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​交流の場-最新

 

「賃金・物価の好循環」と利上げを考える 

日銀が17年ぶりにマイナス金利政策を解除し、異次元の金融緩和から 転換の方向に踏み出しました。発表日に「春闘の平均賃上げ率が5%を超える高水準となり、利上げをしても賃金と物価がバランスよく上昇する好循環の実現が可能」と、日銀総裁も岸田首相も共に同

じ趣旨のことを述べています。

しかし2月の全国生鮮食品除く総合指数は前年同月比で2.8%上昇と4カ月ぶりに伸び率を拡大、東京23区の2月の同指数は前年同月比2.5%増と前月より上昇率が拡大しており、日銀が目指す緩やかな物価上昇とかけ離れています。

 好循環と言うが…

目先的な変化だけでなく、ここまでの経過を振り返ると、既に実質賃金の低下は22カ月連続し、家計消費は減退しています。今の物価高では少々の賃上げでは取り返せないし、好循環と言えましょうか。むしろ弱肉強食で企業は賃上げを口実に価格引き上げに動くことが予測され、円安基調も変わらず物価上昇が鎮静化する保証はありません。

5%超の賃上げも、実は大企業が労使協調路線の組合と程々の許容範囲 で、人手不足の状況下、人材確保の意図もあって決めたものであって、好循環を為政者の期待に沿って推進したと言えましょうか。好循環といっても形だけのイタチごっことなり、実質賃金は下押しされる可能性が高いのではないでしょうか。

今の公的年金の毎年の改定は、物価上昇時に賃金上昇率が低いと、この賃上げ率を根拠に抑えられる仕組みです。また、私達の確定給付企業年金は、物価上昇とは無関係に定額の給付です。2%の物価上昇が適切などと言う政治の下では5年で10%超( 複利計算)の目減りとなります。高齢者の生計に高い比重を占める生活必需品の物価上昇率は前々から高水準であることも示されています。のんびり豊かな老後を送ることが許されない情勢と仕組みを見詰めてゆきたいものです。

 かつて総評がストも構えて大幅賃上げを勝ち取っていた時代でも、物価は上昇し実質賃金も生活向上も容易ではありませんでした。あのころに比べれば、ストを構える組合はグーンと少なくなり、結局は「失われた30年」=奪われた30年になった経過があります。安倍政権の時期も含めて自公政権の2012~2022年迄の期間を見ても平均年収は350.4万円→326.3万円(法人企業統計)と、24.1万円の減少です。

  弱肉強食の仕組み転換を!

これから先が種々論評されていますが、雇用者の7割を占める中小企業の賃上げは不透明です。中小企業の賃上げについては、最低賃金を引き上げること、賃上げを実施する中小企業に対しては社会保障費用負担の軽減など措置すること、大企業は下請け企業に対して価格転嫁を誠実に認めること、など重要不可欠です。併せて、私達高齢者にとって切実な医療介護分野の労働者の賃上げなど、政治の責任で果たすべきことです。

これらの措置に必要な資金は、金融緩和による円安の追い風を受けてきた大企業に内部留保課税で確保するのが筋です。500兆円を越える内部留保のうち、アベノミクスの期間に増やした額=180兆円の2%に対して課税すると5年間で10兆円の財源が得られると提案している政党もあります。

 更に、物価上昇の目標を2%とか設定するのは、資本主義経済では当たり前なのか?ということも問われます。マクロ的には、需要と供給の関係で物価が変動するものであり、賃上げをやっても、技術革新、新商品開発や新分野開拓などで売価を上げずに競争力を維持するのが本来的な行き方です。

様々な努力や条件の中で物価は変動するものであり、賃上げが物価上昇に繋がって経済がうまく循環するなどと、為政者や財界、金融当局が単純化しての発言は妥当と言えません。

 今の局面は、賃金も年金も抑え込まれて総需要が減退してきたことに最大の問題があり、好循環を言うなら、賃金・年金を増やし消費税も減税して家計を温め、物・サービスの売り上げが増え、設備投資も伸び輸出も増えて経済が成長する、その過程で需給バランスが傾いて物価上昇もあり得る…というのが本来の道筋です。

政権や財界の単純化した言い方に慣らされて、賃上げしたから物価上昇も仕方ないと受け止めるなら、思う壺に嵌ります。メディアの一面的な垂れ流し報道にも気を付けたいものです。

 

 家計支出増加の進展過程で売上増→設備投資増などで前向きの融資が増えるものなのに、アベノミクスは家計と消費の減退に対策を講じずに、融資増のためとして無理して銀行に融資させようとマイナス金利を懲罰的に課して資金過剰とし、日銀や年金積立金での株購入増加と相まって株価を吊り上げたのです。他にもアベノミクスがもたらした「副作用」と今では言い慣らされていますが、当初から「弊害」との批判はあったのに為政者やマスコミは無視軽視で10年余も、金融・経済に歪み・矛盾をもたらしたのです。

日銀はマイナス金利解除といっても「緩和は継続」と明言したため円安は更に進行。過剰資金の吸収はせず、引続き国債は買い続けるなどの方針です。「好循環がこれから先、軌道に乗り安心」との見方から株式相場は(他の内外動向・条件とも相まって)活況を呈し、史上最高値を更新し続けています。しかし根本的な転換の無いままでは国民に難儀は続きます。為政者やマスコミの言説には警戒しつつ転換の声をあげる必要があります。稲邑明也 (旧三菱)

川柳  与謝糠晶太 (旧三菱)

二階まで溢れる本に裏金も

「記憶なし」逃げた回数記憶なし

同穴のムジナどもが悪あがき

馬謖らが多くて総理は斬りあぐね

「火の玉」が線香花火で終わりそう

検察も刷新本部が必要で

信用も落として揺れる北陸電

原子の火 燃やせ燃やせと亡者たち

ニ―サって何さ株屋がトクしてさ

好循環?物価と賃金イタチごっこ!

株価アップ庶民の暮らしアップアップ

一強に激震かまそう総選挙で

 

小林節さん「平和の準備こそ」を語る    菊池喜久夫(旧三菱)

銀行九条の会は、第17回の講演会を昨年11月25日に開催しました。

慶応大学名誉教授、全国革新懇代表世話人小林節氏をお招きしました。

~テーマ~   『今こそ憲法9条を活かして』

当日は冬の寒さが戻るなかでしたが、参加者は昨年を6人上回る会場一杯の103人でした。小林先生の講演は、約90分でしたが用意されたレジュメの内容だけでなく、私たちが普段疑問に思っていることなども実に率直に話してくれました。

参加者の感想では、「まさに、小林節(コバヤシブシ)だな」と実にうまい例えを言っていました。自衛隊の話に「これまでモヤモヤしていたことがすっきりした」。改憲させないために「『51%の賛同者を集めることが大事』との話しに同感した」などの声がありました。

また、家族3人で参加した青年が「小林先生の意見に大賛成です」と話していたのがとても印象的でした。たくさんの質問にも、時には質問した人に内容を確認しながら丁寧に答えてくれました。

先生は「これは私の意見ですから皆さん是非考えてください」と何度か強調していました。その中で、「若い人とのつながりをつけるのはどうしたらよいのか?」との質問に対し、小林先生は「無理に若い人に近づこうとしなくてもいい、みなさん元気な年寄りが自分でしたいことをやればいい。」との回答には「なるほど、そうだな」と納得しました。

憲法9条を持つ日本として、いまこそ戦争の準備ではなく平和の準備を行うことに力を合わせていきたいと思いました。戦争を起こさないために、多くの人と対話をして多数者を作っていくことの大切さを改めて考える講演会でした。

 

詩 一本の樹木 宮本勝夫(旧三和)

命を育む森林の

最も神に近い巨大な一本の樹木は

古の「縄文」から人間の営みを

見つめ立っていた

 

古から人もまた自然の力を尊び

生きとし生けるものの命の恵みをうけ

更に自然の脅威に畏敬の念を抱きながら

生活・精神の糧として自然と共に

命を繋いで生きてきた

 

神に近い古の人たちの魂は

いつしか資本主義「経済優先」の

神話にからまれ断たれてしまったのか

生き続けるための自然への祈りも断たれ

いま墓場の入口に立っている

両忘を思索する老いの現し身

 

大雨洪水・火災山火事

巨大台風暴風・・・

大地に生きるものすべてを食いちぎる

地球沸騰化現象

 

それらは傲慢な人間が

つくりだしてきたもの

自然災害か人災なのか

曖昧模糊としたものなのか

 

そこに生きとし生けるものの

終末が見えてくる

 

古から生き続けてきた

孤高なる巨大な一本の樹木は

いまも生命の流れを

見つめ続け立っている

尚、当日呼びかけた「ガザ人道支援募金」¥30,350円が寄せられました。

古里の地震に想う    稲邑明也(旧三菱)

元日に私の古里を襲った地震には、すっかり正月気分を吹き飛ばされ、親戚・友人らに安否確認・電話不通先のフォロー、見舞い発送などで毎日が早く過ぎました。そして惨禍・窮状を聞き、テレビも見ながら多々考えさせられました。

発震後二週間たっても安否不明が多いまま、被害状況も把握しきれない有様で胸が塞がれる思いです。昔から「能登はやさしや土までも」と言われてきたその土地が猛り狂ったように純朴な田舎の人達を襲い「何でこんな目に遭わんならんが!」と嘆く声には全く身につまされる思いです。

余震が続き降雨・降雪下、避難住民から水、食料、暖房、医療など要請が多くても行政は対応し切れず、道路損壊・交通途絶で、救援物資の輸送や緊急車両の往来も難儀…など大変で、イザ災害が起きると自助共助を超えて公助=行政の責任が問われてきます。

特に石川県は一部の観光業、工芸品などの他に特徴的な地場産業は無く、農業・漁業で暮らす人たちが多数です。少子高齢化、過疎化は進んで、国鉄民営化後の廃線や道路整備の遅れなどから来る問題点も政治に起因していることがこの震災で露呈しました。

政治の責任はどうなっていたのか

阪神淡路、東日本、熊本などの地震からも政治の責任は指摘されていたことです。しかし政府は、震災対策、社会保障、教育子育て等よりも軍拡に巨額の税金を投入し、これまでにない軍事国家へと進めつつあります。自衛隊基地の強靭化に注力する他方、防災・減災を含む国土強靭化法の内容と施行状況はお寒い限りで、全くの逆立ちです。  

自衛隊だけでなく米軍のための辺野古基地はじめ軍拡に巨費を投ずるのは、生きている人間を殺し合う全く愚かな準備に他ありません。

内閣府は複数省庁にわたる毎年度の防災関係予算を積算し、防災白書で発表しています。最新の23年版の同白書によると、23年度は約1兆6000億円で、22年度の約3兆円の半分程度です。「防災関係予算は、災害発生時に事後の補正予算などで対応するのが一般的」ということで増減額の当否、適否は単純には判断できませんが…。

内閣府は防災関係予算を◆各種災害や防災・減災の調査研究向けの「科学技術の研究」、◆防災施設整備や建物の耐震化などの「災害予防」、◆地盤沈下対策や治水・治山事業などの「国土保全」、◆被災者の生活再建支援や災害復旧事業を含む「災害復旧等」の4項目に分類しています。

4項目の使途推移をみると「災害復旧等」は災害次第で1~7割と増減率大の他方で「科学技術の研究」は一貫して2%以下で推移。「国土保全」は1~2割程度の推移です。

一般会計予算に占める防災関係予算の割合は、災害対策基本法が成立した60年代に比べて低下しており、62年度には8.1%だったが、22年度は2.2%にとどまっています。

このように見ると地震大国日本として、また最近は気候変動からくる災害増加など被害が増加しつつある日本として歴代政権の政治はどうだったのか責任が問われます。

岸田首相や馳県知事の姿勢からして問題

地震発生直後、岸田首相はプッシュ型で物資を届ける、など言葉としては真っ当な発言でした。しかし実際の動きは緩く、岸田首相は8日になって「激甚災害」の指定に向けた手続きを進めるよう指示。自衛隊の出動も、熊本地震の時は翌日から四日間で計60,100人だったのに比して能登地震では同じ四日間12,600人でした。陸路・空路で自衛隊員増派も散発的で不足な他方で、千葉県で多くのヘリを使って降下訓練を予定変更なしに実施しました。

防衛省は2隻のフェリーを13日に七尾港に派遣し、14日から被災者が食事、入浴、宿泊休養場所として利用できるようになりましたが、遅い対応に批判が出ています。

岸田首相は14日になって現地入りしましたが、被災者の声に一応耳を傾けたものの、「困っていることはないですか」と問う始末で、今更何を!と怒りの声が出たのは当然です。二カ所とも約30分の視察の中での対話で、ここに姿勢の程が示されています。

石川県政は、大規模災害に前々から油断ありで、県の地域防災計画は地震の「災害度は低い」と書かれたまま26年間放置。原発が造られ、珠洲地震が近年度々起きて向後の発生も警告されていたのにノータッチで、共産党議員の批判も柳に風。自民党長期県政の結果です。 

今の馳知事は、珠洲原発推進で暗躍した森元首相直結で、安倍派に属して文科大臣にもなりました。自宅が東京で、危機対応に問題!と言われながら金沢の公邸に住まず元日も帰宅中。発震6日目にやっと「非常事態宣言」発令。岸田首相が来県してから一緒に珠洲・輪島に現地入り。これが初めてで、もっと早く来い!と批判が広がっています。

馳知事はこれまで、自身に不利な記者会見は拒否とか、官邸機密費で五輪誘致したことを自慢げに語り後で撤回とか、色々と名を馳せた人物です。

やっぱり!問題露呈の原発

今度の地震で志賀原発には次々と問題が出ています。▼使用済み燃料プールの水が大量にこぼれる▼冷却ポンプが一時停止▼変圧器破損による大量の油漏れ▼その量は後になって当初公表の5倍に変更▼取水層水位に有意変動なしと発表後に3mの変動だったと訂正▼変圧器火災と発表したが、それは誤認だった▼避難にも不可欠のモニタリングポストは15カ所で破損していたことを後で発表▼襲来した津波は実は3mだったと9日になって発表etc.―「想定外」の言葉を度々補っての発表は不信感が募るばかりです。もう原発を運転・管理する資格の無いことが明らかです。隠蔽や後出し訂正などは志賀原発に限らず他の原発でも続いています。

こんな無責任な電力会社を軸に据えて岸田首相は原発推進に躍起です。

真に民意に添う政治へ

連日報じられる惨状や問題を知るにつけ、他山の石として私たちは個々人各地の足許はどうなのか?我が身の問題として自助共助は勿論のこと、防災について公助たる政治は自治体も含めどうなっているのか?考える必要があります。

首都直下地震は30年内に70%の確率と専門家が重ね重ね警告しているのに、政府や自治体の態勢は?―今夜起きるかも知れないのに、30年先との錯覚がないのか?必要物資備蓄、避難先や避難ルート確保etc.大丈夫なのか?―問い直す必要があります。

そして命に直結する問題を通して、根本的に国政はどうなのか?カネまみれで政治を歪めている人達がナゼ多数を占めるのか?民主主義にもとる小選挙区制度や、メディアが政権の監視役に徹し切れず、野党共闘に冷ややかな問題も見詰め直す必要があります。

 

 

川柳 与謝糠晶太 (旧三菱)

二階まで溢れる本に裏金も

「記憶なし」逃げた回数記憶なし

同穴のムジナどもが悪あがき

馬謖らが多くて総理は斬りあぐね

「火の玉」が線香花火で終わりそう

検察も刷新本部が必要で

信用も落として揺れる北陸電

原子の火 燃やせ燃やせと亡者たち

ニ―サって何さ株屋がトクしてさ

好循環?物価と賃金イタチごっこ!

株価アップ庶民の暮らしアップアップ

一強に激震かまそう総選挙で

 

みずほがリスク分担型の掛金制度開始

リスク分担型とは?

 2008年のリーマンショックを契機に、財界が今後の危機への対処策として政府に要求し、2016年末に作られたのがリスク分担型です。つまり、基金に積み立て不足が生じると、企業が必要額を全額拠出する義務がありますが、リスク分担型では、一定のルールに基づいて加入者と受給者も減額し、企業と並んでリスクを分担するのが最大の狙いという仕組みなのです。

 先行きのリスクを前もってカバーするため安心できる面がある、と言う触れ込みでした。しかし、企業年金はそもそも退職金の割賦払いで全額を企業が給付するしリスクも負担する義務があるのに、リスクのみならず給付額まで一部免除し、加入者・受給者に負担を転嫁するというのは、企業年金の本質を歪める筋違いな仕組みなのです。

 

企業がお得な仕組み

 景気悪化のときに基金に積み立て不足金が出ると、企業として特別に拠出を増やす義務がありますが、業績ダウン時の負担は厳しくなるので、将来発生するリスクを予測して「リスク対応掛金」をあらかじめ拠出する、利益を上げている時でも税制上は損金として別枠で計上可能とするため、企業は節税となり、国は税収減となります。

 リスク額の計算は国内外の株式や債券など運用資産別に市場急変時の減額率を厚労省が測定して省令で決めています。(現行は国内株式=50%、外国株式=50%、国内債券=5%、外国債券=25%など)

 企業が掛金を決算時に計上するのが第一段階で、目標総額と掛金期間などを基金規約に定める手続きが必要で、この場合に労働組合の合意が必要です。したがって受給者としては労働組合がどんな合意をしたのか?確認しておく必要があります。

 次に、イザ積立不足が生じた場合、加入者・受給者がどの程度負担するのか?など予め労使間で決めた条件に基づいて減額などの措置を取ります。いわばリスク分担型の全面実施で、減額の具体的なルールを決める労使間の事前合意が必要です。

受給者はおいてけぼり・後景へ うかうかしておれない!

 重要なのは、受給者に不利益が生ずる問題なのに、合意形成のための討議や採決に参加できないことです。(厚労省は法的な問題クリアのために「受給者の参画は排除せず」と一応定めていますが、実体的にその保障や制度化は困難視のまま施行となりました)

 受給者は減額の場合に賛否の意思を個別に問われて表明する段取りですが、3分の2を越えれば纏めて減額の対象となます。不同意者は一時金を選択すれば給付されますが、金額算定は厚労省のルールに基づき現役の労働組合と企業の合意形成に委ねられます。

 受給者への一時金配分算定は平均余命によるため、平均余命を超えて生存する人には不利益が生じます。結局は、退職時に確定していた受給権は保障されない事態となるのです。

受給者は、退職後に労使が決めたら従うことを強いられ、しかもリスク分担型施行前の2016年末までの退職者であっても遡って適用するのは不遡及の原則に反する、など法治国家として筋違いな仕組みなのです。

「受給者に説明…」と言っても

 更に困る問題があります。受給者に減額同意・不同意の意思を問う前に厚労省は「全受給者に対する事前の十分な説明」を企業に課していますが、質疑応答を可能とする場と機会を全国各地で提供するのか、全員網羅できるのか、問われます。りそな銀行の減額提案の説明会は、限定された地域でのみ行われ、説明不十分の上、質問も制限されたりして、多くの疑問が残ったまま、減額が強行されました。

「説明」とは、文書やホームページでも可能とされます。基金だよりが送付されない状況のまま「説明はやった」ということで、寝耳に水のようにある日突然賛否を書面で問われることになる事態もあり得ます。

 事の重大性や背景、問題点を知り得ないまま同意する受給者が多数を占めると、不利益を跳ね返したい人たちは巻き添えを喰らいます。こういう事態に備えて、銀行や基金に対峙できる会を組織し、日常的な活動をやり、銀行に対して必要な問い質しを行ない、受給者に知らせ、情報・知識の共有を広げていく活動が不可欠となります。

 リスク分担型の導入状況は、第一段階の掛金のみが、全国で564件、銀行業界で私が把握しているのは、りそな、三井住友、あおぞら、みずほです。減額アリの全面適用は全国で23件、銀行業界では南都・阿波の二行です。

 この仕組みを造るまで厚労省は企業年金部会を開催したりして8年ほどかなりのエネルギーを費やし、その割に経団連・大企業の評価は宜しくなくて、使いにくいなど批判が出て、改定を模索中です。  (稲邑明也 銀行年金を守る会ニュース  No90より転載)

 

 

最近の企業年金の動向―「年金バイアウト」登場

「銀行がアメリカのMUBU売却に伴い前期決算で年金バイアウトを実施、721億円の特別損失を計上」と五月発行の会報で、記載しました。

この件は、銀行の基金とは関係なく、米国の別企業対象だったものですが、年金バイアウトについては、経団連が「企業年金・個人年金部会」で提起し、厚労省も研究会で討議したメニューであり、私たちとしては無関係でおれる保証は無いようです。

色々と質問も寄せられましたので、言葉の意味、由来、日本での検討状況、課題などについて記します。

年金バイアウトとは

企業年金を給付すべき企業が、年金債務を保険会社などの第三者に移管するものです。

企業が、受給者・現役加入者に対して将来分も含めて支払うべき債務とリスク(市況変動や長寿化など)を見積もり、一定の管理コストなど上乗せして、現に保有している年金資産と共に、保険会社へ移します。将来の支払額が不確実な年金関連の費用を早期に確定させ、貸借対照表上も身軽になる狙いがあります。

英国など欧米の企業年金は「終身年金」が多く、資産の運用に伴うリスクは、将来にわたり市況次第で積立不足も生じ、企業にとってリスクとコストが負担!という企業側の論理から、このバイアウトが10数年前から広がりだしたのです。

特に英国では「年金の給付水準が高いこと」「給付減額が基本的にできないこと」「給付額がインフレ率に直接連動すること」「基本的に終身」という特徴があって、これを企業側が乗り越えるために2006年に英国から始まり、米国など他国へ波及してきた経過があります。

この流れの中で、わが国でもサントリー、本田技研、デンソー、パナソニック、東芝などがイギリスの現地法人の企業年金のバイアウトを実施してきました。

日本でも終身年金の制度を採る企業が多かったのですが、厚生年金基金の代行返上に伴い終身年金が減少してきたこともあり、欧米ほどにバイアウトは注目されるに至りませんでした。

経団連が突然に…

財界は、前世紀から企業年金の改悪を画策し、厚労省の審議会など通して民主的審議の形をとって次々実現してきましたが、この流れの中で経団連から参加の小林委員が企業年金・個人年金部会(第2回2017.3.19.)で年金バイアウトを初めて提起しました。

小林委員は発言の冒頭、「グローバルでの競争が激化している中、企業の枠組み自体も変化する機会が増えています。国内企業が持続的な成長や中長期的な付加価値向上を目指す上で機動的に事業形態を見直し、経営資源の効率的活用を図ることは極めて重要であり、企業規模の大小を問わず、M&A等による事業再編が活発化している状況があり…」などと発言しました。

続けて、リスク分担型の更なる進化、従業員の自助努力によるiDeCo拡充などと共に、「持続可能な年金制度運営に向けた対応…としてM&A等の事業再編が増えている中で、例えば英国における閉鎖型DB(現役抜きの確定給付)のバイアウトなどのように、年金の支給義務を社外に移転させる仕組みなど、企業としての制度設計の柔軟性を高める…方策を検討いただきたい」と発言したのです。

これを受けて、厚労省の企業年金・個人年金課長は第5回部会(19.5.17.)で「我が国のDB(確定給付企業年金)は終身年金が少ないといった事情や、過去債務分を含めてDBをDC(確定拠出年金)に移換できますので、バイアウトが普及している国とは環境が異なっている」と述べた上で、日本導入には前向きの発言をしました。

「企業が制度を終了する場合、企業年金連合会に渡して違う給付にする仕組みだが、この方式ではなく、従前の給付を保証するという目的のために、一つやり得るものと思います」と経団連に同調の姿勢を示したのです。そしてこれ以外の発言は議事録には見当たらないのです。

部会とは別の研究会でも審議

この部会に先立って厚労省は「企業年金制度研究会」を設置(18.5.30)して、部会と並行するような形で議論を進めました。2017年までは「企業年金部会」で企業年金をテーマに審議していたところ、社会保障審議会としては「企業年金・個人年金部会」に改組した部会で個人年金も併せて審議する方式に変わったために、別途、企業年金は独自に審議するという重複した方式をとったことが厚労省に訊いて判明しました。

こうして第二回目に早くも年金バイアウトを議題に取り上げて審議、他のことも含めて計7回の審議のまとめを、翌19年3月に公表したのです。

ここには「DB(確定給付企業年金)制度の改善」として「バイアウト等のわが国への導入の可能性」の一項を掲げて、バイアウトの背景、リスク回避策、長寿対策など概要文を記載(議事録は非公表)しています。

「主な意見・論点」として、「確定給付企業年金の制度の持続可能性の向上・制度の普及に有効」「導入の場合は対象やリスク移転先、価格設定など課題の検討必要」と記載すると共に「わが国では終身支給など義務付けられておらず一時金受給が多いなどからバイアウト導入必要ない」との意見も一応、付されています。

部会でほとんど議論ないまま

社会保障審議会に直結の「企業年金・個人年金部会」では、19年末に纏めた「議論の整理」に「Ⅳ.ガバナンスの確保」の項として年金バイアウトの一項が載りました。

それまで、経団連・小林委員と厚労省課長の発言が議事録に出たほかには意見がないようでしたが、この「議論の整理」で、前記「企業年金制度研究会」とほぼ同じ内容で「幅広い観点から検討したうえで、改めて議論すべきである」との結論を記しています。

これからどうなる?  

確定給付企業年金法の「第十二章 他の年金制度との間の移行等」等をみても、年金債務等を保険会社に移転することは記載なく、そもそも想定されていません。

年金バイアウトは、受給者側から見れば「基金を通しての銀行との年金契約」が「保険会社との個人保険契約」に切り替わるような面が出てきます。

賃金の後払いとして企業の側に支払い義務と責任があるものが、バイアウトによっても完全に引き継がれるのか?もし破綻とか想定外の事態になったら受給権はどうなるのか?そもそも企業と保険会社が合意、契約しても個々の受給者の同意は求める必要はないのか?契約内容とその履行について政府・厚労省はどこまで把握・監督・行政指導の権限があるのか?など様々な疑問が出てきます。

筋違いなリスク共有型も登場

 部会と並行審議した「企業年金研究会」には更に気になる記述があり、その一つがリスク共有型という外国ルーツの方式です。リスク分担型は金融市場激動などで基金の積立金不足が生じたら、先ず企業が一定部分を負担し、残る部分を現役と受給者が負担する方式です。しかしこの共有型は、企業・現役・受給者が初めからリスクを三者が一緒に共有する方式です。

企業年金は賃金の後払いの延払いで、金融市場などの変化に関係なく企業の責任として給付すべき法的責任がある、という基本点から大きく逸れており、受給者としても現役としても看過できない問題です。

厚労省が選定したメンバーで「議論しました」というカタチをとって企業サイドがおトクな事項を盛り込んで、今後の具体化の課題として公式に掲げることには警戒していく必要があります。

7月24日に開催の第25回企業年金・個人年金部会で厚労省が提出した「ヒアリング等における主な意見」の項に年金バイアウトは記載されたものの、リスク共有型は載っていませんが、安心できません。

 いずれにしても、企業年金の本質を崩す政府・財界の姿勢が実は他の面でも表れているのが次のことです。

                

イデコって何のこってすか?  

近ごろ、金融機関が新聞にiDeCo(=い  でこ)の広告を出すようになりました。年金受給の年代は関心が薄いのですが、正式名称は

「個人型確定拠出年金」で、自分が拠出した掛金を、自分で運用し、資産を形成する年金制度です。少しでも国民に親しみを持って貰いたいと考えた政府が愛称を募集したところ、若い女性会社員が応募したこの言葉が採用されたという事です。

英語で書くとindividual-type Defined Contributionという表現ですが、カタカナ語句は警戒心をツイ抱きやすい人もいる昨今、政府としては金融機関と一緒になって普及に努めているものです。

肝心の公的年金が、ご承知のような流れで財界と自公政権が細らせ、今後も細らせる策動を続けています。細らせる代わりに「老後資金は2千万円必要」だから現役の時から自助の精神で工面せよ、という施策の一つがこのiDeCoと言えます。

法令上、「個人型」という言葉を冠した「確定拠出年金」というのも、元をたどると企業年金から発した歪んだ経過があります。

元々企業年金は欧米で始められ「確定給付」として定額を終身給付し、物価上昇も反映させる仕組みで企業が責任もって給付し、政府も監督する制度でした。日本では主に大企業が人材確保を狙いとして戦前から取り入れていましたが、物価上昇反映は稀で、終身よりも有期の期間限定で戦後普及してきたものの、大企業・財界は人件費負担や先行きリスクを嫌い、2001年に確定拠出年金法を施行したのです。

「確定拠出年金」は企業が拠出する額を確定したもので、肝心の給付額は不確定なのを判り辛く又はアッチ向いてホイッ効果を狙ったような命名です。運用は個人が責任を持ち、運用結果がプラスになるかマイナスになるか企業は責任なし、というものです。

本来、企業年金は企業に支払い責任ありという基本を国が崩し、自己責任、自助方式とした点は看過できないことです。この根底にある発想が実は今の私たちの確定給付企業年金に対しても同根で、不利益な画策を進め、既に本来の企業年金とは筋違いなキャッシュバランスプランとか、リスク分担型とかに及んでいることを重視したいものです。

「確定拠出年金」の企業型の場合は、企業が掛金を出し続ける約束ですが、「個人型」は拠出も運用も個人責任であり、企業とは全く別枠で個人が公的年金の先細りを工面する仕組みです。(前に三菱UFJ銀行が現役に導入したのは給与天引きで銀行拠出の無い新方式)

政府の推進体制

iDeCoは、社会保障審議会の下部組織である「企業年金・個人年金部会」で審議され、税制の特典を含めて普及拡大のための施策が討議されています。要は財界・大企業が社会保障負担軽減のために推進していると言える実態があります。

今年の部会は4月以降立て続けに開かれ、岸田首相が唱導の「資産所得倍増プラン」など基に、運用を引き受ける信託、生保、証券の業界団体に加え全銀協も参加して業界の要求事項を語り、これを基に審議が進行しました。

iDeCoの項では、普及拡大のために★拠出限度の増額、★加入年齢の引き上げ、★受給開始可能年齢の引き上げ、★手続の簡素化や効率化、★税恩典の拡充

企業年金の項としては、★中小企業への導入促進策、★実務の外部委託、★転職に伴うポータビリティ(≒移管)手続き簡素化、★自動加入、★特別法人税の引き続く延期など審議されていますが、看過できないのは次の点です。

定年延長に伴う給付減額…定年延長するとその期間対応分は一定率で給付総額が増えるのが当然ですが、増額ナシとか超低率のまま、給付先送りでは減額と判定されるルールです。

これについて経団連などは、▼減額として扱わないこと、▼減額扱いなら不利益となる従業員の同意を個別に求める必要があるが、面倒だから手続きは簡略にせよ、事務は簡素化を図るべき、そうしないと▼定年延長の阻害要因となる…など要求しています。

 

企業側の発言に対して「連合」など労働側の委員から原則的な発言がでていますが、企業利益最優先の露骨な発言が多く、他事にも及ぶことが懸念されます。

厚労省としては前々からの課題として「支払い保証制度」(基金・企業ともに給付不能となった場合、国ほか何らかの形で給付を保障する仕組み)を掲げていますが、経団連が異議を唱えて先送り継続となっています。

確定拠出年金、iDeCoの拡充が更に進むと、個人で拠出できる人は一段と拠出に励んで免税の特典を受け、他方ではその分、消費を減らして、マクロ的には経済成長への寄与は減り、全体的には貧困と格差の拡大に寄与…ということになります。

この審議に参加する委員は厚労省が選んだ16人で、業界関係と政府重用学者が多数を占め「労働側」と言えるのは連合と電機関係労組からわずか二人出ているだけです。

 筋道から逸れた進め方に警戒を!

民主的に進めるなら公労使三者(公益・労働・使用者)が同数で審議し、重要点は国会で審議するとか、賃金の延払いである企業年金については、労働条件に関わる問題として労政審議会に諮るのが筋道です。

それなのに、社会保障分野の部会として取り扱い、経団連は企業年金を賃金ではなく「福利施策」と度重ねて発言するなど、筋論から外れた最近の動向は警戒すべきです。 軍拡費増のため社会保障予算抑え込みと増税を図る政府の下で、金融・財政分野にも目を向けつつ企業年金の動向を考えていきたいものです。                            (23.7.25.  稲邑明也)

 

 

波風が強まり、銀行の今後が問われている

 MUFGもMU銀行も近年、本業が低金利の環境で低調のなか、国債や株式の売買で市況に左右され、一時的要因で利益が大きく変動する状況が続いてきました。23/3期は米欧の金利上昇などで好転した面はあるものの国内は依然低金利でした。

国債等債券ビジネスは金利などの動向、しかも国内外の違いにより別々で増減は大きいし、株式市況による変動もあり、安定性に欠けている体質と言えます。

子会社MUBの売却で会計処理が22/3、23/3期にわたったことから、利益額が大きく増減して判り辛い面がありますが、MUFGとしては売却益でデジタル化、AI化など推進する構想とのことです。

この方向が一路、利用者にプラスの効率化ならいいのですが、既に支店・ATM・紙通帳などの削減、振込手数料の引上げ等、様々な合理化が他行に先行して打ち出されて、利用者や社会から不評の面があり、銀行の公共的使命から問題が残ります。

更なる利益追求でどうなる?

銀行業界は様々な指標を掲げ収益増強を目指しており、MUFGとして次の点があります。

自己資本利益率(=ROE 当期純利益÷自己資本)。MUFGとしては昨年度7.03%の実績で、今年度7.5%を目標としていますが、今年度はMUB売却益が無い分、マイナス要因ですし、円安が進行すれば経費増大という問題もあり、目標達成のために一段と利益獲得に走ることになりそうです。

株価純資産倍率(=PBR 株価÷1株当りの株主資本)が1に達せず、メガバンク共通して0.6台で推移、「一番頭の痛い問題の一つ」と日経新聞も指摘(5.24 )。

東証としても低い上場企業に引上げを要請した処です。しかしこの低さはROEとも共通する点があります。先ず、異次元の低金利政策で薄利を余儀なくされたものであり、適正金利に是正抜きの利益追求は、利用者・従業員にしわ寄せが及ぶことになります。

また、これら経営指標が示す効率性は海外比較からも低すぎると論じられますが、日本の銀行は預金を集めて融資する業務が基本なのに対し、海外の大手銀行は投資・M&Aや手数料稼ぎなどで利益を上げるウエイトが高い業態なので、資産に対しては効率的に利益を上げ得る体質です。いわば農耕型と狩猟型の違いは心得ておく必要があります。

効率アップは高リスクへ                

米欧の銀行では、預金を債券売買業務に振り向けるウエイトも高く、利上げ・債券下落時のリスク大であることが一部米銀の破綻で露呈しました。

日本の銀行も、低金利下、利益獲得を融資より債券業務に傾斜し、預証率(国債・株式など有価証券が預金に占める比率)が高まっていたし、含み損を抱える地銀が増え、昨年より金融庁は監視・指導を強めてきました。

MU銀行の預証率は18/3期29.8%から漸次上昇し23/3期は37.6%となっています。

国債が殆どの「有価証券」保有が増えると含み損も増え、外債だけでメガ3行の含み損は3兆3千億円(22/12)でと報じられました(日経新聞2.2)。

MUFGは含み損とリスクを減らすため、売買取引の国債を満期保有目的の国債へ移し、含み損は株式も含めて9,789億円との開示です。減らしたとは言え、年間利益に迫る額です(MU銀行分は記載なし)。なお、国債償還までの残存期間短縮も図り22/3期2.8年→23/3期1.5年と開示。

いずれにしても、異次元の金融緩和政策の中でリスク分野を高め、米欧の利上げの他方で日銀が政策転換しないことで更にリスクを全体的に抱えていく状況です。

日銀の無理にも程がある!「副作用」どころか「害悪」をどうする?

日銀植田総裁は異次元の金融緩和に副作用があると認め「レビュー」を一年から一年半かけてやると発言、早期の方針転換の姿勢はありません。

異次元の金融緩和・低金利が円安・物価高騰に拍車をかけているのは「副作用」どころか重大な「害悪」です。それにも拘わらず植田総裁は、今の物価上昇率は「年度半ばで低下、その後に反転する。但しその確度に自信がない」と発言(毎日新聞5.25)。

確たる見通しも無く煮え切らないことですが、黒田前総裁も、円安や物価上昇は一時的なものと言い張り低金利固執を続けました。

米欧金利との差が開いて円安が進み、物価上昇で国民が難儀しているのに、こんな姿勢の根底には次の問題があるからです。

▲金利を上げると国債利払いが増えて財政が一段と悪化、

▲金利上昇→国債時価や株価下落→保有する銀行・大企業など損失、金融市場が大混乱、

▲日銀の資産減価(23/3末、国債含み損1,571億円)、市中銀行への利払い増加等で赤字決算となり、国際的信認が低下、大企業や銀行の起債にも悪影響、

▲日銀赤字で従来の利益≒国への納付金(21年度 1.2兆円、22年度2兆円)が無くなり、国の歳入減→国民に皺寄せ…と多面的問題があります。

勿論、ただ金利を上げれば良し、ということではなく、時期やテンポなど重要問題があり、弱者に激変緩和策を措置し、必要財源は大企業・富裕層の減税を元に戻して確保、軍拡支出は止める…など講じ、国民本位の財政政策に転じるべきです。

銀行業界も、コロナ対策の特別融資の返済が増えると共に倒産が増えだしており、更に与信費用増大となります。米欧では既に銀行の債券損失増・融資引き締めで利益減が進行、銀行不安の第二ラウンドが懸念されています(日経ヴェリタス5.18)。

ノンバンク、不動産など市場撹乱の要因やウクライナ戦争など地政学リスクの増大、世界的景気後退も指摘されています。海外ビジネス比率大のメガバンクは、波が一段と高くなる情勢の中で、せめて日本については必要な政策を日銀・政府に提言していかないと銀行のためにも、世のためにもならない存在となります。

大軍拡推進下、日銀総裁が代わっても誤策続行では…果たして

岸田首相はアベノミクス路線を継承し、矛盾は深まりつつあります。5年間で43兆円もの大軍拡財源は大増税と国債増発の方向が浮彫りです。少子化対策に消費税増税・社会保険料増なども浮上しています。これでは可処分所得が減り、賃上げしても物価上昇が続き、暮らしも平和も守り得なくなります。

確定給付企業年金からすると、利上げは給付額の実質目減りに通じて不利益となります。しかし全体的に物価上昇、社会保障の後退と負担増、不況深刻化…となれば総体的に暮らしは厳しくなります。

銀行業界は内外のリスク増大の中で、現役には人材獲得のため部分的好遇をしても全体的には合理化を推進し人件費率引き下げに努めています。こういう中で年金バイアウトが実施されました。当基金の受給権者ではなく、特殊な部分的な事例としても、年金資産の7%余に及ぶ額、年間給付総額の1.6年分の額の損失計上です。何よりも「将来の財務リスク軽減を目的」としている点で、今後も適用拡大の懸念ナシと断定できません。 

リスク増大の厳しさに流されることなく、その根底にある諸々の問題を見詰めつつ経済・政治の転換を考えていきたいものです。          5.31. 稲邑明也 (旧三菱)

川 柳  

七光り永田町の愚を照らす

七光り更に日本を暗くする

世襲議員四十%の異次元国

ウクライナも「命どぅ宝」で停戦を

重警備で何を守るかGセブン

核威嚇なじるセブンが核固執

セブンらで大山鳴動蚊の何匹

七人が寄って文殊の知恵と逆

ゆでガエル加熱の上に抑えられ

沖縄の基地増強で戦火呼ぶ

地震より先制戦に策を練り

世の中は持ちつ持たれつ隣国も

マイナンバーいつの間にやらユアナンバー

改憲で我が身どうなる?考えたい

AIが人越えAI開発か
謝罪文ちゃチャット書かせて頭下げ

当りくじチャットの答を皆で買い

異次元とミエ切る総理低次元

子ども数 鯉のぼりらも尻下がり

与謝糠晶太  (旧三菱)

年金の実質減に金融不安…

暮らし・虎の子の先行きは? 

物価高騰が引き続き、公的年金は実質目減りです。先行き不安がつのる中、三月に米欧で銀行の破綻など相次いで金融不安・リスクが高まりました。しかし、岸田内閣はアベノミクス継承だし、日銀植田総裁は異次元の金融緩和継続です。この上に大軍拡・大増税が加わると私たちの暮らし、平和はどうなるのでしょうか。

物価は年金暮らしに特に厳しくアップアップ!

物価上昇率は22年度3.0% (生鮮食品を除く。前年度比3.0ポイントUP)、東京都区部については2,3月連続して鈍化していたのが4月は前年同月比3.5%と再び騰勢に転じました。食品などの値上げ品目増加の反映です。

高齢層は、基礎的支出(=食品・エネルギー関係費目)のウエイトが高いし、今後の値上げ予定も多く、こういう点からも平均値に流されずに物価問題を考えたいものです。

人ごとみたいに言わないで!

バブル崩壊以降「失われた20年」の語が流布され、今では「失われた30年」と人ごとみたいに言われています。賃金、年金など抑えられてきた庶民からすれば30年も失わせた政治の経過を見詰め転換することが大軍拡・大増税進行の今、一段と重要です。

安倍元首相は政策目標の物価上昇率2%は世界標準と言い今も当然視されています。しかしこれは、90年代に高い物価上昇率を抑える目標として各国に導入されたものが、新自由主義の蔓延と共にインフレ目標とされたものです。物価の番人たる日銀が政権と共同声明を出してまで2%アップを目標としたのは逆立ちです。2%でも5年10年上がり続けると虎の子や年金がどうなるか?自明です。

 

腹痛に目薬つけるトンチンカンが、毒薬劇薬に

需要不足に因るデフレの克服は、賃上げ、年金・社会保障拡充などで家計を温め消費が増えてこそ設備投資・銀行融資が増えます。消費減退で設備投資も不振なのにマイナス金利で貸出促進など本末転倒であり、緩和した余剰資金は株相場などに回り、大企業・富裕層が肥え太り、貧困と格差が拡大しました。

派遣労働者増加・賃金抑え込み等で儲けた大企業の内部留保は、アベノミクスの間、五割積み増して500兆円。消費低迷では設備投資も銀行融資も増えないのは当然なのに融資増を狙ってマイナス金利を導入、などトンチンカンを続けました。逆立ちの誤策続きの処に米欧の流れから金利引き上げが必要となっても、政府日銀共に従来からの誤策に固執し新たな矛盾に直面しています。

利上げすると、政府の国債利払い急増となります。また株価は暴落、日銀は自ら抱え込んだ資産の減価で債務超過となり円安招来などで国際的な信認も低下、多方面に悪影響が及びます。

 

このまま続けると一段と泥沼に

国際収支の悪化も看過できない状況です。円安と資源高などで貿易収支の赤字が膨らんでいます。円・ユーロ相場も下落、先週はニューヨーク外為市場で14年半ぶりの安値をつけました。米欧での金利上昇から日本も引き上げないと円安、物価上昇が増幅され諸々の矛盾を招くのに、このままいったらどうなりますか?

4月27-28日、植田日銀総裁は初めての政策決定会合で、金融緩和の現状維持と決めました。金融緩和は「副作用」どころか「弊害、害悪」であるのに植田総裁は緩和策の「レビュー」を1年から1年半かけてやる、緩和策の修正には直結しない、との方針です。国民弱者、中小零細企業、そして日本の経済、財政も泥沼に一段とズブズブ…となっていきます。米欧での新たな金融不安を考えると尚のこと懸念が膨らむばかりです。

信用不安はホントに収まっているのか?日本への波及は?

3月、米銀2行が破綻、以後は安定、とのことでしたが、4月24日、今度はファースト・リパブリック・バンクが破綻しました。これらの背景にトランプ大統領の銀行規制緩和で全体的な経営体質弱化などが指摘されています。

クレディ・スイスに絡む一連の問題もAT1債の無価値化・UBSによる買収など当局の強烈施策で抑え込まれましたが、ドイツ銀行などメガでもリスクは蓄積との観測です。

日本のメガバンクはBIS規制などで財務体質に問題なしとのことですが、米欧起点の事態が日本と無縁なのか、波及ないか? も顧慮不可欠です。リーマンショック以降、資金が世界に溢れ、金融資産が膨張してバブル化、投機盛況がいつまでも続くことはあり得ず、蟻穴から崩壊に至る可能性もグローバル化した中で警戒が不可欠です。

いま米銀各行は、貸出や有価証券を削減中との報道ですが、これが融資先の経営悪化→銀行の貸出債権劣化・不良債権増→自己資本比率低下など懸念されています。融資圧縮は既にノンバンクや不動産業に悪影響を及ぼし、景気後退要因となり、これら米国内の変化は他国に波及する可能性も指摘されています。

FRBは自国第一の急速利上げをやったため、新興国に通貨安・債務増と返済困難・成長鈍化など世界的な悪影響を及ぼしています。日本にも悪影響が及んでいます。

「3メガバンクの外債含み損は22年12月末で3兆3千億円」と日経新聞が報じました(2.3)。地銀は昨春から既に含み損が膨れ、金融庁も点検を強めていました。

ここに至るまで銀行業界は、国内融資不振のため、米国債など債券投資の比率を高めてきました。これが裏目に出て、健全性を示す指標=預証比率 (預金残高に対する国債、社債、株式等の証券を合計した有価証券残高の比率)に懸念が出ています。

22/3期末で30%を超えている地銀が15行、大手銀行は三菱UFJ銀行、みずほ銀行が揃って33.8%でトップ、三井住友銀行が27.12%となっています。

肝心の融資は、コロナ禍対策のゼロゼロ融資 (無利子無担保)の返済が本格化しても企業は業績低迷、倒産が増えつつあり、銀行は貸倒や引当増のリスクが増えていきます。

年金への悪影響は?

年金積立金を管理運用するGPIFは、安倍元首相の方針で資金運用は外債も株式も25%まで高めたのが今では裏目に出ました。昨年度の運用成果は、四半期毎で4-6月▲3兆7,501億円、7-9月▲1兆7,220億円、10-12月▲1兆8,530億円です。破綻した米銀2行の関連株式と債券を22/3月末約550億円(時価総額)保有も判明。

企業年金も不振で、23/3月期は速報値として、格付投資情報センター(R&I)はマイナス0.83%、ニッセイアセスマネジメントはマイナス1.39%と発表しています。

安倍政権は筋違いなリスク分担型を実施、自己責任の確定拠出年金も拡充、iDeCoでは金融市場に賃金天引きのカネが回り(昨年は2.5兆円)購買力低下に繋がりました。

厚労省の企業年金・個人年金部会は暫く休眠状態だったのが昨秋11月に再開、今年4月12日に21回目を開催し、iDeCo拡大などの画策を続けています。

日銀の無理無茶にも程がある!「副作用」どころか「害悪」

異次元の金融緩和・低金利が円安・物価高騰に拍車をかけているのは「副作用」どころか重大な「害悪」です。にも拘わらず黒田前総裁は、円安や物価上昇は一時的なものと言い低金利に固執しました。長期金利を低利に据えるために10年物国債のみ巨額買い込み、市場で売買が不成立など異常な事態まで度々起き、銀行に特別融資して国債を購入させるなど矛盾の上塗りをやりました。

低金利に固執するのは、金利が上がると▲国債利払いが増えて財政が一段と悪化、▲金利上昇→国債時価下落→保有する銀行・大企業など損失、金融市場が大混乱、▲日銀も損失を蒙り国への納付金(21年度決算で1.2兆円)が吹っ飛び、国際的信認も低下、大企業や銀行の起債にも悪影響など必至となるためです。

大軍拡推進下、日銀総裁が代わっても誤策続行では…果たして

岸田首相はアベノミクス継承を明言し、矛盾は続き深まります。5年間で43兆円もの大軍拡を強行する財源は大増税と国債増発の方向が浮彫りです。少子化対策に消費税増税・社会保険料増など、政権と財界の本音が出てきました。これでは可処分所得が減り、賃上げしても物価上昇が続き、暮らしも平和も守り得なくなります。

 アベノミクスが日本の金融・財政・経済を歪めてきた上、今では米欧の信用不安が火種を燻ぶらせている段階にあり、政府日銀の責任ある政策への転換が急務です。

勿論、ただ金利を上げればヨシ、ということではなく、大局的に利上げ方向としても時期やテンポが重要で、弱者に激変緩和を措置し、必要財源は大企業・富裕層の減税を元に戻し、軍拡支出は止める…などに求め、国民本位の財政政策に転じるべきです。

現役世代と連帯して

銀行業界は預金・融資の業務で稼ぎにくくなって海外や新業務に進出、リスクを抱え込むだけに一段と経費、特に人件費圧縮を重視します。こういう状況下でみずほが企業年金も含む新提案をしました。各行が競い合う中で、退職済みの受給者に対しても影響の及ぶ改悪が進められる可能性も排除できません。現役をすべて確定拠出年金に移行して基金解散、退職済み受給者を閉鎖型に囲い込むとか、生保などに丸ごと移す「バイアウト」とか、選択肢があることに私たちとしては警戒が必要です。  

物価高騰が進むほどに年金額や虎の子は実質目減りが進行する訳ですし、仮に上昇幅が緩んでも被害は高止まりのままです。

「高齢者に傾きすぎた社会保障財源を若い層に」など分断が進められていますが、若い層が後年冷遇されないよう現状改善も大事です。この視点で全日本年金者組合は年金・医療・介護など含む社会保障の拡充を政府・経団連に要請し続け、13-15年の年金減額は不当、違憲と裁判闘争を続けています。企業年金の受給権を守るためにも、内外情勢、暮らしと平和を守る運動に視野を広げてゆきたいものです。      

(稲邑明也 5月1日 銀行年金を守る会ニュースNo88に寄稿

 

 

物価防衛も果たせぬ年金の先行きはどうなる?どうする?

物価高騰が続き、年金生活者にとっても先行き不安感が募るばかりです。公的年金は減額が続き今年は名目微増でも物価上昇率を越えず実質目減りです。

企業年金は元々物価動向に無関係で定額支給です。三菱UFJ銀行が2013年に導入したキャッシュバランスプランの適用受給者が年々増えてきました。10年物国債の市場金利によって給付額が変動する仕組みで、低金利下の今は2.5%の給付で、物価上昇率と無関係です。

こんな訳で、従前の受給者も最近受給開始の人も、共に物価や金融政策の問題を見詰め打開方向を考えることが求められています。

物価は年金暮らしに特に厳しい高騰状況

物価上昇率は1月に全国ベースで4.2%となり、東京都区部は2月3.3%に微減…など報じられていますが、年金生活者にはこの数字よりもっと影響が大です。現役世代は上昇率の低い耐久品支出や選択的支出ウエイトが高いのに比べ、年金生活者は上昇率の高い基礎的支出=食品・エネルギー関係のウエイトが高いし、今後の値上げ予定も多く、こういう点からも平均値に流されない物価問題を考えたいものです。

物価高騰の要因はご承知のように、世界的なコロナ禍からの経済回復に伴なう需給アンバランス、ウクライナ侵略に伴う食糧・エネルギー等価格上昇、がありますが、日本特有の問題としてa.金融緩和で低金利が続き、米欧などとの金利差が広がり円安、b.大企業などが海外展開・国内空洞化、産業・輸出入構造の変化、国際収支構造が変化、対外支払い増加、円安を招きc.赤字国債濫発で財政・経済など国力低下、といったことが海外投機筋から狙われ円安…など複雑です。

人ごとみたいに言わないで!

バブル崩壊後「失われた20年」の語が流布された後、安倍政権が「アベノミクス」を掲げ、菅・岸田政権がそのまま継続し10年たち、今では「失われた30年」と人ごとみたいに言われています。賃金、消費、GDPなど主要数値が伸びず国際収支の悪化や国債格付の低下など、庶民からすれば30年も失わせ続けたのは誰なのか?と言いたいところです。今こそ、前掲a,b,cの各要因を掘り下げ、転換することが求められています。

日銀は白川前総裁の時、既に金融緩和策を実施していたものの、金融政策だけでデフレ克服は限界ありとの姿勢でした。しかし安倍元首相が2012年に就任してからアベノミクスを掲げて更なる金融緩和策を求め、渋る白川総裁を黒田氏に交代させ「輪転機をグルグル回してお札を刷る」など無理筋を言い、物価上昇率2%を目標としました。

2%は世界標準と言いましたが、90年代に高い物価上昇率を抑える目標として各国に導入されたものが、新自由主義の蔓延と共にインフレ目標とされた経緯があります。家計が暖められ需要が盛り上がり、供給を上回ることで物価上昇が起きるのは結果論としてありますが、物価の番人と位置付けられている日銀が政権と共同声明出してまで2%アップを目標としたのは財界本位の思考・理屈であり、国民多数にプラスとなるものではありません。  

2%でも5年10年上がり続けると虎の子や年金がどうなるか?自明のことです。しかし当時からマスコミの影響もあってアベノミクスは称揚され、国民本位の金融政策を主張する野党やエコノミストらの声は軽視されました。今後を考える上でもこれまでの経過直視が重要です。

腹痛に頭痛薬…が、毒薬に

安倍元首相はデフレ克服のための金融緩和を主張しましたが、デフレは賃金・年金抑え込みなどで国民の消費が減退し受給アンバラになったのが主因でした。

購買力低下→売り上げ低迷→設備投資も停滞…なのに、金融緩和しても銀行融資が増える訳もなく投機に流れ、公的年金の積立金と日銀の株式爆買いも加わり株価が上昇し好景気に見えたのですが、実態は大企業の内部留保が五割増、富裕層が更に富み、格差と貧困が拡大し財政赤字・国債膨張など矛盾が激化しました。

国債の日銀購入は、戦前の教訓としても厳禁なのに、巨額買い続け、GDPの2.6倍に達するなど、他国にない状況で、国債格付けも世界で24位です。

国際収支の悪化も看過できない状況です。円安と資源高などで貿易収支の赤字が膨らみ、海外からの投資収益や旅行収支の黒字を打ち消し、一月の経常収支は過去最大の1.9兆円を記録。円の評価はじめ金融、経済面で先行きが懸念されます。

賃上げが必要と安倍元首相も認め、経団連に要請などしたものの、政治の責任として率先実践すべき最低賃金引上げは微々たるものでした。公的年金の特例分2.5%を13~15年にカットし更なる給付削減の仕組みをつくりました。

企業年金では筋違いなリスク分担型を17年から実施、銀行業界でも導入されました。企業年金の本質から外れて自己責任運用の確定拠出年金を拡充しiDeCoでは賃金から金融市場に天引きのカネが回り(昨年は2.5兆円)購買力低下に繋がりました。要するに安倍元首相らはデフレ克服どころか逆の施策を展開し日本経済・金融の矛盾を深めたのです。

銀行業界も経営が難儀に

安倍元首相は家計を温める政策は取らずに逆をやり、物は売れず設備投資は増えず銀行貸付も伸びないという当然の流れとなりました。過剰な資金を融資→設備投資に回そうと黒田総裁は、銀行が日銀に滞留させている当座預金に利息を徴求するマイナス金利政策を追い討ちで導入しました。これも又、腹痛に目薬の類でした。

元頭取の平野信行氏は、日銀がマイナス金利を導入した2016年、国債入札特別参加者の資格を返上して批判姿勢を示したことがありましたが、MUFG傘下の他証券会社が資格を維持、腰砕けでした。

基本的に大企業は内部留保を溜め込み資金余裕がある上に設備投資は伸びず、借入需要が低迷していたため、銀行融資は低調で利ザヤも縮小、業績は各行とも低迷しました。メガバンクでは活路を海外に向け、MUFGは約150億ドル(約2.5兆円)を投じてインドネシアの商業銀行大手ダナモン銀行やタイのアユタヤ銀行など、アジアでの商業銀行ネットワークを拡大しました。しかし子会社化した後、株価下落で19年度に赤字6千億円も計上しました。

海外進出には地政学リスクがつきまといます。今もウクライナ侵略やアメリカの利上げで新興国や途上国の債務増加・利払い負担増が世界経済のリスクとなり世銀、IMFなど懸念を示しています。

過剰資金が溢れバブル化している中で、先週10日アメリカのシリコンバレー銀行(SVB)が破綻したのを皮切りに、問題銀行が相次ぎ、大手クレディ・スイスまで政府支援を受ける状況に至り、雲行きが怪しくなってきました。

貸付よりも外債購入に力を入れてきた日本の銀行は金利アップで外債の評価損が膨らみ、年金の資産運用でも懸念されます。 3メガの外債含み損は22年12月末で3兆3千億円(=日経2/3)。公的年金の運用機関GPIFが、破綻したアメリカの2銀行の関連株式と債券計550億円保有も判明、SVB問題などは対岸の火事で済むのか?

三菱UFJ銀行は、預証比率(預金に占める証券の比率)は前期末33.38%でメガバンクではトップです。地銀と異なりヘッジは出来ていると言われていますが、注目されます。

低金利続行で円安、物価高騰は放置か

異次元の金融緩和・低金利が円安をもたらし、物価高騰に拍車をかけていることから金利引上げ→円安是正が求められているのに、黒田総裁は、円安や物価上昇は一時的なものと言い張り低金利に固執、兆円単位の資金をドブに捨てるように円買い出動まで敢行しました。長期金利を低利に据えるために10年物国債のみ巨額買い込み、市場で売買が不成立など異常な事態が度々起き、大手銀行に特別融資して国債を購入させる策まで講じるなど矛盾の上塗りをやりました。10年物国債金利が基準で給付が決まるキャッシュバランスプランの受給者には悪影響が続きます。

低金利に固執するのは、金利が上がるとイ.巨額の国債利払いが増えて国家財政が一段と悪化、ロ.金利上昇→国債時価下落では、保有する銀行・大企業など損失、金融市場が大混乱、ハ.日銀も損失を蒙り国への納付金(21年度決算で1.2兆円)が飛び、国際的信認も低下、大企業や銀行の起債にも悪影響など必至となるためです。

こういう点で遅きに失しましたが、財界側からも批判が出てきました。平野氏は令和臨調の共同議長に就き、今年の一月、日銀と政府の金融政策に警鐘を鳴らし、日銀の国債購入が財政と金融に負の相互作用を及ぼしてきた、と指摘しました。しかしアベノミクス自体を厳しく批判するに至らず緊縮財政要請に重点がありました。大軍拡・大増税に反対するものでもなく社会保障削減につながりかねない方向です。

大軍拡の下で日銀総裁が代わるが…果たして

植田次期総裁は、異次元の金融緩和継続を明言する中で是正に触れましたが、具体的にいつどんな策を講ずるのか発言ナシです。植田氏を指名した岸田首相自身がアベノミクス継承を明言し、国債増発を新年度予算案に盛り込んでいますから、矛盾は続かざるを得ません。

五年間で43兆円もの大軍拡を強行する財源は大増税と国債増発の二択となります。大増税は震災復興税、煙草税、法人税に依り国民の批判をかわす魂胆ですが、筋違いなことです。  

震災復興税半減は被災者を顧みないものであり、たばこ税は取りやすいところから取る安易な姿勢です。法人税は元々国民の働きや消費があってこそ得た企業利益から国民のために充てるべき貴重な税源です。国民が直接負担しないから構わない!とは言えません。

岸田首相は軍拡に国債増発しないとの姿勢を今は示しています。金利上昇必至の内外情勢と財政難、国債格付け引き下げと悪影響の連鎖を避けざるを得ない窮地からのものです。しかし、自衛隊基地強靭化では建設国債を増発する予算で軍拡のための国債発行に変わりはありません。

 岸田首相らは抑止力強化を主張しますが、ではどれだけお金を注ぎ込んだら安全保障と言えるのか?お互いの抑止力強化で際限は無く、先制攻撃で報復されたら国民の命やインフラはどうなるのか?戦争しない外交にこそ力を入れるべきで、命を守り育てる社会保障・教育などにこそ税金を使うべきでないか?など根本策に目を向ける必要があります。

子育てについて岸田首相は異次元などの言葉で人気取りを図るものの、具体策は曖昧です。出生率低下の要因には、派遣法改悪などで低賃金が定着したことがあります。結婚や子育てを望んでも展望を見出しにくい低賃金、保育教育環境の劣化が根本問題です。出生数が低下しても賃上げ、正規雇用拡大、労働分配率引き上げの政策を推進すれば、労働者の収入は増え、所得税や社会保険料負担力増大と共に社会保障の土台は強めることが可能になるし人口も増勢転化を展望し得ます。巨額の内部留保を国民に還元してこそ暮らしも経済も好転します。

現役世代と一蓮托生で

銀行業界では、かつて市銀連が共闘を組んでいましたが、都銀の再編成で3メガバンク+りそなの4従組となり、共闘は低めの一致点で緩やかな水準で推移し、ベアゼロとか要求見送りとか低迷し続けてきました。1996年以降、退職金要求はしなくなり、企業年金に関してそれぞれ銀行側の制度改定等の要求を受け入れる経過が続いています。

銀行業界は預金・融資の業務で稼ぎにくくなって海外や新業務に進出、リスクを抱え込むだけに一段と経費、特に人件費圧縮を重視します。こういう状況下でみずほが企業年金も含む新提案をしました。                  

各行それぞれに競い合う中で、退職済みの受給者に対しても影響の及ぶ改悪が進められる可能性も排除できません。現役をすべて確定拠出年金に移行して基金解散、退職済み受給者を閉鎖型に囲い込むとか、生保などに丸ごと移す「バイアウト」とか、選択肢があることに私たちとしては警戒が必要です。

物価高騰が進むほどに年金額や虎の子は実質目減りが進行する訳ですし、有効策を打たない政権が社会保障後退や負担増、軍拡増税を進めていることも視野に入れて平和と生活を守り向上させる方向を目指す必要がいよいよ重要となってきます。

「高齢者に傾きすぎた社会保障財源を若い層に」など分断が進められていますが、若い層が後年冷遇されないよう現状改善も大事!と考えます。

この視点で全日本年金者組合は年金・医療・介護など含む社会保障の拡充を政府・経団連に要請し続け、国民春闘共闘委員会の一翼を担い10%の賃上げ要求と連帯しています。企業年金の受給権を守るためにも、内外情勢、暮らしと平和を守る運動に視野を広げて考えてゆきたいものです。 

                                  2023.3.17. 稲邑明也

 

物価高騰を超える賃上げを!  菊池 喜久夫 (旧三菱)

 今年の春闘は急激な物価高騰に対し、企業も賃上げに前向きで、すでに5~7%等の回答が出始めています。

三菱UFJ銀行については、報道で「ベアを含め5.5%要求」と従業員組合の正式な決定よりも先行しました。

そのあと従業員組合は、「定例給与・基本給ならびに臨給」を合算した「基礎年収」を資金量とした前年度プラス2・7%の要求案を決めました。

報道による、5.5%と組合執行部要求案2.7%の差は何だろうと疑問でした。それは、報道の内容から「基礎年収2・7%増」に、「昇格や登用に伴う賃上げ分を含めた」分を合算した数字であることが分りました。

要するに、従業員全層が5.5%賃上げとなるわけではなく、銀行の人件費支払い総額が5.5%増えるということなのです。銀行の賃上げ要求は2年前に、従業員各人の「基礎年収」を基準にした要求方式を採用し「総報酬方式」としました。

これは、全層一律の「ベースアップ」ではなく、一人別の処遇を前提とするものです。従って、実際の賃金引き上げ額は各人の評価により各人ごとに違うことになります。

この「総報酬方式」導入時の銀行の付言に「物価が大幅に上昇した場合に等は…総合的に検討していく」と述べられています。

そこで、今年度の組合執行部の要求案には、昨年からの物価高騰状況を踏まえて、「基礎年収の2.7%」の内2.5%については、全層一律となっています。

しかし、2・5%では現状の物価高騰に対しては低すぎるのではないかとの声があります。これは、前年度の東京都区部物価上昇率(CPI)の平均が2.5%であり、前年度の物価防衛は出来ているということなのです。しかし、昨年末に40年ぶりの高い物価上昇率を記録し、今年に入っても毎月値上げラッシュの状況では、全層一律2.5%の賃上げではとても物価防衛が出来ないことは明らかです。

三菱UFJ銀行には、リーディングバンクとして、働く人たちが安心して生活して働き、日本の経済回復のためにもなる、物価高騰を超える全層一律の大幅な賃上げを実現することを望みます。

川柳 与謝糠晶太   (下手な川柳はよさぬか!飽きた、と言われそうなので筆名にしました)

クラクション柔らに響き春近し

 

三文のトクも無いのに早や目覚め

 

咳二つ左右二つのせきが空き

 

会議中マスクのお蔭あくび出来

 

マスク取りシミシワ増えたと見詰め合い

 

マスク美人減れば眼福かすむ春

 

カミさんも操縦しきれぬ火の車

 

年金と物価の反比例逆にして!

 

「異次元」で飾る姿勢は低次元

 

バイデンのパシリの自覚なき総理

「防衛」と偽称の軍拡看破しよう

 

ゴマカして貧国強兵目指すのか

戦争は犠牲もカネもみな国民

 

枯れ木には水をやるなと大ナタか

 

軍拡こそ「社会が変わってしまう」のだ

 

忘れまい「電波停止」の恫喝者

 

新しい戦前」すでに始まってる

 

定年を延ばし酷使は原発も

 

発電は非核・風水太陽で

本音言いそっちの誤解と罪重ね

卯年 いろはカルタ 西村清逸  (旧三菱) 

い 因幡の神話、うさぎ伝説  Z世代は知らんけど

 

ろ 老獪な議長、馬風兎風の耳  聞くミミ持たず

 

は 初詣は、甲斐の名峰富士を  背に「うさぎ神社」

 

に 二兎を追う、戸惑う予防接種  コロナとインフル

 

ほ 補聴器とウサギ兎の長い耳  「ミミコラボ」の老後

 

へ 平時の電話勧誘、時に黒兎に「なりすまし」

 

と 歳のヒザ痛、整形医見立て 若気のうさぎ跳び

 

ち ちょっとだけ色素が違うの  ウサギの赤いお目は

 

り 利を得れば世の詐欺師は 脱兎の如し

 

ぬ ヌン活の友、返信はピーターラビットだけ

 

る 類が友を呼ぶ、底なし献金  協会は「ウサギ小屋」

 

を 追って探す、冬の兎狩り、手掛かりは糞と足跡

わ 悪い円安、日銀黒田総裁  「うさぎに祭文」

 

か 買物通い、跳回る兎に程遠く縺れる足と二人三脚

 

よ 酔った勢い、宴の勘定奉行  ウサギのひり放し」

 

た 第?波まで続く、新変異株  人も兎も懲りゴリ

 

れ 令和のうさぎ赤銅色眩しい  今世紀の皆既月食

 

そ 想定外、兎が罠に掛るも  幸運を掴みニンマリ

 

つ 月のウサギ様、三日月の  餅つきはアウトドアなの

 

ね 年金暮らしも、歳を重ねて  板につく「兎の昼寝」

 

な 鍋にお肉、首に毛皮の襟巻  野兎の昭和ジェンダー

 

ら 楽々とロン毛で暖を取り  路上飲み、アンゴラのお陰 

  

む 無茶苦茶「いいね!」SNS連発議員に兎も耳塞ぐ    ( 以下割愛)

新春パロディ百人一首     詠人=在原万年平(旧三和)

これやこの大臣四人の更迭は  知るも知らぬも岸田の責任

(本歌) これやこの行くも帰るも別れては  知るも知らぬも逢坂の関

防衛費増やしにけりないたずらに  米圧力でながめせし間に

(本歌) 花の色は移りにけりないたずらに  わが身世にふるながめせし間に

忍ぶれどマスク着用もう限界  無人島に行けばと人の問うまで

(本歌) 忍ぶれど色に出にけり我が恋は 物や思ふと人の問ふまで

コロナ禍よ絶えるなら耐えよう永らえば  感染力が強まりもぞする

(本歌) 玉の緒よ絶えねば絶えねながらえば  忍ぶることの弱りもぞする

心あてに円安対策やりたれど  民惑わせる愚策の日銀

(本歌) 心あてに折らばや折らむ初霜の 置きまどわせる白菊の花

天つ風インフレの世を吹き閉じよ 民の願いをしばしとどめん

(本歌) 天つ風雲の通ひ路吹きとぢよ をとめの姿しばしとどめむ

ウクライナに戦車で踏み分け侵略す プーチンロシアの行為悲しき

(本歌) 奥山に紅葉踏み分けなく鹿の 声聞くときぞ秋は悲しき

ちはやぶる神の名借りて会員に 壺を押し売る統一協会

(本歌) ちはやぶる神代も聞かず龍田川 からくれなゐに水くくるとは

音に聞く岸田首相の聞く力 聞かぬ力のありもこそすれ

(本歌)音に聞く高師あだ波は かけじや袖のぬれこそもすれ

日の丸背負って戦ったW杯 負けてもブラボー立派とぞ思う

(本歌)瀬を早み岩にせかるる滝川の われても末に逢わむとぞ思う

川柳   与謝糠晶太   (旧急三菱)

岸田サンうさぎの耳がまぶしいか

凡総理うさぎの耳を見たくなし

諭吉サン!正月くらいは居付いてネ


宝船ちょいと気になるジェンダー


お年玉わたす時だけ孫正座


めでたさも中に届かぬ民あまた

あつものに懲りずあつもの弄び (原発政策転換)


今こそは「金は天下の回りもの」(内部留保課税を)

老いて知る置いてけぼりの冷国を

短歌 軍靴の音が近づく    与謝糠晶太

戦争を知らぬ政治屋二、三世が軍拡路線も世襲する気か

「反撃」と与党は先制誤魔化すも報復受くるは慮外の愚か

報復に人命守る提言もなき政権の浅慮恥ずべし  (先に攻める事のみ) 

食糧やエネルギー自給乏しきに武器を爆買い継戦力とは

「防衛」の名もて軍拡正当化の論を流すもメディアの役目か

政権の「防衛」論に外交論なきを指弾せぬメディアを訝る

軍拡に批判の緩き新聞は終戦直後の反省いずこへ

「防衛」の強化を難じず財源論に傾く野党に未来はあるか

​以上の四作品は、会報70号掲載のものです。

空から丸の内、今昔物語! 

西村清逸 (旧三菱)    (お詫び   管理者のITレベル低いため残念ながら写真は載せ得ません)

 

先日、コロナ禍では有りますが「行動制限解除」に便乗して

我が家はファミリー全員でホテル37階に集合、東京駅近くの

高層ビルにて窓からの昼夜の眺望が抜群で感動のひと時でした。

こんな中で私だけちょっと?複雑な心境になった「グチ話!」

を投稿いたしましたのでご容赦ください。

ホテル北側の窓、丸の内側にある銀行本店の建物がなかなか

見つからず探しまくりました。なんと!超高層ビル街の谷間に

ひっそりと沈んでる様で目立たない情景に目を疑いました・・・

 

取り分け、現本店の竣工は1980年(昭和55年)6月で地上24階 地下5階の高層ビルの出現には「創業100周年記念」と併せて銀行関係のビルが建ち並ぶ丸の内界隈はもちろん、巷では「天下の三菱グループ」を象徴する建物と「新本館」が評判になった時代を昨日のように脳裏に焼き付いていますのでこの現実の情景に遭遇したショックに動揺は隠しきれませんでした。

 

妻が「あなた退職して何年になるのヨ・・・ホントに貴方は目出度い人だワ! 周りから「ザ・ミツビシ」と揶揄されて気分いいのね!いつまで経っても懐かしいのは解るけどいい加減にしたら・・・」と一喝の一幕がありました。

先般に現頭取の半沢氏が「私の愛社精神の強い思い込みが伝わったかどうか分かりませんが・・・「近い将来に本館の建て替えプランを表明」を知って嬉しい限りです。現役行員と企業年金暮らしOB行員に共通の認識あるなぁ・・・勝手に推測して嬉しい限りです!

「新本館本店が高ければ高い程と良い!」と単純な発想はしていませんが聡明な後輩行員の集大成を見られるように長生きして丸の内を天空から観る夢を見ております。

 

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