の成立(2001年)後、このガイドラインを基金の健全運営、受給者利益保護など目的に制定しました(2004年)。
この後、AIJ事件などでの反省点も織り込んで2018年に改定された経過があります。厚労省の反省不十分なこと等は重要問題でしたが、ガイドライン自体に特段の問題や不都合は、なかったと言えます
。
しかし改定案を見ると、「外資」に関わる文言は無いものの、参入容易化を織り込んだ内容と映ります。その最たるものはa.運用企業の実績評価、b.外部専門家活用、c.AOP受け入れ要請です。
特にc.は外資参入向けと言える中身であり、受け入れをするのか、しないのか、しないならその理由説明を!という上から目線の迫り方です。
この集約は内閣官房が窓口で、9月17件だったのが未だに増えていない有様です。ほとんどの基金では改定せずとも現行で十分と受け止めていると考えられています。
厚労省はこのガイドライン改定に先立ち、法定の手続きとして必要なパブリックコメント(意見公募)を実施しました(11月22日より一カ月間)。
折角の機会ですので私は下記意見を提出しました。要約すると…
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1. 資産運用立国実現プランの制定過程や企業年金個人年金部会の審議では「運用力向上」が強調されてきた。運用力が高まると、母体企業はその分、拠出額を減らせるメリットがあり、これが基金の運用力向上に依拠して母体企業が拠出額低減を図ることになっては本末転倒である。
運用力向上を錦の御旗に資産運用企業の新規参入競争や成果競争が強まると、基金や加入者受給者にとって次のような懸念がある。
イ、 運用力を高めるために、リスク覚悟の運用に力点を置くのでないか。アセットオーナープリンシプル原則(以下AOP)の中には「リターンの最大化を目指すという考え方も含まれる」との記述があり、懸念せざるを得ない。更にAOP補充原則で、外部人材・コンサルティング会社等の活用では「成果報酬の配慮」を記載しており、成果競争が強まる弊害の懸念がある。
ロ、「運用受託機関の見直し」をわざわざ追加するのは、海外運用企業が各基金に食い込む足がかりとなる懸念がある。外部からの専門家を招いても成果最優先で諸法規に背馳とか、特定企業の利益を図る不正を行う行為を牽制・摘発できる体制づくりも必要。ちなみにGPIFの最高投資責任者が、特定証券会社2社の利益を図る行為を重ねていた例もあり、教訓とすべきである。
ハ、運用力競争により、力のある運用企業が更に運用資産を集積していくこととなり、この過程で、弱小運用企業の資産を減らし、市場支配力を強めることにより、市場の乱高下が増幅される懸念がある。
二、グローバルに運用している資産運用企業は日本経済の成長力や日本企業を評価しての投資よりも、海外への投資に力点を置き、円売りドル買い、即ち円安の要因を強めるのでないか懸念がある。
ここで特に顧慮したいのは OECDの「責任ある企業行動に関する多国籍企業行動指針」であり、この中には「経済、環境、社会への貢献」がある。
海外の資産運用企業、特に巨大資本が運用力向上で海外投資に傾くと、日本の金融・経済は大きな影響を受ける。確定給付の場合は、基金内の審議を経るとしても変更を迫るとか、確定拠出年金の場合は個人に海外運用を誘導するなどが想定される。
これでは日本の金融・経済に貢献することにならない可能性が高まる。
既に日本の上場企業は海外のアクティビストの跋扈、発言力強化により、コストカットはじめとする利益最優先経営、株主還元強化の傾向が強まっている。これは「成長と分配」「経済の好循環」に背馳する。
また自助を基本とするiDeCoや企業型確定拠出年金の普及拡大と優遇税制は、国民の格差拡大にも繋がっている。この傾向に批判が高まっているのに逆行するような改定に疑問がある。
2. 受給者への情報開示徹底こそ必要
受給者への情報開示については、三月に一定の措置が取られたが、基金によっては秘匿姿勢が変わらない実情がある。印刷書面による定期的報告が多くの基金で廃止により、パソコンやスマホなど保有しない受給者は情報に接し得ないし、保有していてもホームページへのアクセス意識が薄くなる。
そういう状況の中で基金が受給者の利害に関わる改定など、唐突に提起しても受給者は知識・情報が乏しい中で、賛否を問われても自らの権利を守る判断をしにくい。
OECDの企業年金ガイドラインは「ステークホルダーへの責任」「情報開示と報告」の二項目を掲げている。この徹底的履行をガイドラインに加えるべきである。
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気になる懸案事項=支払保証制度とバイアウトは?
企業年金・個人年金部会が検討課題に挙げている次の二点は看過できないものです。
バイアウトは企業の年金給付義務を積立資産とともに保険会社等へ引き渡す仕組みです。MUFGが三年前にアメリカで実施、日本の大企業でも欧米で実施例があります。
部会では経団連の委員が提起しましたが、国内で実施の場合に受給権保護ほかの法令未整備の課題があります。
支払保証制度は受給権保護に必要として2001年に国会で確定給付企業年金法など可決の際に付帯決議されたにも関わらず、経団連などの反対意見に引きずられて未だに棚上げです。今では企業年金の積立て状況が全体として進み、支払い債務比9割超(日経新聞24.10.22)との報道もあります。しかしこれは株高・金利上昇(将来必要見積もりが少なめに算定)によるもので、経済・金融環境の変化によって安心しきれません。
大銀行の経営の先行きは?
大銀行は今、海外では利上げが進行、日本でも利上げが見込まれる中で過去最高の利益を上げ、株価も高くなってきました。先行きの戦略としては、海外ビジネスの更なる拡大・深耕、国内では銀証隔壁緩和、デジタル化、カードビジネス合従連衡、融資拡大のための預金獲得など策定しているのが共通しています。
こういう中で不祥事件が相次いでおり、三菱UFJフィナンシャルグループの銀証隔壁無視の事件は経営上層部が関与し、一通りの謝罪会見・改善策発表で終わり、銀証隔壁緩和で利益獲得の姿勢に各メガとも変わりない状況です。顧客情報流しのインサイダー事件も摘発されました。三菱UFJ銀行の貸金庫事件の容疑者は投資にカネをつぎ込んだとの報道もあります。
一連の事件で、「貯蓄から投資へ」が孕む歪みと危うさが危惧されます。こんな事件を契機に現役に悪影響が及び、不信感も招いていかないか懸念されます。
石破首相は大軍拡を推進中で、増税、社会保障予算削減だけでなく、異次元金融政策の矛盾と共に更なる深刻化を招き、国民の暮らしは破壊されていきそうです。
取り分け、年金生活者は給付の更なる実質減価、虎の子の減価に直面し、余生をゆったり過ごせなくなります。こういう情勢下、私たちは一段と当会に結集する人たちを増やしていきたいと考えています。そして受給者の皆さんに情報の共有と連帯を広げ、前進した年と言えるよう頑張りたいものです。
稲邑明也 (旧三菱 25.1.1)
リスク増大の中、年金や虎の子の先行きは? 稲邑明也(旧三菱)
トランプ氏の大統領就任前ながら、関税・為替など様々なリスクが増大中で、日本の庶民の虎の子も先行き翻弄されそうです。 ◆トランプにトラの子予測崩されそう (以下◆印は川柳もどき)
アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)は22日、最新の金融安定報告を公表し「経済活動の予想外の弱さが、特に株式と不動産で、資産価格の急激な調整の引き金どなり得る」と警告。
これに先立つ11月4日にゴールドマン・サックスは、S&P500指数の今後10年間の年率収益率が3%(過去10年間の実績は年率13%)になるという衝撃的なレポートを発表。 さらに11月19日には来年の株式市場のリスクを強調し、楽観的見方に警告を発しています。
他方、日銀は7月末に利上げしたものの、物価は上がり続けてエンゲル係数も上がり続け庶民の暮らしは厳しいことです。物価の番人のハズの日銀は政権党や財界から株価や景気への影響を一面的に見ての圧力が陰に陽に加わってか、日銀総裁は煮え切らない発言を続けています。いずれ利上げは必至と観測されているものの、夏の陽炎の如しです。株式市場は大企業の利益好調などあって高値で推移している観がありますがいつ崩れるか?分からない面があります。 ◆物価番が株価番に変身か
なにしろ、金融市場は内外とも資金過剰・バブルの状況にあり、リスクの動向次第でいつ激震が来るやも知れない状況と言えます。アメリカも景気の見立ては強弱交叉しており、トランプ氏の自国第一は日本に悪影響必至です。
資産運用立国というものの果たして?
自民党政権は新自由主義を日本にも取り入れた上にアベノミクスが加わって「失われた30年」の誤策が明確なのに、菅政権以降もアベノミクス継承を続け、今月2日に閣議決定の「総合経済対策」は、懲りもせずにアベノミクスの枠組みを基にしています。
これに輪をかけて酷いのが岸田前首相で、資産運用立国プランの実現のために議員連盟をつくって会長におさまり、26日に石破首相に緊急提言を提出したとの報道です。
先行きが懸念される時に「貯蓄から投資へ」と誤導する背景には、アメリカの金融資本の策動があり、彼らの食い物にされて立国どころか亡国への道になりかねません。
資産運用立国実現施策に即して厚労省は企業年金・個人年金部会で個人年金iDeCoなどの拡充に重点を置きつつ、確定給付企業年金などについても資産運用会社がビジネスチャンスを拡大できるような施策を審議してきました。
これにはアメリカの巨大資産運用企業=ブラックロックやゴールドマンサックスの蠢動があります。彼らは、日本の各基金が企業グループ内で運用し、情報など不開示で閉鎖的!などと様々な解放施策を求めてきました。
厚労省が施策具体化を推進
これに即して総理直結の内閣官房はアセットオーナープリンシプル(AOP≒運用資産の保有者の遵守原則)を制定し新たな施策に乗り出しました。例えば●個々の基金の運用実態など厚労省がホームページに掲示、各基金の運用力向上を錦の御旗にして、海外運用企業が参入し易くする。●資産運用ガイドラインを改定し外資が参入し易くする。 (行政法が義務付けている意見公募を11/22~12/1の期間で受付中)。
ブラックロックは基金に専門コンサルタント派遣など提案…との報道を前号に紹介しましたが、様々な手法で、運用成果競争が激化することになります。基金が増益になれば御の字ですが、高リスク追求となれば、年金の安定給付に添わないことになります。
彼らは基金の運用損得に関係なく手数料で稼ぐのが本業です。因みに年金積立て運用のGPIFでゴ―ルドマンサックス出身の最高責任者が恣意的取引をやって指弾されています。また、高率運用となると海外に投資増となり易く、円売りドル買い増につながり円安の要因となります。現に新NISA、iDeCoで海外投資が増大中です。
いずれにしても資産運用立国は、庶民にも日本経済にも悪影響が及ぶ面を重視したいものです。
核兵器製造企業への融資を直ちに止めるべき 菊池喜久夫 (旧三菱)
被団協がノーベル平和賞を受賞しました。被爆者たちが核兵器の被害者を二度とつくらないために長年にわたり様々な活動を続け世界に発信してきたもので、大変うれしいことです。
いま、ロシアのウクライナ侵略、イスラエルのガザ攻撃が続いており、毎日たくさんの人が亡くなり住まいを追われているニュースが流れています。ロシアのプーチン大統領は「核兵器の使用」をちらつかせて脅かしています。核兵器の使用の脅かしによって核戦争が防げるという核抑止論があります。
日本政府も石破首相もこの立場です。しかし、実際に核兵器が使用されたら何十万の人々が一瞬にして犠牲になることは広島、長崎の惨状をみれば明らかです。これは絶対あってはならないことで、人類の生存と核兵器は両立しないのです。
2021年に核兵器禁止条約が発効し、人類史上初めて核兵器を違法化する国際法が誕生しました。核兵器を製造することも国際法違反となったのです。その核兵器製造企業に三菱UFJFGが投融資をしているのです。
オランダのNGO団体“PAX”は、日本のメガバンク3行が、核兵器製造企業に対し、3行合計で約4兆7600億円(1ドル150円換算)の投融資を行っている、と発表しました。(2023年6月30日現在、本年2月21日発表)
これによると三菱UFJFGが約1兆5100億円、みずほが1兆7500億円、三井住友が1兆4800億円などと、巨額の投融資を行っているのです。投融資先の主な会社には、ボーイング社(3行合計で8650億円)、ジェネラル・ダイナミクス社(3390億円)、ハネウェル社(5240億円)など名だたる兵器製造企業が含まれています。
三菱UFJFGは、「環境・社会ポリシー」で「非人道兵器製造事業」として「核兵器、生物・化学兵器、対人地雷」などをあげ、ファイナンスを禁止しています。兵器製造企業、とりわけ核兵器製造企業に対する投融資は、法律の精神にも、自ら決めた「ポリシー」にも反するのではないでしょうか。直ちに止めるべきです。
目まぐるしく不安な世に私たちの年金・虎の子は?
稲邑明也(24.9.23.旧三菱)
物価はホイホイ上がってるのに!政治屋は…
日銀は7月末に利下げしたものの、物価は上昇テンポを強めており、引き続き利上げが必要とみられてきたのに日銀は9月の政策決定会合で金利据え置きとしました。
政府は「賃金上昇と物価上昇の好循環」など言うものの、公的年金は実質減、企業年金は据置、このままじゃ私たち年金暮らしは置いてけぼりです。
◆好循環?物価と賃金イタチごっこ!(以下◆印は川柳もどき)
私たちとしては、安心して暮らせるよう政治・経済にも目を向けていきたいものです。
日銀が7月末に利上げ発表直後、八月初旬に株価が暴落、すぐに日銀副総裁が「金融市場が動揺する場合は利上げをしない」と修正的発言をして相場は急上昇しました。この背景には政治的圧力が働いたと見られています。この暴落と急騰で「したたかな政治屋と投機家たちは、日銀は圧力をかければ動く。株価変動、為替変動で金融政策をコロコロ変える」という弱みを握ったとの批判もあります(慶大名誉教授・小幡氏など)。 ◆利上げとて泥沼の中 ネを上げる
看過できないのは、メディアです。安倍元首相に圧力をかけ続けられ、アベノミクス開始時にも批判は弱く、その後、経済政策でも権力の監視役の役目は果たせていません。八月初めの株暴落でも日経新聞は利上げが「相場変動を大きくした面は否めない。…市場との意思疎通に万全を期し、相場安定につなげてほしい」と書きました。
メディアの影響力で何となく「日銀は円安・物価への配慮だけでなく株価なども考えないと困る…」と考える人達が周りに少なくないようです。しかし私たち庶民の立場、目線から本質的なことと副次的なことを切り分けながら考えないと誤導されるように思います。
日銀がフラフラしてどうすんの!
日銀は物価の番人と称される通り、通貨の価値の維持に責務を負っています。なのに株価変動に配慮して動かないのは本末転倒です。 ◆物価より株価番へ転向か
金利が低すぎて円安を招き物価高騰となっている中で、この阻止のために金利を上げるのには正当性があります。私たち確定給付の年金受給者としても給付額は固定されており物価高騰はその分、目減りしますから利上げは歓迎できることです。
しかし、利上げの余波として株相場が下げたとしても二義的な副作用であって、難儀な暮らしと日本経済を基本に考えれば、日銀は本来の役割遂行のため筋を通す必要があります。利上で住宅ローン利用者や借入多額の中小零細企業が困る点では、政府が賃上げや弱小企業支援策など講ずる役目・責任があります。 ◆信用も落としてブレる日銀ヨ
バブル崩壊にも立ち返ると
八月初めの激動と背景について、元銀行員の私たちとしても見ておきたい点があります。
1985年のプラザ合意以降の急激な円高に対し日本はアメリカから利下げを迫られました。当時は円高でも、経済自体は不況でなく、むしろ利上げが求められていた面があったのに政治の圧力が加わり、利下げをやったためにバブル化が進んで大変な状況に至りました。
こうした経緯の反省の上1998年に日銀法を改正、独立性を獲得して以降、政治的判断・圧力が入らないように、「中央銀行は物価の安定に専念する」を盾として、株式市場・投機筋はもちろん政治による圧力を避けようとしてきました。
やっぱり!アベノミクスの反省を
しかし、その後も圧力は及び、安倍元首相は、日銀総裁を任期前に辞め
させ、黒田氏を就かせて共同声明まで発し、アベノミクスを支えさせ、今日の重大な問題、矛盾をつくってきました。憲法に背馳して日銀に巨額の国債を引き受けさせ財務体質の劣化悪化などを進めたたのです。安倍元首相の主導によるもので誠に罪深いことではありませんか。
◆株価アップ庶民の暮らしアップアップ
私たちの老後が安心できる方向を考える上でも今、政治がアベノミクスの反省もせず問題を引きずったまま、新たな画策を推進していることに警戒が必要と思い、以下に記します。
所得倍増がクルクル変身、「資産運用立国」なんちゃって!
菅首相はアベノミクス・異次元の金融緩和を続け、コロナ禍糊塗策もあって国債増発を続け、財政悪化を深刻化、日銀にも国債買い上げ促進、庶民にしわ寄せを強めました。
2019年2月にスタートした今次の企業年金・個人年金部会は、それまでの企業年金主題に個人年金を加えセットで審議続行。公的年金が先細ることを前提として、自助による個人年金の拡充を税制優遇とセットで具体的施策に繋いできた経過を見る必要があります。
岸田首相は2021年に就いてアベノミクス継承を公言の上、その矛盾深刻化をかわすように「新しい資本主義」を掲げ、所得倍増の掛け声が資産所得倍増にすり替わり、これが資産運用立国へと変化。施策の具体化を内閣挙げて推進。内閣官房に財務省(金融審議会)に加えて厚労省も企業年金・個人年金部会に諮り、言わば総がかり的な構えです。
昨年12月に制定の資産運用立国プランの大きな狙いは
●家計の金融資産で半分近い預貯金(約1,100兆円)を投資に向かわせる。
●企業価値向上の恩恵を家計に還元し、「成長と分配の好循環」を実現、さらなる投資や消費に繋げる、としています。
しかしこれは金融・経済を更に歪め、貧困と格差を広げるものです。
「国民のために!」を掲げておトクなのは?
「貯蓄から投資へ」は国民のため!との触れ込みですが、金融市場に個人資金を誘導することで株式相場など更に盛り上げ、金融関係業界が繁栄することになるものです。
売った買ったでお客の損得は別問題!手数料稼ぎで利益を獲得できます。先行き心配な若い世代は消費節約で投資との実態調査もあり、これじゃ経済成長にも寄与しません。
「貯蓄から投資へ」は小泉政権の時も叫ばれましたが、バブルの経験や国民性もあって個人資金は投資投機に向かわないで来たのを、資産運用立国プランは誘い水を色々仕掛けていること、しかも従来以上にアメリカなど海外の資産運用大企業が日本に進出し易いように計らっていること、に特徴があります。
海外の大手が日本を草刈り場に
昨年12月に決まった「資産運用立国実現プラン」は次が主な柱です。
●資産運用企業の新規参入促進=企業体としては当然に備える筈の管理部門(総務・経理・人事などの部署)を外部委託が可能とする規制緩和をやり外資が身軽に参入可能とする。
●「金融・資産運用特区」を各地自治体に認める。4月には東京都など5自治体が減税はじめ英文での文書受理まで優遇や弾力化で外資に恩典付与。
●運用力底上げ=資産運用力の向上及び運用対象の多様化に向けた環境整備、企業統治改善、体制強化、競争環境の整備、国際競争力の強化など多岐。
「運用力の向上」は企業年金・個人年金部会でも大きなテーマとされ審議を推進。受益者のために!を掲げて、基金や運用企業が努力し競い合う方向づけの施策が特徴と言えます。
この中で、従来の厚労省が定めたガイドラインを改正する案が示されています。
例えば基金が自前で運用能力を向上させるために関係者の「自己研鑽」を掲げていたのを抹消して「専門性の確保」という名の下で外部からの人材登用に道を開けています。この施策は外資がコンサルなどでも参入するのに道を用意するものと言えます。(世界トップのゴールドマンサックスが「基金の人材不足を補完」との見出しで日本経済新聞9/7が報道したのもその一例)
「運用受託機関の定期的な評価・必要に応じた見直し」という項目もあり、基金などが定期的に運用成果を点検し、ここへ力ある運用企業に契約変更へ誘導するとも受け取れます。
資産運用立国プランの中身は?
施策としては多岐に及びますが、次のような点は重視したいものです。
★コーポレートガバナンス(企業統治)改革=日本的な遅れた商慣行は止め、米欧流に変革、海外資本にとっての参入障壁の是正。資本コストを意識した経営の推進など掲げてます。
★資産運用業の改革=日本的商慣行、特にメガバンクでも見られる企業グループの枠打破で海外大手運用企業が乗り込みやすいように改革。
★企業年金の改革=資産運用力の向上、加入者のための運用の見える化の充実など。厚労省は各基金の決算など重要情報を厚労省ホームページに開示する。これにより海外運用企業が各基金の実態把握の上、食い込み対象基金などに取引開始など営業をしかけ易くする。受益者のために!を大義名分に運用企業が稼ぐ改革。
この中の一つに情報開示があります。多くの基金はこれまで受給者に対し代議員会議事録など開示は厳しく規制し、訪問しないと閲覧できない、コピーも禁止という状況でしたが、三月に厚労省が通達でメールでの開示送達が可能としました。私たちも活用できます。
★アセットオーナーシップ改革=基金や銀行、保険会社等の金融機関の姿勢改革。運用目的・目標を達成し、受益者等に適切な運用の成果をもたらす等の責任を果たすことを強調した「アセットオーナー・プリンシプル」を8月に決定しました。
アセットオーナー・プリンシプル…アセをかくのは?
これは、2024年3月の「新しい資本主義実現会議 資産運用立国分科会」の下に、内閣官房が「アセットオーナー・プリンシプルに関する作業部会」を設けて審議、案を昨年末に示し、行政手続きであるパブリックコメント実施を経て制定する程の位置づけでした。
背景には、「成長と分配の好循環を実現していくには、家計の資金が成長投資に向かい、企業価値向上の恩恵が家計に還元されることで、更なる投資や消費につながる、という資金の好循環を生み出していくことが重要である」との政府の認識があります。
これまでは確定給付型(DB)の基金では、運用結果が目標を下回ると不足分を企業が補填する義務を果たして積立不足が出ないようにする仕組みですが、これからは基金自らが、そして委託先運用会社が、運用力を高める責任、専門性などが求められます。
以下は要約ポイントです。
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1.アセットオーナー(以下AO)は、運用目的に合った運用目標及び運用方針を定めるべきである。また、これらは状況変化に応じて適切に見直すべきである。
2.専門的知見に基づいて行動するためAO は、原則1に照らして人材確保など体制を整備、機能させると共に、必要な場合には、外部委託を検討すべき。
3.AOは、運用方法の選択を適切に行うほか、リスク管理を適切に行うべき。最適な運用委託先を選定すると共に、定期的な見直しを行うべき。
4.AOは、ステークホルダー(利害関係者)への説明責任を果たすため、運用状況についての情報提供(「見える化」)を行い、対話に役立てるべき。
5.AOは、受益者等のために運用目標の実現を図るに当たり、スチュワードシップ活動を実施するなど、投資先企業の持続的成長に資するよう工夫すべき。
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これらの原則は基金に受益者等の最善の利益を掲げて運用目的を定め、必要に応じて外部の人材も活用すべき!としています。様々なアセットオーナーが存在するため、共通の原則を定め、それに対して受入れを求める点が特徴的です。
企業には「コンプライ・オア・エクスプレイン」(原則を実施するか、実施しない場合には、その理由を説明)を求めていくとしています。NO!なら説明せよ、ということです。こんな面からも日本的慣行を打破してドライな外資が参入し競争をしかける方向性が見えてきます。
年金基金もアメリカ流に!
こういう流れの下で、厚労省は企業年金に関して従来から制定してきたガイドラインを主に次の点で改定する案を部会で示しました。
◆「運用機関の定期的な評価・必要に応じた見直し」=資産規模100億円以上の基金に設置を義務付け、各銀行の基金は資産管理委員会を設置済みですが今後は中小規模基金などに運用会社が参入し易し競争が激化すると見られます。
◆「人材育成等の推進」=基金が自前で運用能力向上のため関係者の「自己研鑽」を掲げていたのを抹消し「専門性の確保」という名で外部の人材登用に道を開けています。
◆「加入者のための見える化」=各基金の運用結果など外部からも見られるように厚労省がホームページで公開。アメリカでは、狭く限定した事項以外は情報公開が原則、という流儀を日本に要請したものと言えます。
あの手この手で画策推進するのは…
岸田内閣は、資産運用立国プランを掲げて大小様々の施策を展開しています。
★NISAの抜本的拡充・恒久化 (今年1月から実施)=少額のiDeCoだけでなく、多額投資を期待できるNISAに魅力をもたせる。 ◆ニーサって何サ株屋がトクしてサ
★iDeCoと確定拠出年金(DC)の拡充=各銀行現役は自己責任運用のDCに加入していますが12月より枠の拡充など実施を決定。
★銀行などに体制強化のためのプラン公表を要請
資産運用立国実現プランの一環として、銀行などの大手金融機関に対して体制強化のプラン公表が求められました。
具体的には、●グループ内の資産運用ビジネスの経営戦略上の位置付け、●運用力向上、●ガバナンス改善・体制強化etc.です。
三菱UFJフィナンシャルグループは♠運用資産を30/3月には200兆円へと倍加、♠銀行・信託・証券の三本柱に三菱UFJアセットマネジメントを四本目に据え経営体制強化と発表。
諸方針の中には、様々ありますが、将来の資産形成層育成に向け小学生からの「出前授業プログラム」展開策までも掲記。三井住友やみずほも似た状況です。
海外資産運用企業の動きの一例として9/7の日経新聞は世界最大手ゴールドマンサックスが「企業年金基金などの運用を包括的に請負う事業に参入」と報じました。
外部運用会社から投資責任者を選び、運用戦略もつくるのが特徴で、運用利回りの改善に繋げる、欧米で普及する手法を持込み、資産運用ビジネスの拡大を目指す、とのことです。
内外の資産運用会社が競い合うとどうなる?
基金の委託先の運用力が一段と高まると、母体企業=銀行はその分、拠出額を減らせるメリットがあるものの、運用企業の成果競争が強まると次のような懸念がありませんか。
▼運用力を高めるために、安定的運用よりもリスク覚悟の運用に力点を置くのでないか。
▼運用会社が運用成果を追求して高評価する企業に投資を増やす、そのため低評価企業への投資を減らして関係企業の株価変動を増幅させかねない。
▼力のある資産運用企業が更に運用資産を集め増やしていくこととなり、この過程で、弱小運用企業の資産を奪い、市場支配力を強め、市場の乱高下が増幅されるのでないか。
▼グローバルに運用している運用企業は日本経済の成長力・日本企業への投資よりも海外の投資に力点を置き、円売りドル買い=円安の傾向を強めるのでないか。
企業年金で前述のゴールドマンサックスの動向を報じた日経新聞(9/7)は、確定給付型の記事なのに「運用成績が向上すれば年金加入者の将来受け取る年金額が増えることになる」と書く有様です。部会審議の中にも出てくる言辞ですが、私たちの確定給付は給付額変更なしの規約です。キャッシュバランスプラン方式の受給者も10年国債の市況次第です。
アメリカ資本の攻勢を受けて業界、メディアもあれこれの言説を流すでしょうが警戒しつつ、安定給付が基本の基金に適切な行政となるよう理解と連帯を広げたいものです。
川柳 近時片々 与謝糠晶太
(旧三菱 筆名由来=下手な趣味はよさぬか飽きた!と云われそうなので…)
このままじゃ軽老よりも刑老か (社会保障後退)
NHK映さぬテレビ買いたいな
罪人が頭目選びに元気出し (自民党総裁選)
天誅は永田町にダ! 能登じゃないっ!
国会に設置すべきだ!閻魔堂
.刷新「感」演出腐心のムジナたち
永田町に諸行無常の鐘響く
民守る憲法壊す政治屋ら
人殺す軍事費よりも医師増やせ
過ちは繰り返しますこのままじゃ
ゆであがる日が近づくか気候危機
ゆでガエル分かっちゃいるが飛び出せず
小財布に渋沢さんは寄り付かず
やっと来てすぐに家出の渋沢さん
兜町ジェットコースターで涼をとり
やっぱりなぁ…山高ければ谷深し!
投機屋に追い銭わたす植田サン
倍増の言葉が倍増やばいぞう
銀行に飼ってはどうか閑古鳥 (昔も今も)
ビックリ!法令違反でMUFG・銀行など処分
6月14日に証券取引等監視委員会が、三菱UFJフィナンシャルグループ(MUFG)傘下の三菱UFJ銀行、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、モルガン・スタンレーMU証券を行政処分するよう金融庁に勧告し、6月24日に金融庁が業務改善命令を出しました。MUFGは7月19日に「行政処分に基づく報告書」を提出し、亀澤社長含め関係者21人に役員報酬減額の処分を実施すると発表しました。
問題の背景には何が?
「金融持ち株会社」「ファイアウオール」(=FW)の規制がポイントです。
持ち株会社とは、自らは事業を直接営まずに、傘下の会社の所有・支配を目的とする会社のことで、戦前には三菱、三井、住友などが主要産業に巨大な経済力・支配力を持つ会社を経営し財閥として戦争推進体制の一翼を担いました。
戦後は反省の上にたって、独占禁止法によって禁止されていました。三菱銀行はGHQから「千代田銀行」と改名を命じられるほど徹底した措置が講じられたのです。
しかしバブル崩壊後、財界が国際競争力を強めるために持ち株会社の解禁が必要だと主張し続け、1997年に独占禁止法が改正されて解禁となったのです。
さらにアメリカからも強く要請されてきた「金融ビッグバン」の進展にともなって、大手銀行の要請で金融持ち株会社関係2法も制定されました。
こうして金融持ち株会社は、銀行、証券、信託など異なった種類の金融業の企業を傘下に収めることが可能となって金融再編成が急加速し、メガバンクへと進展したのです。
それでも、金融持ち株会社によって産業支配が進まないように、その設立については独占禁止法によって一定の制限が規定されてきました。その一つがFWで、金融持ち株会社の傘下各社が取引先の情報を共有して支配力を持たないように「隔壁」とも言われる規制を課したのです。こうすることで利害対立の関係にあった野村・日興など大手証券会社が公正な競争条件下で営業できる、としたのです。
ところが、みずほが先走って、銀行・信託一体型店舗を顧客利便の名のもとに出したように、業界全体として規制の突き崩しが進められ、メガバンクを中心に一段とFWの緩和を強く要請し続けてきました。特にMUFGが先頭に立ってきたとも指摘される中で、今度の問題が摘発されたのです。
何が問題になったのか?
問題点・事実関係をメディアが報道してきました。主な点は
●銀行と証券の間では、少なくとも10回にわたり違法な非公開情報の授受があった。●銀行や証券の役員が関与していた。●社内でのめ情報管理体制の不備もあった。●銀行が、融資条件として、顧客の公募増資の実施に際して、引き受けシェアを拡大する交渉。 ●顧客企業に対し、銀行に認められていない有価証券の勧誘を行うなど、金商法上の「登録金融機関」として手掛けられる証券業務の範囲を超えた行為もあった。●法令違反は、銀証間における非公開情報の不適切な授受で21~23年に合計26件あった。法人関係情報の管理体制不備は20~23年、登録金融機関による有価証券関連業の禁止に関する違反は18~23年に確認された。
こんな事実把握の上で、監視委は、△顧客軽視・収益重視の営業姿勢の結果だ、△収益確保が法令違反行為の一つのインセンティブとなっていた。△モニタリングや内部管理体制が十分ではなかった、と判断。
金融庁は6月24日、3社に対して、金融商品取引法にもとづき、経営陣を含む責任の所在の明確化、原因や再発防止策などの報告を求める業務改善命令を出しました。
親会社MUFGは28日に控えていた総会に提案する役員選任案について、指名・ガバナンス委員会で改めて審議を行い、発表済みの候補は変更しないことを確認したうえで提案、総会は議決したのです。
このような経過について経済紙・誌には批判的見解も出ています。
◆22年9月に起きた三井住友銀行とSMBC日興証券のFW違反事件で、両社は部分的営業停止を喰らったのに比べれば、甘い。銀証情報共有だけでこの処分だったが、MUFGの場合は更に違法取得の情報を取引拡大に活用している。
◆監視委が、銀行の「優越的地位の濫用」までは認定しなかったのは甘い。
◆20年ころからMUFGはFW緩和に向けて金融庁の審議会に委員も出して攻勢をしかけており、実現を先走って見込んでフライイングした。確信犯で優越的地位の乱用は明らか。
反省の度合いは?
MUFGが金融庁に提出の13頁に及ぶ報告書は、事案の真因などに言及しているものの、「留意すべき法令等を正しく理解した上で遵守する意識の浸透が役職員の中で十分に図られていなかった」などと、もって回った言い方とか気になる個所がいろいろあります。
そもそも、顧客の制止にも関わらず違反を強行したなど、法令を分かっていながら違反したことが明らかです。奥歯に物が挟まったような述べ方で良いのでしょうか。
法令違反は信用信頼を重視される金融業界では致命的です。顧客と接する従業員にとっても肩身の狭い事案です。違反当事者は従業員に対してもどんなお詫びをするのか?反省文や始末書など陳腐ですが「心からのお詫び」の姿勢を言動で示すことが問われています。
退職者としてどう考えますか
MUFGや銀行は常々法令順守を説き、体制も整えていると発表してきました。しかし実態は異なり、残業規制違反は常態化していましたし、労働法や従業員組合との関係でも
▲男女雇用機会均等法の定めにも関わらず総合職を設けて実質的な男女差別を長く続行。▲派遣法で規制されていた仕事にも派遣社員を就かせ、後で派遣法の規制緩和で合法化。▲労働条件の向上義務規定はあるものの棚上げで、組合の退職金改定要求は長年無視。
▲給与カット分を拠出する年金制度を福利施策として創設。しかも最高利益記録更新つづく中で、法令ができてもいないのに実施。あとで類似の法令が出来てiDeCoが普及。FW緩和を見込んでフライイングしたと同様のことです。
業界トップの位置ながら世の模範というよりも逆に利益優先・コストカットに走り、世の批判を浴びた実績が色々とあるのです。多角的経営で業界一の利益水準で増配継続し…と安心の向きもあるでしょうが、コストカットや法令棚上げの姿勢が私たちの企業年金に悪影響が及ばないか、気を緩める訳にゆきません。 稲邑明也 (旧三菱) 24.7.24.
MUFG株主総会に参加して 浦野弘(旧東海) 24.7.22.
私は、東海銀行時代から統合問題等もあり、UFJ銀行のときも,三菱UFJフィナンシャルグループになってからも株主総会に参加してきました。この間、銀行を退職後は、参加を見送っていましたが、今年は、総会への質問書の提出と、当日はネット視聴で参加しました。
私の提出した質問書は、〇企業姿勢として環境社会問題について、〇「人権尊重」を掲げていることから職員処遇の問題について、問い質したものです。特に後者は私が中執に就いている金融ユニオンでも取り上げているテーマであり「非正規職員の格差処遇の改善を、高収益計上この時期に取り組むべきではないか」と記して総会前に送付しました。
総会で亀澤社長から、全体の会議報告の中でこの部分について「社員の働き甲斐について、人件費を経費とみる考え方から人的投資とみて、賃上げとチャレンジ支援に努める」
「働く人の価値観の多様化にも対応し、女性管理職比率も現在の22.3%から30%を早期に達成したい」と回答がありました。会場参加の来年入行の学生株主から、銀行の労働条件についての質問もありました。
三菱UFJ銀行、三菱UFJモルガン・スタンレー証券などへの、この度の行政処分等について謝罪と共に、「処分を厳粛 に受け止め、さらなる態勢面の強化を行い、銀行・証券および持株会社を含め、法令等遵守態勢などにつき、再発防止のため、より実効性を高めた方策を策定して参ります。金融庁の指導の中には、組織あげての問題との指摘はなく、個々の対応上の問題との指摘であって、役員含む関係者の処分は 具体的に検討をし、可及的速やかに研修・勉強会などを活用し社内周知を徹底し、事例や実態に即した手続・ルールの策定と浸透、中長期的にはシステム開発も含めたモニタリング態勢強化、といったことを骨子として検討していく」と述べています。
総会での社長発言は、「銀証連携はお客様本位の取り組みのつもりであった。金融庁の指導でも、銀行ぐるみの間違いでなく、関係者の誤りであった」との弁明的発言があったが、FWルールを銀行も金融のルール違反は許されないとの立場を改めて明確にする必要があると思います。
会場での質問は13人が発言し、「海外での融資先が先住民の生活破壊しているところへの是正要望」「CO2対策の化石燃料問題先にMUFGが、世界第3位の融資量を見直す考えはないか?」 などの質問があり、グローバル企業への問題意識を新たにしました。
役員らは高給・従業員の賃上げは先送り 石原和利(旧三菱) 24.7.24
弱肉強食・格差拡大の世には矛盾を感じざるを得ません。大企業の内部留保積み上げと富裕層の高収入は報じられている通りで、三菱UFJフィナンシャルグループ・三菱UFJ銀行の役員の年収も高額です。亀澤宏規MUFG社長は339百万円、半沢淳一銀行頭取は330百万円との発表です。MUFGの役員で1億円以上が14人です。
他方、銀行の今年の賃上げは6.8%との発表でしたが、実施はナント9月からに先送り?現役時代は毎年4月に遡及していたのに、何時の間にやら7月実施へ後退していましたが遂に、9月実施だそうです。これでは賃上げ率も発表通りではなく年間では実質半減です。
こんな姑息が罷り通るのは許し難いですね。私たち年金受給者も黙っていられません!
海外で話題にならない「円」 菊池喜久夫(旧三菱) 24.7.24.
円安が止まりません。物価高騰も止まりません。生協を利用していますが、値段は変わらないのに容量が減っている品物が増えています。厚労省2023年度の国民生活基礎調査が発表されました。生活が「苦しい」と感じる世帯は、59.6%と前年比8.3P増加。世帯別では、65歳以上の高齢者世帯は、59.0%、子供がいる世帯は65.0%と回答しています。子育て世帯にはこの物価高騰が生活を圧迫しているのが明らかです。
物価高騰の原因の一つが円安ですが、今月末で退官する神田財務官が、政府の為替介入についての記者会見でこんなことを言っていました。財務官がヨーロッパ訪問して各国の財務担当者と会談する中での感想です。「どの国でもまったく日本の円のことが話題にならない」「いまの日本の国力が反映している」と。
大企業が最高益を上げても、国民の収入が増えず個人消費が伸びなければ、日本経済の再生はできず、この円安も改善されないということです。政府の経済運営の中心にいる大蔵省の財務官もズバリそのことを指摘しているのです。
自然界の逆襲がはじまった 脇田 勇(旧東海) 24.7.24.
記録的、災害的な猛暑が続く毎日ですが、海外ではロシアとウクライナ、イスラエルとガザ地区の戦闘などで爆弾の使用、建物の火災など相当の熱量を使用。他の国においては熱波や山火事、洪水など人間社会に自然界、地球が警告を発していると思う。
我が国のテレビや新聞は記録的な猛暑、災害的だと「必要以外の外出は避けろ」「熱中症にならないように」と呼び掛けているが、能登半島地震で今だに避難所生活や水道が復旧していない住民のことを考えると、心が苦しくなる。鉄は熱いうちに打て」ではないが、政府・科学者・研究者は温暖化の進行を抑えるため一刻も早く方策を打つべきではないか。このことこそが本当の国防ではないか。
軍備力強化に突き進んでいる時ではない。樹木を伐採して公園を整備し、電気を大量に消費する高層マンションの建設やリニア新幹線な計画を進めようとする政府や東西の首長がいる。愚かな施策ではないか。
日本の各地でクマの出没で大騒ぎです!とうとう都市部ではクマの銃撃退治を考え出した。そりゃクマだって怒るわなぁ。「わし達の居場所を奪うな」「わし達だって必死に生きているんだ!」いずれにしても地球上の人類や生物が生存し続けるためには、あらゆる努力が必要だ。絶対、自然には勝てない。自然を壊してはならないのでは・・・
隣町の祝園に長距離ミサイル! 中農 弘志(旧三和) 24.7.19.
岸田政権は、22年12月に閣議決定した「安保3文書」に基づく「敵基地攻撃能力」の形成に向けて、南西諸島へのミサイル配備とともに、その後方支援体制として全国で長距離ミサイルを補完する大型弾薬庫の建設を行なおうとしている。私の隣町・祝園(ほうぞの)弾薬庫には8棟の弾薬庫新設など102億円の予算(24年度)が盛り込まれている。
この問題を取り上げた穀田衆議員の国会質問
たまたま私は衆議院外務委員会(5/17)でこの問題を追及する穀田議員の論戦を録画で見ていた。質問時間は僅か5分。動かぬ事実を付きつけられ詭弁や同じ言葉の繰り返しで時間稼ぎをする政府の様は、何が何でも押し通そうとする国の強権的な姿勢があらわになった。これはもう地方自治法改悪案での、国の「指示権」の先取りでは?との思いを強くした。
<その1> 「確認書は契約的意味を持たない」→おそるべきこの詭弁
精華町長と国が交わした確認書を反故にしようとする防衛副大臣に対して、穀田議員は「約束は守らなくてもいいというのか? この確認書は当時どのような経緯で結ばれたのか? あなたは知っているのか?」と、副大臣に確認書の全文を読み上げさせた。
その確認書は・・、1958年9月に精華町の住民が町ぐるみで「軍事基地反対闘争委員会」を結成して町と防衛庁の間で交わされたものである。23項目にわたる確認事項のうち核心的な項目では以下のやりとりが認められている。その主な項目は次の通りである。
1、要望:核兵器は将来にわたり絶対に貯蔵しないこと
回答:了承する
2、要望:現在以上施設の拡張しないことを確約されたい
回答:現在以上用地買収及び貯蔵施設の拡張はしない
3、要望: 弾薬の貯蔵量の基準を定め、増加する場合は事前に精華町側と
協議の上決定することを確約されたい
回答:現施設による貯蔵能力以上は貯蔵しない。増加の場合は事前に
町側と協議する。
確認書の最後には 防衛庁大阪建設部長 陸上自衛隊中部方面幕僚長 及び精華町長が署名押印している。にもかかわらず「確認書は契約的意味を持たない」と答弁。
これに対して、穀田議員は「約束事は守らんで ええと?」「そんなことが世間で通用するとあなたは思っているのか」と追及したが、「いや守らないとは言っていない」・・しどろもどろの答弁。(確認書は正式な行政文書であるとも答弁)
<その2>
避難計画には〜「1キロを2分以内に避難せよ」とあるが世界記録は2分11秒なのに
重大事故が発生した場合、爆発が起こるのはおよそ2分を想定している。そこで・・・、
・穀田議員:副大臣、あなたは1キロを2分以内で避難できますか?
・副大臣:いや、私はできません
・穀田議員:世界記録保持者でも走るのに2分11秒かかるんですよ。そんな自分ができないこと 世界記録保持者もできないこと、そんな馬鹿げたことを住民にやらせようというのか?こんな無茶な人命軽視も甚だしい避難計画を国が作って、しかも強権で押し付けること、これはまさに国が地方自治体に「指示権」を行使できるようにする地方自治法改訂案の先取りではないのか 断固抗議し撤回を求める。
以上、5分間の質疑ではあったが、穀田議員は隣町の祝園にも安保3文書に基づく戦争
国家づくりが押し寄せている事実を暴き、「国を守る」ためには住民の身の安全はおよそ眼中になしという政権の姿勢を浮き彫りにした。
なお、その後住民側は「契約的意味を持たない」という理由を明確に示すよう国に要請
している。
生きていくうえでは政治と関わらず得ない 大澤謙蔵(旧三和) 24.7.21.
東京知事選挙の結果について複雑な気分でいるとき、同じ街の親しき友人からメールが届きました。「・・日本人はどうしてそうなったのかサッパリ分からないが、つねに『批判的発言をする人を嫌う』。その結果、格段に良いと想っていないのに、常に現状維持に流れる。足元の生活は政治のせいで喘いでいるのにも関わらずだ。
そうして世論の偶然で勝った者が、勝てば官軍とばかりに一晩で『大柄な態度』に豹変する。おそらくこれで神宮の森の伐採は速攻で進めるだろう。やがて高齢者ばかりになる都心が味気ないエリアばかり増える。
今朝、娘がこの夏に引っ越していくベルギーの都市の姿を眺めていた。写真とはいえ、東京には無い風景ばかりを目にした。人間らしく暮らせる豊かな街をつくろうとする歴史が、東京には皆無だ。そりゃそうだ。土建屋任せなんだから。いや一つある。それは皇居である。
フランスは土壇場で踏んばった。イギリス国民の政治参画の姿勢、民主主義の成熟度の違いが余りにも大きい・・」
日米安保:「米国の下請け化」加速?
バイデン大統領は記者会見で日本の防衛予算を巡って「私が説得した」(2023.6月)「私は日本に予算を増加させた男だ」(2024.6月)と、外交成果を語った。
岸田首相は「防衛産業は防衛力そのもの」と位置づけ5年間の防衛費43兆円に大幅に増やした。「防衛産業は特需に沸く」と報道されているのです。
日本国民の命より米軍優先?
政府は、集団的自衛権行使を認める解釈改憲を行い、今までの専守防衛という日本の立場を投げ捨てたのです。
米軍辺野古新基地建設のため、沖縄の民意に背き「代執行」を強行、その米軍嘉手納基地の空軍の兵士が、未成年の少女を車で連れ去り性的暴行を加えた事件で、日本政府は3ヶ月間、沖縄県に情報を提供しませんでしたが、沖縄県議選への影響をおそれてのことだと指摘されています。「県民の命や人権より日米同盟が最優先という政府の姿勢が如実に示されたものと言えます。」
米軍横田基地で「昨年1月に発生した高濃度の有機フツ素化合物(PFAS)を含む汚染水の漏出事故について、日米両政府が非公表とする方針で合意していたことが、政府関係者への取材で分かった。日本政府は、米軍から事故についての説明を受けた際、情報を外部に出さないよう求められ、これに従っていた。」と報じられています。(東京新聞)また、その横田基地では、CV22オスプレイが、無通告で飛行を再開しているのです。
政権交代は、民主主義と私たちの生活をまもる
「安倍政治は立憲主義と『法の支配』の破壊をもたらしました。」裏金問題は、脱税であり犯罪です。国家があるのは国民のためです。一部権力者の私物化を許してはなりません。
能登半島地震から半年が過ぎました。いまなおライフラインの復旧が遅れ、公費解体が進まず、まだ4%との報道には驚きと怒りを覚えます。
いまなお避難所に暮らす人、車中泊する人など劣悪な環境にある人たちを、どうして救えないのでしょうか。「洗濯は雨水をためた、傾いた自宅で手洗いしている」 「漁港がありますが、みんな漁に出られません。2メートル隆起したからです。」「漁師は海に出られないのが一番つらい。1メートルだけでも港を掘ってくれたら船を傷つけずにだせます。」壊れた家に住み続けている人には、食料など支援物資が届いていないと言われています。能登の人たちは、政権から見放されたのでしょうか。
いま求められていることは、政治を機能させることです。「被災地を見捨てないという強いメツセージを発すべきです。」日本は近年だけでも、大地震をいくつも経験しています。そこから地域の復興をほぼ果たしてきました。その都度、国も自治体も震災対応を学び大量のノウハウを蓄積してきたはずです。
それなのに、能登だけが半年経ってもたったの4%だなんてあり得ない、能登地域だけの特殊事情が存在するということは無いはずです。
政治家たるものは今何をなすべきか、彼らの判断基準は目先の「選挙に勝つための活動」を最優先し、私腹を肥やしているとしか思えないのです。それが自民党政治なのだということを、私たちはもっと知らなければなりません。
大阪万博関連を最優先していることで、建設費は高騰し人手が不足していると指摘されています。そのために、救済活動を行う組織と人は枯渇して復興は遅れていると言います。
たった半年で取り壊しになる「イベント」に10兆円以上もの税金を投入するよりも、能登地域や災害にみまわれた地域の人たちのために「お金」は使われることが必要なのでは、ないでしょうか。
「国民生活安全安心最優先」などという言葉にだまされないことです。イギリスやフランスの経験は、「ダメなものは替える」ことで生活と民主主義を守ることを教えてくれているのでは、ないでしょうか。
難儀な世に私たちの年金、暮らしは? 24.5.26. 稲邑明也(旧三菱)
風薫る五月とか言っているうちにもう初夏の感じで、この夏も暑いとの予報で凌ぎにくい日々になりそうです。暮らしも平和も難儀な状況ですが、不透明感の増す情勢を年金者の目線で見詰めつつ、安心して老後を過ごせる方向を考えていきたいものです。
金融緩和是正というが
日銀が三月、「異次元の金融緩和」の変更に踏み出したものの部分的措置だったために、効果は薄く、却って円安を招き、物価は引き続き上がっています。植田日銀総裁は「異次元の金融緩和政策は役割を終えた」と述べたものの、緩和策への反省はなく「緩和的な金融環境は継続」と発言。
利上げに転じると、企業の業績不振、株相場の下落など懸念され、特に国債の利払い増加で財政難が深刻化します。財務省は「金利1%の上昇で33年度の利払い費が想定額24.8兆円から更に8.7兆円膨らむ」と発表。昨年度8.5兆円です。
こんな矛盾から利上げ先送り姿勢のため、円安が160円突破に至り財務省は4月末と5月初めの2回、計約10兆円の為替介入したと観測されましたが、投機筋に対しては焼け石に水と言えます。◆投機屋に追い銭あげる財務省 (川柳もどきで恐縮ですが、以下◆ご笑覧を)
日米金利差が縮まれば円高に転じ得ますから、日本が利上げできないならアメリカの利下げを!と期待してもアメリカの景気は底堅い面があり先に延びると予測されています。
◆アメリカの景気後退望む円 と皮肉っても日本は円安に至った経過を検証して根本的に経済・金融政策など転換する必要があります。
円安はアベノミクスによる低金利政策によるだけでなく、長期的に経済成長が止まり賃金も上がらず…という歪んだ経済で日本の実力が低下したことにあります。
「失われた30年」という人ごとみたい言い方がありますが、被害者国民にとっては「奪われた30年」であり、自民党政治の下で新自由主義経済が推進されてきた経過を掘り下げて見る必要があります。 ◆30年失わせたの誰なんだ!
筋違い政策で弊害はこの先も?
この「30年」もアベノミクスで更に酷くなりました。 ◆緩和策サイフも頬も緩め得ず
「副作用」なんてことでなく弊害そのもので、しかも岸田首相が継承していることは更に重大です。安倍元首相さえやらなかった大軍拡をアメリカに約束し、財政悪化と社会保障に皺寄せ推進中です。こうして国債格付けの引下げが愈々迫りそうとの観測もでています。下げられると国債金利は上昇し、大銀行大企業の海外資金調達コストも増大するため財界は「財政健全化」を一段と喧伝するようになりました。21日開催の財政審議会では又ぞろ社会保障給付の適正化(=削減)のための改革、医療・介護の国民負担増などを強調しています。今は何とか生活水準を維持し得ていてもこの先は更に厳しくなります。
私達の受難の程は
今春闘は5%台と喧伝されましたが、大企業中心のことで、中小零細企業は物価高騰などで難儀な経営状況です。昨年の春闘も評価され連合は3.58%の賃上げと発表しましたが、厚労省が発表した統計では1.8%の由(日経新聞5/24)。こんな実情ですから、近年の物価上昇のもとで実質賃金が24カ月連続ということになるのです。
大企業中心の賃上げ先行から「賃上げと物価上昇の好循環」と言われていますが、物価上昇が続いて低い賃上げが後を追うのでは実質目減りのイタチごっこです。企業が賃上げを口実に値上げを進めると物価アップに繋がり年金者としても暮らしアップアップです。
公的年金は統計確定後の後追いで決まります。しかも賃金上昇率が物価上昇率より低ければ賃上げ率を基に決め、賃金上昇率が高くても物価上昇率が低ければ物価上昇率を基準に決める方式に21年改悪されました。公的年金はアベノミクス開始以降の12年間の増減±単純累計で3.5%増額でしたが、物価は±単純累計11.3%上昇のため、結局この12年間で単純累計7.8%の目減りです。
企業年金はどうなっている?
私達の確定給付企業年金(DB)は、リスク分担型創設に見られるように企業が負うべきリスクとコストを加入者・受給者に転化する仕組みが作られてきました。リスク分担型の掛金のみ導入=620、減額ある全面適用=23件(4/1現在)で、全体的に普及は頭打ちです。企業側は使い勝手が悪い、と更なる改悪を検討課題としています。
リスク分担型の増勢は止まっている他方で、企業側は別の負担軽減策を講じています。数年前から大企業の中で確定給付から、確定拠出年金へ移行する事例が増えているのです。
みずほは今年からこちらに切り替えました。三菱UFJ銀行は永年、退職金・企業年金の改善は全くやらないで別の確定拠出年金を17年に開始しました。これは行員の給与を一部減らして同額を確定拠出年金に拠出とする本邦初の新手口で、福利施策と称するものの銀行負担ナシの脱法的な確定拠出年金類似制度です。三井住友銀行も一年後これに追随。
今、他の大企業でも確定拠出年金への移行が進められ、全体的に確定給付の受給者が減りつつありますが、企業年金基金としては「少人数の受給者の管理コストが負担」として、基金を廃止して信託銀行の「規約型」に移行する例が出ています。パナソニックは昨年から全受給者がこの方式で信託銀行から受給することとなりました。
基金から現役を確定拠出年金に移した後は、退職済みの受給権者のみ残って「閉鎖型」と称される扱いになり、年数を重ねるとともに年金資産は減り続けます。存在感が低下することで受給権が基金側から疎かにされないようにする必要がでてきます。
年金バイアウトは、年金基金の資産、給付負債と給付実務一切を保険会社に引き渡すもので、米欧で行われてきました。三菱UFJ銀行も米国子会社MUBで巨額のバイアウトを昨年実施しました。私たちとしても人ごと視はできないと思います。
企業年金・個人年金部会は19年にバイアウトを検討課題と掲げましたが、部会は今、これは棚上げで「資産運用立国」などに即した施策について審議しています。
財界・政府の新たな画策
岸田内閣は「資産運用立国プラン」をアメリカの年金資産運用企業などと一体的に推進中です。首相はアメリカの関係企業の圧力を受けて官邸に招いてヒアリングとか、出かけていくなど行動。先週はモルガン・スタンレーのイベントで税優遇など含む「金融・資産運用特区」の具体化を言明(日経新聞5/23)。
日本の金融業界、資産運用企業も前々から金融ビッグバンで「貯蓄から投資へ」を推進したものの、預貯金の比率が依然として多いため、この個人金融資産を更に投資に誘導し、資産運用企業が利益を上げる狙いでNISA拡充、iDeCo普及を推進しました。税優遇で庶民にはプラス面もありましょうが、カタカナ言葉に惑わされることなく、国民のため金融資本・資産運用企業のためのものであることを念頭に置きたいものです。◆ニ―サって何さ株屋がトクしてさ ◆虎の子をアメリカからもワシ掴み
こうした流れに呼応して企業年金・個人年金部会は月に一回のペースで開催、主として現役向けに諸々の改定を審議してきました。特徴的なことは、
▼企業年金は企業が責任負う確定給付とは異なり、運用は個人責任とする確定拠出年金(DC)を普及の主流とする、
▼DCの掛金限度は企業・個人拠出分共に拡大(税優遇とセット)、▼企業とは無関係に個人が拠出のiDeCoを拡充、優遇する、
▼内外企業の競争促進のために情報開示など進め、基金などの運用成果を厚労省のホームページで公表。
私達受給者も一段と情報を得やすくなる措置も講じられる、というプラス面もありますが、大局的に一連の審議内容具体化が、私達のためになるのか?警戒が必要です。
財界・企業からのカネを得て自民党政権が軍拡に励み暮らし圧迫の政策を進めている今、老後資金を心配せずに済む社会保障政策、投機に振り回される投資よりも貯蓄で将来設計できる金融政策など大事です。軍拡改憲に励む政治を正す立国、立憲主義政治こそ重要であり早く転換したいと願う一人です。 ◆悪政の転換あっての幸齢期
「賃金・物価の好循環」と利上げを考える
日銀が17年ぶりにマイナス金利政策を解除し、異次元の金融緩和から 転換の方向に踏み出しました。発表日に「春闘の平均賃上げ率が5%を超える高水準となり、利上げをしても賃金と物価がバランスよく上昇する好循環の実現が可能」と、日銀総裁も岸田首相も共に同
じ趣旨のことを述べています。
しかし2月の全国生鮮食品除く総合指数は前年同月比で2.8%上昇と4カ月ぶりに伸び率を拡大、東京23区の2月の同指数は前年同月比2.5%増と前月より上昇率が拡大しており、日銀が目指す緩やかな物価上昇とかけ離れています。
好循環と言うが…
目先的な変化だけでなく、ここまでの経過を振り返ると、既に実質賃金の低下は22カ月連続し、家計消費は減退しています。今の物価高では少々の賃上げでは取り返せないし、好循環と言えましょうか。むしろ弱肉強食で企業は賃上げを口実に価格引き上げに動くことが予測され、円安基調も変わらず物価上昇が鎮静化する保証はありません。
5%超の賃上げも、実は大企業が労使協調路線の組合と程々の許容範囲 で、人手不足の状況下、人材確保の意図もあって決めたものであって、好循環を為政者の期待に沿って推進したと言えましょうか。好循環といっても形だけのイタチごっことなり、実質賃金は下押しされる可能性が高いのではないでしょうか。
今の公的年金の毎年の改定は、物価上昇時に賃金上昇率が低いと、この賃上げ率を根拠に抑えられる仕組みです。また、私達の確定給付企業年金は、物価上昇とは無関係に定額の給付です。2%の物価上昇が適切などと言う政治の下では5年で10%超( 複利計算)の目減りとなります。高齢者の生計に高い比重を占める生活必需品の物価上昇率は前々から高水準であることも示されています。のんびり豊かな老後を送ることが許されない情勢と仕組みを見詰めてゆきたいものです。
かつて総評がストも構えて大幅賃上げを勝ち取っていた時代でも、物価は上昇し実質賃金も生活向上も容易ではありませんでした。あのころに比べれば、ストを構える組合はグーンと少なくなり、結局は「失われた30年」=奪われた30年になった経過があります。安倍政権の時期も含めて自公政権の2012~2022年迄の期間を見ても平均年収は350.4万円→326.3万円(法人企業統計)と、24.1万円の減少です。
弱肉強食の仕組み転換を!
これから先が種々論評されていますが、雇用者の7割を占める中小企業の賃上げは不透明です。中小企業の賃上げについては、最低賃金を引き上げること、賃上げを実施する中小企業に対しては社会保障費用負担の軽減など措置すること、大企業は下請け企業に対して価格転嫁を誠実に認めること、など重要不可欠です。併せて、私達高齢者にとって切実な医療介護分野の労働者の賃上げなど、政治の責任で果たすべきことです。
これらの措置に必要な資金は、金融緩和による円安の追い風を受けてきた大企業に内部留保課税で確保するのが筋です。500兆円を越える内部留保のうち、アベノミクスの期間に増やした額=180兆円の2%に対して課税すると5年間で10兆円の財源が得られると提案している政党もあります。
更に、物価上昇の目標を2%とか設定するのは、資本主義経済では当たり前なのか?ということも問われます。マクロ的には、需要と供給の関係で物価が変動するものであり、賃上げをやっても、技術革新、新商品開発や新分野開拓などで売価を上げずに競争力を維持するのが本来的な行き方です。
様々な努力や条件の中で物価は変動するものであり、賃上げが物価上昇に繋がって経済がうまく循環するなどと、為政者や財界、金融当局が単純化しての発言は妥当と言えません。
今の局面は、賃金も年金も抑え込まれて総需要が減退してきたことに最大の問題があり、好循環を言うなら、賃金・年金を増やし消費税も減税して家計を温め、物・サービスの売り上げが増え、設備投資も伸び輸出も増えて経済が成長する、その過程で需給バランスが傾いて物価上昇もあり得る…というのが本来の道筋です。
政権や財界の単純化した言い方に慣らされて、賃上げしたから物価上昇も仕方ないと受け止めるなら、思う壺に嵌ります。メディアの一面的な垂れ流し報道にも気を付けたいものです。
家計支出増加の進展過程で売上増→設備投資増などで前向きの融資が増えるものなのに、アベノミクスは家計と消費の減退に対策を講じずに、融資増のためとして無理して銀行に融資させようとマイナス金利を懲罰的に課して資金過剰とし、日銀や年金積立金での株購入増加と相まって株価を吊り上げたのです。他にもアベノミクスがもたらした「副作用」と今では言い慣らされていますが、当初から「弊害」との批判はあったのに為政者やマスコミは無視軽視で10年余も、金融・経済に歪み・矛盾をもたらしたのです。
日銀はマイナス金利解除といっても「緩和は継続」と明言したため円安は更に進行。過剰資金の吸収はせず、引続き国債は買い続けるなどの方針です。「好循環がこれから先、軌道に乗り安心」との見方から株式相場は(他の内外動向・条件とも相まって)活況を呈し、史上最高値を更新し続けています。しかし根本的な転換の無いままでは国民に難儀は続きます。為政者やマスコミの言説には警戒しつつ転換の声をあげる必要があります。稲邑明也 (旧三菱)
川柳 与謝糠晶太 (旧三菱)
二階まで溢れる本に裏金も
「記憶なし」逃げた回数記憶なし
同穴のムジナどもが悪あがき
馬謖らが多くて総理は斬りあぐね
「火の玉」が線香花火で終わりそう
検察も刷新本部が必要で
信用も落として揺れる北陸電
原子の火 燃やせ燃やせと亡者たち
ニ―サって何さ株屋がトクしてさ
好循環?物価と賃金イタチごっこ!
株価アップ庶民の暮らしアップアップ
一強に激震かまそう総選挙で
小林節さん「平和の準備こそ」を語る 菊池喜久夫(旧三菱)
銀行九条の会は、第17回の講演会を昨年11月25日に開催しました。
慶応大学名誉教授、全国革新懇代表世話人小林節氏をお招きしました。
~テーマ~ 『今こそ憲法9条を活かして』
当日は冬の寒さが戻るなかでしたが、参加者は昨年を6人上回る会場一杯の103人でした。小林先生の講演は、約90分でしたが用意されたレジュメの内容だけでなく、私たちが普段疑問に思っていることなども実に率直に話してくれました。
参加者の感想では、「まさに、小林節(コバヤシブシ)だな」と実にうまい例えを言っていました。自衛隊の話に「これまでモヤモヤしていたことがすっきりした」。改憲させないために「『51%の賛同者を集めることが大事』との話しに同感した」などの声がありました。
また、家族3人で参加した青年が「小林先生の意見に大賛成です」と話していたのがとても印象的でした。たくさんの質問にも、時には質問した人に内容を確認しながら丁寧に答えてくれました。
先生は「これは私の意見ですから皆さん是非考えてください」と何度か強調していました。その中で、「若い人とのつながりをつけるのはどうしたらよいのか?」との質問に対し、小林先生は「無理に若い人に近づこうとしなくてもいい、みなさん元気な年寄りが自分でしたいことをやればいい。」との回答には「なるほど、そうだな」と納得しました。
憲法9条を持つ日本として、いまこそ戦争の準備ではなく平和の準備を行うことに力を合わせていきたいと思いました。戦争を起こさないために、多くの人と対話をして多数者を作っていくことの大切さを改めて考える講演会でした。
詩 一本の樹木 宮本勝夫(旧三和)
命を育む森林の
最も神に近い巨大な一本の樹木は
古の「縄文」から人間の営みを
見つめ立っていた
古から人もまた自然の力を尊び
生きとし生けるものの命の恵みをうけ
更に自然の脅威に畏敬の念を抱きながら
生活・精神の糧として自然と共に
命を繋いで生きてきた
神に近い古の人たちの魂は
いつしか資本主義「経済優先」の
神話にからまれ断たれてしまったのか
生き続けるための自然への祈りも断たれ
いま墓場の入口に立っている
両忘を思索する老いの現し身
大雨洪水・火災山火事
巨大台風暴風・・・
大地に生きるものすべてを食いちぎる
地球沸騰化現象
それらは傲慢な人間が
つくりだしてきたもの
自然災害か人災なのか
曖昧模糊としたものなのか
そこに生きとし生けるものの
終末が見えてくる
古から生き続けてきた
孤高なる巨大な一本の樹木は
いまも生命の流れを
見つめ続け立っている
尚、当日呼びかけた「ガザ人道支援募金」¥30,350円が寄せられました。
古里の地震に想う 稲邑明也(旧三菱)
元日に私の古里を襲った地震には、すっかり正月気分を吹き飛ばされ、親戚・友人らに安否確認・電話不通先のフォロー、見舞い発送などで毎日が早く過ぎました。そして惨禍・窮状を聞き、テレビも見ながら多々考えさせられました。
発震後二週間たっても安否不明が多いまま、被害状況も把握しきれない有様で胸が塞がれる思いです。昔から「能登はやさしや土までも」と言われてきたその土地が猛り狂ったように純朴な田舎の人達を襲い「何でこんな目に遭わんならんが!」と嘆く声には全く身につまされる思いです。
余震が続き降雨・降雪下、避難住民から水、食料、暖房、医療など要請が多くても行政は対応し切れず、道路損壊・交通途絶で、救援物資の輸送や緊急車両の往来も難儀…など大変で、イザ災害が起きると自助共助を超えて公助=行政の責任が問われてきます。
特に石川県は一部の観光業、工芸品などの他に特徴的な地場産業は無く、農業・漁業で暮らす人たちが多数です。少子高齢化、過疎化は進んで、国鉄民営化後の廃線や道路整備の遅れなどから来る問題点も政治に起因していることがこの震災で露呈しました。
政治の責任はどうなっていたのか
阪神淡路、東日本、熊本などの地震からも政治の責任は指摘されていたことです。しかし政府は、震災対策、社会保障、教育子育て等よりも軍拡に巨額の税金を投入し、これまでにない軍事国家へと進めつつあります。自衛隊基地の強靭化に注力する他方、防災・減災を含む国土強靭化法の内容と施行状況はお寒い限りで、全くの逆立ちです。
自衛隊だけでなく米軍のための辺野古基地はじめ軍拡に巨費を投ずるのは、生きている人間を殺し合う全く愚かな準備に他ありません。
内閣府は複数省庁にわたる毎年度の防災関係予算を積算し、防災白書で発表しています。最新の23年版の同白書によると、23年度は約1兆6000億円で、22年度の約3兆円の半分程度です。「防災関係予算は、災害発生時に事後の補正予算などで対応するのが一般的」ということで増減額の当否、適否は単純には判断できませんが…。
内閣府は防災関係予算を◆各種災害や防災・減災の調査研究向けの「科学技術の研究」、◆防災施設整備や建物の耐震化などの「災害予防」、◆地盤沈下対策や治水・治山事業などの「国土保全」、◆被災者の生活再建支援や災害復旧事業を含む「災害復旧等」の4項目に分類しています。
4項目の使途推移をみると「災害復旧等」は災害次第で1~7割と増減率大の他方で「科学技術の研究」は一貫して2%以下で推移。「国土保全」は1~2割程度の推移です。
一般会計予算に占める防災関係予算の割合は、災害対策基本法が成立した60年代に比べて低下しており、62年度には8.1%だったが、22年度は2.2%にとどまっています。
このように見ると地震大国日本として、また最近は気候変動からくる災害増加など被害が増加しつつある日本として歴代政権の政治はどうだったのか責任が問われます。
岸田首相や馳県知事の姿勢からして問題
地震発生直後、岸田首相はプッシュ型で物資を届ける、など言葉としては真っ当な発言でした。しかし実際の動きは緩く、岸田首相は8日になって「激甚災害」の指定に向けた手続きを進めるよう指示。自衛隊の出動も、熊本地震の時は翌日から四日間で計60,100人だったのに比して能登地震では同じ四日間12,600人でした。陸路・空路で自衛隊員増派も散発的で不足な他方で、千葉県で多くのヘリを使って降下訓練を予定変更なしに実施しました。
防衛省は2隻のフェリーを13日に七尾港に派遣し、14日から被災者が食事、入浴、宿泊休養場所として利用できるようになりましたが、遅い対応に批判が出ています。
岸田首相は14日になって現地入りしましたが、被災者の声に一応耳を傾けたものの、「困っていることはないですか」と問う始末で、今更何を!と怒りの声が出たのは当然です。二カ所とも約30分の視察の中での対話で、ここに姿勢の程が示されています。
石川県政は、大規模災害に前々から油断ありで、県の地域防災計画は地震の「災害度は低い」と書かれたまま26年間放置。原発が造られ、珠洲地震が近年度々起きて向後の発生も警告されていたのにノータッチで、共産党議員の批判も柳に風。自民党長期県政の結果です。
今の馳知事は、珠洲原発推進で暗躍した森元首相直結で、安倍派に属して文科大臣にもなりました。自宅が東京で、危機対応に問題!と言われながら金沢の公邸に住まず元日も帰宅中。発震6日目にやっと「非常事態宣言」発令。岸田首相が来県してから一緒に珠洲・輪島に現地入り。これが初めてで、もっと早く来い!と批判が広がっています。
馳知事はこれまで、自身に不利な記者会見は拒否とか、官邸機密費で五輪誘致したことを自慢げに語り後で撤回とか、色々と名を馳せた人物です。
やっぱり!問題露呈の原発
今度の地震で志賀原発には次々と問題が出ています。▼使用済み燃料プールの水が大量にこぼれる▼冷却ポンプが一時停止▼変圧器破損による大量の油漏れ▼その量は後になって当初公表の5倍に変更▼取水層水位に有意変動なしと発表後に3mの変動だったと訂正▼変圧器火災と発表したが、それは誤認だった▼避難にも不可欠のモニタリングポストは15カ所で破損していたことを後で発表▼襲来した津波は実は3mだったと9日になって発表etc.―「想定外」の言葉を度々補っての発表は不信感が募るばかりです。もう原発を運転・管理する資格の無いことが明らかです。隠蔽や後出し訂正などは志賀原発に限らず他の原発でも続いています。
こんな無責任な電力会社を軸に据えて岸田首相は原発推進に躍起です。
真に民意に添う政治へ
連日報じられる惨状や問題を知るにつけ、他山の石として私たちは個々人各地の足許はどうなのか?我が身の問題として自助共助は勿論のこと、防災について公助たる政治は自治体も含めどうなっているのか?考える必要があります。
首都直下地震は30年内に70%の確率と専門家が重ね重ね警告しているのに、政府や自治体の態勢は?―今夜起きるかも知れないのに、30年先との錯覚がないのか?必要物資備蓄、避難先や避難ルート確保etc.大丈夫なのか?―問い直す必要があります。
そして命に直結する問題を通して、根本的に国政はどうなのか?カネまみれで政治を歪めている人達がナゼ多数を占めるのか?民主主義にもとる小選挙区制度や、メディアが政権の監視役に徹し切れず、野党共闘に冷ややかな問題も見詰め直す必要があります。
川柳 与謝糠晶太 (旧三菱)
二階まで溢れる本に裏金も
「記憶なし」逃げた回数記憶なし
同穴のムジナどもが悪あがき
馬謖らが多くて総理は斬りあぐね
「火の玉」が線香花火で終わりそう
検察も刷新本部が必要で
信用も落として揺れる北陸電
原子の火 燃やせ燃やせと亡者たち
ニ―サって何さ株屋がトクしてさ
好循環?物価と賃金イタチごっこ!
株価アップ庶民の暮らしアップアップ
一強に激震かまそう総選挙で
みずほがリスク分担型の掛金制度開始
リスク分担型とは?
2008年のリーマンショックを契機に、財界が今後の危機への対処策として政府に要求し、2016年末に作られたのがリスク分担型です。つまり、基金に積み立て不足が生じると、企業が必要額を全額拠出する義務がありますが、リスク分担型では、一定のルールに基づいて加入者と受給者も減額し、企業と並んでリスクを分担するのが最大の狙いという仕組みなのです。
先行きのリスクを前もってカバーするため安心できる面がある、と言う触れ込みでした。しかし、企業年金はそもそも退職金の割賦払いで全額を企業が給付するしリスクも負担する義務があるのに、リスクのみならず給付額まで一部免除し、加入者・受給者に負担を転嫁するというのは、企業年金の本質を歪める筋違いな仕組みなのです。
企業がお得な仕組み
景気悪化のときに基金に積み立て不足金が出ると、企業として特別に拠出を増やす義務がありますが、業績ダウン時の負担は厳しくなるので、将来発生するリスクを予測して「リスク対応掛金」をあらかじめ拠出する、利益を上げている時でも税制上は損金として別枠で計上可能とするため、企業は節税となり、国は税収減となります。
リスク額の計算は国内外の株式や債券など運用資産別に市場急変時の減額率を厚労省が測定して省令で決めています。(現行は国内株式=50%、外国株式=50%、国内債券=5%、外国債券=25%など)
企業が掛金を決算時に計上するのが第一段階で、目標総額と掛金期間などを基金規約に定める手続きが必要で、この場合に労働組合の合意が必要です。したがって受給者としては労働組合がどんな合意をしたのか?確認しておく必要があります。
次に、イザ積立不足が生じた場合、加入者・受給者がどの程度負担するのか?など予め労使間で決めた条件に基づいて減額などの措置を取ります。いわばリスク分担型の全面実施で、減額の具体的なルールを決める労使間の事前合意が必要です。
受給者はおいてけぼり・後景へ うかうかしておれない!
重要なのは、受給者に不利益が生ずる問題なのに、合意形成のための討議や採決に参加できないことです。(厚労省は法的な問題クリアのために「受給者の参画は排除せず」と一応定めていますが、実体的にその保障や制度化は困難視のまま施行となりました)
受給者は減額の場合に賛否の意思を個別に問われて表明する段取りですが、3分の2を越えれば纏めて減額の対象となます。不同意者は一時金を選択すれば給付されますが、金額算定は厚労省のルールに基づき現役の労働組合と企業の合意形成に委ねられます。
受給者への一時金配分算定は平均余命によるため、平均余命を超えて生存する人には不利益が生じます。結局は、退職時に確定していた受給権は保障されない事態となるのです。
受給者は、退職後に労使が決めたら従うことを強いられ、しかもリスク分担型施行前の2016年末までの退職者であっても遡って適用するのは不遡及の原則に反する、など法治国家として筋違いな仕組みなのです。
「受給者に説明…」と言っても
更に困る問題があります。受給者に減額同意・不同意の意思を問う前に厚労省は「全受給者に対する事前の十分な説明」を企業に課していますが、質疑応答を可能とする場と機会を全国各地で提供するのか、全員網羅できるのか、問われます。りそな銀行の減額提案の説明会は、限定された地域でのみ行われ、説明不十分の上、質問も制限されたりして、多くの疑問が残ったまま、減額が強行されました。
「説明」とは、文書やホームページでも可能とされます。基金だよりが送付されない状況のまま「説明はやった」ということで、寝耳に水のようにある日突然賛否を書面で問われることになる事態もあり得ます。
事の重大性や背景、問題点を知り得ないまま同意する受給者が多数を占めると、不利益を跳ね返したい人たちは巻き添えを喰らいます。こういう事態に備えて、銀行や基金に対峙できる会を組織し、日常的な活動をやり、銀行に対して必要な問い質しを行ない、受給者に知らせ、情報・知識の共有を広げていく活動が不可欠となります。
リスク分担型の導入状況は、第一段階の掛金のみが、全国で564件、銀行業界で私が把握しているのは、りそな、三井住友、あおぞら、みずほです。減額アリの全面適用は全国で23件、銀行業界では南都・阿波の二行です。
この仕組みを造るまで厚労省は企業年金部会を開催したりして8年ほどかなりのエネルギーを費やし、その割に経団連・大企業の評価は宜しくなくて、使いにくいなど批判が出て、改定を模索中です。 (稲邑明也 銀行年金を守る会ニュース No90より転載)
最近の企業年金の動向―「年金バイアウト」登場
「銀行がアメリカのMUBU売却に伴い前期決算で年金バイアウトを実施、721億円の特別損失を計上」と五月発行の会報で、記載しました。
この件は、銀行の基金とは関係なく、米国の別企業対象だったものですが、年金バイアウトについては、経団連が「企業年金・個人年金部会」で提起し、厚労省も研究会で討議したメニューであり、私たちとしては無関係でおれる保証は無いようです。
色々と質問も寄せられましたので、言葉の意味、由来、日本での検討状況、課題などについて記します。
年金バイアウトとは
企業年金を給付すべき企業が、年金債務を保険会社などの第三者に移管するものです。
企業が、受給者・現役加入者に対して将来分も含めて支払うべき債務とリスク(市況変動や長寿化など)を見積もり、一定の管理コストなど上乗せして、現に保有している年金資産と共に、保険会社へ移します。将来の支払額が不確実な年金関連の費用を早期に確定させ、貸借対照表上も身軽になる狙いがあります。
英国など欧米の企業年金は「終身年金」が多く、資産の運用に伴うリスクは、将来にわたり市況次第で積立不足も生じ、企業にとってリスクとコストが負担!という企業側の論理から、このバイアウトが10数年前から広がりだしたのです。
特に英国では「年金の給付水準が高いこと」「給付減額が基本的にできないこと」「給付額がインフレ率に直接連動すること」「基本的に終身」という特徴があって、これを企業側が乗り越えるために2006年に英国から始まり、米国など他国へ波及してきた経過があります。
この流れの中で、わが国でもサントリー、本田技研、デンソー、パナソニック、東芝などがイギリスの現地法人の企業年金のバイアウトを実施してきました。
日本でも終身年金の制度を採る企業が多かったのですが、厚生年金基金の代行返上に伴い終身年金が減少してきたこともあり、欧米ほどにバイアウトは注目されるに至りませんでした。
経団連が突然に…
財界は、前世紀から企業年金の改悪を画策し、厚労省の審議会など通して民主的審議の形をとって次々実現してきましたが、この流れの中で経団連から参加の小林委員が企業年金・個人年金部会(第2回2017.3.19.)で年金バイアウトを初めて提起しました。
小林委員は発言の冒頭、「グローバルでの競争が激化している中、企業の枠組み自体も変化する機会が増えています。国内企業が持続的な成長や中長期的な付加価値向上を目指す上で機動的に事業形態を見直し、経営資源の効率的活用を図ることは極めて重要であり、企業規模の大小を問わず、M&A等による事業再編が活発化している状況があり…」などと発言しました。
続けて、リスク分担型の更なる進化、従業員の自助努力によるiDeCo拡充などと共に、「持続可能な年金制度運営に向けた対応…としてM&A等の事業再編が増えている中で、例えば英国における閉鎖型DB(現役抜きの確定給付)のバイアウトなどのように、年金の支給義務を社外に移転させる仕組みなど、企業としての制度設計の柔軟性を高める…方策を検討いただきたい」と発言したのです。
これを受けて、厚労省の企業年金・個人年金課長は第5回部会(19.5.17.)で「我が国のDB(確定給付企業年金)は終身年金が少ないといった事情や、過去債務分を含めてDBをDC(確定拠出年金)に移換できますので、バイアウトが普及している国とは環境が異なっている」と述べた上で、日本導入には前向きの発言をしました。
「企業が制度を終了する場合、企業年金連合会に渡して違う給付にする仕組みだが、この方式ではなく、従前の給付を保証するという目的のために、一つやり得るものと思います」と経団連に同調の姿勢を示したのです。そしてこれ以外の発言は議事録には見当たらないのです。
部会とは別の研究会でも審議
この部会に先立って厚労省は「企業年金制度研究会」を設置(18.5.30)して、部会と並行するような形で議論を進めました。2017年までは「企業年金部会」で企業年金をテーマに審議していたところ、社会保障審議会としては「企業年金・個人年金部会」に改組した部会で個人年金も併せて審議する方式に変わったために、別途、企業年金は独自に審議するという重複した方式をとったことが厚労省に訊いて判明しました。
こうして第二回目に早くも年金バイアウトを議題に取り上げて審議、他のことも含めて計7回の審議のまとめを、翌19年3月に公表したのです。
ここには「DB(確定給付企業年金)制度の改善」として「バイアウト等のわが国への導入の可能性」の一項を掲げて、バイアウトの背景、リスク回避策、長寿対策など概要文を記載(議事録は非公表)しています。
「主な意見・論点」として、「確定給付企業年金の制度の持続可能性の向上・制度の普及に有効」「導入の場合は対象やリスク移転先、価格設定など課題の検討必要」と記載すると共に「わが国では終身支給など義務付けられておらず一時金受給が多いなどからバイアウト導入必要ない」との意見も一応、付されています。
部会でほとんど議論ないまま
社会保障審議会に直結の「企業年金・個人年金部会」では、19年末に纏めた「議論の整理」に「Ⅳ.ガバナンスの確保」の項として年金バイアウトの一項が載りました。
それまで、経団連・小林委員と厚労省課長の発言が議事録に出たほかには意見がないようでしたが、この「議論の整理」で、前記「企業年金制度研究会」とほぼ同じ内容で「幅広い観点から検討したうえで、改めて議論すべきである」との結論を記しています。
これからどうなる?
確定給付企業年金法の「第十二章 他の年金制度との間の移行等」等をみても、年金債務等を保険会社に移転することは記載なく、そもそも想定されていません。
年金バイアウトは、受給者側から見れば「基金を通しての銀行との年金契約」が「保険会社との個人保険契約」に切り替わるような面が出てきます。
賃金の後払いとして企業の側に支払い義務と責任があるものが、バイアウトによっても完全に引き継がれるのか?もし破綻とか想定外の事態になったら受給権はどうなるのか?そもそも企業と保険会社が合意、契約しても個々の受給者の同意は求める必要はないのか?契約内容とその履行について政府・厚労省はどこまで把握・監督・行政指導の権限があるのか?など様々な疑問が出てきます。
筋違いなリスク共有型も登場
部会と並行審議した「企業年金研究会」には更に気になる記述があり、その一つがリスク共有型という外国ルーツの方式です。リスク分担型は金融市場激動などで基金の積立金不足が生じたら、先ず企業が一定部分を負担し、残る部分を現役と受給者が負担する方式です。しかしこの共有型は、企業・現役・受給者が初めからリスクを三者が一緒に共有する方式です。
企業年金は賃金の後払いの延払いで、金融市場などの変化に関係なく企業の責任として給付すべき法的責任がある、という基本点から大きく逸れており、受給者としても現役としても看過できない問題です。
厚労省が選定したメンバーで「議論しました」というカタチをとって企業サイドがおトクな事項を盛り込んで、今後の具体化の課題として公式に掲げることには警戒していく必要があります。
7月24日に開催の第25回企業年金・個人年金部会で厚労省が提出した「ヒアリング等における主な意見」の項に年金バイアウトは記載されたものの、リスク共有型は載っていませんが、安心できません。
いずれにしても、企業年金の本質を崩す政府・財界の姿勢が実は他の面でも表れているのが次のことです。
イデコって何のこってすか?
近ごろ、金融機関が新聞にiDeCo(=い でこ)の広告を出すようになりました。年金受給の年代は関心が薄いのですが、正式名称は
「個人型確定拠出年金」で、自分が拠出した掛金を、自分で運用し、資産を形成する年金制度です。少しでも国民に親しみを持って貰いたいと考えた政府が愛称を募集したところ、若い女性会社員が応募したこの言葉が採用されたという事です。
英語で書くとindividual-type Defined Contributionという表現ですが、カタカナ語句は警戒心をツイ抱きやすい人もいる昨今、政府としては金融機関と一緒になって普及に努めているものです。
肝心の公的年金が、ご承知のような流れで財界と自公政権が細らせ、今後も細らせる策動を続けています。細らせる代わりに「老後資金は2千万円必要」だから現役の時から自助の精神で工面せよ、という施策の一つがこのiDeCoと言えます。
法令上、「個人型」という言葉を冠した「確定拠出年金」というのも、元をたどると企業年金から発した歪んだ経過があります。
元々企業年金は欧米で始められ「確定給付」として定額を終身給付し、物価上昇も反映させる仕組みで企業が責任もって給付し、政府も監督する制度でした。日本では主に大企業が人材確保を狙いとして戦前から取り入れていましたが、物価上昇反映は稀で、終身よりも有期の期間限定で戦後普及してきたものの、大企業・財界は人件費負担や先行きリスクを嫌い、2001年に確定拠出年金法を施行したのです。
「確定拠出年金」は企業が拠出する額を確定したもので、肝心の給付額は不確定なのを判り辛く又はアッチ向いてホイッ効果を狙ったような命名です。運用は個人が責任を持ち、運用結果がプラスになるかマイナスになるか企業は責任なし、というものです。
本来、企業年金は企業に支払い責任ありという基本を国が崩し、自己責任、自助方式とした点は看過できないことです。この根底にある発想が実は今の私たちの確定給付企業年金に対しても同根で、不利益な画策を進め、既に本来の企業年金とは筋違いなキャッシュバランスプランとか、リスク分担型とかに及んでいることを重視したいものです。
「確定拠出年金」の企業型の場合は、企業が掛金を出し続ける約束ですが、「個人型」は拠出も運用も個人責任であり、企業とは全く別枠で個人が公的年金の先細りを工面する仕組みです。(前に三菱UFJ銀行が現役に導入したのは給与天引きで銀行拠出の無い新方式)
政府の推進体制
iDeCoは、社会保障審議会の下部組織である「企業年金・個人年金部会」で審議され、税制の特典を含めて普及拡大のための施策が討議されています。要は財界・大企業が社会保障負担軽減のために推進していると言える実態があります。
今年の部会は4月以降立て続けに開かれ、岸田首相が唱導の「資産所得倍増プラン」など基に、運用を引き受ける信託、生保、証券の業界団体に加え全銀協も参加して業界の要求事項を語り、これを基に審議が進行しました。
iDeCoの項では、普及拡大のために★拠出限度の増額、★加入年齢の引き上げ、★受給開始可能年齢の引き上げ、★手続の簡素化や効率化、★税恩典の拡充
企業年金の項としては、★中小企業への導入促進策、★実務の外部委託、★転職に伴うポータビリティ(≒移管)手続き簡素化、★自動加入、★特別法人税の引き続く延期など審議されていますが、看過できないのは次の点です。
定年延長に伴う給付減額…定年延長するとその期間対応分は一定率で給付総額が増えるのが当然ですが、増額ナシとか超低率のまま、給付先送りでは減額と判定されるルールです。
これについて経団連などは、▼減額として扱わないこと、▼減額扱いなら不利益となる従業員の同意を個別に求める必要があるが、面倒だから手続きは簡略にせよ、事務は簡素化を図るべき、そうしないと▼定年延長の阻害要因となる…など要求しています。
企業側の発言に対して「連合」など労働側の委員から原則的な発言がでていますが、企業利益最優先の露骨な発言が多く、他事にも及ぶことが懸念されます。
厚労省としては前々からの課題として「支払い保証制度」(基金・企業ともに給付不能となった場合、国ほか何らかの形で給付を保障する仕組み)を掲げていますが、経団連が異議を唱えて先送り継続となっています。
確定拠出年金、iDeCoの拡充が更に進むと、個人で拠出できる人は一段と拠出に励んで免税の特典を受け、他方ではその分、消費を減らして、マクロ的には経済成長への寄与は減り、全体的には貧困と格差の拡大に寄与…ということになります。
この審議に参加する委員は厚労省が選んだ16人で、業界関係と政府重用学者が多数を占め「労働側」と言えるのは連合と電機関係労組からわずか二人出ているだけです。
筋道から逸れた進め方に警戒を!
民主的に進めるなら公労使三者(公益・労働・使用者)が同数で審議し、重要点は国会で審議するとか、賃金の延払いである企業年金については、労働条件に関わる問題として労政審議会に諮るのが筋道です。
それなのに、社会保障分野の部会として取り扱い、経団連は企業年金を賃金ではなく「福利施策」と度重ねて発言するなど、筋論から外れた最近の動向は警戒すべきです。 軍拡費増のため社会保障予算抑え込みと増税を図る政府の下で、金融・財政分野にも目を向けつつ企業年金の動向を考えていきたいものです。 (23.7.25. 稲邑明也)
波風が強まり、銀行の今後が問われている
MUFGもMU銀行も近年、本業が低金利の環境で低調のなか、国債や株式の売買で市況に左右され、一時的要因で利益が大きく変動する状況が続いてきました。23/3期は米欧の金利上昇などで好転した面はあるものの国内は依然低金利でした。
国債等債券ビジネスは金利などの動向、しかも国内外の違いにより別々で増減は大きいし、株式市況による変動もあり、安定性に欠けている体質と言えます。
子会社MUBの売却で会計処理が22/3、23/3期にわたったことから、利益額が大きく増減して判り辛い面がありますが、MUFGとしては売却益でデジタル化、AI化など推進する構想とのことです。
この方向が一路、利用者にプラスの効率化ならいいのですが、既に支店・ATM・紙通帳などの削減、振込手数料の引上げ等、様々な合理化が他行に先行して打ち出されて、利用者や社会から不評の面があり、銀行の公共的使命から問題が残ります。
更なる利益追求でどうなる?
銀行業界は様々な指標を掲げ収益増強を目指しており、MUFGとして次の点があります。
自己資本利益率(=ROE 当期純利益÷自己資本)。MUFGとしては昨年度7.03%の実績で、今年度7.5%を目標としていますが、今年度はMUB売却益が無い分、マイナス要因ですし、円安が進行すれば経費増大という問題もあり、目標達成のために一段と利益獲得に走ることになりそうです。
株価純資産倍率(=PBR 株価÷1株当りの株主資本)が1に達せず、メガバンク共通して0.6台で推移、「一番頭の痛い問題の一つ」と日経新聞も指摘(5.24 )。
東証としても低い上場企業に引上げを要請した処です。しかしこの低さはROEとも共通する点があります。先ず、異次元の低金利政策で薄利を余儀なくされたものであり、適正金利に是正抜きの利益追求は、利用者・従業員にしわ寄せが及ぶことになります。
また、これら経営指標が示す効率性は海外比較からも低すぎると論じられますが、日本の銀行は預金を集めて融資する業務が基本なのに対し、海外の大手銀行は投資・M&Aや手数料稼ぎなどで利益を上げるウエイトが高い業態なので、資産に対しては効率的に利益を上げ得る体質です。いわば農耕型と狩猟型の違いは心得ておく必要があります。
効率アップは高リスクへ
米欧の銀行では、預金を債券売買業務に振り向けるウエイトも高く、利上げ・債券下落時のリスク大であることが一部米銀の破綻で露呈しました。
日本の銀行も、低金利下、利益獲得を融資より債券業務に傾斜し、預証率(国債・株式など有価証券が預金に占める比率)が高まっていたし、含み損を抱える地銀が増え、昨年より金融庁は監視・指導を強めてきました。
MU銀行の預証率は18/3期29.8%から漸次上昇し23/3期は37.6%となっています。
国債が殆どの「有価証券」保有が増えると含み損も増え、外債だけでメガ3行の含み損は3兆3千億円(22/12)でと報じられました(日経新聞2.2)。
MUFGは含み損とリスクを減らすため、売買取引の国債を満期保有目的の国債へ移し、含み損は株式も含めて9,789億円との開示です。減らしたとは言え、年間利益に迫る額です(MU銀行分は記載なし)。なお、国債償還までの残存期間短縮も図り22/3期2.8年→23/3期1.5年と開示。
いずれにしても、異次元の金融緩和政策の中でリスク分野を高め、米欧の利上げの他方で日銀が政策転換しないことで更にリスクを全体的に抱えていく状況です。
日銀の無理にも程がある!「副作用」どころか「害悪」をどうする?
日銀植田総裁は異次元の金融緩和に副作用があると認め「レビュー」を一年から一年半かけてやると発言、早期の方針転換の姿勢はありません。
異次元の金融緩和・低金利が円安・物価高騰に拍車をかけているのは「副作用」どころか重大な「害悪」です。それにも拘わらず植田総裁は、今の物価上昇率は「年度半ばで低下、その後に反転する。但しその確度に自信がない」と発言(毎日新聞5.25)。
確たる見通しも無く煮え切らないことですが、黒田前総裁も、円安や物価上昇は一時的なものと言い張り低金利固執を続けました。
米欧金利との差が開いて円安が進み、物価上昇で国民が難儀しているのに、こんな姿勢の根底には次の問題があるからです。
▲金利を上げると国債利払いが増えて財政が一段と悪化、
▲金利上昇→国債時価や株価下落→保有する銀行・大企業など損失、金融市場が大混乱、
▲日銀の資産減価(23/3末、国債含み損1,571億円)、市中銀行への利払い増加等で赤字決算となり、国際的信認が低下、大企業や銀行の起債にも悪影響、
▲日銀赤字で従来の利益≒国への納付金(21年度 1.2兆円、22年度2兆円)が無くなり、国の歳入減→国民に皺寄せ…と多面的問題があります。
勿論、ただ金利を上げれば良し、ということではなく、時期やテンポなど重要問題があり、弱者に激変緩和策を措置し、必要財源は大企業・富裕層の減税を元に戻して確保、軍拡支出は止める…など講じ、国民本位の財政政策に転じるべきです。
銀行業界も、コロナ対策の特別融資の返済が増えると共に倒産が増えだしており、更に与信費用増大となります。米欧では既に銀行の債券損失増・融資引き締めで利益減が進行、銀行不安の第二ラウンドが懸念されています(日経ヴェリタス5.18)。
ノンバンク、不動産など市場撹乱の要因やウクライナ戦争など地政学リスクの増大、世界的景気後退も指摘されています。海外ビジネス比率大のメガバンクは、波が一段と高くなる情勢の中で、せめて日本については必要な政策を日銀・政府に提言していかないと銀行のためにも、世のためにもならない存在となります。
大軍拡推進下、日銀総裁が代わっても誤策続行では…果たして
岸田首相はアベノミクス路線を継承し、矛盾は深まりつつあります。5年間で43兆円もの大軍拡財源は大増税と国債増発の方向が浮彫りです。少子化対策に消費税増税・社会保険料増なども浮上しています。これでは可処分所得が減り、賃上げしても物価上昇が続き、暮らしも平和も守り得なくなります。
確定給付企業年金からすると、利上げは給付額の実質目減りに通じて不利益となります。しかし全体的に物価上昇、社会保障の後退と負担増、不況深刻化…となれば総体的に暮らしは厳しくなります。
銀行業界は内外のリスク増大の中で、現役には人材獲得のため部分的好遇をしても全体的には合理化を推進し人件費率引き下げに努めています。こういう中で年金バイアウトが実施されました。当基金の受給権者ではなく、特殊な部分的な事例としても、年金資産の7%余に及ぶ額、年間給付総額の1.6年分の額の損失計上です。何よりも「将来の財務リスク軽減を目的」としている点で、今後も適用拡大の懸念ナシと断定できません。
リスク増大の厳しさに流されることなく、その根底にある諸々の問題を見詰めつつ経済・政治の転換を考えていきたいものです。 5.31. 稲邑明也 (旧三菱)
年金の実質減に金融不安…
暮らし・虎の子の先行きは?
物価高騰が引き続き、公的年金は実質目減りです。先行き不安がつのる中、三月に米欧で銀行の破綻など相次いで金融不安・リスクが高まりました。しかし、岸田内閣はアベノミクス継承だし、日銀植田総裁は異次元の金融緩和継続です。この上に大軍拡・大増税が加わると私たちの暮らし、平和はどうなるのでしょうか。
物価は年金暮らしに特に厳しくアップアップ!
物価上昇率は22年度3.0% (生鮮食品を除く。前年度比3.0ポイントUP)、東京都区部については2,3月連続して鈍化していたのが4月は前年同月比3.5%と再び騰勢に転じました。食品などの値上げ品目増加の反映です。
高齢層は、基礎的支出(=食品・エネルギー関係費目)のウエイトが高いし、今後の値上げ予定も多く、こういう点からも平均値に流されずに物価問題を考えたいものです。
人ごとみたいに言わないで!
バブル崩壊以降「失われた20年」の語が流布され、今では「失われた30年」と人ごとみたいに言われています。賃金、年金など抑えられてきた庶民からすれば30年も失わせた政治の経過を見詰め転換することが大軍拡・大増税進行の今、一段と重要です。
安倍元首相は政策目標の物価上昇率2%は世界標準と言い今も当然視されています。しかしこれは、90年代に高い物価上昇率を抑える目標として各国に導入されたものが、新自由主義の蔓延と共にインフレ目標とされたものです。物価の番人たる日銀が政権と共同声明を出してまで2%アップを目標としたのは逆立ちです。2%でも5年10年上がり続けると虎の子や年金がどうなるか?自明です。
腹痛に目薬つけるトンチンカンが、毒薬劇薬に…
需要不足に因るデフレの克服は、賃上げ、年金・社会保障拡充などで家計を温め消費が増えてこそ設備投資・銀行融資が増えます。消費減退で設備投資も不振なのにマイナス金利で貸出促進など本末転倒であり、緩和した余剰資金は株相場などに回り、大企業・富裕層が肥え太り、貧困と格差が拡大しました。
派遣労働者増加・賃金抑え込み等で儲けた大企業の内部留保は、アベノミクスの間、五割積み増して500兆円。消費低迷では設備投資も銀行融資も増えないのは当然なのに融資増を狙ってマイナス金利を導入、などトンチンカンを続けました。逆立ちの誤策続きの処に米欧の流れから金利引き上げが必要となっても、政府日銀共に従来からの誤策に固執し新たな矛盾に直面しています。
利上げすると、政府の国債利払い急増となります。また株価は暴落、日銀は自ら抱え込んだ資産の減価で債務超過となり円安招来などで国際的な信認も低下、多方面に悪影響が及びます。
このまま続けると一段と泥沼に
国際収支の悪化も看過できない状況です。円安と資源高などで貿易収支の赤字が膨らんでいます。円・ユーロ相場も下落、先週はニューヨーク外為市場で14年半ぶりの安値をつけました。米欧での金利上昇から日本も引き上げないと円安、物価上昇が増幅され諸々の矛盾を招くのに、このままいったらどうなりますか?
4月27-28日、植田日銀総裁は初めての政策決定会合で、金融緩和の現状維持と決めました。金融緩和は「副作用」どころか「弊害、害悪」であるのに植田総裁は緩和策の「レビュー」を1年から1年半かけてやる、緩和策の修正には直結しない、との方針です。国民弱者、中小零細企業、そして日本の経済、財政も泥沼に一段とズブズブ…となっていきます。米欧での新たな金融不安を考えると尚のこと懸念が膨らむばかりです。
信用不安はホントに収まっているのか?日本への波及は?
3月、米銀2行が破綻、以後は安定、とのことでしたが、4月24日、今度はファースト・リパブリック・バンクが破綻しました。これらの背景にトランプ大統領の銀行規制緩和で全体的な経営体質弱化などが指摘されています。
クレディ・スイスに絡む一連の問題もAT1債の無価値化・UBSによる買収など当局の強烈施策で抑え込まれましたが、ドイツ銀行などメガでもリスクは蓄積との観測です。
日本のメガバンクはBIS規制などで財務体質に問題なしとのことですが、米欧起点の事態が日本と無縁なのか、波及ないか? も顧慮不可欠です。リーマンショック以降、資金が世界に溢れ、金融資産が膨張してバブル化、投機盛況がいつまでも続くことはあり得ず、蟻穴から崩壊に至る可能性もグローバル化した中で警戒が不可欠です。
いま米銀各行は、貸出や有価証券を削減中との報道ですが、これが融資先の経営悪化→銀行の貸出債権劣化・不良債権増→自己資本比率低下など懸念されています。融資圧縮は既にノンバンクや不動産業に悪影響を及ぼし、景気後退要因となり、これら米国内の変化は他国に波及する可能性も指摘されています。
FRBは自国第一の急速利上げをやったため、新興国に通貨安・債務増と返済困難・成長鈍化など世界的な悪影響を及ぼしています。日本にも悪影響が及んでいます。
「3メガバンクの外債含み損は22年12月末で3兆3千億円」と日経新聞が報じました(2.3)。地銀は昨春から既に含み損が膨れ、金融庁も点検を強めていました。
ここに至るまで銀行業界は、国内融資不振のため、米国債など債券投資の比率を高めてきました。これが裏目に出て、健全性を示す指標=預証比率 (預金残高に対する国債、社債、株式等の証券を合計した有価証券残高の比率)に懸念が出ています。
22/3期末で30%を超えている地銀が15行、大手銀行は三菱UFJ銀行、みずほ銀行が揃って33.8%でトップ、三井住友銀行が27.12%となっています。
肝心の融資は、コロナ禍対策のゼロゼロ融資 (無利子無担保)の返済が本格化しても企業は業績低迷、倒産が増えつつあり、銀行は貸倒や引当増のリスクが増えていきます。
年金への悪影響は?
年金積立金を管理運用するGPIFは、安倍元首相の方針で資金運用は外債も株式も25%まで高めたのが今では裏目に出ました。昨年度の運用成果は、四半期毎で4-6月▲3兆7,501億円、7-9月▲1兆7,220億円、10-12月▲1兆8,530億円です。破綻した米銀2行の関連株式と債券を22/3月末約550億円(時価総額)保有も判明。
企業年金も不振で、23/3月期は速報値として、格付投資情報センター(R&I)はマイナス0.83%、ニッセイアセスマネジメントはマイナス1.39%と発表しています。
安倍政権は筋違いなリスク分担型を実施、自己責任の確定拠出年金も拡充、iDeCoでは金融市場に賃金天引きのカネが回り(昨年は2.5兆円)購買力低下に繋がりました。
厚労省の企業年金・個人年金部会は暫く休眠状態だったのが昨秋11月に再開、今年4月12日に21回目を開催し、iDeCo拡大などの画策を続けています。
日銀の無理無茶にも程がある!「副作用」どころか「害悪」
異次元の金融緩和・低金利が円安・物価高騰に拍車をかけているのは「副作用」どころか重大な「害悪」です。にも拘わらず黒田前総裁は、円安や物価上昇は一時的なものと言い低金利に固執しました。長期金利を低利に据えるために10年物国債のみ巨額買い込み、市場で売買が不成立など異常な事態まで度々起き、銀行に特別融資して国債を購入させるなど矛盾の上塗りをやりました。
低金利に固執するのは、金利が上がると▲国債利払いが増えて財政が一段と悪化、▲金利上昇→国債時価下落→保有する銀行・大企業など損失、金融市場が大混乱、▲日銀も損失を蒙り国への納付金(21年度決算で1.2兆円)が吹っ飛び、国際的信認も低下、大企業や銀行の起債にも悪影響など必至となるためです。
大軍拡推進下、日銀総裁が代わっても誤策続行では…果たして
岸田首相はアベノミクス継承を明言し、矛盾は続き深まります。5年間で43兆円もの大軍拡を強行する財源は大増税と国債増発の方向が浮彫りです。少子化対策に消費税増税・社会保険料増など、政権と財界の本音が出てきました。これでは可処分所得が減り、賃上げしても物価上昇が続き、暮らしも平和も守り得なくなります。
アベノミクスが日本の金融・財政・経済を歪めてきた上、今では米欧の信用不安が火種を燻ぶらせている段階にあり、政府日銀の責任ある政策への転換が急務です。
勿論、ただ金利を上げればヨシ、ということではなく、大局的に利上げ方向としても時期やテンポが重要で、弱者に激変緩和を措置し、必要財源は大企業・富裕層の減税を元に戻し、軍拡支出は止める…などに求め、国民本位の財政政策に転じるべきです。
現役世代と連帯して
銀行業界は預金・融資の業務で稼ぎにくくなって海外や新業務に進出、リスクを抱え込むだけに一段と経費、特に人件費圧縮を重視します。こういう状況下でみずほが企業年金も含む新提案をしました。各行が競い合う中で、退職済みの受給者に対しても影響の及ぶ改悪が進められる可能性も排除できません。現役をすべて確定拠出年金に移行して基金解散、退職済み受給者を閉鎖型に囲い込むとか、生保などに丸ごと移す「バイアウト」とか、選択肢があることに私たちとしては警戒が必要です。
物価高騰が進むほどに年金額や虎の子は実質目減りが進行する訳ですし、仮に上昇幅が緩んでも被害は高止まりのままです。
「高齢者に傾きすぎた社会保障財源を若い層に」など分断が進められていますが、若い層が後年冷遇されないよう現状改善も大事です。この視点で全日本年金者組合は年金・医療・介護など含む社会保障の拡充を政府・経団連に要請し続け、13-15年の年金減額は不当、違憲と裁判闘争を続けています。企業年金の受給権を守るためにも、内外情勢、暮らしと平和を守る運動に視野を広げてゆきたいものです。
(稲邑明也 5月1日 銀行年金を守る会ニュースNo88に寄稿
物価防衛も果たせぬ年金の先行きはどうなる?どうする?
物価高騰が続き、年金生活者にとっても先行き不安感が募るばかりです。公的年金は減額が続き今年は名目微増でも物価上昇率を越えず実質目減りです。
企業年金は元々物価動向に無関係で定額支給です。三菱UFJ銀行が2013年に導入したキャッシュバランスプランの適用受給者が年々増えてきました。10年物国債の市場金利によって給付額が変動する仕組みで、低金利下の今は2.5%の給付で、物価上昇率と無関係です。
こんな訳で、従前の受給者も最近受給開始の人も、共に物価や金融政策の問題を見詰め打開方向を考えることが求められています。
物価は年金暮らしに特に厳しい高騰状況
物価上昇率は1月に全国ベースで4.2%となり、東京都区部は2月3.3%に微減…など報じられていますが、年金生活者にはこの数字よりもっと影響が大です。現役世代は上昇率の低い耐久品支出や選択的支出ウエイトが高いのに比べ、年金生活者は上昇率の高い基礎的支出=食品・エネルギー関係のウエイトが高いし、今後の値上げ予定も多く、こういう点からも平均値に流されない物価問題を考えたいものです。
物価高騰の要因はご承知のように、世界的なコロナ禍からの経済回復に伴なう需給アンバランス、ウクライナ侵略に伴う食糧・エネルギー等価格上昇、がありますが、日本特有の問題としてa.金融緩和で低金利が続き、米欧などとの金利差が広がり円安、b.大企業などが海外展開・国内空洞化、産業・輸出入構造の変化、国際収支構造が変化、対外支払い増加、円安を招きc.赤字国債濫発で財政・経済など国力低下、といったことが海外投機筋から狙われ円安…など複雑です。
人ごとみたいに言わないで!
バブル崩壊後「失われた20年」の語が流布された後、安倍政権が「アベノミクス」を掲げ、菅・岸田政権がそのまま継続し10年たち、今では「失われた30年」と人ごとみたいに言われています。賃金、消費、GDPなど主要数値が伸びず国際収支の悪化や国債格付の低下など、庶民からすれば30年も失わせ続けたのは誰なのか?と言いたいところです。今こそ、前掲a,b,cの各要因を掘り下げ、転換することが求められています。
日銀は白川前総裁の時、既に金融緩和策を実施していたものの、金融政策だけでデフレ克服は限界ありとの姿勢でした。しかし安倍元首相が2012年に就任してからアベノミクスを掲げて更なる金融緩和策を求め、渋る白川総裁を黒田氏に交代させ「輪転機をグルグル回してお札を刷る」など無理筋を言い、物価上昇率2%を目標としました。
2%は世界標準と言いましたが、90年代に高い物価上昇率を抑える目標として各国に導入されたものが、新自由主義の蔓延と共にインフレ目標とされた経緯があります。家計が暖められ需要が盛り上がり、供給を上回ることで物価上昇が起きるのは結果論としてありますが、物価の番人と位置付けられている日銀が政権と共同声明出してまで2%アップを目標としたのは財界本位の思考・理屈であり、国民多数にプラスとなるものではありません。
2%でも5年10年上がり続けると虎の子や年金がどうなるか?自明のことです。しかし当時からマスコミの影響もあってアベノミクスは称揚され、国民本位の金融政策を主張する野党やエコノミストらの声は軽視されました。今後を考える上でもこれまでの経過直視が重要です。
腹痛に頭痛薬…が、毒薬に
安倍元首相はデフレ克服のための金融緩和を主張しましたが、デフレは賃金・年金抑え込みなどで国民の消費が減退し受給アンバラになったのが主因でした。
購買力低下→売り上げ低迷→設備投資も停滞…なのに、金融緩和しても銀行融資が増える訳もなく投機に流れ、公的年金の積立金と日銀の株式爆買いも加わり株価が上昇し好景気に見えたのですが、実態は大企業の内部留保が五割増、富裕層が更に富み、格差と貧困が拡大し財政赤字・国債膨張など矛盾が激化しました。
国債の日銀購入は、戦前の教訓としても厳禁なのに、巨額買い続け、GDPの2.6倍に達するなど、他国にない状況で、国債格付けも世界で24位です。
国際収支の悪化も看過できない状況です。円安と資源高などで貿易収支の赤字が膨らみ、海外からの投資収益や旅行収支の黒字を打ち消し、一月の経常収支は過去最大の1.9兆円を記録。円の評価はじめ金融、経済面で先行きが懸念されます。
賃上げが必要と安倍元首相も認め、経団連に要請などしたものの、政治の責任として率先実践すべき最低賃金引上げは微々たるものでした。公的年金の特例分2.5%を13~15年にカットし更なる給付削減の仕組みをつくりました。
企業年金では筋違いなリスク分担型を17年から実施、銀行業界でも導入されました。企業年金の本質から外れて自己責任運用の確定拠出年金を拡充しiDeCoでは賃金から金融市場に天引きのカネが回り(昨年は2.5兆円)購買力低下に繋がりました。要するに安倍元首相らはデフレ克服どころか逆の施策を展開し日本経済・金融の矛盾を深めたのです。
銀行業界も経営が難儀に
安倍元首相は家計を温める政策は取らずに逆をやり、物は売れず設備投資は増えず銀行貸付も伸びないという当然の流れとなりました。過剰な資金を融資→設備投資に回そうと黒田総裁は、銀行が日銀に滞留させている当座預金に利息を徴求するマイナス金利政策を追い討ちで導入しました。これも又、腹痛に目薬の類でした。
元頭取の平野信行氏は、日銀がマイナス金利を導入した2016年、国債入札特別参加者の資格を返上して批判姿勢を示したことがありましたが、MUFG傘下の他証券会社が資格を維持、腰砕けでした。
基本的に大企業は内部留保を溜め込み資金余裕がある上に設備投資は伸びず、借入需要が低迷していたため、銀行融資は低調で利ザヤも縮小、業績は各行とも低迷しました。メガバンクでは活路を海外に向け、MUFGは約150億ドル(約2.5兆円)を投じてインドネシアの商業銀行大手ダナモン銀行やタイのアユタヤ銀行など、アジアでの商業銀行ネットワークを拡大しました。しかし子会社化した後、株価下落で19年度に赤字6千億円も計上しました。
海外進出には地政学リスクがつきまといます。今もウクライナ侵略やアメリカの利上げで新興国や途上国の債務増加・利払い負担増が世界経済のリスクとなり世銀、IMFなど懸念を示しています。
過剰資金が溢れバブル化している中で、先週10日アメリカのシリコンバレー銀行(SVB)が破綻したのを皮切りに、問題銀行が相次ぎ、大手クレディ・スイスまで政府支援を受ける状況に至り、雲行きが怪しくなってきました。
貸付よりも外債購入に力を入れてきた日本の銀行は金利アップで外債の評価損が膨らみ、年金の資産運用でも懸念されます。 3メガの外債含み損は22年12月末で3兆3千億円(=日経2/3)。公的年金の運用機関GPIFが、破綻したアメリカの2銀行の関連株式と債券計550億円保有も判明、SVB問題などは対岸の火事で済むのか?
三菱UFJ銀行は、預証比率(預金に占める証券の比率)は前期末33.38%でメガバンクではトップです。地銀と異なりヘッジは出来ていると言われていますが、注目されます。
低金利続行で円安、物価高騰は放置か
異次元の金融緩和・低金利が円安をもたらし、物価高騰に拍車をかけていることから金利引上げ→円安是正が求められているのに、黒田総裁は、円安や物価上昇は一時的なものと言い張り低金利に固執、兆円単位の資金をドブに捨てるように円買い出動まで敢行しました。長期金利を低利に据えるために10年物国債のみ巨額買い込み、市場で売買が不成立など異常な事態が度々起き、大手銀行に特別融資して国債を購入させる策まで講じるなど矛盾の上塗りをやりました。10年物国債金利が基準で給付が決まるキャッシュバランスプランの受給者には悪影響が続きます。
低金利に固執するのは、金利が上がるとイ.巨額の国債利払いが増えて国家財政が一段と悪化、ロ.金利上昇→国債時価下落では、保有する銀行・大企業など損失、金融市場が大混乱、ハ.日銀も損失を蒙り国への納付金(21年度決算で1.2兆円)が飛び、国際的信認も低下、大企業や銀行の起債にも悪影響など必至となるためです。
こういう点で遅きに失しましたが、財界側からも批判が出てきました。平野氏は令和臨調の共同議長に就き、今年の一月、日銀と政府の金融政策に警鐘を鳴らし、日銀の国債購入が財政と金融に負の相互作用を及ぼしてきた、と指摘しました。しかしアベノミクス自体を厳しく批判するに至らず緊縮財政要請に重点がありました。大軍拡・大増税に反対するものでもなく社会保障削減につながりかねない方向です。