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​Q&A

前期(`14.3.)決算をどう見ますか?

寄せられた質問などにより当会の見解を以下に記しますのでご覧下さい。ご意見はト
ップページにあるメールアドレスへお寄せ下さい。

 

好決算でしたから企業年金は安心なのでは?

Q 前期決算では過去最高の利益となったことやアベノミクス効果で株高もあって、「企業
年金について不安は無いのでは…」との声が多いようです。どう考えますか。

A 国債暴落のリスク、株式保有のリスク、海外部門強化に伴うリスク、BIS規制の課題など銀
行は色々な問題を抱えています。その上で欧米の大銀行と競い合って利益獲得・企業価値
極大化を狙っています。このため、コスト圧縮は当然の課題として、企業年金負担も含めて
人件費増の押さえ込みを推進し続けると考えられます。

 

国債下落なら巨額損失に

Q  国債の暴落リスクはどれほどのものですか。

A  前期末は三菱東京UFJ銀行(MTU)だけで33兆8,549億円、三菱UFJフィナンシャルグル
ープ(MUFG)としては40兆6,499億円保有しています。もし5%下落したらMTUだけで1兆7
千億円近い評価損が発生します。これはMTUの年間純利益6千億円の三年分近くという金
額になります。問題は、国債が下落すると他の債券や株式も連動して下落するし、日本経済
がガタガタになって倒産多発という事態になりますから、銀行は貸倒損失や貸倒引当積み
増しが必要になり、損失はもっと膨れます。企業年金基金の財政も大きな打撃を受けます。

 

国債下落の要因は何?

Q どうして国債暴落が心配されるのですか。

A アベノミクスの金融政策は根本的な矛盾を抱えています。つまり物価上昇2%を目指す
ことは金利上昇に繋がり、金利上昇は即国債など債券の下落を招きます。日銀が大量の国
債買い入れで人為的に長期金利を押さえ込むと将来のひずみを大きくすることも指摘さ
れています。

アベノミクスを評価する向きがありますが、景気浮揚策として大型公共工事など増やし国
債の発行残高はGDP比2倍以上となっています。予算の半分以上が国債新発で、直ぐ日銀
が銀行から買い上げる状況です。金利が上昇すれば国債の利子負担は膨れ上がり、更に国
債増発に繋がり財政再建は遠のきます。このような関連で国債の信用が落ちて暴落する可
能性もあると指摘されています。

 

日銀は、国債の暴落=金利上昇となれば銀行への打撃が大きいことから時おり予測を出し
ています。四月の「日銀金融システムリポート」では、2014年前半に長期金利1%上昇の場合、
金融機関全体で債券評価損7.5兆円に達すると警告しています。

 

国債の相場は色々な要因で動きますから、単純な断定はできませんが、「景気上向きのと
きほど国債暴落の可能性が大」と指摘する人たちもいます(例えば、みずほ総研役員の高
田創チーフエコノミスト)。

 

また、このところ、安倍政権は株価吊り上げを狙い、年金積立金管理運用独立行政法人(=
GPIF)が運用する国の年金積立金は約130兆円程ですが、その運用の株式構成比を引き上
げようとしています。国債などが約48%あり、これを売却して国内株式を買うなら国債下落
を招く可能性も出てきます。(積立金は国民の財産ですから安全・確実な運用が求められ、
株価対策の手段にはできません。)

 

自己資本の規制iに問題はありますか

Q  前々から自己資本比率の規制は聞いていますが、銀行は利益を挙げてクリアしている
から大丈夫ではないですか。

A  銀行の抱える諸々のリスクに対応するため国際的な取り決めがありBIS規制はバーゼ
ルⅢと言われる段階に来ています。リーマンショック以降、特に規制が厳しくなりました。 

最低限の規制数値は8%です。内訳として中核部分や他の部分など区別計算があり単純で
はありませんが、中核の「普通株式等Tier1比率」ではMUFG=11.25%、MTU=11.05%で共に
クリアしています。

 

問題はこれから先です。

これまで自国国債は安全とされてきたのですが、南欧諸国で暴落の事態を経験したことも
あって、自国国債をリスク資産として評価することとなり、バーゼル委員会が計算式を提示
しました。これによると自己資本比率維持のために3メガで4.4~11兆円の株式資本増強が
必要との報道です。(日経新聞5/19)。これは銀行が国債売却へ動き、下落の要因になりか
ねません。

 

問題は国債だけではない

Q 他にも重要なリスクはありますか。

A 最近取り沙汰されているのは、銀行の保有株式のリスク再評価の問題です。

これまで日本の銀行は親密取引先の株式を長期保有してきたためにバーゼル委員会は、日
本の銀行に2004年に自己資本規制の緩和措置として、長期保有株式のリスク量は保有時価
の1.0倍としてきました。

これは10年間の経過措置で6月30日に期限が切れ、9月中間決算から本来の評価=上場株
は2倍以上、非上場株は3倍以上となります。

このため3メガバンクで9月末のリスク量は18兆円を超え、自己資本比率は0.3~0.5%低下、
これを増資で食い止めるには7千億円の増資が必要、保有額を減らす選択なら保有株式の
半分を売却する必要がある、との観測もあります(日経新聞6/2)

 

Q 自己資本比率維持のために銀行はどう動いていますか。

A この問題への対処の一つとして、今月に入りMUFGは新しい自己資本比率規制(バーゼ
ルⅢ)に対応した新型の劣後債を月内に発行すると発表しました。 

この劣後債は経営破綻した時、通常の社債より返済順位が低く、政府認定により元本が削
減されるもので、銀行の資本に組み込むことが可能です。株式を発行すると株価が希薄化
するため劣後債を発行するのです。みずほ・三井住友FGも発行済みです。

 

 これから海外に期待できるのでは?

Q 海外部門は大きく伸びていると聞いていますが…。

A MUFGは国内での融資業務の低迷、国債・株式を巡るリスクなど抱えつつ、海外分野と
証券分野に力を入れてきています。今では利益の6割を両分野で稼ぐ収益構造に変化しま
した。リーマン危機前は6割を国内銀行業務で稼いでいたのとは逆転の様変わりです。

MTU単体としても海外戦略を積極的に展開し、昨年はタイのアユタヤ銀行を買収しました。
こうして海外部門の粗利益は8,213億円で海外比率は約四割に達しています。これには傘
下のユニオンバンクやモルガンスタンレーの利益貢献1,458億円を除いた数字です。各メガ
バンクとも多国籍金融機関としてしのぎを削る戦略です。

 

Q これから海外部門に期待できるのではないですか。

A 邦銀は、リーマン危機で傷の深かった欧米銀行を押さえて海外取引を伸ばしてきまし
たが、最近は欧米大銀行の業績・収益は回復し、競争は激しくなってきつつあります。

 銀行はこの半世紀、資本の自由化、金融の自由化など経て合併を重ね、証券業務にも進
出し、かつての預貸業務中心の商業銀行とは異なってきました。こうして国内の融資業務の
採算が低下してゆくなかで国内業務は優良企業に傾斜し、投資信託の販売、M&Aなどの手
数料稼ぎで利益を追求し、そして海外進出を強めています。

国際的に役立つ銀行になることはよいことですが、日本の企業、国民にとって役立つこと
が重要と考えられます。

 

Q 銀行は国内でどんなことが求められていますか。

A アベノミクスで日本の経済・財政・金融政策が歪んで銀行自身も矛盾に直面する状況下
にあっては、本来なら国内の弱小企業や国民の利益を擁護する立場で政府に対して政策転
換を求めるべきだと思います。

国民の雇用と所得を増やしてこそ労働力人口も長期的に増え、内需も盛り上がり、国内の
企業は成長でき、日本経済も成長し財政矛盾も解決できる…という好循環の道があるはず
です。

 10日、株主に届けられた「事業報告」の「対処すべき課題」には「持続的な成長の実現と
日本経済再生への一層の貢献を目指し…」と書かれています。また、MUFG・MTUのトップと
して全銀協会長職にある平野氏は会長就任時、日経新聞のインタビューに答えて「実業や
実体経済を支えるのが金融機関の使命。中小企業の再生や成長を促す取り組みが必要」と
述べていますが、真に日本経済の再生を目指すならこれを建前とせず安倍政権に対して
金融経済政策の転換を求めることを誠実に実行してもらいたいと思います。

 

銀行は企業年金でも厳しく出ますか

Q 利益の上がっているトップバンクとしては、受給者や現役に対して、そんなに厳しくしな
いのではないですか。

A そうあって欲しいと考えたいところですが、実際の経過や現実を冷静に見ておく必要
があります。

銀行はアベノミクスの下で矛盾とリスクの範囲も質も大きく変わる中で利益の極大化を求
めるため、コスト削減も熱心に進めています。

現に、19年ぶりのベースアップをやっても僅か0.5%ですし、労働者と世論に押されて派遣労
働者を正規に切り替えるようなことを言うものの、実際は中途半端です。ここに利益最優
先の発想と姿勢が出ている訳です。昔からのこの姿勢が、利益を挙げていても企業年金で
は現役にキャッシュバランスへ切り替え負担軽減を進めたのです。

 こういう姿勢は他の銀行も共通しています。りそな銀行は公的資金の返済が進んでいて
も現役には確定拠出年金を昨年導入しました。

 財界の圧力に沿ってこの四月からキャッシュバランスプランの設計弾力化が施行されま
したが、銀行は活用しようとすれば必要手続を進める可能性があります。受給者の三分の
二以上の同意でもって導入し、不同意者が受給権を侵害されることの無いよう、受給者が
連帯を強めてゆく必要があると考えています。

 

 

勉強会(`13.10.31.)での主なQ&A

 

いずれ受給者は負担が避けられないのでは?

Q 銀行は現役を減らし、他方で退職した受給者が増える一方だ。受給者も平均余命
が長くなるから、いずれ基金の運営が行き詰まって、減額とかキャッシュバランスプラ
ンの導入が必要になるのではないか。

 

A 公的年金は基本的に現役が受給者を支える仕組みで、企業年金もこれと同じように考
えている人たちがいます。しかし、企業年金は企業が個々人の退職時点で基本的に必要資
金を積み上げており、現役が減ったことでもって給付困難になることは計算上原則的にあ
りません。

平均余命が延びても五年ごとの再計算が義務付けられており、その都度銀行は必要資金
を拠出しており、最近は頭打ちなのでこの面の負担増は少ない状況です。

基金としては、運用成績が悪化しないように高リスク投資は避けて、

安全安定的な公社債など安全第一な運営を貫くべきです。

また、銀行としても日本の金融経済が安定的に発展するように融資や投

資に努めると共に、政府に対し安定成長に向け政策提起してゆくべきです。

 

基金の将来に不安が出てこないか?

Q 基金の収入の内訳では、銀行拠出よりも運用益の方が高い比率になっている。基
金の積立金が豊富にあるといっても、毎期の変動が大きい運用益に依存している構
造を見ると将来は不安が出てこないか。

 

A 基金の安定的収入と言える掛金等収入(殆んど銀行からの拠出。ごく一部は現役の自
己拠出)は300億円台が続いていたが、`09年から200億円台になり、前期は184億円へとピ
ークの半分に落ちています。

要因は開示されていませんが、現役のうち給与が高めの男性が減り続けた(給与が男性よ
り低い女性は漸増傾向)ために拠出金が減ったこと、過去勤務債務の費用が減少したこと
など推定されます。また、成熟度(受給者数÷加入者数、給付額÷掛け金)が高まってくる
と、基金の資産が増えるのと相まって一般的には運用益に依存する傾向があります、

なお、運用損益は8期間を通して見ると、運用損が1,467億円の時とか次の期は運用益が1,
013億円とか、ブレが大きい状況です。

前`13/3期の運用益1,004億円は掛金等収入184億円の5.45倍でした。

8期平均では収益率は2.2%とプラスになっていますが、受給者に対して安定的に給付を続
けるべき基金の役割からすると不安感は拭えません。

当基金は、ブレの大きい株式投資の比率は下げ、債券投資の比率を高めています。しかし債
券とて運用は難しく、今期4~6月の第一四半期では損失を出し、この三ヶ月間の運用益は
株式など含めて全体で0.2%となってます。なお、収益の変動が大きいのは外貨建資産が資
産の4分の1を占めていて、証券の価格変動と為替レートの変動の両者が資産価格に影響し
ていると考えられます。

 

現役が退職者に不満を持たないか?

Q 運用利回りが悪くなったら銀行が責任を持って拠出するのだと言われても、やっ
ぱり不安が残る。経営環境・市況の悪化や減益になると「退職者向けの年金は負担
だ」と現役から不満の声など出て、これを銀行が利用し退職者に減額など打ち出して
来ないか。

 

A その可能性は否定できません。りそな銀行の場合は顕著でした。

企業が業績悪化で基金への拠出を減らしたい、給付を減らしたいと提案してくる場合、 先
ず現役に対して不利益な改悪を実施し、次いで受給者への不利益強要に出るパターンが多
く見られました。

当銀行が3年前、現役にキャッシュバランスプランへの移行を提案した時に、当銀行は組合
執行部の質問に対して「世代間の公平性を保つとの観点から、年金受給者および受給待期
者にも相応の負担をお願いすることも検討してきた」ことを明らかにしました。

本来、企業年金は積立方式ですし、受給者への給付は現役が負担しているのではなく、企
業が退職金の延払い分として負担し、積み立てているのです。しかも、企業が危殆に瀕した
時に給付不能に陥らないようにするため別法人の基金に積立済みのものです(生保・信託
銀行などに委ねる方式もある)。

企業が経営責任を不問にして現役や受給者に犠牲転嫁を図る、そのために世代間の公平
性を材料に持ち出す姿勢こそ、無責任で重大な問題です。

現役と受給者は対立関係に置かれるべきではなく一緒に声を挙げ、経営責任を問い連帯の
行動をとるべきです。

かつてTBS=東京放送が企業年金の受給者に減額を強行しようとして裁判になったとき、
労働組合の理解と支援を受けたこともあり、6年前に勝利的和解を勝ち取ることができまし
た。

企業が勝手な提案をしないように、提案したとしても、日頃から現役も受給者も企業年金
について知識を深めることが大切で、当会のホームページや会報がお役に立つように努
めたく思っています。

 

国債が下落すると銀行は基金に拠出が困難では?

Q 「アベノミクス」が行き詰まって金利が上がり、国債の相場が崩れて基金の運用
がうまく行かなくなることが考えられる。基金の不足分を母体の銀行が負担すると
いっても、国債を沢山保有している銀行に評価損が出て、基金に出せなくなるのでは
ないか。

 

A 「アベノミクス」は物価上昇2%を目標に掲げており、金利上昇の要因を作る政策です。
したがって、国債暴落は当然にあり得るリスクです。  当銀行は9月決算で35.1兆円の国
債を保有しており、もし5%の下落となった場合は1.7兆円を超える評価損が出ます。これま
での数年分の利益額に相当します。

しかし、仮に銀行が大損をしたとしても、受給者に犠牲を求めることは先に述べた法理や道
理からも間違いです。

「アベノミクス」は消費税増税・社会保障削減など推進する政策ですから、国民の購買力低
下、景気悪化、市況悪化など、国債暴落のみならず諸々の矛盾が複合的に連鎖して、大変
な事態になる可能性が大です。そうならないように政策の根本的大転換が必要です。

 

イザという時に銀行は同意獲得に元上司を使うのでは?

Q もし年金引き下げの規約改定となる場合、阻止に必要な三分の一以上の不同意
者を得るために、この「考える会」が勉強会やPRで頑張るといっても、その時になれ
ば、経営側が各人に当時の先輩、上司などの人脈を使って同意を説得させてしまうこ
とにならないか。

A これまで他企業では残念ながらそういう事例は多くありました。だからこそ私達として
は今の段階から会員がそれぞれの人脈を大切にし、共通の利益と権利に即して共に理解を
深め会員を増やして行きたいのです。

この場合に重視したいのは、経営の側があれこれ言ってきても、受給権の減額などは筋道
が通らず、お互いに確信の持てることが法律などにある点です。減額に同意する必要がな
いことを、むしろ経営側に立って説得に来る人に対して、逆に説明し理解を求めて行きたい
ものです。

 

私たちが確信を持つべき点とは?

Q 受給権の確保に確信の持てることとしてはどんな点があるか。

A 法令や会計面など幾つもあり、主な4点を述べます。

(1)基金は銀行と別法人で、受給者への給付に必要な資金は退職時点で積み立てられて
おり、銀行の経営が仮に傾いても基金の運用で後は基本的に給付できる設計となっていま
す。

(2)基金が運用で大穴を空けたりして傾けば、銀行が資金を拠出する義務が法令上ありま
す。この時に銀行も拠出難として、減額など提起するかも知れません。

しかし、民法では債権者平等主義という原則があり、銀行が債権者である受給者にのみ債
権減免を求めることは間違いであり、出来ません。つまり、他の債権者である預金者、社債
保有者、物品購買先など平等に、どれだけの減免が必要なのか提示し了承を得る必要があ
ります。これでは信用失墜になるから、と筋違いを棚上げして受給者にのみ減額を求める
のは間違いです。

(3)銀行は巨額の内部留保を保有しており、減額が必要となる事態は先ず考えられませ
ん。前期末の内部留保は利益剰余金が2.6兆円、資本剰余金を加えると6.5兆円に達してい
ます。これは現役や受給者の働きもあって蓄積できているのであり、真に減額が必要な場
合は取り崩すべきです。

勿論、その前に経営責任はどうなのか、株主の責任はどうなのか、など問われます。利益を
出し配当を続けるために犠牲転嫁を求めるような役員は失格です。役員報酬のけじめなど
つけているのか厳しく問われます。

これらを棚上げして当面の減益や市況悪化などを理由に減額を要請するのは筋違い間違
いです。

銀行の負担とリスクを軽減するためにとか、持続可能な企業年金制度にするためにとか、
の理由を持ち出して、減額やキャッシュバランスプラン導入を提案してくる可能性も排除で
きませんが、不当性を明らかにし阻止する必要があります。

(4)基金が傾かないように、受託者責任を全うさせる取り組みが重要です。

その責任の中でも「忠実義務」は現役加入者や受給者の利益のためだけに忠実に職務を遂
行するべき義務で、基金は加入者や受給者の利益に反する行動をしてはならないとされ、
厚労省はこの原則に即したガイドラインを定めています。銀行のために言いなりになること
はできないことになっています。

銀行と現役が基金の代議員会を構成しチェックする体制がありますが、受給者は「脱退者」
とされていますので、代議員会の構成員にするように法制度を改めることが求められてい
ます。

そこに至らなくても、受給者の作る組織が銀行・基金と協議交渉できるようにする必要が
あります。当会では、そこに到達できるよう今から組織の拡大強化を進めている次第です。
企業年金について知識を深め情報を共有することで、不当な減額などを拒み、受給権を守
る運動を発展できます。

 

 

 

基金の決算について

Q 基金の決算報告はわかりにくい言葉があるし見方がよく判りません。解
説してください。

A 企業会計との違いも含めてポイントについて以下に述べてみます。

具体的な数値で過去の推移も含めて見つめることが重要であり、以下に概略を述べます。
詳しくは会報に分析していますのでご入会の上、ご覧下さい。

 

貸借対照表の用語

一般的な企業会計とは色々な点で異なることに留意することが必要です。

基金の貸借対照表は、年度末において、左側(借方)に固定資産、流動資産、もし不足金があ
れば基本金(不足金)と表示され、右側(貸方)に責任準備金、支払備金、基本金が表示され
ます。責任準備金は、これまで表示されていた数理債務から未償却過去勤務債務残高を差
し引いて計上するルールに変更されました。

 

基本金

基金としての蓄積は重要ポイントで、下記の算式で得られます。

基本金=(固定資産+流動資産)-(責任準備金+支払備金)    

基本金は、当年度剰余金とこれまでの蓄積である別途積立金と区別して表示されます。

 

責任準備金

将来の給付のために現時点で保有しておかなければならない理論上の積立金のことで、
右側の負債勘定に示されます。これは理論上ということであって、企業会計の負債なら請
求に備えて資金手当てを必要とする性格のものとは異なります。実際の年金資産と比較可
能な「理論上の積立金」を表しています。

 

過去勤務債務、未償却過去勤務債務残高

制度発足前の勤務期間も将来に給付すべき期間(=過去勤務期間)とするので、これを通
算すると、その分の年金費用が積立不足になります。この不足分を過去勤務債務といいま
す。

しかし、基金財政の計算ではこの概念が拡張されて、財政決算で発生する不足金なども含
め、過去の期間に生じた債務の全て、と定義されています。

つまり、過去勤務債務は、財政再計算(平均余命なども織り込む)、制度変更、給付水準の改
定、給付増額などによっても発生します。運用利回りが予定利率を下回った時に発生する利
差損も過去勤務債務です。2012/3期(=平成24/3期)は現役にキャッシュバランスプランを
導入した結果、未償却の過去勤務債務残高は減少しました。つまり銀行にとっては負担が減
少したということです。

大枠では、数理債務-年金資産と計算されます。

過去勤務債務は通常の掛金とは別に「過去勤務掛金」を定め計画的に償却します。

この部分の償却が済んでいない残高が未償却過去勤務債務残高です。これは基金が銀行
に対して保有する債権となります。

償却の方法は三通り定められていますが、当基金の場合はどの方法か開示されていませ
ん。

 

数理債務

将来の年金給付のために、期末時点で積み立てていなければならない積立金の必要額で
す。

ただし企業会計の負債と異なり、すぐ資金を必要とする性格のものではなく、理論上の数
値のため、数理債務と表現されます。

年金受給中の人、受給年齢到達まで待期中の人(待機とは言わない)、加入者(=現役)の各
人それぞれについて、ある時点(例えば決算期末)を基準として、将来にわたって発生する
ことが見込まれる「年金債務」の現在価値から、将来に収入が見込まれる「標準掛金収入」
の現在価値を差し引いた額です。基金では、将来の給付を賄うため、基本的にこの数理債
務に見合う資産を保有していることが求められます。

 

支払備金…期末時点で支払いが済んでいない給付金です。

 

基本金(別途積立金)

将来の不足金に充当するなどのために積み立てておく利益金の留保額です。

 

損益計算書の用語

当年度の収入と支出の差額が当年度不足金または当年度剰余金として表示されます。

但し、これらは企業会計の損益計算とは異なり、資金運用損益の他に数理債務の内容の反
映や銀行からの拠出金を含めるなど、独自の金額の出入りという面があることに留意が必
要です。

 

掛金等収入

加入員(=現役)および銀行からの掛金収入です。過去八期の推移を見ると減少傾向にあり
ます。

 

運用収益

市況の変動との関連で大きく増減します。損失が出れば、これとは別建てで計上表示され
ます。両方を比較、差し引き結果で過去の運用成績を見ることも必要になります。

 

責任準備金減少額

貸借対照表の右側に示される金額(=数理債務から未償却過去勤務債務残高を控除)の減
少額です。資金の動きがありませんが、基金にとって負債の減少として収入に計上します。

 

運用報酬等

運用を委託している信託銀行、生命保険会社、投資顧問会社などに支払う手数料です。管
理と運用の対価であり、運用の成果が単純に比例して成功報酬的に支払われるものではあ
りません。

 

財政検証

確定給付企業年金制度では、各事業年度末の決算において、①基金の存続を前提に、年金
財政が予定通り推移しているかどうか、②仮にいま、企業年金が終了した場合に、過去期間
分の年金給付に見合う資産が確保されているかどうか、という二つの角度で検証すること
を厚生労働省が義務付けています。

この積立状況の点検が財政検証と言われるもので、①の長期的計画と対比した検証を「継
続基準の財政検証」、②の過去分の給付が確保されているかどうかの検証を「非継続基準
の財政検証」といいます。

基準値を下回った場合は受給者保護の観点から、積立水準の回復計画提出や母体企業か
らの特別掛金拠出による積立不足解消が法令で義務付けられています。

当基金では毎年度末の「決算のお知らせ」の中で計算結果が報告されています。

 

①「継続基準の財政検証」

計算式は「純資産÷責任準備金」で示されます。

 

②「非継続基準の財政検証」

「純資産÷最低積立基準額」で計算します。

かつては厚生労働省が1.0と定めていましたが、07年の市況悪化とともに0.9に変更されま
した。2012年度では0.92に引上げ変更されています。

 

 

 

 

企業年金の話題・問題はこれでスッキリ!

引続きご質問ご意見をお寄せ下さい。(`13.5.7.)

(当会メールアドレスはトップページの左上に記載)

 

Q 「企業年金」は、厚生年金基金とか確定給付年金とか複雑で判りにくいの
ですが…

A 国の資金を預かり運用した厚年基金が不利となって確定給付企業年金
に!

企業年金とは、国の公的年金と区別した分類名称です。企業年金は一言で言えば、退職年
金で退職金の後払いです。企業が責任をもって資金を確保し支払うべきものであり、銀行
や大企業では戦前から、そうしていました。

しかし、1960年代に、国の厚生年金の改善が問題になった時に、大企業・財界は厚生年金の
保険料引上げ負担と自前の退職年金の負担の両方は過大となり困るとして、国が運用する
保険料資金を企業が代行して運用し、税制など含むメリットを受ける厚生年金基金という仕
組みを作ったのです。他国に例のない公私混同の制度で複雑になりました。

 

バブル期などで企業・基金は大いにメリットを享受しましたが、今世紀に入り運用が一段と
難しくなってきました。

さらに会計制度の変更なども加わり、デメリット大となったために大企業などの基金は代行
返上したのです。返上して移行したのが「確定給付企業年金」です。

 

企業年金は、今では主に①厚生年金基金、②確定給付企業年金、③確定拠出年金(さらに企業
型と個人型の二種類)の三種類あり、AIJ事件で問題になったのは①の方ですが、前々から財界
の意向で②や③についても連動して改定する動きを強めてきました。

 

私たちが勤めていた銀行の企業年金は、厚生年金基金として設立され運営されていました
が、2004年に代行返上し、②の確定給付企業年金へ移行しました。(これには基金型と規約型の二
種類あり、私たちの場合は前者)

したがって銀行の場合、AIJ事件に関連する厚生年金基金ではありませんが、厚労省が企業
年金ということで一纏めに「改変」に動いている内容に重大な問題があるのです。

 

Q 企業年金を改悪してきたのは誰が何のために?

A 大企業・財界が負担軽減のために、受給権侵害へ

厚労省は、経団連など財界・大企業の要求を受けて永年にわたって企業年金の制度を改悪
してきました。財界・金融界が要求し続けた規制「改革」で、年金資産の安全を守るための規
制が取り払われたことや、投資顧問会社の乱立を招いたりしたことなど広範にあります。こ
ういう中で検査体制も追いつかず、AIJ事件が起きたことは象徴的です。

企業・基金の負担とリスク軽減も徹底しており、昨年九月には、黒字企業であっても一定の
条件で退職者の給付額を減らすことができるように、大転換する厚労省令を出すに至りま
した。

こうして、業績をあげている銀行でも国債暴落などによっては退職者への給付を減らすこ
とが可能となりました。              
 

Q トップバンクなら大丈夫!それでも退職者の給付を減らす?

A 利益急減など一定条件で減額可能になり、安心できません!

三菱東京UFJ銀行の利益は、確かに高い水準にあります。

しかし、更なる利益を獲得するため人件費押さえ込み意欲はいつも強く、企業年金では、二
年前に負担軽減のためにCBを現役に導入しました。この時に銀行は従業員組合に対して"
退職者に相応の負担をお願いすることも検討してきた"と述べました。

また、大企業・財界は給付減額をし易いように厚労省に要求し続けて新たな段階に来たこと
を重視する必要があります。

 

これまで厚労省は、受給者に対する減額を原則として許してこなかったのですが、例外とし
て「経営状況の悪化」などを理由に認可してきました。そして、昨年九月の厚労省省令で、黒
字経営であっても、次のいずれかが該当すれば「掛金の拠出が困難」とされて、減額される
ことになったのです。

イ.過去五年間程度のうち過半数の期において、当期純利益がマイナス又はその見込みで
あること。

ロ・掛金を増やす場合の額が事業主の当期純利益の過去五年間程度の平均の概ね一割以
上となっていること。(年金減額時に受給者が希望する一時金支払い問題の項については
割愛)

 

 三菱東京UFJ銀行で具体的に考えると…

「アベノミクス」で物価が上げられると金利が上がり、国債など債券が値下がりするリスク
を銀行として抱えることになります。

銀行は国債だけで約40兆円保有していますが、もし5%下落すると評価損は2兆円に達しま
す。こうなると数期分もの利益が消え、下落幅次第で前記イ、の条件を満たす可能性は排
除できません。

また、債権暴落で基金の運用成果があがらず、積立不足が増えることとなり、銀行拠出の
必要が増大します。ここで銀行としては前記ロ、の条件が満たされて"掛金増が大変だから
減額できる"とされる可能性が出てきます。

勿論、債券暴落で貸付金利上昇、収益にプラス、との見方もありますが、預金金利の上昇も
あって部分的です。何よりも日本経済全体として、不況深刻化が進み不良債権増大などで
銀行の収益が減り、銀行としては基金への拠出よりも給付の減額を…と動く可能性も強ま
ることが考えられます。

 

Q キャッシュバランスプラン(CB)とは?

A 確定している給付が不確定・不安定になる方式

確定給付企業年金は、あらかじめ設計し資金を積み立て、予定した運用益が稼げると問題
なく先行きの給付もしっかり可能です。

しかし、経済変動が激しくなり見込み通りに行かないと、企業・基金のリスクが高まり、企業
が資金拠出の義務を負うし、企業会計上の負担が大変になります。そこでこれらのリスクや
負担などを軽減し、現役や受給者に犠牲転嫁を図るために考え出した方式です。

つまり、確定給付企業年金であれば、現役時代に企業・基金が積立てる資金は、定めた利率
計算に基づいて確定しているところ、CBは国債などの市場金利に委ねるので先行き不確
定になります。

そして本来、確定給付企業年金の場合、退職時に決まる給付は後々も確定した金額です
が、CBは退職後の給付は時々の指標(殆どは国債市場の利率)によって変動し、不確定・不
安定となります。

こうなると、企業・基金は運用がうまく行かなくても、市場金利に連動することで退職者へ
の確定した給付に必要な資金拠出の負担やリスクを避けることが出来ます。

他方、受給者は給付額が変動するので家計の見通しが難しくなります。

「減ることもあれば増えることもある」と都合よく説明されていますが、市場金利が上がっ
ても、上限の歯止めを設定されるのが殆どで、銀行でも現役に導入した一昨年、上限が設
けられています。

 

受給者のリスクが更に増大

今回の厚労省のCB弾力化案はこの現行のキャッシュバランスプランを更に緩めるもので
す。詳細は複雑になりますが、給付などの基準となる利率はゼロ以上であれは可、などと
ユルユルです。

要するに企業がトクする弾力化であり、現役や受給者にはトンでもない不利益・不安定を強
いるものです。退職した後でCBを導入なんて筋違いなことですが、この事例はりそな銀行
にも導入されており、油断はできません。

特に、厚労省は専門委員会で討議を済ませた案を固めたのに、法案に盛り込まず政令・省令
で実施する構えのようであり、受給権を守る運動の発展が求められています。

 

Q 「アベノミクス」で銀行は業績向上では?

A バブル化が進み、とても安心できません!

★「アベノミクス」がマスコミなどで持てはやされ株高・円安となりましたが、巨額の資金
が投機市場化したマーケットに流れ込み、既にバブルの様相を呈し始めています。

異常な金融緩和のなかで、ヘッジファンドが「日本国債売り」を戦略に、「期待される破局」
を仕込み始めているという市場関係者の発言が紹介されています。

 

★国債暴落などバブルが崩壊したら何が起こるか、90年バブル崩壊以来の「失われた20
年」、リーマンショク後の世界金融危機で経験済みです。

また、物価上昇は金利上昇、国債下落と一体関係です。銀行は約40兆円の国債を保有し暴
落=巨額の評価損発生のリスクを抱えています。咋年2月には「三菱東京UFJ銀行が国債暴
落シミュレーション」を行っているとの記事が朝日新聞などに掲載されました。現在も保有
国債の残存期間短縮化など推進中です。

 

★リスク増大に備えて銀行は経費圧縮に走ります。内部留保を積み上げても現役行員のベ
アは18年間も行わず、行員を減らして派遣などに代替し人件費の削減に躍起です。

退職者の年金額減額など事態次第では真っ先に行うことは幾つかの企業の例から見ても
明らかです。

 

★本来、銀行は実業のなかで必要とされる資金供給の役割があります。それが今日では
「経済の金融化」といわれるように「カネがカネ」を生む虚業のマネーゲームの世界で利益
を上げようと、危ない事業を肥大化させています。

政府・日銀によって舞台がつくられ、その舞台で踊る銀行の姿は改めて「あり方」が問われ
ることになります。また、銀行のあり方は、その国のあり方とも密接につながっています。政
治が国民の暮らしと企業の経済活動にしっかりと軸足をおいた経済・産業政策への転換を
図るとともに、実業の世界で国民とともに発展して

いく銀行のあり方への転換が求められているのではないでしようか。         
 

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